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第56話 念願の寝具を手に入れた時の事

細々と続けてます。

相変わらず不定期です。

作者に交渉術は無いの駆け引きとかは無く只の交渉です

20160613修正

「船長! 魔王が討伐されたと言われてる島から狼煙です!」

「遭難者かもしれん。湾に入らず小舟で迎えに行け、様子を見てやばそうなら、直ぐに帰って来い。私は商人殿に話をしてくる」

「了解!お前等小舟を下す準備をしろ!魔王が居るかもしれんから傭兵も準備して置け!危なかったら戻って来いと言われてるが気を付けろ!よし!回頭だ!」

「「「「応!」」」」

そう言うと船上で慌ただしく船員達が動き出す。


「商人殿。申し訳ないが無人島で狼煙が上がっているのを確認してしまった。我々としては見過ごせないので救助の為にしばらく停泊させてもらいますよ」

「構いませんよ、船旅は気長に行くものだと思っていますから」

「そう言ってもらえると有りがたいです」



 走って岬まで行くと、確かに船首がこちらに向いている。しばらくすると帆をたたみ碇を下しているのが見え、小舟が下ろされ数人が武装して乗り込んでいる。

「もう討伐されるのか? まだ六日目だぞ?」

「何とも言えませんね……」

「先に言っておきます。俺が死んだら、あの船に皆助けてもらってください」

「……わかりました。正直奴隷になる前の生活より充実しすぎてて、帰るのが惜しいですが、皆と話し合って、残る者と出て行く者を話し合います」

「お願いします」

 しばらく眺めていると小舟が近づいてきたが武装しているのが六人、船をこいでいるのが八人か。さてどうなるかな、両手を振っておくか。



「そろそろだが、岬に人と、なんか黒っぽい魔族がいるぞ。アレ新しい魔王じゃねぇのか?」

「魔王ならとっくに攻撃されてるぜ? あと隣の人間も殺されてるはずだ。なのに二人とも手を振ってるぜ? 本当に遭難じゃねぇのか?」

「攻撃されたら魔法で攻撃して時間を稼ぐから逃げるぞ」

「了解」


「おーい、おーい」

「魔族が共通語で叫んでるぜ? 罠か?」

「にしてはなんか嬉しそうだぞ? 本当に遭難じゃないのか?」



「おーい! おーい! 気が付いてると思うんですけどねー」

「えぇ、こっちを見てるので、気が付いてるとは思いますが」

 しばらくして小船が止まり武装した集団のリーダーと思われる人物が話しかけて来る。

「遭難者か? それなら助けるが魔族は信用できん。助けてほしい場合は大陸まで拘束させてもらうが構わないか?」

「遭難者じゃない、ここに住んで開拓している。物資を譲ってほしくて狼煙を上げ貴方達を呼んだ。もし宜しければ交渉させてほしい」

 お互いが大声でやり取りをして、傭兵と船員が小舟の上で相談している。

「少し待て!」

 そう言うとローブを着た、いかにも魔法使いっぽい奴が何やら詠唱を始め誰かに話しかける様に口を動かしたかと思ったら、風でローブが少しだけ揺れ、しばらくしたら、船の方から何かの目印と思われる、火の球みたいなのが空中に一つ上がった。

