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魔王になったら領地が無人島だった  作者: 昼寝する亡霊
3章 無人島編

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76/324

第69話 人族側の大陸へ買い出しと勧誘に行った時の事 中編

細々と続けてます。

相変わらず不定期です。


この話で50万文字を越えました。御付き合い頂いた皆様、ありがとうございます。


アクセス数を覗いたら何故か1万を超えていたのでランキングを見たら日刊ランキングで22時で241位に居ました。

初のランキング入りで執筆意欲が上がります

目に見えるとやっぱり嬉しいですね。

ありがとうございます

「町の様子を知るのにはまず市場から」

 そんな言葉をどこかで聞いた事がある。なので市場通りを歩きながら、この町のギルド支店と貧困層、下級区、スラム。どれでも良いから聞きながら歩く事にする。

「そこの魔族のあんちゃん! 珍しい魚買わないか?」

「おう、なんか肌が黒い兄ちゃん。新鮮なイカ焼き買わないかい?」

「あら、珍しい感じの魔族さん、旬の魚だよ」

 通りの真ん中を歩き、キョロキョロ左右を見て歩いてるから良く声を掛けられ、勇者が持ち込んだ文化の、たこ焼き屋を発見したので一つ注文して、色々な場所を聞いた。

「そうねぇ、下級区はこの道をどこまでもまっすぐ行くと、大きな十字路があるんだけど、ソコを右手に曲がると下級区があるよ。迷ったら町を出る門があるんだけど、それを背中にして、左手を壁にくっ付けながら歩けば確実だよ。ギルドはその十字路の先さ。看板が掛かってるからすぐわかるよ。自警団の詰所はその辺にもあるし門にもある、港にもあったはずだけどねぇ」

「ありがとーおばちゃん、おばちゃん優しいからもう一個ちょうだい」

「あら、ありがとよ。はいよ」

 んー美味いな。このソースのレシピを知りたい。なんか色々混ぜて作ってるのは知ってるけど、俺はマヨネーズとそれを使ったタルタルソースくらいしか知らないんだよなぁ。トマトケチャップとかトマト茹でて潰して塩とか色々混ぜてるような気もするんだけど良くわからない。まぁタコのぷりぷり感を味わったし良しとしよう。

 鍛冶師にあんな感じで丸い窪みのある鉄板を作ってもらったんだろうか? まぁ、探すだけ探そう。あと市場はすごく賑わってて、町も多分賑わってると思うよ。

 たこ焼きに気を取られてて、良く観察できなかったけど。

 俺は言われた通り道を進み、初めての町でもわかるくらいの大きな十字路まっすぐ進み、自警団の詰所を目指す。

 俺は門の裏にある小さなドアをノックした。

「すみません、少し相談があるんですが」

 そう言うと、中から真面目そうな鎧を着た男が顔を出した。

「どのような相談でしょうか? とりあえず中にお入りください」

 鎧を着た男は、ドアを開け中に招き入れてくれる。

 そして、さらに奥の取調室みたいな小部屋に案内され、お茶を出され会話が始まった。

「で、どのようなご相談で?」

「海賊を大量に捕まえました。どのように扱って良いのかわからないので相談に来たのですが、どうすれば良いのでしょうか?」

「そうですね……。どの程度の海賊で、どのくらいの人数がいるのかわかりませんが、犯罪者と言う事でこちらで預からせていただきます。そして犯罪奴隷にしますが、一般人では奴隷の売買は禁止されていますので、こちらの方で金一封と言う事で、金銭をお渡ししております。その場合資格がない代わりに、取引を代行すると言う形ですので、引き取る場合は八割と言う事になってしまうのですが、よろしいでしょうか?」

「わかりました、それで大丈夫です。船長が賞金持ちと言う事なのです、その当たりの対応は? やはり八割ですか?」

「やはりこちらの管轄となっておりますので、そちらも引き渡しの方をお願いします。ですが賞金首ですので十割全額出ます」

「わかりました。どの時間が都合がよろしいでしょうか?」

「そうですね……、太陽が沈む少しまえであれば、色々な業務が片付くので、太陽が沈みきる三個前ですかね?」

 十六時前後だな。

「解りました、そして引き渡しは? まだ船に閉じ込めているんですよ」

「港の詰所に連絡を入れて置きますので、その時刻辺りに港の詰所に顔を出してください。貴方の特徴と訪問理由は話しておきます。それとお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「カームと言います。貴重な時間を割いていただきありがとうございました」

