480列車 模型と語らい
ご飯を食べ終わるとウチは模型部屋に行った。相変わらず広いレイアウトには数多くの線路が並ぶ。その線路には多くの車両が出しっ放しになっている。おいてあるものはウチからしてみれば一昔前の車両も含まれている。お父さんたちが走らせていたのかな・・・。
「ふぅ・・・。」
その声とともに、後ろの扉が開いた。
「あっ、光いたんだ。」
入ってきたのはお父さんだ。
「・・・片付けようかと思ってきたんだけど・・・。どうする。走らせる。」
ウチはそれに首を縦に振った。お父さんはそれを見ると、早速レイアウトの下を通って、その中に入った。
「新幹線は出てるけど、別の走らせたいならあっちから持ってくれば。」
模型置き場を指さしながら言う。
出ている新幹線は300系新幹線と100系新幹線、E2系新幹線「はやて」+E3系新幹線「こまち」、W7系新幹線。他に出ているものも確認する。在来線には223系1000番台、485系3000番台「上沼垂カラー」、E231系0番台「常磐線カラー」、813系0番台、207系1000番台、225系0番台、789系0番台「ライラック」、787系「つばめ」、キハ120系「三江線カラー」、EF210形300番台1300tクラス貨物列車・・・。この中でウチが好きな車両はあるし、別に新しいものを出すつもりも無いなぁ・・・。
「「かがやき」動かしたい。」
ウチがそう言うと、お父さんはポイントを操作し、W7系が止まっている線路に電気が流れるようにする。
「これで動くよ。」
「ありがとう。」
ウチもレイアウトの下を通って、お父さんの隣に行った。コントローラーの前に行き、ウチはゆっくりとW7系を動かし始める。新幹線はゆっくりとホームから離れ始め、ぐんぐんとスピードを上げる。
「ヨシッ、他にも動かそう。」
隣でお父さんが言う。数多くあるホームから次々と列車が出る。見回してみるとホームに止まっていない車両も走ってきている。一体どれだけの車両をここに広げていたのだろうか・・・。
「光、東京での生活は楽しい。」
お父さんがそう聞いてきた。
「うん、楽しいよ。勉強も頑張ってるし。」
「そう。でも、体には気をつけてね。もし風邪でも引いても僕たちじゃどうしようも出来ないから。」
「うん・・・。」
「・・・予防接種とかは受けときなよ。」
「わかった。」
「・・・あっ、「サンダーバード」と「つばめ」の間が詰まってる。」
その言葉で話題が変わる。
「「つばめ」のモーター調子悪いの。」
「調子悪いとは思わないんだけどなぁ・・・。もうちょっと車輪の汚れ取った方がいいのかな・・・。光・・・。」
ウチに何かをして欲しかったのだろう。だが、ウチの名前を呼んですぐにお父さんはコントローラーを操作し、787系「つばめ」を駅に止め、ポイントを操作し「683系「サンダーバード」を通過させる。
「うーん、もう一人いたら楽だなぁ・・・。」
独り言が聞こえてくる。
お父さんのその独り言が聞こえたのかタイミング良く扉が開く。
「私のこと愛してくれてるお父さんはここですか。」
お母さんだ。お母さんは扉の陰からのぞき込むようにこちらを見ている。
「あっ。いたいた。」
「那にっ、ていうかその呼び方やめて。」
「いいじゃん。減るもんじゃないでしょ。」
「・・・確かに減らないけど・・・。ああ、そうそう。萌787系のモーター社の車輪もう一度拭きたいから6号車を抜き取って。」
「6号車・・・。」
そう言うとお母さんは慣れた手つきで5号車と7号車を切り離し、6号車を抜き取った。そして、車両から台車を外す。
「クリーナーと綿棒くれれば私が勝手にやっとくけど。」
「じゃあ、お願い。」
お母さんは綿棒とクリーナーをお父さんから貰うと、椅子に座り、作業を始める。その光景を眺めていると、お父さんが近くでこう言った。
「最近、お母さんああいう呼び方するんだよね・・・。」
呼び方・・・。ああ、あれ。
「でも、どうして。」
「んっ・・・。スーツのポケットに入れてたお母さんの写真がバレたの。恥ずかしいったらありゃしない・・・。」
「えー、クリーニングに出すスーツのポケットに入ったままになってたんだから、別にバレても良かったんでしょ。」
「ああ、もう。やめて。」
「フフフ。かわいい。」
「・・・。」
「ねぇ、光。愛してくれてるなら、お母さんに直接「愛してる」っていてくれればいいのにねぇ。」
「・・・もう言ったからいいでしょ・・・それは・・・。」
「・・・。」
仲いいなぁ、本当に。
翌日、亜美は旅行継続のために浜松を発ち、2日後お父さんたちは仕事の関係で滋賀県に帰った。ウチはしばらく浜松にいて、夏休みが終わる直前に東京に戻った。帰りはおじさんが新幹線代を払ってくれたので、新幹線で戻った。