「あの船は貨物船だ。俺達は傭兵で俺達の依頼主が乗っている。その依頼主が話し合いに承諾した。さっきの火の玉が返事だ、船まで来るなら商談が出来るぞ」

 一応安全の保障が出来ないから、俺が敵地に乗り込んで来いって事か。

「んじゃ行ってきますね、戻らなかった場合は何とか生き残って、次の船が来るまで粘ってくださいね」

「え?魔王様!?」と言う声をかき消す様に「わかった! そちらに出向くので交渉させていただきたい! どうすれば良い?」と返事をした。

「泳いで来い! あとこちらに来たら拘束させてもらう」

 上陸してくれないし、保険もばっちり掛けてるね。当たり前だよな。俺、魔族だし……。

 俺は入水し、水が胸の辺りまで来たらクロールで泳ぎだし、小船まで向かい乗せてもらった。

「お邪魔しまーす」

 少しフランクに言ってみたが、周りの目は険しく、既に傭兵の一人がロープを持っていたので「手は前? それとも後ろ?」と笑顔で聞いてしまった。

 少し小声で話し合っていたが「後ろだ」と言ったので、背中を向けて腰の辺りで手首を合せ大人しく縛られるのを待つ。

「おい、本当に言う事聞いたぜ? 酒、奢れよな」

「チッ、しかたねぇな」

 賭けの対象になっていた。まぁこれくらいじゃ怒る気にもなれないので、大人しくしている。

 小舟が船の方に回頭し、櫂で小舟を漕ぐ音と波の音だけが聞こえる。

「おい魔族。なんで交渉なんかしたいんだ?」

「まぁ、物が圧倒的に足りないんですよ。食糧、道具、寝具、何でも足りないんです。あればあっただけどうにかして手に入れたいですね。最優先は食料ですかね」

 手に入れたいという言葉に反応したのか、小舟の中が殺気立った。

「妙な真似はするなよ、魔族の臭ぇ返り血なんか浴びたくもねぇからな」

「同感ですね、俺も斬られたくはないです」

「挑発にも乗らねぇか」


 しばらくして船に付き、縄梯子を登ろうと思ったら両手が後ろなので登れない。そうしたら上からロープが下りて来てさらに縛られて、引っ張り上げられた。なんか扱いが酷いが島民の為だ。これくらいどうって事はない。

「君が交渉したいと言っている魔族か、いつでも君を殺せると言う事を忘れるなよ?」

 引き上げられたら、真っ先に船長にそんな事を言われ、既に用意されていた椅子に座らされ、椅子にも縛りつけられた。

 船員が取り囲み、剣を向けて来る。正直怖いが、魔族に過剰に反応し過ぎじゃないか?

 まぁ、別に交渉できればいいけど。


 しばらく睨まれてたら、少し派手な服を着た背の高い痩せている男が、少し離れたところに立って話しかけて来た。

「初めまして、話に聞いている魔王とはかなり印象が違うけど、ただの部下の魔族ですかね? 取引できる相手とはするべきだって考えですので、とりあえず話はさせてもらいますが……君は何が欲しいんだい?」

「簡潔に言うと最優先は食料ですね、できれば小麦かジャガイモが欲しいです。それと有れば寝具五十一人分。余裕を見て六十は欲しい。無いなら最低でも五人分。商品に無くても、この船に乗ってる船員のでも構わないから、個人的に売って良いという人族から確保したい。金はあるが、なるべく使いたくないからまずは交易と言う形で商品が欲しいですね。他にもあるがとりあえずそれだけは融通してほしんですけど」

 商人は腕を組み、こちらを目を細めて何かを考えて俺に質問して来た。

「食料はわかる、寝具五十一人分というのは何故か? ないなら五人分は船員のでも、手に入れたいと言う理由は?」

「島に俺を含め五十一人いて、うち子供が五人いる。せめて子供の分でも確保したいんですよね」

 商人は少し唸りながら目を瞑り、また少し時間を置いてから質問をしてきた。

「正直に質問に答えて下さい、そうすれば考えます。では質問です。あの島は魔王が住んでいて、ここ最近勇者に討伐されいなくなったと聞いていますが、魔王はいないのですか?」

 覚悟を決めるしかないな

「……魔王はいる」

 周りが騒めきだす。

「ほう……。それは君かい?」

 やっぱりそう来るか。

「……そうだ」

 更にざわめき、数名は切りかかろうとしていたが、周りに抑えられている。

「なぜ大人しく従うんだい?」

「島の人族の為に」

 そう答えると「嘘をつくんじゃねぇ糞魔族!」と切りかかられそうになったが、反動を利用して椅子ごと右側に倒れ、俺の座ってた所に剣が振り下ろされる。

 深く刺さっているので、本気で振り下ろしてきたのだろう。幸い足は拘束されてなかったので、左足で剣を思い切り蹴って曲げた。

 いやー洒落にならないなこれ。少し警告も必要か?

