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第45話 敵に奇襲を掛けられそうになったからやり返してやった時の事

細々と続けてます。

相変わらず不定期です。

今回は少し長めになっております。

20150201にユニークが3万を超えてました、皆様のおかげです。これからもよろしくお願いします。

20160503修正


途中で人族が出て来てバラバラになったりしますので苦手な方はご注意ください

 エジリンを出て五日後の昼に目的地のテフロイトに到着した。

 道中で、村に休憩にしか寄らなかった場所があったので、想像してた日時より一日だけ早かった。

 道中で囚人達は、俺の中で『萌えないおっさん達』に昇格した。

 理由は、町に着いて宿屋に泊れるのに「地面で寝るのに体を慣らしたい」と言って、町の詰所裏の馬小屋で共に寝る事にして、せめて道中の馬車の中で険悪な空気にならないようにと務めようとしたからだ。

 俺は基本自由なので、夕方から寝るまでの少しの時間で、猫耳の友人が軍隊にいた時の話しをしてもらって「お前がもし戦場に出る事があったら、持ってゃ便利な物があるぞ」と言う話になり、煙草はあった方が良いと教わり購入してきた。俺の周りでも、吸う奴がいなかったから完全に盲点だったし、売っている店も少なかったからな。

 情報のお礼として、詰所にいる兵士に見つからない様に、酒場で酔わない程度の果実酒と、具沢山のスープを小さい鍋で買ってきて、酒はラッパ飲み、スープは俺のカップ一つで、全員で回し飲みした時に、囚人全員がむせび泣いたからだ。

「まさかこんな風になっても、具沢山のスープと酒が飲めるなんて、ありがとう」

 せめて何をして捕まったのかを聞いたら、些細な喧嘩で討伐依頼でレイドを組んでいた相手パーティーと揉めて一人の腕を切落として、連帯責任として捕まったそうだ。多分連帯責任は、多くの囚人兵として最前線に欲しいからだと思う。それからは俺の中で『萌えないおっさん達』になった。

 村にもワーキャットとワーウルフのおっさんは居たけど渋かった。けど狐耳は少し凛々しいので、昔は多分モテたんだと思うが『三人で萌えないおっさん達』が定着してるから仕方ない。ちなみに酒瓶は夜中に酒場に返しに行った。


 町に着いたら、おっさん達はかなり大きめの軍事施設の檻に連れて行かれ、俺はお偉いさんの部屋に連れて行かれた。

「顔を見ておこうと思って呼んだが、お前が噂のカームか、なんだそのみすぼらしい恰好は、鎧一つどころか、まともな武器も買えないのか。噂は聞いてるが、尾ひれがついてデカくなったのが、クラヴァッテ様のお耳に入っただけだろう。所詮訓練されてない、ギルドランク4のペーペーなんだから、軍の足を引っ張るなよ」

と手元に有る書類らしき紙に目を通しながら高圧的な態度で言い放つ。なんだこの糞豚は。

「わかりました」

「ふん、殊勝な態度じゃないか」

「えぇ、言われなくとも自分は軍属経験がありませんので」

「わかってるなら良い下がれ」

「それと一つ聞きたい事が。クラヴァッテ様から頂いたこの命令書に『出発までの滞在費は、テフロイトの軍事関係の代表者から支給してもらう事』と有るので頂きたいのですが」

