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第64話 島内を適当に冒険した時の事 4とおまけ

細々と続けてます。

相変わらず不定期です。短いのでなんか追加しておきましたので後半はなんか違和感が有るかと思います。


気が付いたらユニークが51000になっておりました。これも皆様のおかげです。

これからも頑張っていきたいので生暖かい目で見守り下さい。

 俺はいつも通り目を醒まし、食事を作っている女性達に挨拶をし、今日も島内の探索に行くのでパンを多めにお願いしますと頼み、色々世間話もしてみた。

「なにか不満とかないですか? あと不足しがちな物とか」

「そうですね。不満はないのですが、食材の種類が少なすぎますかね? 町みたいに色々出店とかがあればいいんですが……。いえ不満はないんですよ。三食満足に食べさせてもらっていますし。ただ、料理の幅が広くないので毎回似たようなものの繰り返しに」

「んーそうですね。まだジャガイモの収穫にも早いですし麦も無理ですし。海賊さん達のお金も使えるかどうかもわかりませんし、無暗に使っていいのかもわからないので、近くの港町に買い付けに行けないんですよね」

 んー、確かに食材が限られてるからなぁ。

「それはわかっていますが……あ、それとこの島って海賊さんが増えてから女性が少ないじゃないですか? 言い寄られるのは女として嬉しいんですが。その。少し目つきがぎらつき過ぎて怖いんです」

「んーそうですよね。元々比率は一対一に近かったんですから。その辺も頭に入れてなるべく早くに解決します」

「お願いします、魔王さんは色々私達に気を使ってくれているのはわかりますが、確かにそんな理由じゃまだ先になりそうですよね……」

 女性は「はぁ……」と小さなため息をつき、自分の考えている様な生活はまだ先だと思っているみたいだ。

 一応島を管理してる身としては、色々と痛いな。いっその事聞いちゃうか。

「女性にこういう事聞く事じゃないですけど、普通の女性の奴隷ってどのくらいの値段なんですか?」

「私は犯罪奴隷ではなく、税金が払えずに奴隷になったので、払えなかった税金分も加算されています。なので税金分だけ犯罪奴隷よりは高かった気はしますが、その。魔族に奴隷商ごと襲われここに来たので」

 あ、地雷ふんじゃった……、ってか地雷にかかと落としした気分だ。

「あの、その、すみませんでした。手っ取り早く女性を増やすなら移民の受け入れと、奴隷を買うかだったので、つい不躾な事を聞いてしまい申し訳ありませんでした」

「いえ、平気です。炭鉱や針仕事みたいな強制労働をさせられて、ろくに給金も貰えず、自分自身を身請けする事も出来ずに淡々と働かされたりするって考えれば、ここは天国ですから。なんと言っても一日三回ご飯が食べられますし、野犬や盗賊に怯える事も無く安心して眠れます」