「誰かこいつを押さえてくれ。手を出す積りは一切無いが、攻撃を仕掛けられたらさすがにやり返すぞ?」

 そう言うと剣を振り下ろしてきた船員は奥に連れて行かれ俺は起こされた。

「すまなかったね、船乗りは喧嘩っ早いのが多くて」

「えぇ、構いません。死んでないので許しますが、次は攻撃して来た人族に反撃しますからね?」

「おう! テメェら! 話は聞いてたな? やられてもテメェのせいだからな!」

「椅子に縛られてる奴に何ができる! やれるもんならやってみやがれ! これで俺は英雄だぜ!」

 そう言ってもう一人が切りかかって来たので、急いで持ち手の無い【黒曜石の苦無】を浮遊させ、少年野球団のピッチャー程度の速さで足の甲に射出して甲板に縫い付けた。

何か喚き散らし殺気が強くなったので、さらに自分の周りに三十本ほど急造で形が不揃いな物を浮遊させ、全員を威嚇する。あー溜息しか出ないな。

「どうして大人しく交渉させてくれないんですかね? 怒りますよ?」

「いやー、私的にも交渉はしたいんだけどね」

「俺もです。信用を得ようと、言われた通り従って大人しくしてるのに、これじゃ台無しだ」

「その浮いているモノはそのままでいいから、質問を再開しても良いかい?」

「引っ込めろとは言わないんですね」

「せめて交渉中は邪魔されたくないからね、一応これでも商人ですから」

「助かります」

「じゃぁ、次の質問だ。なんで子供の分だけでも確保しようとしたんだい?」

「俺にも子供がいる、子供はなるべく不幸にさせたくはない。もう床に枯草を敷いて寝させたくはない。大人にはもうしばらく我慢してもらう」

「わかった、食料はあるが寝具はない。君が差し出せる物品をお金に換算し、船員に売っても良いって奴がいないか聞いてみる。最悪私が雇っている傭兵のを譲ろう」

 その会話中、商人の視線が外れ俺の後ろを見たので、少し気になり視線だけ動かし周りを見てみると、ほとんどが俺の後ろの方を見ているし、ニヤニヤしている奴もいる。

 多分足音を殺して近づいているんだろう。全く嫌になる。どの辺に居るのかわからないので、俺の真後ろの高さ3mの場所に厚さ10cmの3m角の石板を浮かせいつでも落とせるようにしておいた。

 数人が「おぉー」とか言ってるがおーじゃないよ。こっちは必死なんだよ。

「ありがとうございます」

「で。何が出せるんだい?」

「大人くらいの重さの鹿の枝肉二と猪一、あと熊の毛皮ですね。肉は今朝狩りに行って、昼に担いで来るのを見ているので、新鮮さは保障できます。多分もう内臓を処理しているはずですので。それと椰子の木の樹液から煮詰めて作った砂糖と、海の水を煮詰めて作った塩。親指の爪位の大きさの甘酸っぱい実、蜂蜜少し。魚もありますが、ここは海の上です、多分要らないでしょう? まだ島に来て六日しか経ってないから、貯蔵量も乏しいんですよ。干し肉か塩漬けにもしたいけど、干す場所も塩も足りてないから、丸々燻製に出来る方法を試しています。まぁ、まだそれも三日経ってないから生乾きですけどね。それを混ぜても良いならもう少し肉を出せます」

 目の前の商人は、何も言わずに聞いてるので、続ける事にする。

「あとは畑を作ろうとしてるから、切り倒した生木もあります、木材として使いたいなら、海に浮かべてロープで縛って牽引していけば良いと思います。今のところそれくらいしかないんですけど、小麦かジャガイモが手に入ったら、植えて生産させる積りです。情報も売れるなら、強い酒の作り方とかも教えられますよ。証拠が欲しいなら、少し時間がもらえれば取りに帰えります。最悪魔族側の物品が駄目なら、子供の分の寝具を買う為の金を私財からだします」

「んー、交渉に入る前に少し聞かせてくれ。今戻れると言ったがなんで帰って持ってこないんだい?」

「なるべく島の物だけでやりくりをして、どこまでこの島を発展させられるかを試したいんですよ。最初に金を出すのは簡単ですが、領地でやりくりするのも必要だと思って、そういう風にしています。あと、島に住んでいる人族や魔族を増やせるかを試してみたいんですよ。島にいる人族は、俺が魔王に成った時に与えられた奴隷です。流石に開放はしてありますし、その時は必要最低限の物資は持ってきましたが、流石に五十人分の小麦を毎回持ってくるのは厳しいですので。一袋分は製粉していない小麦がありますが、開墾して畑にしたら撒く気でもって来ただけですので、今撒いてもすぐに収穫できません。だから食料として小麦とジャガイモを挙げました、ジャガイモなら今撒いても早く収穫できますので」

「んーそうか、その移動できる魔法は何かしら制限があって、あまり物が持てないんだろうね。わかった、とりあえず今言った物で生活に支障が出ない程度の物を、交易品として取引しようか」