「知らん! 儂は出さぬぞ」

「書いてありますが?」

 頭に来たから少し煽っていくか。

「うるさい!出ていけ!」

「わかりました。この件は、クラヴァッテ様に報告させていただきますので」

 そう言って相手が俺を引き留めようと「おい!待て!」と言っていたが、逃げるように部屋を出て来た。案内された道は覚えているので、足早に施設を出て来た。

 多分もう会う事はないだろう。

 そして、それからの俺の行動は早かった。

 門の前の宿屋に行き、一番安い部屋の値段を聞き。クラヴァッテ様がいるであろう屋敷の場所を聞き出して、そこに向かう事にした。

 エジリンとは違い、上級区は反りが付いている高い塀で囲まれていて、中に入るのには、一つしかない門を通るしかないらしい。

 多分だが、命令書でどうにかなるだろうと思い伺う事にする。


 俺は門の前に着き、案の定警備をしている兵士に止められた。

「どこの家に行くんでしょうか? 招待状はお持ちですか?」

 一応、上級区に要件の有る客人かもしれないから、物凄く物腰が丁寧だ。ここの兵士は私的に雇われてる人達なのかもしれない。

「招待状はありませんが、クラヴァッテ様より頂いた召喚命令書があります、この事に付いて伺いたい事があるので、足を運ぼうと思っています」

「わりました、クラヴァッテ様なら『私に用事のある者が来たら、商人じゃなければ通せ』と言われてますのでご案内します」

 良かった、これで門前払いされてたら、実費で宿に泊まる事になってたわ。


 俺は兵士の後を付いて歩くが、門から一度も道を曲がっていない。十字路もあるが、すべて真っ直ぐ進んでいく。

 そして、突き当りのかなり大きな家の前に案内され、

「こちらでございます」

 案内要らねぇなコレ?けど「この門を出てどこまでもまっすぐお進みください」じゃ、仕事上駄目なんだろうな。

「ありがとうございました」

 丁寧にお辞儀をしたら相手も返してくれた。んーこういう人達ばかりの兵士なら絶対に仲良くなれるのにな。


 そのやり取りを門の前でずっと立っている別の兵士に見られていたが、こっちも私的に雇われた人だろう。屈強そうな体で、威圧的なのに「どうぞご案内します」と、野太い声で言われ、門から玄関のドアまでの三十メートルくらいを案内された。

 屈強な男がドアをノックすると、中からメイド服を着た犬耳の落ち着いた雰囲気の人が出て来て、門番が「お客様だ、お通ししてくれ」と言って門まで戻っていく。

 あーこのメイド服良いな。物凄く地味で機能性重視で、汚れても良いような感じのだし、ミニスカでヒラヒラした、露出の高い物とは全然違う。やっぱりメイド服って言ったらこれだよな。

「お客様、どのようなご用件でしょうか?」

 そんな事を考えてたら、いきなり話しかけられたので少し焦った。

 命令書が届き、この町の軍関係の偉い人に会ったけど、滞在費を支給してくれないので、報告に来た事を告げると「荷物はこちらへ」と言われ、そのまま応接室に通された。

 今度は、狐耳のメイドがお茶を持って来て「クラヴァッテ様は、もう少しで参られますので、もうしばらくお待ちください」と言って出て行った。

 何あの狐耳のメイドさん、絶対ドSじゃね?って言うくらい目付きが鋭く、冷めた目で俺の方を見てたよ。興奮しちゃうじゃないか。

 体感で十分もしない内に、爽やかすぎるボルゾイ風の男が入って来た。この方がクラヴァッテ様か。立ち上がり、頭を下げようとしたら「あーいいよいいよ、そのまま楽にしてて」と、フランクに言われてしまった。

「初めましてカーム君、噂は聞いてるよ。聞いた話だと、あの強欲豚に何か言われたみたいだね」

 あの強欲豚って、この人もスゲェ事笑顔で言うな。

「えぇ、この命令書を見せ、滞在費の件を申し上げたところ」

「別に喋り方は普段通りで構わないよ、堅苦しいのは苦手なんだ」

 と遮られた。裏でさっきの狐耳のメイドが、ずっと俺の方を見てるからヘタな事は言えないな。

「滞在費の事を言ったんですが『知らん』『出さぬ』と言われ、もう一度聞き返したんですが『うるさい! 出ていけ!』と追い返されまして。ギルド支部に行けばギルドカードが有るので引き出せない事は無いのですが」

