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第78話 話し合いをした時の事と勇者の報告

作業用GBM

The Crown - DEATHEXPLOSION クシコス・ポスト


 俺は、念願の技術者を島に迎え入れられた。

 大工や石工、家具大工は特に問題がなかったが、鍛冶師には専用の施設が必要だった。

「燃料に関しては問題ない、必要な道具は自分のが有る。ただ火炉がない。これがないと話にならない」

そう言われ、工業区予定の急造の小屋の中に、言われた通りに火炉を組上げたところ、大丈夫だろうと言われた。

「最初に何かを打ち直してやる」

 そう言われたが、持ってる私物で手直しが必要なのはマチェットくらいだ。

「これくらいしかないですね」

 そう言ってマチェットを持って来て見せた。

「だいぶ使い込まれているな、あちこち欠けたり刃が潰れ、自分で砥いだ後がある。折角だから火を入れて打ち直して、磨き上げるぞ」

「任せます」

 そう言ってマチェットを預けた。

 炭に火を入れ、刃の部分を熱し、ハンマーで欠けていたり潰れたりしている部分を整え、磨き上げてくれた。

「ありがとうございます」

「構わん、修理が必要な道具をどんどん持って来てくれ」

 そう言って、取りあえず預けた道具を熱し始めている。このまま任せても問題ないな。

 他の職人を見ても、特に問題なさそうに作業をしているので、俺は俺の作業を進めようと思う。

 島の西まで道を伸ばそうと考えている。目的はコーヒーの木だ。道中の島の南側付近にあるオリーブの実も回収もできる。問題は海岸線を通すか、島の中央を通すかだが、木の伐採や根を起こす手間を考えたら、まずは海岸線の土を隆起させて、通りやすい道を作った方が良いだろう。南東には変な繭もあるからついでに取れる事を祈りつつ、南西辺りの調査をしても良いな。

 島の外周が約百五十キロメートルくらいだったな、割る四でも大体多めに見て四十キロメートル、一日五キロメートルほど土を隆起させても、南に行くまで八日。西まで道を伸ばせばその倍。他に人員は割けない。孤独な戦いになりそうだ。





 翌日俺は、皆に島の西にあるコーヒーを収穫する為の道路を作る事を伝え、しばらく個人で動く事を伝えた。

 なるべく平坦で、カーブはあっても緩やかなカーブを意識して場所を選び道を作る。

 島民の代わりに、ハーピー族にウサギ肉を渡し、代わりに収穫してもらうのも良いが、いずれ使うから道は必要になる。なら早い方が良い。正確な測量とかは必要なく、今はそこに道が有れば良い状況にしておこう。どうせまだ人口は増えないだろう。増えちゃったら仕方ないけど、食糧事情的な問題で増やすつもりはまだないからな。今年の収穫を見て問題なければ増やそう。



 意識して歩いているが、特に整地が必要な場所はあまり無く、砂と土の境目辺りから、十メートル以上島の内側になるように大体で確認し、一定間隔で土を隆起させ、道の外側の目印も作っておく。へこんでいる所があれば平らにし、大きな石があれば取り除く。大体こんな物で済んでしまう。

 あれ? あまり道路の整備必要ないぞ。あるとしたら適当に測って綺麗に石畳を敷く時だけだな。杭を打ってロープを張るだけでも十分だ。探索時は特に気にしてなかったけど、これなら以外に早く済むかも。

 高低差とか、角度が何秒ずれたら一キロメートル先で何センチメートルずれるとか気にしないでも良いな。測量とか面倒の塊だからな。

 それに収穫するのに移動手段の問題もある。

 馬を買って馬車で移動させるか、それとも数人西側に送り、一定量のコーヒーの実が集まったら定期的に転移させるか? やばいぞ、どの道かなり人員が必要だな、これはハーピー族との本格的な交渉も考えないと。肉か麦。魚かジャガイモで交渉できれば良いんだけど……。取りあえず話をしないとどうにもならない、キアローレさんに交渉だな。





