468列車 「SL大樹」と「S-TRAIN」
「・・・。」
今、私がいるのは東武鉄道下今市駅。3両編成の東武500系「Revaty」でここまで来た。ホームにはたくさんの鉄道ファンとこれから乗る列車目当てに下今市駅にやってきた家族ずれでたくさんである。
「ボォォォォォォォォォォォ。」
この駅にやってくるこの独特の汽笛を響かせる車両。それはC11-207号機。ただ一つである。イベント列車「SL大樹」号。黒い車掌車に引かれた青い14系客車3両編成。ここから鬼怒川温泉まで行くSL列車だ。
C11形蒸気機関車が青い14系客車を引っ張ることは往年のファンから批判はある。「SLが14系を引くのは味がない」みたいな・・・ね。日本にある35形客車は「SLやまぐち」号に使われている35系4000番台だけだが、旧型客車は大井川鐵道で使われている「アニー」、「クララベル」カラーになったものぐらいだ。
「SL人気・・・。どうも今はそのようね。」
「SL大樹」。東武鉄道はこの列車の運行に際し、かなり力を入れている。14系客車はJR四国から。C11-207号機はJR北海道から。それぞれもらい受けている。14系に至っては歯医者にしようとしていたものをもらい受けたのだから、そこからも力の入り方はよく分かる。
(鉄道とは本来公共交通機関・・・。SL一機動かすだけでもお金がかかる。乗務員は車掌を含めて最低3人必要。)
そうそう、私は「SL大樹」には乗らない。日本で走っているSL列車はもうコンプリート済みだ。今私が下今市にいるのは乗った時とは別の視点で「SL大樹」を見るためだ。
「・・・。」
(帰ろう・・・。)
「えーっと、次は・・・。」
私は時刻表を取り出した。
「次は西武鉄道でも行こうかしら。」
「・・・。」
下今市から西武鉄道の方向へ行くには、まずは北千住か栃木まで行かないと・・・。栃木からはJR線である両毛線。北千住からは地下鉄日比谷線、JR線にも乗り換えできる。
(・・・飯能に行けばいいか・・・。)
ここからなら栃木から両毛線で倉賀野へ出て八高線で東飯能に向かうのがいいかな。
(S-TRAINの出発まではまだ時間あるなぁ・・・。)
「・・・。」
飯能を出発するのは17時50分。今日は、土曜日。S-TRAINは元町・中華街行きが運転される。終点元町・中華街は19時38分。料金は860円。帰るのは21時をまわるか・・・。いくらシームレスとは言っても2時間近く全くリクライニングしない椅子に座り続けるのは・・・。そもそもそういう利用を想定していないか。まぁ、いい。
S-TRAINを元町・中華街まで乗車し、金町に戻ったのは21時10分だった。
(結構疲れたわね・・・。)
「んっ・・・。」
私は後ろから気付かれないように近づき、後ろからどついた.
「わっ・・・。」
「こんな時間に買い物・・・。いいご身分ね。」
「なんだ。亜美か。ビックリさせるなよ・・・。」
光ちゃんだ。光ちゃんはコンビニの袋を下げ、自分の寮へ歩いて行っている途中だ。袋の中には今さっき買ったであろう冷凍食品が詰まっている。
「冷食ばかりは栄養が偏りかねないわよ。そもそも、光ちゃんは自分で料理ができるスキルがあるのだから、手料理をした方がいいわよ。」
「・・・大きなお世話だよ。」
「三日坊主のままっていうのは自分のためにも良くないわ。」
「・・・。」
「それに・・・私達が東京にいるの、忘れてないでしょうね。」
「それはもちろん。」
「そのためにも遅くまで起きているのはお薦めしないわ。」
「・・・それはブーメランじゃないかな・・・。」
「・・・。」
確かに・・・。私も情報収集を口実にして、乗り鉄してきたし・・・。
「と・・・とにかく就活する私達に時間は無いのよ。就活はどれほど準備したかが勝負。即席で作った隠れ蓑なんて面接でテンパってしまえば、簡単に化けの皮がはがれる。そんな場所で勝ち抜くために必要なものなんだから。インターネットで鉄道会社が何をするのかプレスリリースを見るだけでも少しは変わるわよ。」
「プレスは見てるよ。お父さんからの入れ知恵なんだ。」
「へぇ・・・。」
あのお父さんがねぇ・・・。そりゃそうか。昔あの人も就活はしたんだろうし・・・。でも、わざわざそんなこと擦るって事は何かありそうね。
「じゃあ、次はどう面接を切り抜けるかね。私で良ければ相手になるわ。光ちゃんの化けの皮を剥がす手伝い。いくらでもしてあげるわよ。」
「亜美が相手で化けの皮剥がすって・・・。」
「回答に困る質問しかしないから。」
「・・・目が怖いって・・・。」