第66話 たまに魔王らしい事をしたら皆に距離を置かれそうになった時の事
細々と続けてます。
相変わらず不定期です。
「おい、エドワードのクソ野郎が魔王を襲いに行って、戻って来ねぇらしいじゃねぇか。こいつは俺達があの馬鹿より名を上げる機会が来たって事じゃねぇか?」
そう言って、汚く食い散らかしたテーブルの中から葡萄酒を取り、勢いよく飲み干し自分自身のやる気を上げて行た。
「このシャチ様があのヒゲごと食い散らかしてやるぜ、行くぞ野郎共!」
「「「うぉーーー!!」」」
そう言って酒場の代金も払わず海賊たちは出て行った。
□
島内探索から一ヶ月。町建設予定地にぽつぽつと家が増え始め、色々な事があった。
畑に植えたジャガイモが青々と葉をつけ、あと一ヶ月くらいで収穫かな? と思いつつ。ファーシルからもらったフルールさんの種を植えた鉢に水をやり。
ハーピー族が送って来た兎が無事1回目の子供を産み、取ってきた蛾の繭を試しに茹でて削って綺麗にした木の棒でかき回して、糸をひっかけ丁寧に巻き取った物を一応とっておく。
灰を混ぜた水をかき混ぜて数日置いて綺麗になった上水を掬ってボウルに入れる。そこにオリーブオイルと、ハーブをかなり煮出したいい香りのするお茶を混ぜて、余分な水分を蒸発させて作った石鹸を、試しに個人的に作った。
島内が少しだけ落ち着き、鶏が産んだ卵で子供達の為にクッキーを作ったりして、リラックスした午後の時間に犬耳のオッサンが慌てて俺の家に入って来て、
「海賊だ!」
そんな事を叫んだ。
「えーまたですかー? 今クッキー作ってるんですけど行かないと不味いですよね?」
「何馬鹿な事言ってんだよ。良いから行け! 俺は人族全員を奥の広場に引っ込めるからな」
「もし何かあったら、池の近くの小川を山の方に向かって行ってください。大きな湖が有ります。そこならしばらくは安全だと思いますから、それと人族の安全を頼みます」
俺はボウルを置いて、真面目な顔でオッサンに言ってから装備一式を持って海岸に走った。
海岸に着いたら武装した元海賊が集まっていて、かなり遠いが船が1隻ほど見え、緊張した空気が当たりを漂っていた。
「船長いますか?」
「はい! ここにいます!」
「あの旗、見覚えあります?」
「はい、多分……シャチの奴だと思います」
「んー、シャチねぇ……。やっぱ凶暴なんですか?」
「はい、襲った船の荷物を片っ端から、食い散らすように奪う事からそう呼ばれ、本人もその名前を気に入っているみたいです」
「ふーん。で、さ。また船に乗りたいですか?」
「え? はい、乗りたいですけど……。陸の生活にも慣れてますし、もう無理しなくてもいいかなと思ってます。皆も同じ考えだと思いますが」
「って言ってるけどどうなの?」
「えぇ、畑仕事にも慣れましたし、野草を取ったり家を建てる手伝いにも慣れ始めてますから」
「俺もっす! 真っ当に仕事して食べる飯は最高っす。最近酒が切れてるのが残念ですけど」
「んー……」
俺は前々から考えている事を、元海賊達に言って見た。
「とりあえず船を手に入れて、買い付けとかにも行ってもらいたいなー、って考えてたんですよ。もう二度と船に乗りたくないって言うならまた沈めますけど」
「乗りたいですね。あと信用してくれてるのはとても嬉しいです」
「俺もまた乗りてぇな」
「俺もだ」
「んじゃ奪いましょうか」
「軽いっすねー、どんだけ大変だと思ってるんっすか?」
「さぁ。まぁ、死ななければ良いでしょう」
「……魔王さんだけっすよ、そう思ってるの」
「あーごめんごめん、どうにかするから。んじゃ準備でもしますか」
俺は、商船に乗っていた魔法使いから教わった魔法で声を飛ばした。
□
「野郎共、そろそろ着くがブルってる奴は居ねぇだろうな!」
「「「「おうよ!」」」」
『あーあー。聞こえてると仮定して話しますね』