 数日後、島の南まで歩いたが特に気にする場所はあまりなく、居眠りしていない限り、砂地に突っ込む事もないくらいには、直線と緩いカーブで道を仕上げた。ついでに、最南端と思われる場所に、目印として、少し高めに土を隆起させておいた。予定よりは早くできて本当助かった。この調子で残りの道も仕上げるか。





 俺は、午前中にしとめてもらった小振りの鹿を持って、山の温泉に転移した。

 馬車を走らせる道の下見を東まで終わらせ、こちらの人員が足りないので、コーヒーの実を集めてもらう交渉の為に、手土産を担いで歩いている。

「どうしたカーム、肉なんか担いで」

 鹿を担いでいたので、ファーシルが気になって話しかけてきたみたいだ。

「少し頼み事があるから、君のお父さんと話をする為のお土産さ」

「肉かー! かなり前に食わせてくれた奴だろう?」

「そうそう、で。お父さんはいるかな?」

 まぁ多分いるだろう。気楽にその日食べる以外の狩はしないで、なんか飛び回ってるイメージしかない。

「いるぞー、呼んでくるか?」

「ちゃんと話がしたいから、呼んでこないでも良いよ。先に帰って、俺が行く事を伝えて」

「解った」

 そう言うとバサバサ飛んで行った。

 まぁ、俺が見た、あの枝を集めただけのが家だって言うなら、ここでも変わらないけどな。あのファーシルに石を落とされた場所でいいんだよな? そう言えば詳しい場所を聞いてなかったな。失敗失敗。

 とりあえず、例の家と言うか巣っぽい場所に着いたら、すでにキアローレさんが待っていた。

「おぉ魔王よ、良く来たな」

 俺、前に名乗ったよね? 忘れてるんすか?

「どうも、今日は話があって来ました。とりあえず手土産です」

「助かる」

 そう言って、鹿を適当な場所に下ろした。

「前に言ってた赤い実の話ですけど――」

「まて」

 そう言って、言葉をさえぎって来た。

「長くなるか? 長くなるなら纏めてくれ」

「……はい」

 俺はしばらく考え、要点だけを纏める。


「赤い実が必要になりました、俺達の住んでいる所から、島の反対側にあるので、代わりに取ってもらいたいのです。採ってくれたら、肉と交換します」

「どのくらいだ?」

「様子見でとりあえず、この前の袋で五袋分」

「それだけで良いのか?」

「はい、この前のもまだ残ってますので」

 一袋三十キログラムとして、五袋あればあの街で少しは話題にはなるだろう。

 それで買いたいって商人が出てくれば、一番なんだが。どれくらい流行って、どのくらい好まれるかが心配だ。切れたら切れたらでどうにかすれば良い。自警団にいたお姉さんには予定が早まったって言えば問題ないだろう。


「キアローレさん達の、食べる分がなくならない様にしたいんですけど、大丈夫ですか?」

「心配するな、かなりの量がある、それに俺達は数が少ないからな。あんな袋の百や二百問題ない、なんなら運んでやる」

「ありがとうございます。けど、もしかしたら商人が買いたいと言ってくるかもしれません、それだと毎回運んでもらうのは悪い気がしますので、もっと必要になったらまた話し合いましょう」

「そんなに必要になるのか!」

「もしかしたら、本当に百や二百が必要になるのかもしれませんよ。今のところ、この島にしか無い物ですからね。なので百袋とか必要になったら、小屋を建てるので、そこに置いて置く事にしましょうか。そうすれば馬車で大量に運べるので」