「いえ、海賊拿捕のご協力感謝します」

 丁寧にあいさつをされ、入口まで案内され解放された。

 なんか教育が行き届いてるな。こりゃすんなり済みそうだ。


 そして俺は、大通りを戻りギルドに向かった。

 俺は看板を見逃す事もなく、ギルド支店を見つけ、綺麗な女性しかいない受付に座わった。

「本日はどのようなご用件でしょうか?」

「あそこの掲示板を利用させてもらいたいんですが、値段はどのくらいかかりますかね?」

 そう言って、入口正面の大きな板を親指で指差した。

「はい。掲示板の利用は三十日で銀貨一枚となっております」

「わかりました。掲示板に紙を貼る場合の大きさはどの位の大きさが良いんでしょうか?」

「こちらで用意させていただきますが、代筆は必要でしょうか?」

「大陸共通語なら書けますが……」

 受付の女性は少しだけ考えながら申し訳なさそうに提案してくれた。

「よろしければ料金は倍になりますが、人族語で代筆した物を隣に張ると言うのはどうでしょうか? 代筆代もいただきますが」

「構いません、やっぱり人族語の使用率の方が多いんですか?」

「申し訳ありません、この大陸はどうしても人族の方が多いものでして」

たしかに、港町で魔族と交流も有るけど人族が支配してる大陸だからな。

「ではこちらの用紙をお使いあちらで作成して下さい、インクとペンもございますので」

 受付の女性に綺麗に揃えられた紙を渡された。

「ありがとうございます」

 俺は筆記用具一式を持って席を立った。


 んーどうしようかな。まぁどうにかしよう。

・この町から約六日離れた島での技術者募集。圧倒的に大工や石工、鍛冶師が足りません。

・島民の人数の都合上金銭のやり取りはまだありませんが、給料の支給あり。金額は要相談。家族がいる場合は前金で渡します。

・人数上限は十名。数が多く集まった場合面接あり。この紙を貼った日から三十日後の昼に、このギルド支部にお集まりください。

・独立したい方。親方とソリが合わない方。俺はこんなところで燻ってる訳にはいかない! そんな方を募集しています。

・代表者:紺色の肌のカーム


 少しブラックっぽいか? まぁいいか、提出しようか。

「こんな感じです」

 先ほどの受付の女性に紙を渡すと、軽く目を通している。

「問題はないですね。ですがこの六日離れた島と言うのが気になりますが……」

「あ、それですか? その離島の開発を任されたんですが、人族や魔族だけ預けられて、『がんばって』と言う感じで突き放されたので、こちらでこのように動くしかないんですよ」

「そうでしたか。では代筆も行いますので、お値段が大銅貨一枚上乗せとなりますがよろしいでしょうか?」

「えぇ、構いません。宜しくお願いします」

 そう言って俺は、リュックから銀貨を二枚と、大銅貨を一枚出してカウンターに置いた。

「確かにいただきました、では代筆させていただきます」

 そう言うとスラスラと書き写し、インクが渇くのを確認して入口正面の掲示板に紙をピンで止めていく。

「では、ご利用は三十日と言う事でお受けしましたので、私はコレで失礼します」

「ありがとうございました」

 俺はギルドを出て、大通りの十字路を左に曲がり、下級層を目指した。


 下級層に着くと独特な空気が漂い、路地にはやる気のない目で一点を見つめながら座り込んでいる老人や、酒を飲んでいる若者もいる。

 んー下級層向けの雇用がないのか? それともただ単に働いてないだけなのかわからんな。

「ねーねーちょっといいかい?」

 道路で、なんの遊びかわからないが遊んでいる子供達に声をかける。

「きょうつうご、ちょっと、わかない」

 リーダーっぽい子供が返してきた。

『おれ、ひとぞくご、すこしわかる』

『なんだ魔族のにーちゃん、少しは喋れるんじゃん。で、俺達に何か用?』

『どこ、きょうかい?』

『あー教会ね。あの屋根が変に尖ってる所だよ』

『ありがとう、なにか、かって』

 そう言って、銅貨を全員に五枚ずつ渡した。

『うおー、あんちゃんありがとー』

 そう言って手を振りながら走って行ったので、振り返した。

『甘いもん買おうぜー』

 そんな事を言っている。子供は無邪気で良いねー。

 そう言って俺は、指を指された建物向かった。


 教会に着くと、色々な場所に補修の跡があり、お金に余裕ができたら修理の繰り返しをしてるような感じの教会だ。流石下級区。

 裏からは子供の声が聞こえて来る。孤児院もやってるのか?