 女性はそう言って笑顔を作り、朝食作りを再開する。

「慰み者にされませんし、集団で襲われる。そんな心配はここにはないですからね」

 小声で呟いたのか、態と聞こえるように言ったかはわからないが、とりあえずは治安は良い方って思い込もう。このお姉さんの闇は深いな。


「ってな訳で、まだ島の太陽に背を向けて右手側と左手側の探索が済んでいないのでもうしばらく留守にします。それじゃ怪我のないようにお願いしますね」

 朝食後にそう言って、俺は温泉に転移し島の北側に向かった。

 歩いているとかなり先に小石を落とされ、上を見るとファーシルが飛んでいて、こちらが気が付くと目の前に降りて来た。

「おーっす」

「おはよう、いつも元気だね」

「一度も風邪引いた事がないのが自慢なんだぞー」

 馬鹿は風邪ひかないと良く言うが、風邪に気が付かないほど馬鹿って事じゃない? と思ったが口には出さなかった。元気な事は良い事だ。

「そうか。干し肉食べる? 朝ごはん食べたばかり?」

「食べたけど貰う!」

 ファーシルは、俺の手から干し肉を奪いモシャモシャしている。なんだろう、魔族の子供っていうより、小動物系な動きするな。

「ほういえはは――」

「口の中の物を飲み込んでから喋ってね」

 んぐと咀嚼した干し肉を飲み込み、

「そう言えばさ、カームってなんで最近この辺歩いてるんだー?」

 と、首を九十度傾けながら続けた。少しだけ怖い。

「んー、俺ってさ。島に来てからまだこの島の全部を見てないんだよ。だから何がどこにあるか知っておかないと、何もできないんだよね」

「私が空から見ようか?」

「自分で確かめないと駄目かな? あの温かい水浴び場だって地上を歩いて発見したんだから。やっぱり歩かないとわからないよ」

「むーそっかー」

「けどさ、もしかしたらお父さん達に、こっちからお仕事を頼むかもしれないから」

「んー? 仕事って肉や魚を取って家族に飯食わせる事だろ?」

「他にも色々あるんだよ。覚えて置いて。もし仕事を頼む事があったら、お父さんの所に行くからね」

「わかった! 仕事あったら魔王が来る、だな」

「そうそう。ありがとう、じゃぁ俺はあっちの方を探索するから、もう行くね」

「魔王が仕事有ったら来る。魔王が仕事で来る。魔王が仕事」

 北を指さすが、ファーシルが確認の為に口に出す事に内容が怪しくなって行くので、羊皮紙に『もし緊急の仕事や危険な事が有ったらお知らせに伺います。魔王』と書いて、ファーシルに渡した。

「魔王から、って言えば多分平気だから」

「わかった!」

 元気に言っていたので多分平気だろう。ってか山に巣っぽいの一個しかなかったけど、他のハーピー族はどこに住んでんだ?

 後ろから「魔王から、魔王から」と聞こえたので多分間違えないだろう。中に魔王って書いてあるし。


 とりあえず俺は北側に回り込み下山し、平地を北に向かう事にした。

 こっちは西側と違って、麓からあまり歩かずに深い森が広がっていて、北西には先が霞んで遠くまで見えないが、やっぱり湖がある。見えないって事は、それだけでかいって事だよな。

 思ってた以上に水源が豊富なんだな。本当に火山島なのか怪しいが、あるならあるで使わせてもらおうじゃないか。まぁ、今回は進行方向から少しずれるので無視して森を突っ切るけどね。

 しばらく歩くが、特にこれと言ってめぼしい物はない。時々ゴブリンを見かけ、スコップで殴って黙らせる程度だ。

 近所にギルドもないし、討伐部位を持ってても仕方がないのでそのまま放置して、朽ち果ててくれるのを待つしかない。武器も粗末なその辺の木の棒だったし収穫はなし。ってかなんで魔物が現れるのかがわからない。

 ふと気になり、足を止めると木の幹になんか細長いカボチャっぽいような、アーモンドっぽいような物を見かけた。

「カ、カオ?」

 どう見ても不自然だ。こんな時期に生っているって。いや、この世界の小麦の収穫も秋だから何とも言えないけど。

 一応幹になるのは知識としてあるが、こんな木に生ったかな? まぁ群生してるし、まだ若い実もあるので、とりあえずオレンジ色の実を収穫してマチェットで半分にしたが、ジャイアントコーンみたいな物がみっしり詰まっている。

 んー種も似ているんだよな……。

 とりあえず種を指ですべて実から剥がし、弱火でフライパンを使って強制的に乾燥させ、さらにガシガシ潰して魔法で石臼を作り製粉してしてみた。この際発酵の手順はすっとばす。

 そして、どろどろとしたこげ茶色の液体が出てくる。

「んーますますココアっぽい、あと圧縮すれば油も取れるんだよな? 獣脂じゃなく植物性の油も良いな。まだオリーブとか見つけてないし」

 とりあえず製粉して出てきた液体をカップに入れ、【湯】を入れて飲んでみたがココアだ。砂糖と牛乳が欲しくなる、むしろ温めた牛乳にココアをぶち込んで砂糖たっぷりで飲みたい。