「助かります」

「これも何かの縁だ、少し寄り道して、もしかしたら今後大口になるかもしれない取引相手が出来るなら、少しの時間くらい問題無いさ」

「けど肉の価値がわかりません。どれくらいが、どの程度で取引されてるのかもわからないんで」

「そうだねぇ……人族と魔族の貨幣の価値はある程度同じって知ってるかい?」

「ある程度は……」

「じゃあ、まずは物を見せてもらおうか。船長、悪いんだけどあの島まで行ってくれ」

「俺が確認してる範囲で言うと、湾の周りは遠浅で、湾内じゃないとこの船だと接岸できないです」

「了解、新鮮な肉はこっちが引き取りますよ。船員も干し肉ばかりじゃ飽きるでしょうからな」

 そう言って、帆を張り碇を上げ、船は湾内に入って行く。

 ちなみに俺は椅子に縛られたままだった。

「おい! 船がこっちに来るぞ!」

「殺されちまったか?」

「わからねぇ。けど、どのみち死んでたらあの船で帰るしかねぇんだからな」


 湾内に入り、かなり余裕が有る所で停泊し小舟が下ろされ椅子のまま運ばれ皆に無事である事を大声で伝える。

「おーい一応生きてるぞー」


「あれで生きて帰って来る方がすげぇよ」

「あぁ、あんな状態で生きてる方が確かにすげぇよ」


 波打ち際に下ろされ「お前達がこの魔王を殺したいと思うなら殺せ、手伝うぞ。必要とするなら縄を切ってやれ」と言われ、ナイフを渡している。あ、試されてたんだね俺。

 男はナイフを渡され、迷わず縄を切って俺を救出してくれた。いやー優しくしてて良かったよ。

「はいありがとう。一応皆の前で報告するから家の前に行こうか」


「えーってな訳で勝手に交渉材料として、鹿と猪と砂糖と塩を使わせてもらいました。許して下さい」

 少しざわつき「魔王様の判断なら別に構いません」ってなり、商人は早速物品を見ている。

「んーほぼ手つかずだから結構大きいんですかね」

「砂糖もなんかよい香りが口に広がりますね」

「この塩は角が立ってないし、まろやかですね」

 と、少しだけ品定めしている。

 そして俺に算盤(そろばん)みたいな物を見せ「これくらいでしょうか?」と言って来る。

「正直その道具が何だかわからないです。それに近い物を見た時ならありますが、それと同じ物なのかもわかりません」

「これはですね、勇者様が伝えた計算をある程度簡単にしてくれるものなのです、この一番端が銅貨、次が大銅貨と言った感じです」

 算盤で合ってたわ。

 見てみると大銀貨二の銀貨八の大銅貨三と成っていた、単純計算で八十キログラムとして1kg大銅1か、その他も含まれてるんだろうと思うけど正直物価が解らない。

「信用してくれたお礼に正直に言いますけど、物価がわからないんです。卸値がどのくらいで、売値がどのくらいになるのかが。だから提示された値段が正しいのか、買い叩かれてるのかもわからない。もちろん小麦粉もですね」

 前世だと正直トン幾らの世界だからな。未加工輸入小麦でたしかキロだと50円前後だろ?

米一俵が六十キログラムだから、小麦一袋を六十キログラムで考えて三千円? 一袋原価大銅貨3枚って考えれば良いのか? んー? 考えても相場がわからない。

 けど村から持って来た時に、一袋はそんなに重くなかった気がするな。スズランの方がほんの少しだけ重かったしな。けど小麦粉一カップ百グラムだったよな? 家庭科でやったし……比率? 解らん! 水の二分の一なんじゃね?

 この値段でどのくらいの小麦が買えるんだ? 村に居た時は小麦なんか売った事ないからわからねぇ。町にいた時の小麦の相場は見たけど、卸値とか知らなかったし。

 俺は考えるのを止めた――。


「ならですね。信じてもらうしかないです」

「わかりました。信じましょう」

 後で元商人の奴隷でも買うかな? それか、誰か連れてくるか?