 奥に開く、大きな観音開きのような扉を開けると、油を指して置けよと言うような、ギギギギギと言う音がした、ドアノッカー要らねぇな。

 そうして中に入ると、シスターが出迎えてくれた。

「こんにちは。珍しいですね、魔族の方が人族の教会なんて。ですが我々の神は偉大です、たとえ魔族と仲が悪くても、教会に来た者は神も認めてくれるでしょう」

 駄目だ、このシスターさん完璧に考えが宗教家だ。

「どのような用事でしょうか? お祈りですか?」

 そう言って正面にある、簡素な作りの神の像を見たが、夢に出て来る神と全然違い、筋肉隆々でとてもたくましい体つきで剣と盾を持っている。

 どこの荒神だよ。私の像を見ても噴き出さないで下さいって言うのも頷ける。

「いえ、相談があるのですが」

「では懺悔室をお使いください」

 シスターが柔らかい笑顔で懺悔室に俺を案内し、シスターが離れて行った。

「懺悔室ねー、前世じゃ縁が全くなかったけど、こんな感じなんかね。物凄く狭い箱じゃん」

 そんな事を呟いてしまった。


 しばらくすると扉が開き、向かい側に誰かが入って来た音がした。

「迷える方よ、今日はどのような事で相談があるのですか?」

 声質的に初老の男性って感じかな? さっきのシスターが入ってきたら、ほぼ意味がなかった気がするけどね。

「そうですね。正直(・・)に話しますが、私は急に離島の開発を任され、部下を渡されただけで『あとはお願い』と言った感じで放り出されました。その部下は魔族もいますが人族が多く、話を聞く限り、人族はとても信仰深く神に祈る場所があれば心が休まると思い、その島にも小さくても良いので教会を誘致できればと考えております。聞いた話しでは、どんな小さな村にも1つは教会があると言う話でした。ですので島に見習いでも良いので、神父様か修道女様がいれば人族の幸せになると思うのです」

 それらしい事言っとけば平気だろ。

「貴方は魔族でありながら、人族の事を良く考え素晴らしい行動をしていると、神も見ている事でしょう」

「誘致となりますと多少の献金が必要となります。これは王都の本部に送ったり、この教会の修繕費や孤児への炊き出しに使われますので、どうかお気持ちでも良いので納金下さいますようお願いします」

 んー嘘くさい。ってか本当に良いのかよコレで。

「わかりました。学もなく、魔族である私ですが、親切丁寧にお教えいただき誠にありがとうございます。お気持ちとなればそれなりの額を納金させていただきます。ですがどのような手順で来て頂けるのでしょうか?」

 情報は大切だからな、聞いとかないと本当に厄介な事になる。

「火急ならば納金後すぐにでも手配いたします。元々体一つと、小さなバッグで旅をする者もいますので、手順は簡単なんですよ。場所と村の名前を書いていただくだけです。後は迎えに来て頂ければ、安全に確実にそこまでご同行できますが、どうしても無理と言う場合は、書いていただいた書類を見ながらそこまでお伺いいたします」

 へぇ、そう言うもんなのか。けど相場がわらんな。金貨一枚でいいか? けどシャチが金貨五枚言ってたしな。

「ではお気持ちと言う形で」

 そう言い、リュックから金貨をけちけちせず一枚取り出し、手だけ入る隙間に置いて押し出した。

「ッ! た、た、たしかにお気持ちは受け取りました。か、確実に派遣させましょう」

 あれ? 多かったか? 金銭感覚がマヒしてんなー俺。そう思ってたら一枚の紙が出て来て、場所や代表者を書く欄があったので書いた。

 村の名前ねぇ……ベリル村出身だから、親戚みたいな名前で行くか『アクアマリン』っと。勝手に決めちゃったけど良いよね? 島の海岸とか凄い綺麗だから問題無いよな? 合ってるよな?