 ってか脂分を絞ってないから、すごく飲みにくい……。

「んーとりあえず持てるだけ持って帰るか。二個くらいは実のままで残りは種として背嚢に詰められるだけ詰めて帰るか」

 そう呟き収穫を開始する。

 小麦と調味料と調理器具と種で重いリュックを背負うが、もしかしたらこの先には無いかもしれないと言う考えが頭をよぎったので、詰められるだけ詰めて歩く。

 目立つオレンジ色の実がそこら中に生っているので、初めてカカオを見つけてかなり上がったテンションが、北の森の中にカカオが大量にある事を知り、テンションと気力がごっそり減った。

 それでも無理矢理頭を回し、島は楕円形で北と南は幅が狭いから今までよりは歩く距離は少ないんだよな。と、脳と体に言い聞かせ、襲ってくるゴブリン()ストレスを解消しながら歩き続ける。

「注意。ゴブリンが他の森より多い」

 独り言のように呟きながら休息中に羊皮紙に書き、辺りを見回すがため息が出るほどオレンジ色の実が幹に生っている。

 低木を処理して、このカカオが生ってない訳のわからない木を伐採して、風通しを良くして馬車が通れるように道を作り、森の近くに家を建てて……。

 頭の中で島の自然の恵みを生かしつつ、どのようにすれば効率が良いか。雇用を生み出し、利益を上げられるかなども考えていたが。まだまだかなり先なので頭の隅に考えは投げ捨て、重いリュックを背負い直して、真っ直ぐ北に向かって歩き出した。


森を抜ける頃には夕方だったが経験上時速三キロメートルで七時間歩行してもあと二時間から三時間歩けば海が見えるだろうと思い、無理やり歩行を開始する。思い込みとか、勘とか信じるなとは言わないが、無理だけはもうするまいと思いつつも、疲労が凄く溜まり膝に手を付け肩で息をする。

「ちくしょー、結局森を出るまでカカオあったじゃねぇかよ! うらぁーーー!!!」

 意味のない叫びを真っ暗な砂浜で叫び声を上げた。真っ暗な温泉に寄ってから魂の洗濯をして深夜に戻り、ベッドで寝ようとしたがご近所さんの誰かが夜のいけない男女のお遊びのせいで、洗濯した魂が物干し竿から落ちて土埃が付いた気分になった。

 確かに周りに迷惑掛けるなとは言ってあるし、森の深い場所に行くなって言ってあるけど。

 声が聞こえてるんだよ! 虫が奏でる素敵なハーモニーに混ざんな!

 魂の汚れって重曹で落ちるかな? クエン酸でも良いや、香りが良い柑橘系で俺の魂を擦ってくれ。

 壁ドンしたいが、お隣さんはとりあえず道を挟んだ向こう側かつ関係無いし、多分本人達は壁を叩いても気が付かないと思うので放心しながら寝た。が中々寝付けなかった。


 結局日の出三時間前まで楽しんでいたらしいし、島民を見つけるのは簡単だった。朝食の時に眠そうにしていたし、周りも色々気を使っているのですぐに解った。そう、まさに目の前で朝食を作っている昨日のお姉さん、貴女ですよ!

 俺がいない時にでも言い寄られたんですか? まぁ良かったですね。次からはあまり声を出さない様にしていただきたいもんだ。

 そう思いつつ俺も疲れが取れていない体で朝食を貰い、モソモソを朝食を食べ始めた。

「おいカーム、いつ戻って来たかわからなかったぜ」

 犬耳のおっさんが隣に座って話しかけてきた。

「あー真夜中ですね……」

「そうか。随分探索が早かったんだな」

「この島は、太陽に背を向けて右手と左手側は狭いからね」

 そう言って、思考が鈍い頭で地面に棒で島の全体図を書き。

「こんな感じで長細いので、無理して朝から歩けば夜には海に付くって感じです。ちなみに、今皆ここにいますね」

 湾の中の砂浜から少し離れた場所に小さい点を落とし、モソモソと食事を再開する。

「意外にデカいんだな、この島」

「寝ずに島の周りを歩き続けて五日らしいからね。余裕見ても七日あればここに戻って来られます」

「むう。それって意外にデカいんじゃなくて、かなりデカいんじゃないか?」

「まぁ……そういう見かたもできますね」

 佐渡島より三回りくらい小さいけどね。あそこ海岸線二百だか二百五十キロメートルあったよね? 山も有るし、形は似てないけど、この島と似たような感じだ、こっちは常夏だけど。