 けど閉鎖された環境ってある意味怖いって事がわかったよ。俺は色々諦めた。

「けど、小麦とジャガイモを買った時の書類ならありますよ」

「あ、見せてください」

「船にあるので、小麦を取りに行く時にでもついて来て下さい」

「わかりました」


 そんな感じで交渉が終わり、船長が鹿肉一頭分を提示した金額で買ってくれて、代金を受け取った。

 ここでバラして焼いて食べると言うので、折角なのでサービスとして薪はこっちで用意した。生木だけどな。

 食事中に船員が沼から流れて来た水を見て「飲めるのか?」と聞いて来たので正直に話し、まだ水は俺が魔法で出していると言ったら、金は払うから体を洗いたい、水を出してくれと言われた。

 魔法使いは水魔法も使えるけど、元々有る水を使って攻撃に利用するから、真水は作れないらしい。

 なので開いている水瓶に、水を満タンにして「飲みたい奴は飲めー」と言って、その辺に【水球】を浮かべ、体や服は勝手に洗わせた。

 海水で体や服は洗えないからな。服は傷むし、体はさっぱりできないし。

 そんな事を考えてたら「ウヒョー」とか言いながら、一人が綺麗な水球に飛び込み「ふぅーキモチイィー」とか言ってる。

 アイツのせいで綺麗な水球が台無しだ。


 そんな事をしていたら、先ほどの魔法使いが興味を持ったのか話しかけて来た。

「どうやって、真水を何もないところから作れるのか? ぜひ教えて欲しいんだが」

 俺は交換条件を出し、相手が承諾したら教える事にした。

「さっきの遠くにいた相手に、言葉を送る方法を教えてくれたら教えますよ」

「それなら簡単だ、風に声を乗せるだけだ」

 風上で喋ると、声が良く聞こえるアレか。

「けど、誰も気が付かなかったらどうするんです?」

「だから事前に言っておいて、そこに向かって風に乗せれば良い」

 一方通行で、相手が意識してないと駄目って事か。今まで必要無かったから使わなかったけど、使い所が限定されるな。少し改良してみるか? 多分改悪だけど。

「真水ですけど、今この空気の中に沢山あるんです」

「ん?」

「たとえば、お湯を沸かすと湯気が出ますよね? あれって物凄く小さくなった水なんです、ですからその小さくなった水がその辺にいっぱいあるんですよ。それを集める感じです。お湯の沸いている鍋の上に、皿とか乗せると水滴に成りますよね? あれと同じです」

 そう言って指先に【水球】を生み出す。

「なるべく広く、たくさん集める様にイメージして」

 そう言うと、持っていた肉を置き、手の平を上に向け集中している。

 少し手が湿ったが上手く行かないらしい。

「じゃぁ、手で水を掬う様にして、その上に集まれって思ってみては?」

 かなり前にクラスメイトに教えた方法だ。そう教えると手の平から水があふれ出し、ダバダバと零れて地面に染み込んでいく。

「魔力効率が悪い。やっぱり水魔法は、その辺に有るのを利用した方が良いな。けど真水が無くなった時は重宝しそうだ。感謝する」

「いえいえ」

「言葉を遠くに運ぶのも、やってみてくれ」

 そう言われたので、風をヴォルフの方に向けながら小声で名前を呼んだら顔を上げてこっちの方を見ている。聞こえていたらしい。『散歩』の『さ』に反応する犬みたいだ。

「成功ですね、今あの狼を呼んだんですけど反応しました」

「そ、そうか。できれば人に試してほしんだが」

「あーすみません、『ねーねー、ちょっとターニャとソーニャを連れてきてほしんだけど』」

 子供達に向かって使ってみる。

そうすると、一人がキョロキョロと辺りを見回し俺を探している。そして俺を見つけたのか二匹とも連れて来てくれた。

「ありがとう。向こうでお肉食べに戻って良いよ」

「はーい」

「どうです?」

「うん……いいんじゃないか?」

 なんか歯切れが悪いがまぁいいか。

「ごめんな、ちょっと呼んだだけなんだ、皆の所に戻って良いよ」

「ワフン!」「ワォン!」と走って戻っていく。

「なぁ、お前。この島の人族の中に特に親しい奴はいないのか?」

「…………あぁ」

「すまなかった」

「平気だ、帰れば嫁も子供も仲間もいるからな」

「寂しい奴め」

「否定できないのが悔しい」


 船乗りや商人達の食事が終わり、商品を受け取りに船まで行ったらコックに「すみません、調理場の水瓶を満たしてほしいんですけど」と言われ、特に断る理由もないので満たしてやったら「洗濯物溜まってるんですけど水球出してもらっていいですかね? お金払うんで」と、待機してる船員が大量に押し寄せて来て、仕方が無いので甲板に【水球】を出して商談に戻る。