 場所は大陸間にある、コランダムから六日目に見える島。

 代表者はカーム、種族も必要なのかよ……、魔族っと。

 献金……。大銀貨三枚でいいな。

「かけました。共通語でも平気ですよね」

 そう言って紙を返した。

「……正直に話していただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

 やけに声に緊張感があるな。

「答えられる範囲でなら」

「この島は最近まで魔王が住み、人族を酷使して勇者に討伐された場所ですか?」

「そう聞いていますね」

「そうですか、カームさん。もしかして魔王じゃありませんか?」

「違いますよ、魔王ならこんな所来ませんし、教会の誘致なんかしませんよ」

 ボロを出さないように、必要な事を簡潔に。

「最後に、なぜ下級区の寂れた教会を選んだのでしょうか?」

「あくまで噂話ですが。王都の大層お偉い神父様は、質素な生活とは無縁で、私腹を肥やし、色欲にまみれていると。ですので、失礼ですがこのような末端の小さな教会を選びました。全部わかりやすく言った方が良いですか? こんな場所ならそう言う金の使われ方はないと思ったんです」

「そうですか……この献金の欄の事も納得いきました。お気遣いありがとうございます。では相談は終わりですので、先に出て教会内の椅子に腰かけてお待ちください」

「ありがとうございました」

 俺は懺悔室を出たが、神父が一向に出てくる気配がない。聞き手側の扉は聖堂じゃないじゃなんだな。



「アドレア、誘致の依頼が有りましたのでお仕事です」

「わかりました」

「先ほどの魔族の方が依頼主ですが、優しそうな方ですので安心して向かいなさい、そして修行をして立派な聖職者となるのです」

「……わかりました。では詳しい話を聞いて来ます」

 魔族ですか……いったい何を考えているのでしょうか?



 しばらくして、先ほど迎えてくれたシスターが話しかけてきた。

「神父様から話を伺いました。私はアドレアと言います。以後お見知りおきを」

「わかりました。自分はカームと言います」

 お互いに自己紹介をし、軽い挨拶もした。

「早速ですが日程の件でお話が。私はどのようにすればよろしいのでしょうか?」

「急ぎで悪いのですが、船でこの島に来ていますし、買い付けや色々な事もあるので二日後の朝に出航の予定です。平気でしょうか?」

「平気です。質素で堅実に生きていましたし、私物も少ないですので。衣類などはバッグに全て入りますのでご心配なく」

 そんなに堂々と言わなくても良いと思うんだけど……。私物がバッグ一つに入るって女性としてどうなんだろうか?

「そうですか、もし必要な物があれば言って頂ければ用意しますし、女性にしか準備できない物があるならばお金もお渡ししますが?」

「……そうですね。肌着が少ないので不安はそれくらいでしょうか? 修道服も私は位が低いので、このような刺繍も特にない簡素な物です。なのでこの教会に予備は沢山ありますので、余計に持っても小さなバッグ一つくらいでしょうか?」

「そうですか、では肌着の方は自分では無理ですので、お金を渡すのでそちらで都合していただいて構いませんか?」

「わかりました。書類を見る限り船で六日と言う事ですので、少し多めに用意させていただきます。肌着の方ですがこのような身ですので、派手な物は無理なので安く済みます。大銅貨二枚で1組ほど買える場所を知っていますので、三組ほど買える金額をいただければ準備は完了できます」

「そうですか、ではお金をお渡ししておきますので、二日後の朝に港でお会いしましょう」

 そう言って俺は銀貨を二枚渡し、孤児院への寄付金を入れる場所に大銀貨を二枚入れて置いた。

 後ろから、

「あの、多いです!」

 と声が聞こえたが無視した。

「後は医者か」

 また聞くかな。


 下級区のさらに奥のかなり臭い、スラム化していそうな場所に来ている。こんな場所で医者にかかる奴はいるのか? 一人くらいいなくなっても問題無いだろう。

 しばらく歩くが、睨みつけるような目で俺を見ている奴等が多い。無視して歩くが絡まれてしまった。

「おい、糞みてぇな魔族がこんな所に何の用だ? ここを通りたければ背中の荷物をおい――」

 俺は最後まで言わせず、顎に掌打を食らわせ一発で黙らせた。襲うなら脅さずに無言で全員で襲えば効率が良いのに。

 一緒にいた仲間が一斉に、ないよりはマシな感じの刃物を出し、襲うタイミングを見計らっているが、気にせず実用性があまりないと個人的に思ってる【黒曜石のハルバード】を作り出し、石突を地面に突き刺した。何かする気はないが、威嚇は大切だよな。