「むぅ、そしたら我々の、肉が取れなかった時に食べる物がなくなってしまう」

「その辺りは考えてあります。柵で囲い、別にしておけば、人族に売る用と簡単に分けられます。自分達で食べきれない物は肉と交換。そう考えれば良いんですよ」

「やはり魔王となると頭が良いな」

 んー、普通な事を言ったのに、頭が良いとか言われるとなんか複雑な気分だ。

「今、兎や豚を繁殖させてますので、増えれば赤い実と交換できます、取ってもらった分は肉と交換で良いですか?」

「かまわん」

 即答かよ。もう少し考えてほしかったな。

「なら、赤い実の半分の重さの肉で、どうでしょうか?」

「任せる」

 また即答かよ。

「あのですね、一応キアローレさん達の食事、言い換えれば生きる事に繋がるんですよ? なのにそんなに直ぐに答えて良いんですか?」

「お前は悪い奴じゃないからな、信じている。話し合いをするのにも、肉を土産に持ってきてくれたからな。見た感じ袋3つで、その肉と交換なんだろう? それなら文句もない。それに兎や豚を、食うために育てている話は仲間から聞いている。森にも、我々が狩れない獲物も、まだ沢山いるのだろう? ならこちらは赤い実だけ取ってれば心配することは何もない。裏切られたら裏切られたで何か考えよう」

 そう言うと高々に笑い出し、羽をバサバサしている。

 俺も散々甘いとか優しいって言われてるけど、本当に裏切ったらどうするつもりなんだろうか。まぁ広い島内を飛べるなら、将来的に軽い物を運んだり、島内での手紙のやり取りとかも出来そうだからな。仲良くしていた方が、こっちらとしても良い事だらけだからな。

「そうですね、とりあえず五袋じゃなくて六袋お願いします。そうすれば鹿二頭と交換できるので」

「うむ、丸々もらったほうが、こちらとしても良いからな。肉の場所によっても、それぞれ好みも分かれる、足が良い胴体が良いと、揉める事もないし喧嘩にもならぬからな」

「では、それでお願いします」

「うむ、分かった。すまぬが何かに書いてくれ。忘れたら悪いからな」

「そのつもりでした。約束って事で紙に書いておけば、後から揉めませんからね」

 一応俺の中では契約だけど、約束って事にしておけば向こうもわかりやすいだろう。俺は紙に内容を書き、サインして渡した。


 内容は簡単な物になっている。

・カームが赤い実を欲しがり、その時に赤い実を持って行けば、半分の重さの肉と交換する。

・ハーピー族が食べる分の場所を確保して、カームが欲しがった時には、そこからは取らない、手をつけない。

・何か状況が変わったり、わからない事があれば直ぐにカームに聞く事。


それとは別に、赤い実を六袋で鹿二頭と書いて渡した。これで多分平気だろう。

そう思ってたら、リュゼさんがお茶を持ってきてくれた。正直お茶を飲む習慣が、あったとは思わなかった。そもそもどこに竈があるんだ?

「ありがとうございます」

「いえ、お仕事の話ですから」

 確かに仕事の話だけど、なんか内容は微妙だったんだよな。ま、せっかくだから飲ませてもらうか。

「にがっ!」

 お茶やコーヒーとはまた違った次元の苦さが、口内に広がる。多分エグ味や渋味もあるんだと思う。

「ははは、飲み慣れないと苦いだろう。俺も子供の頃は嫌いだったんだ。背の低い、小さな枝を煮出すんだ」

 じーちゃんとかばーちゃんが飲んでる、センブリ茶とか目薬の木って奴を思い出した。小さい南部鉄器のヤカンみたいなので煮出す奴。けど肉ばかり食ってる種族だし、何かしら足りない栄養素でも入ってるんだと思いながら、我慢して笑顔で飲み干した。





