第52話 犬を助けた時の事
細々と続けてます。
相変わらず不定期です。
今回の内容はほぼ適当です。
20160606修正
朝食後、朝のミーティングをしている。目の前に立っている五十人に役割を与えないといけないからだ。
数は男性二十五人。女性二十人。子供五人だ。
「えー、皆さんの中で狩猟経験がある、もしくはそれを生業としていた方。手を上げてください」
そう言うと手が上がる、男が三人か。多いか少ないかわからないが、いたなら良い。
「じゃあその人は、狩猟班に成ってもらいます。各自がリーダーになり、部下を二人、弓の扱いが上手い人をこの後テストして選びます。じゃあ次は漁師だった、魚を釣っていた、海に潜って魚を取った事があるって方は?」
そう言うと、今度は二人手を上げる。
「先ほどと同じで部下を一人選んでください。小舟が家の脇にまだ残ってたはずですのでそれを使ってください。次に薬草や野草や、食べられる草や茸とかに詳しい方は?」
流石にいないか?と思ったら、女性で一人いた。
「じゃあ同じく部下を、強そうな男性一人女性二人選んでください。残りは、家の近くの森林から開墾してもらったり、雑務や薪や木材を作ってもらいます。じゃぁ、次に子供達」
ビクッと体を震わせ、少し驚いている。昨日飴あげたでしょう?
「この中で一番大きい、お兄さんかお姉さん誰かな?」
女の子が、おずおずと手を上げる。
「そうか、君が一番お姉さんか。じゃぁ、君は他の子供達が、危ない事をしない様に見てなきゃいけない、大切な役割だ。その辺で遊んでても良いけど、森の中に入っちゃ駄目、海に入っても良いけど浅いところまで、もし何かあったり、魔物や動物が出たら、直ぐに近くの大人に知らせるか、大声を上げて助けを呼ぶ本当に大切な役割なんだ。出来るよね?」
俺はしゃがみ、目線を合わせ話しかけると、女の子はコクコクと頷いている。
「よーし良い子だね」
六歳か七歳くらいか?後で簡単な勉強も教えないとな。
「じゃぁ、さっき言った班に分かれて下さい。それぞれ道具を渡しますから」
んー、弓六張じゃ少なかったか。まぁ、各班上手い奴二人に渡して、残りはサポートさせつつ自作させるか。熊の腱の硬さとか弦には使えるのかな?硬すぎても駄目なのか?ガチガチに硬い方が良いのか?良くわからないから任せよう。
「弓は6張しかないので各班のリーダーに1張、後は交互に使いながら自作してください。弦は動物の腱でも良いんだっけ?使えるなら使って下さい」
適当に誤魔化しつつ、作らせる様誘導した。
「あの、武器になる様な物を持たせて下さるんですか?」
「獲物を取らないと、この五十人が餓えて死んじゃいますよ? 俺が毎回私財を使って、小麦粉を持ってくるって訳にも行かないし。あと多めに取って、干し肉にして、なるべく交易で交換したいと考えてます」
「……わかりました」
なんか少し不満そうだ。別にいいじゃないか、武器を与えても。
「それと家畜に出来そうなのがいたら一応報告してください。生け捕りに出来るか皆と相談します」
そう言って弓矢を渡した。
「んじゃ次は漁班。銛と釣り針です、昨日の鹿の角を削って作っておきました。糸の方は少し待っててください。なるべく早く手に入れますので。けど昨日の鹿か熊の腱が使えれば使ってください」
「はい」
「次は野草班。ナイフとスコップで良いかな? 鉈はあった方が良いですかね?」
「鉈はいりませんよ」
「わかりました、あとはいえにあった籠を使ってください」
「はい」
「俺の故郷の道具屋や知り合いを頼って、斧、鉈、鋸を各自10本買って来てあります。残りはこれで開墾作業をしてください。」
「「「はい」」」
「まず第一に怪我をしないように、今まで奴隷でロクに食べてないし、動いてなかったんですから、急に動いて体調が悪くなったら無理をしない事、狩猟班は安全第一、熊とか見かけたら逃げても良いです。漁班は遠くまで行かない事、出来れば湾内が望ましいです。野草班は森の深くまで入らない事、昨日狩って来た熊を見ればわかると思いますが野生動物も居ます。あと残りの部下の方は何がどんな物なのかしっかり見て聞く事、残りの男性は護衛を頼みます、とりあえず何かあったら必死で女性を守る事。んじゃこれはショートソードと小丸盾です」
