485列車 魔法の料理
目に入ってくる光がかなり明るい。それに気付いて目が覚める。体を伸ばしてベッドから置き、近くにある電波時計を見て・・・。
「ウソッ・・・。」
飛び起きた。時間は6時50分をまわっている。今日は仕事じゃないけど、この時間に目が覚めると言うこと自体に驚愕してしまう。最近、お休みの日は結構寝ていることが多くなったなぁ・・・。
「起きるか・・・。」
首を右に左に傾け、壁に手を滑らせながら、リビングへと移動する。
「おはよう・・・。」
「おはよう、お父さん。」
「おはよう。智萌。あれ、萌は・・・。」
「ゴミ出しに言ってるよ。もうすぐ戻ってくると思うけど。」
「ふぅん・・・。今日の朝ご飯はなぁに。」
「えっ・・・。ああ。えーっと・・・。その。い・・・いつもとおんなじだよ。」
(いつもと同じ・・・。)
その言い方は何・・・。何かちょっと嫌な予感・・・。
「ただいま。」
玄関から萌の声がする。
「あっ、お父さん起きたんだ。おはよう。」
「おはよう。萌。」
「おっ・・・お母さん。助けて。」
「・・・。」
萌はちょっとおいてからため息をついて、
「ナガシィ、朝ご飯はもうちょっと待ってて。しばらく出来そうにないから。」
「ああ。そういうこと。」
「お母さん、早くっ・・・。早くしないといろいろと取り返しが・・・。アーッ・・・。」
大変そうだな・・・。時間かかるって言ってたし、着替えて、暇つぶしして・・・。そうしよう。
着替え終わって、戻ってきてもまだ萌と智萌は台所で料理を作っている。萌の顔はかなり困っている。「どこ、どうやったらこうなったの」と叫んでいる。智萌は一体どういう料理作ったのだろうか・・・。そういうやりとりを聞いていると今日の朝ご飯がだんだんと心配になってくる。
「ナガシィ。出来たよ。」
萌の声が聞こえてきた。
「やっとかぁ。待ったよ。」
出された食事は普通だな。結構心配してたけど、普通のが出てきて良かったなぁ・・・。
「いただきまーす。」
食べてみると何か違う。萌との味付けとかそう言うのが違うのはそうだとは思うんだけど、何か違うんだよなぁ。何の違いだろう。調味料・・・。
「ナガシィ食べれる。」
隣で萌が聞いてきた。
「えっ、普通に・・・。」
と思ったけど、今口の中に運んだものがあたったのだろうか。口の中で何か炸裂したような・・・。
「なっ・・・。何これ・・・。塩辛い・・・。」
「ごめん。」
「萌・・・。僕に自分が食べられないもの押しつけたな。」
「いいでしょ。普段から私をおいて旅行行っちゃうお父さんに私は怒なの。」
「・・・ごめんなさい。お父さん。作ったのは私・・・。」
「えっ・・・。ああ、塩辛いけど、食べられるよ・・・。」
(無理してるわね・・・。)
自分でもかなり無理していた。
朝ご飯を食べ終わると、無理していたものが全部押し寄せてきたようだ。吐きはしないけど、かなり気持ち悪いことには変わりない。
「ああ、気持ち悪い・・・。」
「ごめんね。残飯処理みたいなことさせちゃって。」
「全く。僕は残飯処理係じゃないんだから。萌も酷いなぁ・・・。」
「ごめん、ごめん。今日は私も悪かったわ。智萌が一人で大丈夫って言って聞かなくて。それで任せてゴミ出しに言っちゃったんだから。戻ってきたら、阿鼻叫喚になってたなんて思ってもみなかったんだし・・・。」
「そんなに酷かったの。智萌の料理・・・。」
「昔は別に酷くなかったんだけどなぁ・・・。どうしてああなっちゃったんだろう・・・。」
萌は少し考えてから、
「今度梓に料理教えて貰うように頼んじゃおうかな。ほら、梓って料理うまいでしょ。だから、ちょっといろいろと指導して貰ったらいいかなって。」
「梓ちゃんにねぇ・・・。確かに、梓ちゃんの作る料理って萌のよりも・・・。」
「私のよりも・・・何。」
「ん。おいしいって事だよ。」
「お昼抜きでいいかしら。」
「あっ・・・。」
「もういいわ、そんなこと思ってたんならナガシィには二度と料理作ってあげないんだから。梓に食べさせて貰ったら。勝手にしていいわよ。」
ああ、もういろいろと取り返しが付かなくなっちゃってる・・・。
「あっ、あの萌・・・。」
「お父さん、お母さんになんか酷いこと言ったの。」
智萌が呆れながら来た。
「ああ、それが・・・今日、お父さんのお昼ないと思うからまた作ってくれない。」
「お父さんのご飯は大丈夫だと思うよ。さっき、「よぉし、絶対梓の作る料理よりもおいしいって言わせてやるぞぉ。」って言ってたから。でも、ちゃんと謝っといてよね。」
「・・・分かってるよ・・・、うん。」