「誰だ!」
『これ以上近づくなら敵とみなします。用事があるなら湾の外で停泊して、小舟でこちらまで来てください』
「魔法……か。魔王だな」
『殺して良いのは、殺される覚悟がある奴だけ。って言葉知ってます? 前に来た海賊は労働力として飼い殺してますが、これ以上島の人口が増えると食料が厳しいので、殺すか奴隷として売ってお金にしますので、覚悟しておいて下さいね。以上』
「だってよ。エドワードの奴飼い殺されてやんの! ばっかだよなぁ!」
そう言うとシャチが笑い船員も笑いだした。
「進路そのままぁ! 帰る理由は無いぞ! 逆に全員奴隷にしてやるぜ」
□
「飼い殺しって……。俺達の事そう思ってたんですか?」
「んー止まんないねぇ」
「いや答えてくださいよ、あと魔王さん軽いっすから、せめて緊張感持ちましょうよ」
「ぬ、奴等。止まらぬ積りか」
腕を胸で組んで、息をめいいっぱい吸って上半身を大きく見せた。
「もういいっす、作戦はどうなんすか?」
「君たちと同じで、船上から弓の届かない場所まで後退した後、上陸して来た奴等を迎え撃ちます。相討ち覚悟でも良いから確実に殺せ、余裕があるなら生け捕りにして、町に奴隷として売って金にする。そして島の開発費や食費に当てる。本来ならお前等もこうなっていた可能性もあったが、こちらの都合上生かしておいてやっただけだ、それを忘れるな。なぁに、作戦は簡単だ『死ぬ気で殺せ』以上だ」
いきなり言葉使いが代わって、声を落とし真剣な表情で言った事によって、普段は本当に大人しくしているだけだと思ったのだろうか。それ以上だれも怖気づいて発言しなかった。たまには威厳も見せないとね。
そして俺は、前に考えていた魔法をとりあえず実行してみた。
「とりあえず奴等には、高い山に登ってもらう事にするかねぇ」
そしてまた緩い感じで、独り言のように発言して周りの緊張を少し緩ませる。が、何を言っているのかわからないような表情で、数人がこちらを見ている。
んー気圧だからな。とりあえずあの湾内全域を指定して、こっちに被害が来たら来たでどうにかしよう。うん。
俺は空気で壁を作るイメージをして、中の空気を抜くイメージを続ける。真空ポンプで空気を抜く感じだ。
まぁ、空気の壁だしそこまでは期待していない。
□
「とりあえず警告は無視だ無視!奴等は弓の届かない所まで引っ込みやがったからな、このまま乗り上げちまえ!」
「お頭、なんか頭痛いんすけど」
「俺はなんか目が回るんっすけど」
「なに腑抜けた事言ってやがる!根性見せやがれ!」
「きもちわりぃ・・・」
どうなってやがる、確かに俺も少し息苦しいし頭が痛い、こんなの経験した時がねぇぞ。
「突っ込むぞ衝撃に備えろー」
「「おう!」」
俺達は船が砂浜に突入して、どんどん船から降りて走って島の魔王と飼い殺されてる腰抜けの海賊共を殺そうと必死に走るが、目が霞んだと思ったら目の前に砂の壁が有って、俺はその砂の壁に吐いていた。
そして目の前にスコップを持った紺色の魔族がやって来て、スコップを振り下ろすのが見え、俺が倒れてるのかとやっと気が付いた。その後気が付いたら身動きが取れなくなっていた。
□
「おーきたぞきたぞー、気をつけろよー」
さっきの一件が有るから皆黙って武器を構えているだけだった。
「おい、なんか様子がおかしいぞ」
「あぁ、ふらふらしてるし吐いてる奴等も居るし、ぶっ倒れてる奴も多い」
んー成功したみたいで良かったよ。まぁ軽い高山病に、空気が薄い状態から体が回復しきっていないのに、全力で走ればそうなるよな。
「はーい、こうなってれば簡単だね、半分は船の奪取。半分は元気な奴を刃の付いてない方で殴って黙らせて縛って。はいはい! 行動開始、いやー知識も武器だね」
そして俺は、元気良く走って来た海賊が目の前で倒れ、顔を上げたところをスコップで頭を殴り、気絶させて周った。