「うっす」
そう言って受け取る。
「あーそうそう。森の中で男性が一人で女性が三人だけど、間違いを起こさない様に。起したらお前を女にするからな……それだけは覚えておけ」
「う、うっす!」
俺は今まで丁寧に話していたが、少しだけ凄みを効かせて忠告すると、男は股間を押さえて返事をしている。
「あー、あと調査してないから、水はまだ飲まない様に、面倒でも昨日俺が出した水を飲む事。俺は森の中を探索して、使えそうな物や食料や水場を探してきます。休息は適度に取り、昼もしっかり休む事。夕方には戻ると思いますが、遅くなったら先に夕食を食べてて下さい。以上」
そう言うと各々が解れて動き出す。
「あー忘れてた。食事は開拓班の女性が毎日交代で作ってください。食材は小麦粉と残りの肉しかないですけど、運が良ければ昼までに魚と山菜が増えるかもしれませんがね、あと監督はいませんので、気楽にやっててください」
ハハハハハと笑いが出るが、険悪な雰囲気よりかはマシだ。親しそうな奴が「魚頼むぜ」とか言いながら背中を叩いてる。まぁ昨日の昼みたいな感じはないからいいか。
とりあえず俺は、魔王城建設跡地の井戸に来ている。
カップに紐を結び、チャポンと井戸の中に落とし水質調査をする。うん、汚い。全部くみ出してしばらくすれば使えるか?あれ?掃除も必要なんだっけ?とりあえず全部くみ出して掃除してから小屋を建てて、ゴミとか入らないようにしないとな。
後は毒か。正直気が進まないけどな。服を脱いで何重にも畳みソコに水をかけ滴って来るのを待ち、カップに溜まるのを待つ。
んーまだうっすらと濁ってるけど仕方ないか。
そう思いつつ少し口に含み、舌に異常が無いか確認してとりあえずは異常はなかった。あとは遅行性の毒じゃ無い事を祈りつつ、井戸の水を【水球】にして浮かせて、無理矢理中を空にしておく。その後島の中央の山を目指しながら進む事にする。
さらに三十分ほど進み、少し湿地に成っている事を確認し、しばらく歩くと少し水の溜まってる場所を発見した。
水が涌いているのか、流れ込んでるのかわからないが、ここだけ低いのか落ち葉とかで濁っていて殆ど沼だな。少し整備して、かなり小規模の人造湖にして、海の方まで水路を伸ばせば、今の家付近まで水が通せるか?少し周ってみて水が流れ込んでるところを探すか、無かったら沸いてるって事で、どうにかして綺麗になるように考えないとな。
沼を時計回りに歩き、丁度半分ほど回ったところに、小川の様に少しづつ水が流れているのを確認。んーこの水量か。雨が降らないと涸れるか?一定量貯水して、溢れたら流れ出す様にした方が良いな。計画も立てないと。けどまだまだ先だな、頭にだけは入れて置いて、まずは農業用として、今ある家の近くに浅い小規模の溜め池を作って、湾に水が流れる様にしておくか。
あと魚影は無し。これも交易で淡水魚が手に入れば上々、なければ仕方が無いので定期的に帰る約束をしている家に帰り、買って来るのが無難だな。
けど生きた淡水魚を港町で手に入れられるかどうかだな。そうするとあまり売れないだろうな。
問題は島の中心までどうするかだよな、海岸線が歩いて五日程度、時速三kmで歩いても十時間で三十キロメートルで百五十キロメートル。それを円周率で割って、直径約四十八キロメートルとして、島中央まで約二十四キロメートル、しかも真ん中には標高何メートルあるかわからないけど、山が有るからその麓まではどのくらいだ?高さ千メートルメートル程度と見て置くか。この辺も見て置かないと不味いな。
舗装されてない山林を二十キロメートル歩くのは厳しいよな。まぁ迷ったら朝日に向かって歩くか、夕日を背に向かって歩けば良い。