「あーそうだね。あの豚は、私腹を肥やす事しか頭にないから、それくらいの宿代も出すのを惜しんだんだね。銀貨十枚渡してあったんだけど……。ちょっと持って来てよ」

 裏にいた狐耳メイドに、持って来てと言った。多分滞在費だろう。

「途中で頭にきて出て来たので、いつ出発するのかがわからないのですが、教えてくれますか?」

「三日後だね。昼に門の前に集合して、現地に向かうから、昼は早めに食べて門の外で待っててくれ。輜重(しちょう)兵の隊長に声をかけるように言っておく。君の特徴は覚えやすいからね、特徴のある肌の色に大きなへんなリュックにスコップ」

 そんな事を、お茶を飲みながら答えてくれる。本当にこの辺を統治する貴族なのか?なんか物凄く性格が良いって聞いてるが、俺の知ってる漫画とかの貴族の威厳って物が全く無い。

 しばらくして、メイドがお盆に小さな布袋を乗せ戻って戻って来て、クラヴァッテに渡し、袋の中を確認してテーブルに置き、俺に渡してくる。

「多分足りるだろう」

 想像はしていたが、袋の中を見て驚く、銀貨が十枚入っている。多すぎだ。

「いや、物凄く多いです。俺は待機日数分の、町の入口近くの門の前の宿屋の部屋代だけで良いんです、あとあのお偉いさんの態度を報告しに来ただけですから」

 慌てて引っ込める。

「じゃー、必要な分だけ持って行って。あの豚ねー、どうにかして処理したいんだけどね、どうやって処理しようか迷ってて」

「ご主人様、それ以上は」

 物凄く冷たい声で会話を切った。

「あーすまない、いきなり来てくれたお客様に愚痴る事じゃないな」

 変なやり取りの後に、銀貨を一枚だけ抜き取る。

「それだけ?」

「はい、一泊大銅貨三枚の銅貨五枚でしたので」

「銀貨一枚じゃ、銅貨五枚足りないだろう」

「これだけ頂ければ、残りの銅貨五枚は、自分で出しても痛くないですから」

「食事代は?」

「それくらいは自分で」

「駄目だ、僕が呼んだんだから、君には不自由は極力させたくない」

 そう言って、銀貨を二枚渡してくる。多めに渡すと突き返されるのを悟ったのだろう。絶妙な金額の上乗せで俺も手を出そうか悩む。

「ん? 足りないか、もう一枚出すか」と言ったので「いやいや十分ですので」と言って出された二枚を回収する。

 大雑把で飄々としてるが、この人心理状態とか読むのが上手いな。やっぱ貴族かもしれない。

 そうして別れを告げ、宿屋に部屋を取りに行き戻り、夕方に近所の酒場へ行く事にした。


 これだけ大きな町だ、大通りの酒場に行けば兵士の一人や二人。ギルド所属っぽい奴が飲んでるだろう。禁酒令が出てなければだけど。

 いたいた、門番をしてたであろうと思われる、薄い板金鎧を着て、フルフェイス兜を椅子の脇に置いたまま飲んでる、獣人系の二人組が。

 ここはもう度胸しかない。

「すみません、ちょっと酒を1杯奢るので、教えて欲しい事があるんですが」

 知らない奴に、いきなり酒場でこのように話しかけられ、多少警戒はするが「なんだ」と返されたので続ける事にする。

「兵士が戦場に行って、足り無くなって困る物って何ですか?」

「あ゛? そんな事かよ。そうだなー」

 と言いながら、食糧、武器、矢、など色々な物を上げて来るが、向かいで飲んでた相方らしき男が「有って便利なのは油だな、鎧の可動部分に注すんだよ」「あー有った方が便利だな、錆び止めになるし」と言い始めたところで、簡単にメモを取る。

「あ、給仕のお姉さん。このテーブルに同じお酒、二つ持って来てー」

 と言って、お礼を言って帰って来た。


 んー油か、完全に盲点だったな。俺鎧着ないし……、そもそも戦場で調理とかもあまりしないって思ってたからな。砦の中には有ると思うが、手間は掛けてられないだろうな。鎧専用の油とかあるのか?いいや代用品って事で調理油を少し買って行くか。