「かかって来るなら容赦はしない。それと、俺の質問に答えたらそれなりの金は払う」

 そう言ってポケットから銀貨を一枚チラつかせる。

「へへ、旦那。何でも聞いて下さいよ……」

 見事な手の平返しだな。まぁ気にしないけど。

「この辺で人があまり入ってない、いなくなっても良い医者を探している」

「やばい仕事っすか?」

 男の顔が引きつっている。なんでそっちの方向に解釈するんだろうか? 魔族ってそんなに怖いの?

「人が入ってない病院ならなくてもいいだろ? 人材として引き抜くだけだ」

「いや、それはどうっすかね? 人は入ってなくても必要とされてるかもしれないっすよ?」

「人が来なくて食って行けない。医者を辞めて去って行くのと何が違うんだ? 言っちゃ悪いがこの辺の下級区……ほとんどスラム化してる場所の人族って、病気になっても医者にかかるのか?」

「いや、確かにそうっすけど……。かかる奴がいるかもしれねぇっすよ?」

 そういうやり取りをしながら、病院に案内してもらった。

「ここっす!」

「ありがとう、んじゃこれ約束の報酬。皆で分けろよ、酒の一杯くらいは飲めるだろう」

 銀貨を渡し、帰ってもらう事にした。

「よっしゃ! 酒飲みに行くぞ!」

 さっきの子供達と同じ反応なんだけど……。大きい子供だなぁー。


「こんにちはー、誰かいませんかねー?」

 俺はドアを開けても誰もいなかったので、大声で呼ぶ事にした。

 しばらくして、奥のほうから酒瓶を持った、髪もボサボサで無精ヒゲの男が奥からやってきた。医者なのに清潔感のかけらもない。

「客か?」

 息も酒臭い。正常な判断ができるかわからないが、一応交渉はしてみよう。

「客ではないですね」

「なら帰れ」

 そう言って奥に引っ込もうとしたので、急いで次の言葉を告げた。

「貴方を引き抜きに来ました」

「引き抜きだぁ? 話だけは聞いてやる」

 少しは興味があるらしく、食いついてくれた。


「ってな訳で医者が必要なんです。失礼ですがここを選ばせてもらった理由は、その辺のチンピラに聞いて、人が入ってるのを見ていないって理由です」

「ッチ……、チンピラに言われちゃお終いだな。明日の朝にもう一回来てくれ。それまでに考えておく」

「そうですか。早ければ早いほど助かります。もし駄目ならまた探さないといけないので。島にいる人数を考えたら、医者は二人も要らないので、今日中にもう一人に声かけたくないんですよ、かぶっちゃうと申し訳ないんで」