とりあえずあとで、沼に入り込んでる小川を上流に向かって歩くか。魔王城建設予定地もあるくらいだから、一応石材の目星もあるんだろうし。コレでなかったら、前任の馬鹿さを笑ってやるか。とりあえず広場の奥の方に行ってみるか。
しばらく獣道を歩くと、左手奥に少し土が隆起して、五メートルくらいの崖があって、石が露出してる。うん。手付かずだね。笑えなくなったな。いや、まて。ここは跡地から徒歩で十分以上歩いてるから、もう少し近間に採石場があるのかもしれない。もう一度よく見て回るか。
食べられそうな果物類も、自生してれば万々歳なんだけど……。この辺には無いな。
そう思い上を見上げると、そろそろ昼だった。少し別な道を探して帰るかね。
帰り道、別な湿地で赤い親指の爪くらいの、小さな木の実みたいな物を発見したので少し食べてみた、甘酸っぱい木の実だった。
クランベリー?けど前世では、北半球の湿地で生産されてたような?まぁ細かい事は良いか。少し持ち帰って、この辺もあとで山菜班にでも教えて置くか。
あとは魔王城建設予定地周辺の採石場の有無だな。歩いて十分は運搬に不便だろう。
とりあえず予定地付近を慎重にしらべ、細い道を発見したので行って見る。さっきみたいに五メートルくらいの崖に成ってて、横に五十メートル程石が、剥き出しになってる場所を発見。道具も少し錆びついているが残っていた。さっき声に出して笑わなくて正解だったな。この跡地を利用して、もう少し利便性の高い住宅の建設をして、皆に住まわせよう。それまでは向こうで我慢してもらうか。
そう考えてたら「ハッハッハッハッッハッハッハッハ」「ウォーーーーン、ウォーーーーーーン」「キューンキューン」と聞こえた。犬か?
少し近づいてみると、脇腹?まぁ、アバラの辺りから血が大量に出ている。猪にでもやられたのだろうか?
犬は古代から人類の友だからな。見て見ぬふりはできないな。あと俺犬派だったし。
近づくと、前顔部にしわを寄せ、牙を見せ威嚇してくる。仲間に近づくなってか?
毛色は全体的に灰色か、シベリアンハスキーそっくりだな。野生のシベリアンハスキーっているの?
「怖くないよー」
言葉は通じないと思うけど、一応話しかけてみる。
近づくと、更に面構えが凶悪になる。どうしようか。怪我も気になるけど、流石にこのまま見なかった事にはできない。しかも衰弱してるのか、血だらけの犬はこちらを見ようともしない。早くしないとまずいよな。
俺はその場で座り、警戒心がとけるまで犬を見続ける事にする。
どうするかな。強硬手段にでるか。このまま警戒心が薄れるまで待つか。
無理だ。多分あのままだと死ぬ。
俺は、魔力を体から出すイメージをして、威嚇しながら近づく事にした。
仲間だと思われる残りの二匹は逃げなかったが、仰向けになり尻尾をお腹の方に回し、視線を合わせて来ない。
あーごめん。それ服従のポーズだよね。まぁ仕方ない、助ける為だから勘弁してくれ。
血の出ている犬に近づくと、口元に生肉が転がっており、仲間が置いたと思われる。この辺の行動は良くわからないけど「お肉食べて元気になって」か?良くわからんが、そうだと仲間思いで涙が出てくるな。
そのまま怪我している犬に近づき、座って周りに誰もいない事を一応確認してから、回復魔法を使い、血を止めてやる。
多分痛みも減っただろう。その後はぬるま湯で血を洗い流してやる。
そしてよろよろと立ち上り、俺の周りをぐるぐる回りながらすり寄って来る。
俺はしゃがみ「よーしよしよし」と頭を撫でてやる。「君、少し剛毛だねー、可愛い可愛い」その光景を見て、周りの二匹も尻尾を振りながらすり寄って来て、俺に頭をこすりつけて来るので、負けじと頭をこすりつけてやる。
可愛いなこいつ等、俺は少しだけ皆を可愛がり、帰ろうと立ち上ったら後を付いて来る。
「懐かれちゃったよ」
んじゃ帰ろう。夕飯まで食事は我慢できたけど、ここまで来たら夕食までの軽い繋ぎで少し胃に入れておくのも悪くない。
「君達も付いて来るのかい? いいよおいで」そういって仮拠点に帰る。
カーンカーンカーーン、メキメキメキ、ズズーン
おーやってるねぇ、根越しは明日か?
