498列車 夏休み入門編
私はパソコン室の近くにあるフリースペースで読書をしていた。普段はライトノベルとかを読んでいるのだが、私の彼氏がものすごい鉄道ファンだからなぁ・・・。枯れに触発されて、私も鉄道に関連した小説って言うものに手を出した。私が今読んでいるのは、かなり昔に日本を最長片道切符という切符で旅をした人の話。その人の切符は当時の価格で6万5000円。そんなに切符にお金をかけるという時点で私には想像も出来ない。
「お待たせ。」
その声がしたため、私は顔を上げた。
「待ってたよ。輝君。」
「帰ろうか。」
私は本をしまう。輝君が手を差し出してきたので、私も握り返す。顔を赤くしているところはなんとも可愛い。
「その本、面白いでしょ。」
輝君が言う。
「私にはいまいちね・・・。ただ、この作者が頭おかしいって言うのは伝わってくるわ。輝君と同じで。」
「ハハハ。頭おかしいねぇ・・・。僕もその人の頭おかしいと思ってるから、問題ないよ。」
私でも頭おかしいと思う輝君が頭おかしいというのか・・・。この筆者はどれほど頭おかしいのだろう。ああ、誤解のないようにいっておくが、何も頭がおかしいとは悪い意味で言ってるわけじゃない。鉄道ファン同士の褒め言葉である。
帰りの電車に乗るため大阪駅まで行ったが、JR神戸線内で発生した車両点検のため、京都方面行きの電車に遅れが発生していた。のろうとしていた新快速電車は来ないため、快速電車に乗り込んだ。
高槻を通り過ぎると、乗客が減り、私達は座ることが出来た。すると輝君はノートを取り出したので、私は邪魔しないように使用と心がけようとする。だが・・・、
「ちょっと、勉強じゃないの。」
「アハハ・・・。」
ノートに書いてあるのは「○○線」と書かれた文字が見えたため、勉強じゃないというのはすぐに分かった。
「少しだけ・・・。」
そう言う輝君に私はあきれ果てた。
「就活ちゃんとしないと東海旅客鉄道に就職出来ないわよ。」
「うん・・・。そうだな・・・。」
輝君はノートをしまった。
「やっちゃダメだよね・・・。さっきのは就職決めてからやろうと思ってる旅行なんだ。」
「旅行かぁ・・・。」
「うん・・・。東北行ったり、九州行ったりって考えてるんだ。」
「・・・就職したら行こうか。それには。」
「うん。」
「私もついってって言い。」
「えっ。」
「なにっ。嫌なの。」
「嫌じゃないけど・・・。その誰かを連れて行くような旅行じゃないし。」
「別に旅行に連れてって貰うぐらいいいでしょ。それに輝君いつも一人で旅行してるじゃない。いつも一人はつまらないでしょ。たまにはついて行ったっていいじゃん。それに誰も連れて行けないようなばかげた行程組んじゃうわけじゃないでしょ。東北行ったり、九州行ったりするだけなんでしょ。」
(あっ・・・中百舌鳥さんいろいろと分かってない・・・。)
結構強くあたったら・・・、
「分かった・・・。じゃあ、僕が就職したら、まず入門編をやってならしてから行こうか。」
「入門編・・・。」
私にはその時、輝君が言う入門編の意味が分からなかった。入門編って前に入門編はやったでしょ・・・。