 まぁ近所に大陸がないだけだからな。あそこって温泉が出るみたいだけど、千メートルも地面掘ってられないし、汲み上げる技術もないしなー。そんな技術あればこの辺にも温泉作っちゃうさ。

「今日も探索に行くのか?」

 そんな妄想をしていたら、現実に引き戻された。

「残りは左手側だけだけですけど、疲れてるから今日は探索は休みます。ちょっと顔見知りの偉い人に色々相談してきますね」

「誰だよ!?」

「テフロイト近辺を統治してる貴族様です。話してないと思いますが、その人に最前線の砦までの護衛と仕事を依頼されたんですよ」

「……それって簡単に会えるのか?」

「んー貴族区? 上級区? 良くわかりませんが、外壁に囲まれてる中に更に壁がある向こう側の、偉い人かお金持ちしか住めない区画に住んでますね。門番にどんどん通せって話なので、多分急な訪問でも平気じゃないんですかね?」

「それで良いのかよ貴族様」

「いいんじゃないんですかね? 街を良くしようと庶民の愚痴やお偉いさんの賄賂とか、悪い行いを密告できるようにしてるんだと思います」

「似た物同士ってやつか?」

「全然違いますよ。向こうは最初からの貴族でそれなりの学があって周りとの交友もありますが、俺が持ってる人脈はベリルの知り合いと、エジリンの集合住宅の住人だけですよ」

 ズズズーと残りの魚介系塩スープを啜り、食器を戻しに行きながらとりあえず手土産はコーヒーと、蜂蜜とフルールさんの鉢植えでいいかと思いつつ準備を始めた。


 俺はコーヒーを煎ってから挽き、口の広い瓶に詰め、蜂蜜も少しだけ小さい瓶に詰めて転移の準備をする。

 通行料とか払った方がいいと思うんだけど、馬車で入って馬車で出たからテフロイトの門が良く思い出せないので、門番が居た門を思い出しつつ転移した。


 俺は見覚えの有る門の前にたどり着いた。

 目の前の門番が目を見開き、物凄く驚いている。お約束として誰もいないとわかっていても裏を見てみる。

「ち、ちがう。お前だ! どこから現れた!」

「あー。魔法です、便利でしょう? 目的地前に行っても良かったんですけど、この先貴族様が住んでいるのでここに来ました。クラヴァッテ様のお屋敷に案内していただきたいんですがよろしいでしょうか?」

 特に何もなかったかのように振る舞い、笑顔で聞いてみた。

「あ、あぁ、係りの者が案内する」

 騒ぎを聞きつけたのか、ぞろぞろと門の脇の集合住宅みたいな所から、似たような鎧を着た見張り達が出て来たが気にせず案内してもらう。

 場所は知っているが、一応この見張りの人達も仕事が有るから案内をしてもらう。

「四年ぶりか? 五年か?」

 そう呟き、門の前にいるごっつい犬耳の門番も健在だ。

「クラヴァッテ様にお客様です」

 見覚えのある犬耳のメイドさんに応接室に案内してもらった。

 手荷物は土産物ですと伝えたら、

「一応中身を確認するのでお預かりします」

 と言われ持って行かれてしまった。だよなぁ、一応毒物かもしれないし。


 しばらくすると犬耳のメイドがお茶を持って目の前にお茶を置いて「もう少ししたら書類の方に区切りがつくと言う事ですのでもう少々お待ちください」と言って出て行ってしまった。

 ドアがノックされ返事をすると、メイドがドアを開けクラヴァッテが入って来た。

「久しぶりじゃないか。でも僕が何時でもいると思うなよ」

 そう言って向かいのソファーに腰を掛け、メイドの持って来たお茶を飲んでいる。

「いやー正直助かった。書類の山に押しつぶされそうでね、少し長話でもしようじゃないか」

 書類の山か、大変そうだな。

「そうですね、助けると思って……。実は魔王になっちゃいまして」

「む?」

「とある大きめの無人島を領地として与えられたんですけど……」

「……続けてくれ」

 一瞬でクラヴァッテの目つきが鋭くなって、興味深く聞いてきた。

「海賊が攻めて来たので海賊船を沈め、言う事を聞かせ、所持品を確かめたら大金貨約七枚分を所持してまして。どうしたら良いのかわからないので相談と言う形で訪問させてもらいました」

