496列車 近づいてくる
冬休みに入ると学年中の空気がぴりぴりするのを感じる。ウチもそれを感じているため、企業研究などは普段以上に力が入っていった。
「もうすぐ就活だなぁ・・・。」
香西がつぶやく。
「そうだな・・・。どうなるのかな。僕たち。」
「どうなるも、こうなるもないだろ。なるようにしかならないよ。」
沼垂、ウチの順番で言う。
「永島は余裕そうだな。」
「余裕なんかないよ。むしろ、焦ってる。本当に今まで積み上げてきたもので就職出来るかどうかさえ怪しいんだから。」
「まぁ、最初から弱気じゃあ、内定はもらえないだろうなぁ・・・。」
「・・・。」
弱気じゃあ無理・・・。弱気にもなるさ。相手は何があるのか全く分からない。そういう部分から不安になる。
「皆集まってるわねぇ。」
そう言い、ウチらが座っているところに来たのは亜美だった。
「おっ、彼女が来たぜ。」
「・・・。」
「まぁ、それはさておき、何してたんだ。崇城さん。」
「何・・・。香西、あなたは本当に危機感って言うものがないわねぇ。私達はもうすぐ就活って言う戦争にかり出されるのよ。戦場の準備に決まってるじゃない。」
「戦争ねえ・・・。そこまで神経質になるようなことか。就職ぐらい出来るだろ。」
「そういう考えは、自分のやりたいことが出来ない人の典型例よ。別に、忠告するつもりはないけど、あえて忠告しておくわ。」
「いちいち腹立つ言い方するなぁ・・・。」
香西はそう言ったけど、亜美の言うことは間違っていないと思う。まぁ、今は職を選ばなければ誰でも就職出来るような情勢にはなってきている。つまり、職を選べば就職出来ない人もいるって事だ。腹立つ言い方でも、「就職ぐらいできる」じゃあ底辺過ぎるのだろうなぁ・・・。
「だいたい3月になったら、こういうことも出来なくなるわよ。」
「3月ねぇ・・・。」
「ところで、光ちゃん。3月になったら企業説明会が東京と大阪で開催されるわ。もちろん、大阪の鉄道会社はだいたい大阪で説明会が開催されるし、小田急電鉄みたいに説明会を聞かないと試験すら受けられない企業だって有るわ。」
「企業説明会聞かないと行けないところまであるのか。」
それは今初めて知った。就活が始まる前にそういう情報は聞けて良かった。
「小田急電鉄と東急電鉄は昔からこういう体勢らしいからね。」
「何だよ。東海旅客鉄道一本で行くんじゃ無いのか。崇城さん。」
「そういう生やさしいことを言えるほど、就活は甘くないって事よ。いくらこっちが一本で絞っても、落ちるときは落ちる。少しは現実を理解しろ。」
「・・・。」
ウチはその会話を聞きながら、考え込んだ。これからは企業研究とかかなり積極的にやっていかないとなぁ・・・。説明会の日程を調べて、ほとんどの企業説明会に行けるように予定を立てなくちゃな・・・。
「あっ、光ちゃん。」
亜美の声に顔を上げる。
「マイ○ビとリク○ビって言うサイト。就活だとまず使い物だから、登録しておいた方がいいわ。学校でも登録をするかもしれないけど、どうなるか分かんないし。」
「マイ○ビとリク○ビ・・・。」
「ええ。分からないなら、後で教えてあげる。」
「・・・うん、ありがとう。帰ったら早速登録しとくよ。」
「ヨシッ、じゃあ帰ろうか。」
「もう帰るのか。」
香西が言う。
「暇じゃないのよ。」
僕らは荷物をまとめ、家路に就いた。
「沼垂。お前はどうする。」
「暇じゃ無いって言うのは僕も変わらないかな。僕も帰るよ。」