「お疲れ様です体は平気ですか? 気分の方は?」
「おー魔王様、俺は平気だけど、男が2人ぶっ倒れたから家の中で休ませてるぜ」
「そうですか、いきなりは厳しかったったかもしれませんね」
「倒れた奴は、元々ヒョロかったからしかたねぇよ」
「皆に、無理しない様に言っておいて下さい」
「応よ、ところででそいつ狼じゃないっすよね?」
「さぁ? 犬じゃないんですかね?」
「お、狼だぁ!」
別の誰かが叫び、逃げて行く。
「……狼だったみたいです」
「そ、そうですか。お気をつけて」
いきなり丁寧語になるなよ、悲しくなるじゃないか。
「そうか、お前達狼だったか、ごめんなー、犬とか言っちゃって」
「クーン」
そう鳴きながら足元にすり寄って来る。まぁ平気か。
肉余ってるかなー。あーあったわ。
肉をブロックで3匹に与えると、尻尾を振りながら胸に前足を乗せて肉を取ろうとする。「待て待て待て待て、今やるからなー」躾はまだ無理か?それとももう無理か?
肉を与えると野生を剥き出しにして肉を齧っていく。こいつは大食らいだな、犬皿が欲しいな、まぁどうにかなるか、最悪木で作れば良いし。
遅めの、残ってた昼食を食べてると狩猟班と漁班が戻り、それぞれの成果を持って来る。
「いやー手付かずなので、かなりいますね」
「こっちも結構取れましたよ」
「ソレは良かったです、あとは小麦さえあれば食べるのには困りませんね、問題は貨物船が気づいて、この島に来てくれるかですけどね。明日朝にでも狼煙の準備しながら誰かに見張らせますかねぇ……」
「魔王様……ソレって狼ですか?」
「みたいですね、俺は珍しい毛色の犬だと思って助けたんですけど、懐かれちゃいまして、犬とか言って悪かったな」
そう言いながら、頭を撫でる
「クーン」
「狼って懐くのか?」
「知らねぇよ」
君達……聞こえてるよ?