「なんだ、水臭いじゃないか。魔王になったらなったって言いに来いよ。ことごとく俺のラブレターを断りやがって」

 子供っぽい笑顔でお茶を飲み、にやにやしていた。

 最前線基地から帰還後の春頃に、また来ないか? と言うような命令書が届いていたが、やんわり断っていた。徴収命令書はラブレターじゃないし、もうギルドとは疎遠だったし。

「部下が直接届けに行ったら、故郷に帰ったって不愛想な猫耳の女性が言い放って、手紙すら受け取らなかったんだぞ。そうかそうか。やっぱり魔王の素質はあったか。あの頃からすごかったからなぁ色々と……」

 相変わらず楽しそうに喋るな。

「いや。もう嫁達を心配させたくないので断ってましたよ」

「達? 何人かいるのか? 意外にやり手だなカームも。俺なんかこの間やっと子供が産まれたって言うのに」

 おぉ、貴族様の第一子。世継ぎですな。

「おめでとうございます」

「いやいや。こちらこそ言い忘れてたな、おめでとう。で、だ。本題に入ろう、海賊の金の話だが詳しく聞かせてくれ」

「船長曰く。商船から奪ったのが九、海賊から奪ったのが一って事らしいんですが。海賊の一はグレーだとして。商船から奪ったのはどうしたら良いのかわからないんですよ」

「ふむ……」

 しばらく考えているのでお茶を一口啜る。

「関係ない。気にせず貰ってしまえ」

「良いんですかね?」

 流石にこの反応には驚いた。貰っちまえって。

「構わん構わん。知らない顔して使ってしまえ。海賊の討伐報酬だと思え、商船の方も既に諦めているだろう」

「んー。そんなもんですかね?」

「わからん。だが気にして金を使わないと経済が回らん。どんどん使え」

 そう言って勢いよくお茶を飲む。意外に豪快だな。

「まあいい、書類の山と戦うのはもう少し後だ。近状を聞かせてくれ」

「はい」

 そう言って俺は魔王の部下が来て魔王になった事。

 その後奴隷を与えられ島を開拓しているが人数が足りず苦労している事。

 海賊が来て撃破したり船長の心を折って順応させた事。

 精霊だか魔族だか魔物だかわからない植物や、水生系の魔物やハーピー族と出会った事。

 どうしても家が建てられないから、村に泣きついて職人に成れそうな者を預け村から一人連れて来た事。

 今島の探索をして、交易品に出来る物がないか探している事。

 を、散々突っ込みを貰いつつ話した。


「んー相変わらずお人好しな上に、バカみたいな事をしているのだな」

 飲もうとしていたお茶のカップを一瞬だけ止め、

「ん゛……何も言い返せません」

「そうだな。その土産にあるんだったな」

 クラヴァッテはテーブルにある呼び鈴を鳴らすと、メイドさんが入って来て、

「カーム君から貰った土産を持って来てくれ」

 それを聞いたメイドが出て行き、直ぐに俺のお土産を持って来た。

「これがさっき話に出てきた種を焦がした物か。黒く焦げ臭いが、良く嗅いでみると良い香りだな、どうやって飲むんだ?」

「本来は漏斗みたいな物に布を敷いて漉すんですが、ないので上澄みを飲みましょう」

 俺はカップにコーヒー豆を入れ、指先から【熱湯】をカップに注ぎ、良くかき混ぜ豆が沈むのを待ちカップに注いだ。

「挽いた豆が口に入ってくるかもしれませんが、その辺はご勘弁を」

「気にするな」

「苦いので、好みで砂糖と獣の乳、できれば牛のが好ましいです」

「ふむ、今頃丁度家内が子供に母乳を与えて居いるところだ。もらってくるか?」

「クラヴァッテは良いかもしれませんが、俺が気を使います」

 スズランやラッテの母乳なら、まぁ構わないと思うけど、他人の妻になった女性の母乳は流石に抵抗がある。

 そう思ってたら、クラヴァッテがニヤニヤとしていた。冗談だったか。

