表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/324

第59話 村へ船大工を修行させに行ったはずだった時の事

細々と続けてます。

相変わらず不定期です。


カーム大人気無い!

 俺は今村に帰って来ている。船大工とその部下っぽかった三人を連れて。

「親方ー、この人族に修行させてやってくれませんかね?」

 親方は母親がドワーフなので、生まれ付き手先が器用と言う事で木工の道に進み、今は大工をやっている。切った木の皮を剥いてそのまま柱にしたり現代建築で見る様な真四角な木材に加工して建てたりもできる。

 なぜか基礎工事とまで行かないが、土台作りもするすげぇ魔族だ。成長した村に手あたり次第家を建ててくれたのがこの人だ。もちろん他の職人もいるからこの人だけと言うわけではない。

「給料は四人で一人分で良いんで、他の従業員と一緒に住み込みで働かせてやってください」

「おう噂は聞いてる。向こうの島に大工がいなくて、住む場所に苦労してるんだってな。雇うのは構わないし、お前のおかげで少し前にこっちの懐も潤ったから、別に給料は全員普通にだしてやれるぞ?」

「あー……お言葉に甘えさせてもらいます。本当は親方と従業員を呼びたいんですけどなにせ転移魔法陣の使い勝手が悪くて運べても四人、長い物は無理、しかも金もない! だから人材を預けて覚えさせる。これが一番金がかからない方法と言う訳なんで無理を言わせてもらったわけですよ」

「おう。アレから村もでかくなって家を建てて欲しいって奴が結構いてな。家を最初から建てさせて覚えさせるのにはちょうど良い。筋が良くて年が一巡した今頃なら使える様になってるぞ」

「んー厳しいですね。今はある程度使えてそれなりの家が出来れば良いんでどうやって木を加工するか、どういう手順で家を建てるかって言うのがわかれば良いんで、それだとどのくらいですか?」

「あん? そうだな、早くて家三軒も建てれば手順や仕事は覚えるだろうな。俺的には半端な仕事はさせたくはないんだけどよ」

「んーわかりました。とりあえず仕事覚えたら一旦返してもらって島である程度家を建てたらまたこっちに来させますよ。今一番やりたい事は、海から少し離れたところに家が欲しいんですよ」

「海が何だか知らねぇが、別な場所に早急に建てたいってなら修行の為に腕利きを一人くらい貸すぜ? そうすれば、素人でもテコにはなるだろう」

「何も知らない人族が、大工仕事ができるなら良いんですけどね……」

「物は使いようだぜ? 木を削って真っ直ぐにしたり、重い物を運ばせたり支えたりするくらいはできるだろ?」

「んーそうですけど。本当に大丈夫かな」

「おう、とりあえず修行だと思ってお前とりあえず行ってこいや、向こうでド素人を使ってそれなりの家を作れたら一人前だと認めてやるよ」

 そんな感じで話が進み、腕利きを一人預かり四人を預けた。まぁ確かにそれなりのって言ってたけどさ。


「んじゃ俺は定期的に村に帰って来てるから、なんかあったらその時にでも声を掛けてください。さっき聞いてたと思いますが給料は出るらしいんで、日雇いじゃないから最初の給料が出るまで結構かかります、だから息抜きに使う金も渡しておきますね。これは給料から返してくれればいいです。魔族側の通貨の見方は大体わかりますよね?」

「うっす、解ります。ですが本当によろしいんですかい?」

「返してくれるなら構わないよ。稼いだ給料は何に使っても構わないです。この村は最近少し大きく成ったとは言え、娯楽はまだ酒くらいしかありませんけどね。金がないとそれすらも楽しめませんし。成り行きで部下にさせちゃいましたけど、他人が稼いできた給料を取る様な事はしないですよ。とりあえず家が建てられる位の事を覚えたら声を掛けてくれ。上に立って命令するような事が今までなかったから、どのくらい人をこき使うと、気分を害するかとか解らないんですよ。すみません」

