第72話 家族でのんびり温泉に来た時の事 前編
適度に続けてます。
相変わらず不定期です。
かなり句読点を意識し過ぎたせいか逆に読み辛い可能性も有りますがお許しください。
俺は今、島の皆には悪いが三日ほど休みを貰っている。
一日目に三馬鹿に会ったり、ラッテに休みを取ってもらうように言って、二日目には急に休めないと思うから子供達と遊び、三日目に島の温泉に行って、前々から言われていた島の様子を見せようと思っている。
だが「予定は未定」と言うような言葉も有るのでどうなるかは分からない。
「んじゃ二日後にできれば家族を連れて戻ってくるので、その間よろしくお願いします。一応フルールさんの鉢も持っていくので、何かあれば呼んでください」
「わかった」
猫耳のおっさんは、相変わらずあんまり喋らないな。
「ただいまー」
誰も居ない、まぁ朝食が終わったくらいだからな、スズランは池のお姉さんの所にでも行って、魚と鴨に餌でもあげているんだろう。とりあえずこの鉢は日当たりの良い室内で管理だな。
『持ち出し厳禁寒さに弱い』っと。
張り紙しておけば、冬になって雪が降ってもまぁ平気だろう。そう考えるとあの島って、雪降らないし冬もあまり寒く無いのかな?
まぁ、誰かが帰って来るまでダラダラするかね。……麦茶のストックが無いな。
俺は小麦をフライパンで乾煎りして、香ばしい香りがして来たら粗熱を取り、いつも保存してある袋に、煎った小麦を入れているところでスズランが帰って来た。
「おかえりなさい」
「ただいま、変わった事はあったかい?」
「ない」
「なら良いや、お茶淹れるけどどうする?」
「カームと一緒で良いよ」
「なら麦茶だね」
麦茶を淹れ、スズランの前に置き、椅子に座るとスズランは口を開き毎度の如く鋭いところを突いて来る。
「何かソワソワしてる。何か言いたい事があるの?」
「まぁ、はい……。そろそろ島の方も落ち着いたし、二日後当たりに日帰りで島に来てみないか?」
「ラッテが、休みを取れたら私は構わない」
「じゃぁ、そう言う予定で良いね。子供達もペルナ君達と約束入れないように言っておかないとな」
その後は、しばらくのんびりとした時間を過ごした。
「あ」
「ん?」
「村長が、帰ってきたら呼んで欲しいって言ってたの言うの忘れてた」
「そうか、お茶飲んでるしもうちょっとのんびりしてから行くさ。いや、かなりのんびりしてからかな」
そう言うとスズランの口角が少し上がっているので、多分笑っているんだろうが、あまり表情に出してくれないのが残念だ、笑えば可愛いのに。小首を傾げながら何かをお願いして来る時は断れないくらい可愛いので、それで相殺でいいか。
その後二杯目の麦茶をゆっくりと飲み干し、ゆっくりと一息ついた。
「んじゃ行ってくるよ」
「あまりこき使われるようなら、帰って来ても良いよ」
「仮にでも村長に相談されてるんだからさ、一応村の為って思って頑張るさ」
「お昼には戻って来てね」
「無理矢理帰って来るさ」
村長は神出鬼没なので、村の広場で思い切り、
「そんちょーー!」
と叫ぶ。そうするとしばらくして、正面の物陰から村長が出て来た。
「おはようございます。スズランから聞きましたがどのような用件で?」
「うむ、あまり深刻な問題ではないのじゃが。村人も増え、そろそろ人数の把握や、顔を見ても名前が出てこない者も多くなってきてのう」
「なら一度集まって貰って、住んでいる家の場所と、家族の人数と性別を書いてもらえば良いんじゃないですかね?」
「それはしておったのじゃが。数が多くてな」
「なら区画を作って、書類も別ければ良いんですよ。たとえばこの広場を村の中心として、十字に区切る。これでもう四個に別れました、さらに細かく分けるなら分けても良いですが、細かいと面倒なのでそれをさっき分けたのを九個に分けましょう。そうすれば、この隅が一の一って言うとここになります」
そういいながら地面に棒で簡単な絵を描き、簡単な説明を続ける。
「そうですね、俺の家なら三の五辺りですかね?」
エジリンに向かう道に向かって左手側で、畑を挟んだ辺りにある、村で纏めて作った家なので、意外に見つけやすい位置にあったりする。
「ちなみにこの櫓は村はずれなので一の四か、一の七辺りでしょうか? 全部で三十六個の箱を作って、管理すればいいのでは?」
「今までのを全部纏めてあるから大変じゃろうが、やらせてみよう。いやー助かったよカーム君」
「いえ、町とかでも良くやっている方法なので」
「そうかそうか、やっぱり町に出稼ぎに行ってた者は違うのう」
そう言って村長は歩いてまたどこかに行ってしまった。長引かなかったし、連れ回されなくて済んで良かった。
家に帰ると、スズランが外で、少し早目の昼食準備をしていた。
「おかえり」
「ただいま、何か手伝うかい?」
ダンッ! と鶏の首に肉厚の包丁を叩きつけた。
「鶏の血抜きして羽毟って。私は中で準備してるから」
「……はい」
いつ見ても慣れないな、生きたまま首を叩き斬るとか。あーあ、あんなに血が飛び散っちゃって。そう言いながらも足を持ち血抜きをしてしっかり羽を毟る、羽の根元を残すとスズランに怒られるので、大胆かつ慎重にだ。そして家の中まで持って行く。
「毟り方。上手になったね」
そう言って、俺から鶏を受け取り、スズランは内臓の処理をしていく。
「味付けはカームの方が上手だからお願い」
そう言ってスズランはまな板の前を開け渡してくる。仕方がないので鶏肉を茹で、ササミを取り、細かくほぐして茹で汁の灰汁をとってササミを戻し、キャベツと玉ねぎを入れて、塩コショウで味を調え、最後に溶き卵を入れて軽く混ぜ一品完成。
その後に残った鶏肉を適当な大きさに切り、塩コショウで炒め。人参と玉ねぎとニンニクをみじん切りにして、キャベツを適当に千切り、ドライトマトのオイル漬けを入れ。キャベツの水分だけで蒸し焼きにして、別の鍋で茹でていたパスタを絡め出来上がり。
料理名? そのままです。料理はフィーリングです!