「あーワンちゃん! さわってっていーい?」
子供達が帰って来て騒ぎ出す。
「良いかい? この子達は俺の仲間の子供だから、噛んじゃ駄目だよ?」「ワォン!」
そう言って子供達の前に歩い行き、お座りの姿勢で待機している。賢いなー。
「触っても大丈夫かな? あんまり強く触っちゃ駄目だよ? あと怒ってる時は言うから、直ぐに離れてね」
「はーい、わぁ柔らかーい」「モフモフー」「いいこいいこ」「かっこいいー!」
うん忍耐力は強いようだ。躾して言う事聞かせれば、アニマルセラピーとか、狩りのお供になってくれるかな?狼が人に懐く例も確認されてるけど、子共の頃からの生育だけど平気かな?まぁ、その時はどうにかするか。尻尾も振っているし平気だろう。
「ただいま戻りました、あら狼ですか?」
「みたいですね、懐かれちゃいまして。あとコレなんですけど、食べられますかね?俺はちょっと食べちゃいましたが」
そう言ってクランベリーっぽい物を渡す。
「んー」
唸りながらよく観察して、味を確かめる様に口に含み口の中で転がしている。
「大丈夫そうですね、甘酸っぱくておいしいです。あとで場所を教えてください、摘みに行きますので」
「わかりました、一応この付近で栽培が出来ないかもやってみましょう」
「そうですね」
話しているあいだに、子供達が狼を物凄く撫で回し揉みくちゃにしている。なんか「もう好きにしろよ」ってな悟りの境地になってるな、そろそろ止めるか。
「はーいお子様達よ、そろそろワンちゃんが止めて欲しそうにしてるから、止めてあげようねー」
「「「はーい」」」
「そうそう、この二匹のワンちゃん達に名前を付けて欲しいんだ、出来るかい?」
「「「「うん」」」」
「じゃぁ話し合って決めてあげてね、この子は俺が付けるから」
俺が付けると言ったのは、もちろん怪我をして動けなくなっていた狼だ。
まぁ、愛着が沸いたって事で。
流石にシュペックは不味いよな。あとドックミートもかなり不味いよな。
ポンタ?ジヨセフィーヌ?いやいやいやこれもある意味不味い。片方は、友人の家にいた犬だし。
あー、あの有名な人の飼ってた犬の子犬の一匹から名前を貰おう「ヴォルフ」だ。うん決定。ってかこれドイツ語で狼だっけ?あの人もある意味ひねりがないよな。ちなみに俺もな。
「お兄さんはもう決めたぞー」
「なーにー?」
「ヴォルフだ」
「ボルフー?」
まぁ、まだ小さい子供だから仕方ないか。
「そう、だから皆といっぱい話し合って、皆がこれが良いって名前を付けてやるんだよ」
「はーい」「じゃぁ向こうで決めようぜ」「うん」
そう言って、二匹の狼と一緒に走って行った。子供は無邪気で可愛いねぇ。
俺は、朝と同じように夕食前にミーティングを始める。
「えー少しこの周辺を見て回りましたが、家の横の道を歩いて行くと、前の魔王が城を作ろうとしていた、少し開けた場所がありました。少し落ち着いたらそっちに家を建てるか、作業場みたいなのにしたいと思っています。あと、その城を建てようとした場所から少し進んだら、湿地がありました。沼っぽい場所があり、水が流れ込んでたので整地すれば、水をここまで引けるかもしれません。まだ飲んでないのでわかりませんが、綺麗にして沸かせば飲めるんじゃないか? と思ってます。井戸も掘りたいんですが、ここは海に近いので多分真水は期待できないと思うので、その辺も皆さんと話し合いたいと思ってます。周辺の調査が終わったら開拓を手伝うので、もう少し我慢して下さい。あと調味料ですが、塩くらいなら今からでも作れると思うので、まずは簡単な物から作っていきましょう。俺からは以上です」
「じゃぁ俺も……。猪を見かけたので、森を開拓したら穴か柵を作って飼育してもいいんじゃないかと思ってます」
「俺もある、まだここの魚は警戒心が薄いから取れるけど、なるべく生け捕りにして、生け簀みたいなのを作って、そこ入れて置いた方が良いんじゃないか?」
「私も良いですか? 多分前の人達が捨てたであろうと思われる、野生化したジャガイモを発見しました、麦よりも収穫数が見込めるので、麦と同じく開拓したら育てたいと思います。本当は袋単位くらい大量じゃないと、畑作の意味がないと思いますが、その辺も考慮していただきたいのですが」