「むー牛の乳は新鮮じゃないと腹を下すからな、バターじゃ駄目か?」

「駄目です。諦めて砂糖だけで飲みましょう」

 メイドに砂糖を持って来てもらい好みの甘さになるまで入れてかき混ぜた。

「にがっ」

 その発言にフフッと笑うと、

「失礼だな飲んだ事がないのだから別に良いだろ」

 と、少し拗ねたように言われてしまった。

 俺も少しだけ口に含むが、今度は少し煎りが少なかったか?

「うむ、香りは良いな」

 クラヴァッテはそう言って、ゆったりとした時間が流れる。

「あ!」

「なんだ急に」

 俺はとある大切な事を言い忘れていた事に気が付いた。危ない危ない。

「奥さんには、子供が乳離れするまで飲ませないで下さい。乳からこのコーヒーの成分が子供に入ってしまいます」

「子供には毒なのか?」

「大人でも少しなら元気が出て眠気が飛びますが、小さい子供だとその分毒になる比率が大きくなります。バケツにスプーン一杯の塩を入れるか、コップに塩を入れるかの違いです。もちろんコップは子供です」

「そう言う物なのかなら仕方ない、しばらく我慢してもらうか」

「ちなみに飲みすぎても中毒になります」

「毒じゃないか!」

「このお茶を飲まないと、なんか落ち着かないなー程度なんで、禁輸品の草や煙草よりは害は少ないですが、砂糖を入れすぎると太ります」

 カフェインジャンキーって言葉を聞いた事があるけど、紅茶や緑茶の方がコーヒの五倍くらいのカフェインがあった気がするけど、この世界のお茶って、本当なんなんだろう。美味しいけど。

「扱いに困るな」

「島でも賛否両論ですので、好きな人は好き、嫌いな人は嫌い。俺は麦を煎って煮出したお茶や、花とか香草をお茶にしたのが好きですね」

「そう言えば島の場所はどこなんだ?」

「えーっと、魔王様の部下の話だと俺の村から馬車で十五日くらいの港から、貨物船で五日くらいらしいです。ってか俺って、この辺りの地図すら見た事ないんですけど」

 額に人差し指を当てて、目をつぶって場所を思い出す、

「あぁ待て、たしかこの辺に」

 そう言って裏の本棚から埃まみれの地図を取り出し、俺に広げて見せた。

 どこまで正確かわからないが、左右の端に二つの大陸があり、その間に何ヶ所かの大小の島が有った。

「コレでもまだ全部じゃないが、テフロイトはここ。ベリルはこの辺だな。地図の中に特徴的な言われた形に近い島はあるか?」

 そう言われたので、米のような形をした島があったので指を指し、

「多分これです」

 俺はそう言った。

「確かにこの辺は魔王になった者が良く行って、名を上げる前に討伐されるって噂のある場所だな、お前……死ぬぞ?」

「人族の奴隷は無下に扱ってないし、三食食べさせ休みも与えて寝具もそろえてるんですけどねぇ。密告が怖いですね。なにせ三日に一回は船が通り交易させてもらってますし、人族の間でも魔王が良く住み付く島って有名らしいです。まぁ前任は人族の奴隷をこき使って、やばい噂が広まるのが早かったんじゃないですか? それに、ある人物の本性を知りたいのならそいつに力を与えてみろって言いますし」

「うむ……魔族の中にも人族を嫌う者もいるからな。多分そいつが魔王になったんだろう、そして力を手に入れ本性を現した。それと気をつけろよ? 島を開拓して住みやすくなったら人族に奪われ、戦争の火種になるかもしれん。住み辛い島を開拓するのにも金がかかる。それが魔族がタダでやってくれて横から奪うだけ。な? 簡単だろう?」

「あー、そう言うのも考慮しておかないと不味いのか……気をつけないとな」

「魔族も人族も汚い奴は沢山いるからな。まぁ、僕はカームが死ななければ何でも良いけどな。そうなると国王に話を通して新しい魔王があの島を開拓してるって報告書を出さないと不味いな、最悪謁見だぞ、こりゃめんどくさいな」