春キャベツと玉ねぎのササミ入り鳥出汁スープと、春キャベツのパスタです。
子供達もペルナ君達と遊んでいたが、昼飯の為に帰って来た。家に帰ってきたら俺がいたので驚いている。
「お父さんおかえりなさい」「パパおかえり」
「はい、ただいま」
その後にラッテが帰って来る。
「あーカーム君だー、おかえりー」
「はい、ただいまー」
「今日のご飯はカーム君が作ったんだねー。おいしそー」
そして和やかな昼食が終わり、俺は話を切り出す。
「少し相談があるんだが良いかい? 二日後に皆で島に行こうと思うんだけど、どうかな? ラッテは牧場のおばちゃんの所に仕事に出ているから、急に休めないと思って二日後って言ったんだけど」
「わかったー。なんとか休みを取って来るよー」
「リリーもミエルもその日は遊びの約束を入れちゃ駄目だぞ」
「はーい」
「けど明日は修行してよ」
「もしラッテお母さんが、明日休みがもらえたら明後日には島に行っちゃうから駄目かな」
「じゃぁ夕方、まだ明るいうちに!」
「ペルナ君達のお父さん達と飲むから無理かな、ごめんね」
「むー」
俺は剥れているリリーの頭を撫でて、洗い物をした。
夕方になり、俺は酒場に向かった。よく見ると酒の種類も増えており、最近では前に言った、蒸留酒に果物を漬ける果実酒も置いてある。
「うーっす」
「おう、こっちだこっち」
ヴルストが手招きをして俺を呼んでいるので、そこのテーブルに向かった。
「マスター、ベリル酒と水」
無難に、地元の酒の出来具合を確かめることにした。
「んじゃとりあえず乾杯」
「「「乾杯」」」
コンッとカップをぶつけ、舌の上で酒を転がす。調合の類をまったくしていない、樽から直接注いだ酒だ。舌に残る刺すような痛みと強烈な香がする。俺は少しずつ加水して、ちょうど良い味と香りを殺さないギリギリのところまで加減する。こんなもんか……と思い、皆の会話に参加する。
「魔王業ってどうなんだ?」
「全然儲からない、まだ村で働いてた方が金になるよ」
「そうなの?」
「前任の魔王みたいに、人族の奴隷を酷使して、使い潰す様な扱いを続けてれば別だけどね」
「もちろんしてないんだよね?」
「してないさ、むしろ『前に住んでた村より腹いっぱい食えるし、野犬や狼、盗賊の心配がないから安心して眠れる』って言われてるくらいさ。島には家くらいしかなくてさ、私財で食料や寝具を買い与え、定期的に休みを与えて開墾の手伝いをして、賊を捕らえて町に運んで賞金をもらっても、それはほとんど生活環境を整える食料や道具、畑に蒔く種なんかに消えた。それと、生きるのに必要のない酒も、娯楽が少ないから買ってきた。十日ぐらい前に、町から医者と人族の教会関係者を見つけてきたんだよ。今まで大きな怪我がなくて本当に良かったよ」
「人族の教会って言うのは?」
「人族は神を信じ、それを崇めてお祈りをする、そうすれば救われる。そういう思いが強いみたいなんだ。だからその教会にいた人族も島に連れてきたんだよ。物じゃないから買うって訳にも行かないし、だから交渉して、色々手を回し、手助けをして島に来てもらった。まぁ、それでもお金は結構使っちゃったけどね」
「なんで?」
今度はシュペックが聞いてきた。シュペックはただ単に興味があるから聞いてるって感じだ。
「医者は借金があったから、俺が立て替えて恩を売った。シスターは教会に寄付をして、来てもらった。孤児院もやってたから、そっちにも寄付をしてついでに恩も売っておいたよ。あー、シスターって言うのは教会で働く女の人、男が神父」
「へぇー、なんかカームらしいね、いろんな意味で」
「人族の教会は大変だよ、『魔族は人族より劣る、下賎な生き物だ』って教えが強いから。恩は、神父に少し多めに寄付をして、孤児院にも寄付をして、シスターの印象も良くしてってな感じだね。魔王って言っちゃうと絶対に付いて来てくれないからさ、もちろんただの良い魔族を演じて島に来てもらったよ、まぁアッサリばれたけどな。買ってきた荷物を船から降ろしてるときに『魔王さん』って呼ばれてね、まぁ遅かれ早かればれるんだし、気にはしてなかったけどね」