「これが買った時の書類です」

 持って来た書類は、買った袋の量と値段が書いてあって、サインと封蝋がしてあった。人族の文字は読めないけど、数字は同じだったからなんとなくわかった。頭の中で暗算し、さっき言われた値段より一袋辺り銅貨2枚ほど高かったが横に流すだけだと儲けないから、仕方ないと思い承諾した。

「書類あるならサインしますけど?」

「書類? 必要あるの?」

「あー小麦とジャガイモを売った数を紙に書いて下さい。それに名前書きますから。大陸に付いて数が合わないと色々と問題も有るでしょう?」

「私個人の商品だから問題無いよ」

 前世とは認識が少し違うらしい

「まぁ、一応どれをどれだけ売りましたよって事を、証明する紙が欲しいんですよ」

「解りました、そう言うなら」

 そう言って、サラサラと何かを書き、名前だと思われる物の後に、俺も名前を書いた。

「一応二枚書いて、お互い持ってれば余計なトラブルは避けられますよ。特に俺とかは物凄く重要です。貴方から買ったっていう証拠に成りますから」

「あーそうだね。君魔王だから変な疑い掛けられたくないですもんね」

 そう言って同じ物をもう一枚作り、俺に渡してくる。

「ありがとうございます」

「後は寝具だね、さて……どうしようかな」

 商人が呟いていたら洗濯してた船員が「俺、俺の売るよ! しばらく床で良いから子供に渡してやって」と言うと、他の船員も数名名乗りを上げた。

「あんたの奴隷って、すげぇ生き生きしてて、あんたがすげぇ優しいって事はわかった。だからお前がさっき言ってた通りせめて子供には与えてやってほしい」

「んだよお前もかよ」

 と二十組の寝具が中古価格で手に入り、小麦もジャガイモも手に入った。余ったお金で紐と空き瓶、漁で使う網も買った。空き瓶は1ダース単位で捨て値で売ってくれた。

小舟で商品を運んで荷卸しをしている最中に、

「また寄りますから、その時にも何か有ったら交換するか売りますよ」と言われ「実は蜂を飼ってましてね。空き瓶を買ったのは蜂蜜を入れて置きたかったからなんですよ」と返したら「あー、確実に寄る理由が出来ちゃいましたよ」

 そんなやり取りをしつつ挨拶をして船に戻って行き湾から船が出て行った。


 その後、毛布を皆で洗い、干してたら子供達がやって来て、

「まおーさま昨日はごめんなさい」

「その。すこしこわくて……おおかみのむれをなっとくさせるためだって、おとなのひとにいわれてたけど」

「おひるまえのきゅうけいのときの、はちみつパンのときだって」

「あーうん、こっちこそ怖がらせちゃってごめんね」

 そう言って全員の頭を撫でてあげた。



閑話


 足を縫い付けられた船員と魔法使い

「ったくよー、なんなんだよあの魔法はよ、しかも敵だった俺に回復魔法まで使いやがって『働けなくなったら船から下ろされるんでしょう?』だと? 余計な御世話だってーんだよ」

「お前の自業自得じゃねぇかよ」

「まさかあんなのが来るとは思わなかっただけだよ、知ってたら攻撃してねぇよ」

「正直アレとはやり合いたくはない。真水の出し方を教えてもらったが、魔力の効率が悪すぎる、なのにあんな大きな水を地面から浮かせた状態で、何個も出すとか知りたくも無かった。しかもあの黒光りしている飛ばしてきたナイフだが、どうやって出したのか、素材が何で出来てるかすら解らない。どの属性なら出せるのかも正直不明だ。闇魔法なのかもしれない、しかも魔族だから両方無詠唱だ。俺なんか炎の槍を五本も出せば良い方だ。あんな小さいのを多く出すのは神経を使う。ぶっちゃけ大きい方が管理は楽なんだよ、アレが全部一人一本ずつ刺さってみろ、船員の半分以上が負傷してたぞ」

「おいおい、魔法使い様がそんな事言っちゃ、俺等が束になっても絶対敵わないじゃねぇかよ」

「だからアレとはやり合いたくないと言っただろう」


 一応魔王に成れただけの実力は有るみたいです。



所持品が増えました

空き瓶5ダース

網2

中古寝具20

どうやって島民を増やすかが当面の課題ですが、船に嵐にでも会ってもらいますかね?

まぁあまりしたくないですが。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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