 そう言うとコーヒーを一息で飲み干し、棚から酒を出した。

「ベリル酒だ、この辺にも出回ってるんだぞ」

 そう言ってコルクを抜き、コーヒーの入っていたカップに少し注いた。

「仕事中は家内がうるさくてな。少しくらい酒が入っていた方がペンの乗りも良いって言っているのに頭が固くてな。ほら、俺の裏に立ってた狐耳のメイドがいただろう。その辺の融通が利かないのは、元僕就きのメイドって感じだな」

「……あぁ!」

 そう言えば、なんかこう興奮したくなる様な氷の様に冷たい目つきの、狐耳のメイドがいない。

「気が付いたらそう言う関係に成っていた。どちらも好きとか嫌いとかもなく、ただただ元からそうであったように自然と……な、俺が子供の頃から世話役のメイドをしていたからな。歳は近いが上すぎるって訳じゃないぞ、お前の方も聞かせろよ」

 こっちが話したんだから、そっちも話せよって顔だな。

「俺は……産まれた時から家が近所で、何時も一緒に過ごしてたけど、何時までたっても俺が手を出さないから半ば強引に……襲われました」

 少しだけ顔を背け、目を合わせないように経緯を話した。

「面白いし興味が沸いた。詳しく頼む」

 そう言って、襲われた内容を恥ずかしながら話し、盛大に笑われた。

「はー。魔王様も奥様には勝てないか、実は俺もだ。頭が上がらん」

「女性は強い、それだけですかね」

「根本的に作りも考え方も違うのだ。諦めるしかない。酒は年々味が濃くなっていき深みも増す。女性と同じだ。これは正直良い酒だと思うぞ。樽で買い、しばらく果実酒の隣に置いて置くのも一興だな」

 クラヴァッテがカップの酒も飲み干し、立ち上ろうとしたところで重要な事を思い出した。

「あ、最後に一つだけお願いするかもしれません。あと言いわすれてた事が」

「ん? なんだ?」

「俺は学がないので、数字と交渉に強い部下を島がある程度まで大きくなった場合は頼るかもしれません。それと手土産の赤い花は、話に出てた植物の魔物の眷属です。話しかければ俺のいる島の本体が反応してくれて、俺に伝わります。寒さに弱いので日当たりの良い室内に置いてあげて下さい」

「ほう……学がないとか面白い冗談だ、だが花の件は面白そうだな」

 クラヴァッテはまた呼び鈴を鳴らし、メイドさんに鉢植えを持って来てもらう。

「フルールさん、ちょっといいかな?」

 俺が花に話しかけると、花が動き女性の上半身が出て来た。

「なによ!? ちょっと、ここ島じゃないでしょ!」

「この方が俺の知り合いの貴族様。名前はクラヴァッテ様だ、何か用事があったら話しかけるように言ってあるからよろしくお願いします」

「わかったわ、よろしくね」

「あぁよろしく。本当面白いなコレ、通信手段に使ったら戦場で……いや止めておこう。これは大事な贈り物だ」

「なに? もう帰るの? ならこの子にも魔力たっぷりのお水頂戴よ」

 俺は【水球】を作って水を与えるが、何時もの様に喘ぎ声を我慢してクネクネしている。

「目に悪いし、子供が産まれたばかりの俺が見ていいものじゃない」

「俺が魔力で作った水が好きらしいんですよ。なんか魔力が豊富で体に染み渡って心地良いらしく」

「ほう。普段は水で良いんだろう?」

「そうねぇ、ここだと日当たりの良い室内で、土の表面が乾いたらたっぷりと。かしら?」

「それ一応さっき言っておいた」

「はぁ! ちょっと私の何を知ってるって言うのよ!」

「眷属の育て方?」

「はぁもういいわ。とりあえず私に話しかければ、島にいるカームに何か伝える事も出来るし……えーっと、この子の個体番号はーっと」

 番号? 管理出来てるのか、すげぇな。

「ってな訳でもう少し忙しくなったら、数字に強い人員を借りに来るかもしれませんのでよろしくお願いします」

「わかった、適当に良いのを事前に調べて置いて、頼まれたら声をかけるとしよう。むしろこれだけで済んだのに、無駄話でかなり気分転換が出来た。感謝する」

「いえいえこちらこそ、急に連絡もなしに伺ってしまい申し訳ありませんでした」

「いや、構わん。まぁ次回からはこのフルールさんを通してくれればありがたい。家内やメイドにも話しておくからな。とりあえずは落として折らないようにするのが当面の目標だな」