「いえ、殺されなかった上に飯も用意してくれて、まっとうな職まで与えてくれたうえに給金までもらえるんですから文句はないっすよ」

「そう言ってもらえるならたすかります。とりあえずあの親方は俺が子供の頃から厳しいって話を聞くから気を付けて下さい」

「う、うっす」

「んじゃ頑張ってくださいね」

 そう言って俺は家に帰った。


「ただいまー」

「パパおかえりー」

「はい、ただいま。急に帰って来たからお母さんとママは居ないね」

「うん、けどリコリスバーバがいるし」

「そうか、それなら安心だ」

「あら、お帰りなさい」

「あ、ただいまです義母さん。リリーは?」

「スズランに付いて行って池の方に居るわ」

「そうですか、なんだ。ミエルはお家で遊んでた方が良いのかい?」

「うん。牛さんとか豚さんは大きくて怖いから魔法のお勉強してるの」

「おー偉いな」

 そう言ってワシャワシャの髪を撫でてやる。母親似で毛質が柔らかい。

「止めてよパパ、僕はもうそんな子供じゃないよ」

「はは、そうかそうかスズランママは魔法があまり得意じゃないから、パパが後で教えてやるよ」

「まだ危ない魔法は駄目よ」

 そう言って、玄関先に出て行く姿を見て微笑んでる義母さんがいた。


「はいミエル君! ヘイルジージとイチイジージ。スリートバーバとリコリスバーバ、そして二人のママも魔法があまり得意じゃないと思うんだよね、どう思う?」

「んー確かにあまり見た事がない。ママが釜戸に火をつける時くらいだよ、スズランママは少し怖い」

「あーなんかすごい強いよね。制御しきれないって言うのかな。まぁ皆薪に火をつけられるくらいなら問題ないけどね」

「そうなの?」

「生活に支障がないならね、火をつけるのに爆発させたり家が燃えたりしたら怖いでしょ?」

「うん……」

「だから少し制御出来て無いくらいなら平気さ、んじゃ今はどんな魔法が使えるんだい?」

「んーっと火と水と風と光かな」

「じゃぁ土を覚えようか」

 そう言ってかかとで土を掘り返し、手で土を掬い、【水】を染み込ませ泥団子にした。

「んじゃこの泥団子を、魔法を使って好きな形にしてみようか」

「うん」

 勉強と言うよりは遊びで楽しく覚えさせた方が良いんじゃね? って思うんだよね。勉強とか凄く嫌いだったし。遊び感覚でやった方が良いに決まってる。

「ほら、パパはバールとスコップだ、まずは簡単な物からやってみような、そうだなーまずは丸い形を四角にしてみようか」

「うん」

 そう言って悪戦苦闘しているが、少しコツを掴んだのかドロ玉がウネウネし始めて少し角ばって来た。

「おーすごいな」

 と言っても返事が無い、集中しているんだろうか?

 んじゃ俺も少しフィギュア感覚で作ってみるかな。

 簡単な奴だけどな!


「できたー」

「パパも出来たぞ」

 ミエルは少し角が円い四角の泥団子になっている。

「おーすごいな、はじめてにしては良くできてるぞ。パパも出来たぞ、頭に三角の変わった兜をかぶった、バスターソードを持った裸の男の人だ」

 どう見ても三角様です。ありがとうございます。

「かっこいいー、この人だれ?」

「霧の濃い中から現れて、悪い人を殺しちゃう怖い人だよ」

「え……」

「あ……やっべ……」

なんか涙目になっちゃってるし、どうしよう。

「良い子にしてれば平気だよ、悪い事って言っても物凄く悪い事しないと出てこないから、いたずら位じゃ出てこないよ」

「ほんとう?」

「あぁ」

「すごく悪い事って?」

「んー村に居る全員を殺しちゃったりしないと出てこないよ、だから絶対出てこないよ」

絶対出てこないって事を教えておかないとトラウマになるからな。

「けど知ってるって事は見たんでしょ?」

鋭いな。

「町の本屋さんの本の中でね。昔人族の町で出て来て悪い人をやっつけてくれてその町が平和になったんだよ」

「そうなんだ!本当は良い人なんだね!」

「え? あ……うん」

そういう事にしておこう。説明が面倒だ。駄目な父親でごめんよ。あと町の本屋便利説!