「そうかよ。んじゃ帰れ。酒抜いて良く考えるからよ」

「わかりました。失礼ですがご家族は?」

「いるように見えるか?」

「いたら給金として、しばらく生活できるお金を渡そうと思っていたんですが」

「親はもうとっくに死んじまったし嫁もいねぇ。嫁もいねぇからガキもいねぇ。わかったか」

「申し訳ありませんでした」

「ふん! もうねぇな、なら帰れ」

「失礼します」

 んーどうなるか判らないけど、一応信じておくか。さて、かなり遅い昼食でも取って、港の詰所にでも行くかな。


 船の前で待つか、詰所の場所を聞くかだけど。どうしたもんかな……。そう思いつつ港を歩いて船まで向かっていたら、皮鎧を着た兵士に声をかけられた。

「海賊の引渡しを希望しているカームさんですね?」

「はい、そうですが」

「門の詰所より話は伺っています、船まで案内お願いできますか?」

「わかりました。こちらです」

 自分達が乗って来た船の前に案内し、

「この船です」

 なんか似たような帆船ばっかりだから、元海賊船って多分ばれないだろう。

「わかりました。応援を呼んできますので少々お待ちください」

 兵士は走ってどこかに行ってしまった。


「ただいまー」

「あれ? 魔王さんどうしたんすか?」

「今からシャチ一味を自警団だか兵士が引き取りに来ます。だから『魔王さん』は止めてください。『カームさん』、はい!」

「え? あ。かーむさん」

「ちょっと硬いです!」

「カームさん」

「んーまぁいいかな。で、なんでこんなにいるんですか?」

「女買いたいんっすけどこの時間じゃ無理なんで、夜組はお留守番兼船の見張りっすね。他は酒組っす」

「あー島の酒も切れてたからなー。まぁ、明日買いに行くからその辺は心配しないで下さい」

「カームさんはいますか?」

「はーい」

 早速兵士が来たみたいだ。

「船に上げさせてもらってもよろしいですか?」

 俺は周りにアイコンタクトを送った。そうしたらコクコクと首を縦に振ったので返事をした。

「どうぞ」


「では……数名をその倉庫まで、同行させていただいてもよろしいでしょうか?」

「かまいませんよ、こちらです」

 俺は兵士を倉庫まで案内し、中の海賊達に声をかけた。

「いいか、今からお前等を引き渡す。暴れるんじゃないぞ? 兵士さん達もいるからな? 変に暴れると大変な事になるぞ?」

 カチャリと鍵を回し、ドアを開け海賊達をを引き渡した。引き渡す時は、多少暴れたが、基本大人しかった。

 

「コレで全員でしょうか?」

「はい。船に乗ってたのはこれだけです」

「にしても……よくもまぁ全員無傷で捉えましたね。何故か(・・・)喋れませんが」

「そうですね、襲いに来た時に調子でも悪かったんでしょう。全員無傷で捉える事が出来ましたよ」

「質問に答えて欲しいのですが、何故喋れないんですか?」

「うるさかったので首を切って傷を塞いだからです。何か不都合でもありますか?」

「少しだけありますが……まぁ良いでしょう。騒がれないだけマシです。あと、なんでシャチがあんな縛られ方してるんでしょうか?」

「頭に来てたので、辱める為です」

「はぁ……。そうですか」

 随分深いため息だったな。

「確かに人相書きと一致していますし、海賊旗も本物みたいですので信じましょう。シャチの賞金が金貨五枚。その部下が四十三人で、犯罪奴隷として一人大銀貨1枚で八割ですから」

「金貨八、大銀貨四銀貨四ですね、意外に犯罪奴隷って安いんですね……。賞金稼ぎも大物狙いじゃないと成り立たないな。なるつもりないけど」

「……計算速いですね。しかも算盤も使わずに」

「それほどでもないですよ」

 大銀貨一枚を銀貨十枚として八割で銀貨八枚になる。それが四十三人、銀貨四百三十枚引く八十六枚で三百四十四枚。小学生の中学年でも出来る問題だ。

 後は三桁目を金貨に、二桁目を大銀貨に、一桁目を銀貨にすれば問題ない。後は賞金の金貨を足せばすぐに出るだろうに。まぁ、教養が全体的に低いだけなんだよな。四則演算の基礎はあるっぽいけど。

「まぁ大半は炭鉱行きですからね、こいつ等は安いんですよ」

 人の命がかなり安い時代だな。まぁ自業自得と言う事で諦めてもらおう。そう思ってたら、後ろの方から目の前の兵士にゴニョゴニョと耳打ちをし、話を聞き終らせてからこちらに話しかけて来た。

「部下にも計算させてみましたが、確かに言った通りの金額でした」

「今日は流石に用意できないので、金銭の受け渡しはご勘弁ください。明日の朝までに用意しておきますので、これを持って屋台通り入口の、大きな詰所までご足労お願いします」