こっちに損害がないのが一番だね。
「船内はどーだい?」
「はい! 非戦闘員は無傷で捉えました、損傷もありません」
「りょーかい。そのまま船内の探索を続けてください」
俺は渡された紐で海賊の両手を裏で縛り、足は歩幅が50cm以内になる様に調整して縛って回った。
「船長ってどいつ?」
近くで作業していた元海賊に話しかけ、
「あそこに転がってるヤツです」
そう言って指を指したので、紐をもって歩いて行った。
俺は紐を十メートルくらいにして半分に折り、四十センチメートルくらいのところで結び首にかけ、十センチメートル置きに結び目を作り、股の間に紐を通し、首にある紐に通して思い切り引っ張り、余った紐を前に作った結び目に通し、ソレを繰り返し菱縄縛りを作っていく。途中で腕も裏で縛り、足も歩けないように足首で思い切り縛った。
「いやー、一回やってみたかったんだよねコレ。男が男にするもんじゃないけど」
超笑顔で言って見たが、誰も見ていなかった。むしろ目を合わせてくれなかった。
「全員縛った? んじゃ砂浜に座らせて、船の奥に居た女性達はとりあえず広場の方から女性呼んできて介抱させて。持って来る物は予備の服五、綺麗な布が沢山です」
そう言うと、荒々しく海賊達を扱い全員を砂浜に座らせていく。船長は更に正座させた後に紐で縛り、立てなくしてあるので運ばれるだけだ。
女性は全裸で、首枷と手枷が一緒になっている物で拘束されていた。そして、かなり色々な物で汚れていたし、傷や痣もあった。
怖がって抵抗し、魔法の影響で吐いたり倒れたりしたが、無理矢理数人で抑え込み、留め具をバールで外し、仮拠点の家に入っててもらった。
「はい。言った通り貴方達は警告を無視し、島に攻めてきました。ですので売り飛ばします。もしくは指名手配されてればそっちに引き渡します。理由は高い方が都合がいいからな。えーっとややこしいけど元船長、名前まだ聞いてなかったですよね? 何って言うんですか?」
「エドワードです」
「んじゃ町に行くと色々都合が悪いから死んだことにして、髭を綺麗に剃って髪も整えて名前は……そうだな。町では一応ベンジャミンって名乗って。多分このシャチって奴は騒いで、
「アイツモカイゾクダーアイツハマオウダー」
とか言って、こっちも巻き込んで来ると思うので声を出す部分を切っちゃうから安心して下さい。あ、しっかり押さえてて下さいね。間違ったら死んじゃいますし、お金になりませんので」
笑顔で言って元海賊がシャチを数人で抑え込み、しっかりを頭を固定させ、シャチは恐怖で顔が一気に青くなりつつ引きつっていた。
「あ、ポーション用意しておいて下さい、こいつ等の船に多分ありますよね? ベンジャミンさん達の船にもありましたし」
俺がそう言うと、元海賊が慌てて箱の蓋を片っ端から開けて、ポーション瓶を持って来た。
「ありがとうございます」
俺はがんばって笑顔を作り、黒曜石のナイフで喉仏の辺りを少し、林檎の種の部分を取る様に声帯とのその周辺の筋肉を切り取り、その辺に捨てて気管から空気が漏れない様にポーションをぶっかけて傷を塞いだ。女性を家に入れて置いて良かったわ。
「急に動くと、傷が開いてそのうち死ぬから」
シャチは口を動かすが、息が漏れるだけで声が出ない。人工声帯もないし平気だろう。本当は声帯の筋肉の一部を切っても良かったんだけど、治って騒がれてもこまるしね。
「さて……これから縛られてる皆さんにも同じ運命が待っています。遅いか早いだけですので仲間外れは作らないので安心してください。あー、副船長には聞きたい事があるので自ら名乗るか、他の海賊が副船長を売る感じで俺に教えてください」
物凄く五月蠅かったが、終始笑顔で副船長と非戦闘員以外全員を喋れ無くしてとりあえずは作業は終了した。