勇者の報告


カームとコランダムから別れて十日前後


「面倒だけど城に行ってくる。カームさんが気にするなって言ってたから、適当に報告してくるよ」

「向こうがそう言ってても、何かしら恩は返すべきだろう?」

「その辺は考えて有るよ、それに出来るだけ言葉は選ぶ」

「わかった、俺も一緒に行ければ良いんだけどな」

「勇者として無理矢理・・・・誘拐された奴か、偉い奴しか直接会えないんだから仕方ないよ」

「そう自棄になるなよ、あいつも言ってただろう、何か有ったら島に来いって。気楽に……とは言えないが俺達の事も少しは頼れよな」

「そうだよ、前みたいに楽しくお酒飲もうよ」

「ありがとう、行ってくるよ」


 城に行き、魔王の事で話があると言ったら直ぐに通され、五分くらいでまた偉そうな爺さんが出てきた。

「報告を聞こう」

 姫や王様の代わりに形だけは整えてくれる。

「魔王がいると言う噂の島ですが、魔族はいましたが、魔王はいませんでした」

「……そうか、もう少し詳しく聞こうではないか」

「魔族全員に協力をしてもらい、魔王である印を探しましたが、ありませんでした。それに島は開拓され始め、人族と魔族が喧嘩する事なく、共に生活していました。指揮を取っていたのは魔族ですが、偉そうにしている素振りはなく、全員仲の良い隣人という感じでした」

「……そうか、魔族が指揮を取っているのは、気に食わないが魔王で無ければ良しとする。魔王の討伐ではなかったのだから討伐金は出せぬが良いな?」

「はい」

「では下がれ」

 そう言って爺さんは奥に引っ込もうとしたが、俺はそれを止めた。

「申し訳ありませんが、少しだけ聞いて欲しい事があります」

「なんじゃ、わしでは判断出来ない事ならば、返事は後日になるが良いか?」

「構いません」

「申してみよ」

「しばらく魔王討伐は休み、自分の腕を磨きたく思うのです。ですので、しばらく大陸を仲間と共に旅をしたいのですがよろしいでしょうか?」

「その場合、金銭面での補助は一時的に打ち切るが、良いか?」

「はい」

「では会議を行い、追って報告する」

 そう言うと今度こそ爺さんは奥に引っ込んでいった。

 そして俺は夕方の賑わっている、待ち合わせの酒場に向かった。


「まーたお姫様は出てこなかったぞ。どうしようもねぇな」

「言葉を慎め、誰が聞いてるかわからん、ロックは良いが、俺達まで飛び火したらかなわんぞ」

「本当だぜ」

「悪い悪い」

「で、どうだった?」

 全員が酒を飲む手を止め、俺の方を見ている。俺は爺さんに言われた事を、そのまま返した。


「確かに、召喚した勇者を遊ばせておくのには色々問題があるか」

「けど俺は、自分の腕を磨きたいって言ったよ。多分平気じゃないかな、多分だけど」

「けどよ、他にも勇者はいるんだし、腕を磨きたいって事は、まだ不安って取ってくれるだろ」

「そうかな? 私は数をそろえて、各地に行ってもらったり、強い魔王を倒しに行ってるんだと思う。だから、ロックみたいな新人は、出てきたばかりの魔王を倒して、強くなったら先輩勇者みたいな事をするんじゃないのかな?」

「そうだな、外交にも使われてそうだな。お偉いさんの考えはわからないけどな」

「まっ、俺達が悩むことじゃないよな。おいロック、飲むぞ!」

「あぁ、そうだな。すみません! 蜂蜜酒」

「本当そればっかりだな」

「他のは、酸っぱかったりして飲み辛いんだよ、それに俺は酒に弱いってわかったし」

「そうだよねー。麦酒なんか二杯でベロンベロンになっちゃうんだもん」

「そうそう、だから俺はチビチビ飲むの」

「で、何に乾杯するよ?」

「あー。旅に出られる事を祈って?」

「だな」

「「「「乾杯!」」」」

ss「2本目のスコップ」を、おまけとして下記のURLに乗せました。


http://ncode.syosetu.com/n4699cq/


角度は X度X分X秒となりますので、一秒でも間違いではありません。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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