「その、なんて言うか。大変なんだな」
「うんうん」
「俺が遠回りしてるだけだよ。最前線の砦に現れた魔王は部下と仲良くやってたし、その領地を任された貴族とも仲が良かった。俺は色々気を使って信頼を積み重ねているんだよね」
「いや、そりゃーアレだぞ? カームは奴隷の人族を与えられて。その最前線にいた魔王の部下は魔族で、俺達みたいに気の会う仲間だったかもしれねぇぞ?」
「あーそうだったな……。俺は魔王になった時点から、周りと立ってる位置が違うんだな畜生。勇者に討伐されないように気を遣って、事を荒立てないようにしてたからなー。あ゛ークソッ! あの領地はずれじゃねぇかよ! 他に比べたらハードモードじゃねぇかよ!」
俺は叫びながら一気に酒を煽り、お代わりを頼んだ。
「ま、まぁ。カームは頭も回るし、きっと上手くやれるさ、多分」
「そうだよ、すごく優しいからあの狼も懐いてるんだよ。動物は素直だよ」
「そうだな。きっと心が疲れるんだろ、奢ってやるから飲めよ、な?」
「・・・ありがとう、愚痴ったら少しは楽になった気がする」
「はーどもーどって何?」
「わからない」
「知るかよ、たまに変な事を昔から言ってただろ、気にすんな」
「コソコソ喋るなら、俺に聞こえないように頼むよ……マジで……」
その後、適当に雑談しながら強い酒を飲むが、毒耐性のせいであまり酔う事もできずに、結局三人の面倒を見る事になった。
「ひゃっぱりやっぱり、まほうにになるひゃつなる奴は、酒もちゅよひ強いんだなぁ」
「うんうん」
「そーだねー」
「ほらお前達。もう帰るぞ、そうしないと俺が皆の嫁に怒られるんだから」
「カームは平気ですー、この村でも信頼が厚いから」
こいつら夫婦そろって酒に弱くて、酒が入ると、がっかりイケメンと、がっかり美人になるな。
「んじゃマスター、迷惑かけてすいませんでした」
「いやいや、カーム君には色々為に成る話を聞いてるからね、少しくらいは目をつぶるさ。それにこの蒸留酒に、林檎やレモンを漬けたお酒は女性にも人気でね。エジリンからも買い付けが来るんだよ」
「そうでしたか、んじゃご馳走様でした」
マスターにお礼を言い、三馬鹿を叩き起こし、水を飲ませ自力で帰らせた。
「おかえりー、明日から二日休みをもぎ取ってきましたー」
家に帰るとラッテが出迎えてくれて、休みが取れた報告をしてくれた。ドアの前で腰に両手を当ててドヤ顔で。
「おー、んじゃ明日から行けるな。スズランと子供達は?」
ドヤ顔は取りあえずスルーの方向で。
「仲良くお風呂ー、ってな訳で一緒に入ろー」
「いや、子供達の前では恥ずかしいからイチャイチャしたくないし。それに明日全員で入れるところに行くから」
「ほー、それはすごいですなー。誰かに見られたり、他の人とか入って来ない?」
「その辺は大丈夫。だってまだそこまで開拓してないし。あー、そう言えばハーピー族が近くに住んでるな、しかも良く入ってるみたいだし」
「あの少し頭が残念な種族かー、なら平気か」
「いやいやいや、事実だけどそんな事言ったら駄目だからね?」
「わかってますよー、じゃー準備でもしますかー。何用意すればいーの?」
「とりあえずお風呂セットくらいかな? 泊まるなら寝具類とか必要だね、面倒だから夜には戻って来た方が良いかも」
「そっか、なら替えの下着だね」
「そうだね」
しばらくして皆が風呂から出たので、先に入らせてもらおうとしたらラッテが乱入して来た。
「平気平気、普通に入るだけだからさ」
そう言って入って来たが、にひひーと、気持ち悪い笑顔を作ってにじり寄って来たので、デコピンをして黙らせた。
それ以上は特に何もなく、一緒にくっ付いて風呂に入るだけだった。
閑話ですら無い会話
「カームって真面目だけど時々感情が爆発するよね」
「そうだな。時々酒に誘ってやろうぜ、なんだかんだ言って溜めこむ奴だし」
「そうだね、そうしたほうが良いかもね」




