表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAIN TRAFFIC5  作者: 浜北の「ひかり」
Iwatsuki High School Episode:3
41/62

504列車 一番の愚者

(ひかり)ちゃん。明日「みらい」で帰ろう。話があるんだ。」。ウチはそう言われ、帰りの時に使う米原(まいばら)品川(しながわ)東京(とうきょう)の自由席特急券を米原(まいばら)名古屋(なごや)に乗車変更した。米原(まいばら)から東海道新幹線(とうかいどうしんかんせん)に乗った。

「昨日は突然あんなこと言ってごめん。」

会った瞬間にそう謝られた。

「別にいいよ。そんなこと。ていうかウチに話って何。」

「「みらい」の中で話すわ。あっ、これ「みらい」の特急券。」

そう言い、ウチは亜美(あみ)からマルス券を渡された。「リニア新幹線特急券・グリーン券 名古屋(なごや)品川(しながわ) みらい522号 7号車8番A席」との表示がある。

「えっ、これ。」

「私のおごり。気にしないで乗って。あっ、乗車券は持ってるので、乗れるから。」

気にしないでかぁ・・・。気にするよ、これは。

 階段やエスカレーターを降りて、中央新幹線(ちゅうおうしんかんせん)ホームに行く。改札機に守山(もりやま)東京(とうきょう)都区内となっている乗車券とさっき渡された特急券、ここまで使ってきた新幹線特急券を入れる。

 新幹線ホームに行くと、白地に流れる青いラインの入ったリニアが停まっている。この車両はL1系(エルワンけい)中央新幹線(ちゅうおうしんかんせん)開業時から使用されたL0系(エルゼロけい)の老朽置き換え車両で今はまだこの1編成しかない車両のはずだ。そうそうリニアの耐用年数は10年ほどらしい。

「初めてリニアに乗るなぁ・・・。」

「乗って・・・。もうすぐ発車するから。」

亜美(あみ)に促されて、ウチはリニアの車内に入る。車内には3列のシートが並んでいた。A席、B席の2列とC席の3列だ。東海道新幹線(とうかいどうしんかんせん)などのグリーン車は4列だから、よほど広いんだなぁ。と思っていたが、リニアはどうも車体が狭いみたいだ。同じように4列にすると普通席と何ら変わらなくなってしまうため、3列構成になっているのだろう。

 出発時間になったようで、リニアは滑るように名古屋(なごや)駅を後にする。加速は普通の電車よりも速く、車のようにぐいぐいスピードを上げていく。しばらくそれが続いたかと思うとふわりと浮く感覚を覚える。そうなると、更にスピードの上がり方が鋭さを増す。

「話って言うのは他でもないの・・・。」

亜美(あみ)が話し始める。

「私、親が嫌いなこと(ひかり)ちゃんも知ってるでしょ。」

「ああ。うん。前怒鳴ってたもんな。」

「ええ。私、今まで親は自分の障害だと思ってたわ。いいえ。そう言い聞かせてた。」

「・・・なるほど・・・。」

その言葉でだいたい察しが付いた。亜美(あみ)は知ったんだ。

「知ってたのね。母親から聞いていたのかしら。」

「・・・まぁ・・・。聞いちゃダメだったかな。」

「そんなことないわ。むしろ、聞いてもらえてありがたいわ。」

そう言うと亜美(あみ)は一回深呼吸する。

「私、YouTubeでセーラーって言うアカウント名で活動してるんだけど、(ひかり)ちゃんは知ってるわよね。」

「うん。」

「そのチャンネル開設したのは私が4歳の時。最初は祖父・祖母への反抗のために開設したようなもので、そのために鉄道が好きとか言ったものだわ。もちろん、そんなことしてたものだから、鉄道ファンからは相当嫌われたわ。「死ねよ、お前」とか、「今度電車乗ってるの、見つけたら、殺してやる」とか。かなり酷いこと言われたわ。その時いつも「自分が気に入らないからと言って、「殺してやる」は言い過ぎだろ」って。そう言ってくれる人がチャンネル開設の黎明期からいたわ。まさか、その人が母だなんて思ったことはなかったわ。」

そんな批判にさらされてたんだ・・・。

「・・・私、今すごい後悔してる。聞いてないと思っていたのをいいことに、親にはかなり酷いこと言いまくったから。ライブとかしてれば、「それは言いすぎじゃないですか」って言ってくれる人もいたけど、私は聞く耳持たなかった・・・。普段は冷静だった・・・。ただ親に事になると冷静でいなかったのは私・・・。ホント、馬鹿よね。」

「・・・。」

「馬鹿すぎて・・・。気付く機会も、話を聞く機会も数え切れないくらい有ったのに・・・。」

「・・・話を聞けたんなら、もう憎むなんて事もしないよね。」

「ええ。そんなこと出来ないわ。むしろ、今までの自分に嫌気がさす。」

「・・・。」

「父も母も。私のことは許してくれても、私は私が許せなくて。」

どうすればいいかな・・・。気の利いた事なんて言えそうにないし・・・。こういう時本当にどうすればいいんだ。

「許してあげようよ。過去に自分の親を悪く言ってたことが消えるわけじゃないでしょ。」

「分かってるわ。頭ではそれを嫌ってほど理解してる・・・。」

「・・・。」

やっぱり、あれがいいのかな。

「もうすぐ夏休みだよね。」

「・・・そうね・・・。」

「夏休みどこか行ってみたら。親と一緒に。」

「・・・。」

「・・・無理・・・。」

「ううん。もしかしたら、それで自分を許せるようになるかもしれないし・・・。夏休みに久しぶりに親と軽井沢(かるいざわ)に行ってみることにするわ。北陸新幹線(ほくりくしんかんせん)の「グランクラス」に乗せて。」

「親子水入らずで過ごして来なよ。」

「・・・ありがとう、こんな話聞いてくれて。」

「・・・別に。ウチは何言っていいかも分かんなかったし。」

「・・・アイスでも頼も・・・。」

リニアは減速を開始する。まもなく最初の停車駅中津川(なかつがわ)に到着する。

 夏休み、亜美(あみ)からは楽しそうに軽井沢(かるいざわ)で過ごしているとタイムラインで流れてくるようになるのはまだ先の話だ。


MAIN TRAFFIC5本編はこれにて完結です。ここからはしばらく輝君の夏休み旅行編を投稿します。


旅行編が終わりますと、本編完結編になります。本編投稿はしばらくお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