 けど話し方はすごく丁寧なんだよな、ふっしぎー。

「わかりました」

 俺は書類を受け取り、熟読し間違いがないかを確認し、透かしたりあらかじめ書かれていたインクの場所を指で擦ったりして、不備が無いか確認した。

「明日に伺いますね。お疲れ様でした」

「物凄く厳重に調べてましたが、過去に何かあったのでしょうか?」

「申し訳ありません。何かありたくないので確認してただけです」

「そうですか、それくらいの慎重さは必要だと思っています。では失礼します」

 今まで相手していた兵士は、

「ふぃー。すげぇ疲れた」

「カームさんって意外にすごいんっすね」

「前々からすごいって散々言ってましたよね?」

「いや、それは強さっす。今回は頭の良さと疑り深さと度胸っす」

「堂々としてれば、意外にばれないものですよ」

「料理は美味いし、強いし、頭も回って度胸もある。俺が女なら惚れてますよ」

「あーそうっすか……。今日は尻を守りながら寝るよ」

「いやいやいや言葉の綾っすよ!」

「わかってますよ。んじゃ俺は船室に戻ってますね。酒組が戻ってきたら夕食を食いに行くんで、比較的マシな奴に帰って来た事を報告させてください。まぁ物音でも気が付きますけどね」

「了解っす」


 部屋のベッドでボヘーっとのんびりしていたら、

「まほーさん魔王さんまほーさん魔王さん。かへって帰って来ましたよー」

 そんな言葉を聞いた直後にドアの前でドンッって音がしたのでドアを開けたら船員が倒れて寝ていた。

「これが一番まともねぇ……」

 そう呟きポケットに銀貨を一枚入れ、甲板に行って見ると、ある者はお互い肩を組み合い大声で歌いながら甲板を土石流で汚し、口からあふれ出しながら酒をラッパ飲みしたり、ある者は力尽き酒瓶を抱きながら寝て、ある者はマストに登り吠えていた。

「確かに一番まともだな」

 仰向けに寝てる奴の服を緩め、横向きにして吐いた物が器官に詰まって死なないようにして、とりあえず帰って来るまで死人が出ない事を祈りつつ、夕食を食べに行った。

 話しによると、魔族と人族両方平気な夜の店もあったが、とりあえず妻子がいる事を伝えても引き下がらない場合の為に、財布も持たずに出た事を伝えると汚い言葉で罵られた。

 最悪だなこのクソ○。○・・・


 まぁ、適当に入った店が美味しかったから良かったけど、帰り道に罵って来た女性を見かけまた嫌な気分になった。



閑話


修道女の規模の小さな大きな贅沢


「神父様、あの魔族の……カームさんと言いましたか? 孤児院用の寄付金に大銀貨二枚も入れて行ってくれたのですが」

「そうですか。子供達に今日はお腹いっぱい食べさせてあげなさい」

「わかりました、旅の支度もあるので少し早めに買い物に行かせていただきます。それと、旅支度用に個人的に寄付を頂いたのですがどうすればよいのでしょうか?」

「それはアドレアの為にカームさんがくれた物です。好きに使いなさい」

「わかりました、では多すぎるので半分ほど教会に寄付いたします」

「大丈夫ですよ。実を言うと誘致の為に金貨を一枚ほどいただいたんです」

 私は倒れそうになりながらも踏ん張った

「書類には大銀貨三枚とありましたが……」

「書類では大銀貨三枚ですが、気を利かせてくれただけらしいです。ですのでこの書類と書類に書いてある金額の半分を王都に送るだけです。コレで屋根の修理ができますし壁も補強できます。本来なら神に祈るところですが、今日のところは心優しい気の利く魔族のカームさんに感謝しましょう」

「そうですね。では、買い物に行ってきます」

「お気を付けて」


 むう、折角だから肌着を五組買おう。そして残りのお金で大通りに出て甘い物でも食べてみましょう。こんな自由になる大金初めてです。神父様も好きにして良いと仰っていましたし、少しくらい良いですよね?

 私、この『くれーぷ』という物が食べてみたかったんですよ。


 ふわふわで甘くて旬の果物がこんなに沢山……こんな贅沢しても良いんでしょうか?

 残りは子供達に飴でも買って帰りましょう。二日後の朝には私はこの町を出ないと行けないのですから。

 けど、同期のシスターにも何か買って帰らないと恨まれてしまいますね。あ、物を贈ると言う事をした事がありません。どうしましょう。区切り良く、この余った大銅貨五枚を分けてあげた方が良いのでしょうか?

 神様。私はどうすれば良いのでしょうか?

閑話を書いててこのシスターが可愛くなってきました。

なので作中でも少し動かしたいなーと思ってます。


スピンオフって言うんでしたっけ?そう言うのをショートストーリーで書いてみても良いかもしれませんね。

気が向いたら書いてみます。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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