「おかえりなさい」「おかえりなさーい」

「あら。ミエルに魔法教えてたの? カームは教えるの上手かったから。リリーも教えてもらったら?」

「や! 魔法嫌い!」

「じゃあ、槍術の訓練に付き合ってもらいなさい」

「うん!」

「え?」

「ミエルばかりじゃかわいそう。ね?」

 首を傾げて前髪がサラッと垂れてお願いしてくる。前々から思うがこれをやられると断れない。可愛いし!

「わかった。スコップとバールを取って来る」

鉈は流石に危ないしな。木の棒で代用だな。


「この木の棒はナイフだと思ってね」

 そう思いつつ物置から、愛用品じゃないスコップとバールを持って来て、右胸元には短い棒を簡単に縫い付け、ナイフの様に直ぐに抜ける様にしておいた。一回きりだけどな。リリーは家の中から穂先の付いて無い柄だけのただの棒を持って来て、軽く振って準備運動みたいなのをしている。


「お父さん準備は良い?」

「ん? あぁ多分平気だろう」

「はいはじめ」

 んースズランも武器は槍だったけどリリーもか・・・力任せならかなり不味いよなー胸に挿した拾ったその辺の木の棒じゃ折られる。

 スズランが合図した瞬間リリーが前傾姿勢で突っ込んできて、真っ直ぐ俺の顔を狙って突いて来た。

 あっぶね。思ってた以上に速い。俺は大袈裟にバックステップで躱す。十字槍とか引く時って鎌みたいな扱いになるから少し大げさに避けて損はない。いつかそういう武器に出会うかもしれないからな。

「あれー、お父さんぼーっとしてたのに避けられちゃった。お母さんやお婆ちゃんやお爺ちゃん達は、初めて見るから油断してると思うから思い切り突きなさいって言ってたんだけど、やっぱりお父さんだね」

 油断できないな……スズラン家の女性は。あと親族中で教育してるのかよ。まったく孫大好きすぎだろう。俺も子供好きだけどよ!

「は、はは、随分鍛えられてるね。お父さんびっくりだ」

「うん、ラッテお義母さんが『パパは魔王になっちゃったんだから、子供も強く無いとね』って言ってお義母さんと話し合って鍛えてもらってるの。ミエルもそうなんだけど魔法が使えるのが一番上手なのがお父さんだから帰って来た時にしか教えられないって言ってたよ」

「そうかーお父さんは別に気にしないんだけどね、魔王に成れたからって子供まで強いわけないでしょ?あーラッテったら何考えてるんだか」

と言いながら地面に刺したスコップを杖みたいにして手を付いて体重を掛けて目を反らして愚痴ってたらまた顔面を突いて来たのでスコップを刺しっぱなしでまた大袈裟に避けた。

「隙があったら、遠慮無くヤりなさいって皆が言ってたよ」

 なんだろう、『ヤ』って字が物凄く気になる。

「うん、良い教えだ。戦いで卑怯も汚いもないって思ってるからね。今のはお父さんの落ち度だし良い判断だった」

 そう言ったら刺してあったスコップを棒で倒し、掃って拾われない位置まで飛ばされた。どうにも徹底しているらしい。

 仕方がないのでバールを抜いて左手で構えていたら遠慮無く突いて来たところに合せるように、俺も前にでてバールで槍を逸らすようにして懐に入り、足を掛け転ばせた。槍を踏み付けて武器を封じ、左胸にある木の棒を右手で抜いて、首に軽く押し付けて終わらせた。


「確かに良い踏み込みだけど、避け難いところや的が大きいところも狙った方が良いかもね。それとフェイントも上手く使ってみる事も今度覚えようね」

 そう言うと泣きそうになっている、流石にやりすぎたかな? 転ばせる時も頭をぶつけ無い様に気を使ったし……何が原因だ?