「んー、イノシシはかなり凶暴だから、柵だと壊されて逃げ出される可能性があるので穴が良いんじゃないですかね? 少し不衛生ですけど大人しくなるまで猪には我慢してもらう感じで。生け簀は、波打ち際を掘って海の水が入る様にして、逃げられない様にする程度で良いですかね? ジャガイモですが、交易で手に入れられたら一番いいんですけど、最悪私財を投じて買って来るかもしれません。なるべく島の中だけでどれくらい出来るかも試したいんですが、先立つものがないと何もできませんからね。その辺は先に買っちゃいましょう、なので畑を麦とジャガイモ用と少し大きく作りましょうか」
「ワンちゃんわー?」
「あーそうだったね、えー今日探索中怪我をしていた狼を助けたところ懐かれました、『齧っちゃ駄目』と言い聞かせてあるので、ああやって一緒にいて、まだ噛みついてないところを見ると、多分棒で叩いたり、上に乗ろうとして怒らせない限り、噛みついたりはしないと思います。基本放し飼いで、毎日テリトリーの見回りも勝手にしてくれると思いますし、食事も共にしてれば、皆にも懐いてくれると思いますので、極力仲良くして、鼻の良さに期待して夜中の見張りを任せたいと思ってます。一匹は俺が名前を付けましたが、残りの二匹は子供達に任せました何か言われたら相談に乗ってあげるか、もう既に決めてあるのなら聞いてあげて下さい」
俺は子供達の方を向き、目線を合せる。
「皆にワンちゃんの事言ってあげたからね、困った事があったら、俺か誰か大人の人に聞いてね。あと怒らせるようなことしたら齧られちゃうから、したら駄目だよ」
「「「はーい」」」
「んじゃ食事にしましょう」
その日、俺はこっちの世界で、生まれて初めて海魚を食べた。アジの開きを白いご飯と醤油で食いたいな。後で買って来るかな。
閑話
昼頃・昼食の準備をする女性達
「ねぇ、あの魔王様って魔王って感じがしないわよね」
「そう思うわよね? 私もよ?」
「私も」
「皆の事を思って動いてくれてるみたいだし、この鉄板もわざわざ転移魔法陣と私財で買って来たんでしょう?」
「もう少し多く買ってくればいいのに」
「運べるのに限界があるって話よ? だから私達は門みたいなので来たんじゃない」
「まぁ、食事が出て鞭が飛ばないだけマシかしら?」
「子供達にも優しいし、その辺の男共だって子供と目を合わせて喋ったり、子供に言い聞かせる様な話し方しないわよ。それに気分が悪くなったら無理するなとか村でも聞いた事無いわよ」
「ソレは私も思ったわ、なんでこんな風に私達を扱うのかしら?」
「本人に聞いて見たらどう?」
「怖くて聞けないわよ」
「答えてくれるかもしれないわよ?」
「私聞いて見ようかしら」
□
「え? 無理されて病気やケガをしたら、その分人手がなくなり、周りの人がその分辛くなりますし、あと自分がやられて嫌だと思う事はしないって決めてますから。子供に優しくするのは当たり前じゃないんですか? いくら疲れてても、どんなに辛くても子供に当たるのは間違いだと思うんですよね。自分も娘と息子がいるんでその辺の気持ちは良くわかるつもりです。まぁ、誰かに何かやられたら、全力でやり返すくらいの力はあるので魔王に成っちゃいました」
□
「だって」
「その辺の貴族様や、男共より器がでかいじゃないの、なんで人族じゃないのかしら?」
「そうよねー、魔王様に成るくらいだから、それなりに強いんでしょう? 側室にでもしてもらおうかしら?」
「止めときなさいよ、子供が二人も要るって事は、それなりに夫婦の仲が良いって事でしょう?」
「そうよねー」
「けど優しいだけじゃないってわかったじゃない。やられたら全力でやり返すんでしょう? 執念深いかもしれないわよ?」
「けどそれを差し引いても優しいわよね」
「そうよねー、あんな旦那欲しいわー。この島の男にも魔王様みたいなのいないかしら」
「妥協も大切よ」
「けど、今日帰ってきたら狼を三匹も手なずけて帰って来たわよ? なにしたのかしら?」
「懐かれたって言ってたわよね? 本当何をしたのかしら、わからない魔王様ねぇ」
とりあえず女性陣には、優しいって事はわかって貰えたみたいです。
狼の成犬って懐くんでしょうか?
子犬からならなんとなく懐きそうですがね、まぁご都合主義って事でよろしくお願いします。