「あの、魔王様、こいつ等の食事はどうしましょう?」
なんか敬称が様になっちゃったよ。どうしよう。
「生きてればいいって言うなら、水に塩と砂糖を混ぜた奴飲ませてれば十日くらいなら問題ないですよ。それかパン半分と薄い塩水、気分で変えて与えてください。もしくは元同業者で情があるって言うなら、常食を与えても良いですよ。あと舌噛んで死なないように、丸めた布でも詰めて置いてください」
「は、はい」
「さて副船長……。正直に答えてくれると嬉しいんだけどさ。シャチの賞金額ってどのくらい? あとどこかに拠点があって、そこに奪ったお金とか物資とか溜めこんでるの? 正直に答えてくれると、こっちの手間が省けるから助かるんだけど。俺ってかなり拷問って嫌いなんだよね。できれば喋ってほしいなぁ」
笑顔でそう言うと、副船長は黙って下を向いているだけだった。
「んー仕方無いか。物を握る時って意外に小指が重要って知ってます? 利き腕じゃない方ってどっちの手ですかねぇ?」
今度は俺を睨みつけて来るが、喋ろうとはしない。
「んー喋らないか。これ以上は趣味じゃないからやりたくないんだけどねー、喋ってくませんかね?」
そう言ってまた黒曜石のナイフを生成する。
「仲間を喋れなくしておいて今更なんだ! 殺せ! そうすれば喋らなくて済む」
「いや、船長の賞金と金を溜めこんでる場所があるかないかで良いんですよ。何を勘違いしているのかはわかりませんけど……。まぁ、賞金は調べればすぐわかりますし、実は本当に拠点があって結構溜めこんでます?」
「じゃあ拠点はない。船長の賞金は前に立ち寄った港町で、金貨五枚だ」
「じゃあってなんだじゃあって!」
隣に立っていた元海賊が、敵の副船長の事を怒鳴っている。
「いやいや、別に良いんです。特に重要でもないですし。君達も船にお金全部乗っけてたでしょ? 船内にあったお金の量を見てもらったけど、大差無かったから無いなら無いで良いんです。いやー拷問が避けられてよかったよ、本当に苦手なんだ。んじゃ喋れ無くするから抑えて下さいね」
さらに笑顔で、周りにいた元海賊にお願いする。
「え? あ、はい! おい!」
シャチの副船長を数人で抑え込んでくれたので、処理は簡単に済んだ。
「とりあえず全員船の中に閉じ込めて置いて下さい」
「「「はい! 解りました魔王様!」」」
「――あの、少し怖がらせたのは謝ります。今まで通りでお願いします。その喋り方疲れますよね?」
「いえ、今までの俺達が無礼過ぎたのです、命を助けくれただけでも……。助けていただいただけでも十分です!」
なんで言い直したんだ? しばらくは無理か? いや、一応謝っておくか。
「あの、怖がらせて申し訳ありませんでした。いつも通り接してください」
「め、命令ですか」
「お願いです。まぁなんとなくやりすぎた感はありますけど。アレは仕方ない処置だったんですよ。魔王にやられたとか騒がれると勇者来ちゃいますよね? かといって全員殺すとお金も手に入らない。あ! ほら! 緊張感がないって言われたからそれらしくしただけですよ。やだなーもー」
「…………」
しばらく全員がアイコンタクトを取っていたが、何時ものお調子者が先陣を切ってくれた。
「そう言うならしゃーないっすね。俺はいつも通りにするっすよ」
「ありがとー」
うん。これを機に元に戻ってくれればいいや。
俺は中が見えない位置に立ち、家のドアをノックして女性が出てくるまで待つ。
この家には、海賊の慰み者になっていた女性達が、一時的に保護されている家だ。
「はい。何でしょうか」
だがドアは開かなかった。
「お湯とかあった方が良いですよね? 綺麗な布はまだ必要ですか? 服は足りますか?」
中で話し声が聞こえ、しばらくして。
「そうですね、お湯だけ頂ければ――」