「くやしー! 一回も当てられなかったー」

 リリーは大声を上げて泣いてしまった。

「ごめんごめん、けど訓練でも当たるつもりはないし、自分の子供だから負けてあげるって事は出来ないからね。お父さん痛いの大嫌いだからさ」

 抱き寄せ涙を拭いてやりながら頭を落ち着くまで撫で続けた。確かに大人気なかったな。

 来年で五歳、学校か……。思い返せば俺も4から5歳までに急成長したからな、今は少し子供っぽくても来年どうなってる事やら。


 訓練を終わらせて、皆でご飯を食べている。

「私お父さんのご飯大好き」「僕も」

「そうか、それは良かった」

「お母さんはお肉しか焼かないんだもん」

 スズランの方を見るとビクッと震え肉を刺したフォークが一瞬止まるのを見逃さなかった。

「けどお母さんのお肉は豪快でお父さんは好きだぞ! 野菜は自分で用意するけど」

 一応フォローも入れて置いた。

「たしかにスズランは豪快だよねー、たまに鶏丸々一匹で出て来るもん」

「アレはすごく難しいんだぞ、下手だと外が焦げて中が生だったりするからね。だからスズランママは本当は料理が上手なんだぞ、だから二人共そんな事言っちゃ駄目だよ、お肉だけだけどね」

「確かに私じゃ出来ないなー」


 昼食を食べに戻って来たラッテと家族全員で昼食を済ませ食休みしているとリリーが「また訓練してー」と言って来たのでラッテを見送ってから訓練に付き合った。全部避けたり受け流したり弾いたりしてたら「ミエルも手伝って!」と言われ参戦してきて姉弟の見事な連係プレイを見せられた。顔に火の玉がタイミング良く飛んできてバランスを崩され、木の棒で足を払われ転び喉元に棒を突き付けられた。


「いやー参った参った」

 そう言うと物凄い笑顔で「やったー」と喜んでいる。

 流石に子供達に魔法は使えないしな、移動阻害系とかなら良いかな。

「んじゃ今度は魔法も使っちゃおうかな」

 起き上がって服に付いた土埃を払いながらそう言うと「えー」「う……」とか言っている。


「ほら、魔法使ってない俺を転ばせて一本取ったんだから、こっちも少し手加減を緩めても良いと思うんだよね」

「うー」「んー」

「安心していいよ、傷つけたりはしないから。ただ……自分から飛び込んできた場合は自爆って事で責任は取らないからな」

そう言って二十歩ほど距離を取り、スコップを構え直した。確実に槍の当てられる距離じゃない。当てるのには接近する必要が有る。

「いつでもどうぞ」

 そう言うと警戒しているのか近づいてこない。

「ちょっとミエルと作戦を練りたいんだけど」

「……今回だけな、敵は待ってくれないんだぞ」

 そう言ってスコップを地面に刺し二人で小声で話し合ってるのを見て微笑んでたら、スズランが麦茶を持って来てくれた。

「どう? 二人は」

「んー息は合ってるね、さっきも見ててわかってると思うけど一本取られたし」

「カームも本気じゃなかった」

「子供達に本気出せないだろ?」

「けど次は魔法使うんでしょ?」

「攻撃に使える魔法は使わないよ、使っても水球とか土壁位かな」

「お風呂洗っておくわね」

「ありがとう」

 そう言ったら胸倉を掴まれて引き寄せられキスをされた。

 この感覚は久しぶりだ。

「やめろよ。子供達が見てるだろ」

「関係無い。しばらくしてないし今かっこいいって思ったからしたくなっただけ」

 そう言って子供達に「水と壁に気をつけなさい」と言って家の中に入って行った。ちょっと卑怯でしょう奥さんや……。

「お母さんとお父さん仲良しー」

「ママにもしてあげないとママが可愛そうだよ」

 こっちは恥ずかしがってるのに、子供達はある意味素直だった。


 話し合いも終わったらしく「お父さん構えてー」と言って来たので構えて待つ。

 そうしたらミエルが火球を一個ずつ俺を狙って飛ばして来てリリーが突っ込んで来る。

 んーまだまだ子供だなー。そう思いつつ【水球】で火球を相殺して、【土壁】を高さと厚みが一メートルの横幅三メートルくらいのを作る。迂回するのには戦闘中には時間がかかる。飛び越えるのには微妙な高さで上に乗って下りる時にも着地が上手く行かないとバランスを崩すし、上から勢いを付けて飛んでも俺までに少し距離がある。いやー戦いっていやらしくあるべきだよな。