「そうですね。んじゃ失礼します。門番さんに魔法で帰ったって言っておいて下さい」

「まった。その転移とやらを見せてみろ」

 相変わらず好奇心しかないなーこの人は。そう思い転移陣を展開し、俺は島に帰った。

 転移する前に、なんかすごい子供の様にはしゃいでるクラヴァッテを見た気がする。


「おう、どうだった」

出迎えてくれたのは犬耳のおっさんだった。

「色々張っちゃけた貴族だから参考になりませんけど、とりあえずは『使っちまえ』だそうです」

「そうか」

「あーなんかどっと疲れました。昼まで寝ますので、昼食になったら起してください」

「そんな疲れる相手なのか?」

「子供がそのまま大人になった感じですね。あと昨日の疲れです、お休みなさい」

「そうだ、ハーピー達が兎を六羽連れて来たぞ、雄三の雌三だ」

「わかりました、後でお礼言っておきます。あとトールさんに兎が脱走しない小屋の話しもしないと――」

 そして俺は手をヒラヒラさせながら、島民の目も気にせず盛大に昼寝をした。


閑話


クラヴァッテ夫婦


「綺麗な花ね、女性からのプレゼントかしら?」

「いや。カームからだ」

「カー……ム?」

「紺色の肌。狐の娼婦相手に尻尾を撫で続けた男。戦場で人族の第一突撃部隊の大半を壊滅させた」

「はい。思い出しました、男から花ですか……あのお方は男にも興味があるんですかね? お付き合いを止めた方がよろしいかと」

「いや、この花は魔族で、話しかけると本体が出て来る。多分怒られるけどやってみせるよ」

 そう言って花に話しかける。そうすると上半身裸の女性が現れた。

「カームに話を付けて欲しいの?」

「ね?」

「私はこの目で見た物しか信じませんが、これは中々興味深い」

「何よ、用もなしに呼んだの?」

 見るからに不機嫌そうだ。

「いやいや、一応魔族って事らしいから、皆への挨拶と今後仲良くするのにはどうしたら良いのかな? って思って、話をしたくなってね」

「そうねー、日干しの魚を砕いた奴とか、油粕とかが植物には良いって言うけど、私はやっぱり魔力で作った水かしら? まぁ普通の水と肥料だけでも育つけど。元々暖かい地方の花だから、寒さだけは絶対駄目ね」

「そうか、解ったよ。偶に話し相手になってくれるかい?」

「後ろの人の目が怖いから遠慮するわ。一気に目付きが悪くなったし。嫉妬かしら? 貴方も大変ね」

「今すぐ床にぶちまけて、枝を踏み折っても良いのですよ?」

「別に本体はこれじゃないから私は(・・)困らないけど?」

 お互い挑発をしている。女性って怖いな。

「はいはーい、とりあえずこれは日当たりの良い二階のテラスに置いて置きますねー」

 そう言ってほんわかした、昔から働いている信用できる犬耳のメイドが鉢をかっさらって行き、お互いの口撃が終わりを告げた。


「駄目ですよ、あの狐耳の魔族はこの館の主の奥様なんですから。仲良く行きましょうねー」

「向こうが態度を改めるまで無理ね」

「じゃぁ一生無理ですねー。とりあえず何かあれば声をかけてください。テラスの植物に水を与えるのは私なので」

「貴女とは仲良くなれそうだわ」

「ふふっありがとうございます」


 子供が産まれても奥様は変わりませんね、多分子供が大きく成ればこの花がしばらく話し相手になるんだろうなーと、私は思いつつ日当たりが一番良い場所に鉢を置いてあげた。

と言う訳でお偉い貴族さんの所に行き相談してきた主人公ですが。今後どうしようかと思ってる所です。



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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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