「わかりました、鍋に入れて置きますので中で水を足して下さい。鍋にお湯を入れたらドアを二回ノックして家から離れるので、しばらくしたら取って下さい。あと、個人的に作ってみた石鹸もあるので使ってみてください」
「わかりました、お気遣い感謝します」
俺は調理に使う大き目の鍋一杯に熱湯を作り、ドアをノックしてから立ち去った。
「クッキー作り再開しないともったいないよな、砂糖もう少し多めにして子供には諦めてもらうか。作る気分じゃないけどね」
そう呟き、砂糖を少し足し、練り直してから釜戸にぶち込み、堅パンを削ってお湯と塩で戻した粥も作って持って行った。
またノックをして中が見えない位置に立ち、返事が来るまで待つが、返事はなかった。
「あの、胃に優しい物と甘い物を持って来たので、もしよければどうですか? 甘い物は心が落ち着きますよ?」
そう言うとドアが少しだけ空いたので、粥が入った鍋と食器ととクッキーを手渡した。
「その女性達の、心の怪我の治療は任せます。もし復讐したいって思っている気の強い女性がいたら俺に言ってください。可能な限り助力しますので」
「わかりました、そう言っている子がいたら、誰かをカームさんの所まで向かわせます」
「それと食べ終わった食器と、家の中にある調理器具は必ず手の届かない場所にお願いします。寝る時はドアを塞ぐようにして、逃げないように寝てください、間違いが起こると大変ですので」
俺は家に戻り、かなり不機嫌なまま床に座り、後ろからついて来たヴォルフが隣に座ってくれたのでとりあえず頭を撫で続けた。
□
「あの。いま手が少し見えたんですけど、魔族もいるんですか?」
女性は弱々しく問いかけた。
「あー、さっきのはこの島の魔王さんだよ」
「あ、馬鹿!」
ヒィッと短い悲鳴を上げたが近くの女性が続けた。
「平気平気、あの魔王さんはその辺の人よりかなり人が出来た魔族よ。私達も奴隷だったんだけど、真っ先に暖かい食事を用意してくれて、枷も外してくれて。けど詰めが甘くて最初は全員寝具がなかったけどね。仕事も無理をさせないし、休みもくれるし、水浴び場がなかったからどうにかして水を引いて来てくれて、男達に襲われないようにも配慮してくれたし。誰かが魔王さんの慰み者になったって話も聞かないわ」
「そうなんですか? 魔王なのに?」
「そう、料理も上手でお菓子も作るし、子供にも優しい」
そう言われ、クッキーを手渡され一口だけ齧った。
「……美味しい」
「ね。なんだかんだ言ってこの島で一番頑張ってる魔族よ、直ぐに信じろって言うのは無理だと思うけど、取りあえず安心して良いわ。ここの場所を使っても良いから、このお粥を食べてゆっくり寝て、心と体を落ち着かせてね。私は部屋の隅にいるから何かあったら声をかけてね」
「はい、ありがとうございます」
「けどさ、女の私より料理もお菓子作りも上手いのだけは未だに納得できないんだよね」
そして軽く話をして五人の女性は安心したのか寝てしまった。
□
@
「一応話しておくべきだよな」
そう呟き一人で心の整理を付けて家から出て助けられた女性達の事を夕食前に子供抜きで全員に話す事にした。
「今日助けた女性達ですが。ああいった経験をした女性は男性が怖いと思い、近づいただけでも嫌な事を鮮明に思い出して、倒れたり吐いたりします。ですので男性は声を掛けないように。声を掛けられた時だけ話すようにして下さい。あと、なるべく女性の誰かが一緒についていてあげてください。そうすれば少し安心すると思いますし、事故も防げます。これは一種の病気ですので周りの理解も必要です、ですので協力の方をお願いします。んじゃ夕飯作って食べましょうか」
夕食後オッサンズに海賊に何をしたのか質問責めにあったが、どうせいつかはバレるので正直に話しておいた。
なんで俺船を手に入れるだけなのにこんなの書いたんだろう。