 そうしたらリリーは勢いを殺さず、そのままの勢いで飛び降り膝を上手く使ってバランスを崩す事なく突っ込んでくる。

 なので俺は足元に粘液を作り出し、少しだけ踏ん張りが効かないようにする。あわよくば転んでくれれば万々歳だ。


 ミエルはどうにか魔法を当てようと、まだ俺に火球を放ってくるが、リリーの視線が一瞬だけ上の方を見たので、俺の裏か真上辺りにもう一個あると思い、視線の上がり具合からして真上はないと思い、ある程度アタリを付けて少し大き目の【水球】を後頭部辺りに浮遊させ目の前のリリーに集中する。

 背中の方でジュウッと火が消える様な音がしたので、読みは当たりだ。

 リリーの顔が一瞬驚いた様な顔になったがそのまま突っ込んで来る。

 猪の様に正直に真っ直ぐ突っ込んで来るので、利き足が地面に付く瞬間に少し広めに十センチメートルほど陥没させて様子を見たら、さっき踏んだ粘液で踏ん張りがきかず見事に転んで、俺の前まで転がって来たので木の棒で頭をペチっと叩いて怪我判定にさせた。

「ミエル! お前一人になっちゃったぞ。それからどうするんだ?魔法を俺に打ち続けるか?幾らでも打って良いぞ、付き合ってやる」

 少しだけ煽ったらミエルの顔付きが少し鋭くなり、連続して火球を放ってくる。


 俺は【水球】を手の平に保持し、放たれた火球を全部その水球で受け止め、魔力切れを起こしたのかそのままへたり込んでしまった。

「よし、ここまでだな。この熱くなった水球お風呂場まで持って行くからそのまま少し寝転がってなさい」


「んー駄目だった、最初から全力出されちゃって長く持たなかったよ」

「そう」

 風呂を洗っていた手を止めて「ちょうどいいから洗い流して」と言われたので【水球】を出し洗い流して、栓をしてからミエルの火球で温まった水球を風呂に沈めた。

「なにそれ」

「ミエルの火球を受け止めた水」

「少しぬるい」

「わかったよ、ミエルには熱いって言ってあるから内緒ね」

「ん」


 熱湯を少し足して適温にし、子供達と昼間に風呂を入る事にした。

「ほら、お父さんは魔王に成っちゃったし、リリーはまだ子供なんだから気にしちゃ駄目だよ」

 俺はお湯に浸かってまだ泣いているリリーの頭を撫でてやり、まだダルそうにしているミエルを溺れない様に抱いて、どうにか泣き止ませようと悪戦苦闘していた。女の子って繊細だね。スズランが図太かっただけなのかもしれないけど。

「ほら、魔法使わないとリリー達の方が強いんだから気にしちゃ駄目。それにまだ学校にいってないのに、そんなに強ければ本当にすごいんだぞ」

「本当?」

「あぁ! 本当だ」

 ぐすんぐすんと泣いていたが、機嫌を直してくれたのか少しむくれて湯船に浸かっている。

 ミエルは「あ゛ーーー」とか言いながら俺の膝の上でぐったりしている。

 そうしたらリリーが「私も」と言って膝の上に乗って来たので頭を撫でてやった。


「お母さんがね」

「うん」

「お父さんの膝の上はお母さんのだから、乗らないようにって言ってたから内緒ね」

「解った」

 スズランめ何言ってんだ? 酒に酔って俺の膝の上に乗って首に手を回してキスして来ただけなのに。まぁ明確な『私の物』アピールなのかな?

 こうして(リリー)と風呂にいつまで入れるんだろうか。学校が終わったら確実に無理だな。

 息子(ミエル)は。どうだろうか。

 なんか魔族は、子供の時間が短い気がするんだよな。長寿種はどうなのかわらないけどな。

 そうして子供達と盛大に昼寝をしてたら、スズランに口を塞がれたまま起こされ、無理矢理部屋まで引きずり込まれお互い声や物音を出さない様に、一時間ほど自室のベッドの中にいた。


 夕食中に。

「あーお母さんなんか機嫌がいい」「うんなんか良いね」

 普段と変わらない様に見えるけど、確かに雰囲気はなんかポワポワしている気がするが、意外に子供達でもわかるみたいだ。

 ラッテがこっちをチラチラ見ているので、夜にもう一度静かすぎる一時間を過ごすのかもしれない。

 ちなみに両方「当たらないから」と言っていた。まぁ俺が家にいないからこういう事は仕方ないと思うけどね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