 後は煙草がアリならアレも買って行くか。

 煙を吸うと癖になるアレも。ナニカニハツカエルダロウ。



 三日後。

 俺は早めの昼を済ませ、ギルド支店で使った金の補充を多めにして、門の外に出て待っていた。

 俺は三日の間に防壁に上り、軍隊の訓練の様子とかを見ていた。

三千人くらいが、思ってた通り横に並び、数列に並び突撃。ローマ軍の歩兵戦術の一つテストゥドや、弓や乗戦の訓練をしていた。それにしてもこの町も兵士も獣人系が多いな。

 んーこりゃ駄目だな。攻城戦みたいな乱戦なら兎も角、平地だと横に並んで集団で突撃コースだぞ。近代なら狙い撃ちや迫撃砲の餌食だな。

 人族の、魔法を使った戦術とかどうなってるかわからないけど 集団に当てに行くだけかもしれない。


そんな事を思っていたら爬虫類系のおっさんに話しかけられた。

「貴方がカーム殿ですか?」

「えぇ、そうです。貴方が輜重兵の隊長さんで? あと敬称は要りませんよ」

「わかりましたカームさん、自分はヤウールと言います。以後お見知りおきを」

「こちらこそ」

 うわー、すごい丁寧な物腰だな。敬称要らないって言ったのに。今までの兵士が最低だったって思おう。

「確認しますが、カームさんの役割は輜重兵の護衛です。最後尾の馬車に付いて下さい」

「わかりました、その馬車は?」

「案内しますよ、こちらです」

 そう言われ、兵士が並んでいる脇を抜け、裏の方の馬車まで歩いて行く。

「この馬車が最後尾になるので、こちらへ荷物を載せてください、そのリュックが入る位の場所はあると思います。なければ箱や、樽の上へ乗せちゃってください」

「わかりました」

 うわー緩いなー。厳しずぎるのと、緩すぎるのどっちがマシかって言われたら、軍的には厳しい方が良いけど、俺的には緩い方が良いな。

 けど遊撃隊とかに襲われやすいから、気だけは引き締めて欲しいな。

 現代でも、物資を運ぶ部隊は、ゲリラや航空機攻撃の対象だったしな。


 そんな緩い感じで豚の演説が始まり最前線基地への援軍と補給物資を届けに行く事になった。

ってか豚が何を話してるか遠くて聞こえねぇし。


 話によれば、徒歩で五日のところにあるらしい。歩いて五日の国境線って、押され気味じゃないのか?まぁ、世界情勢とか全く関係ない土地に住んでたからな。仕方ない、日本もある意味平和だったし。

 そう思いながらも、部隊の奴等と仲良くなりながら、俺だけ音を立てずに歩いている、むしろ周りがガチャガチャうるさいんだけどな。



 徒歩開始から4日目。

「なぁキース、そろそろ敵の遊撃部隊や、斥候が徘徊してるかもしれないから、気を付けようぜ」

「そうだなそろそろ気を引き締めないとな」

 俺等は、馬車の後方で警戒をしながら歩いている。本当に最後尾だ。

 そしてこのキースという奴は犬耳の俺と同じギルドから雇われた奴らしい。耳はタレ耳では無く短めでピンと立っている。タレ耳の方が可愛いのにな。あ、動物の話しね。

 同じ雇われ者として仲良くなり、現在に至る。

 なるべく、お互い歩行側を警戒しつつ、後ろにも注意を払う。

「なぁ、獣人族って鼻は良いのか?」

「んあ?良いぜ」

「なら臭いにも気を配ってくれ」

「あいよ」

 そう言いながら歩くが、平地の少し草が高い所が不自然に揺れたのを見逃さなかった。

 人族もゴブリンと同じだな。キースは風上なので気が付いていない、俺は小さな【水球】を足元に飛ばし、キースが無言でこちらを見てくる。

 事前に、異常時のサインを決めてあるので、声は出して来ない。

 俺は二本指で自分の目を、目潰しするように指差してから、茂みの方を見て人差し指と中指をくっ付けて茂みの方を二回指差す。敵の合図だ。

 そして指を三本出し、順番に一本ずつ折っていく。

 下手に動くとばれるので俺が先制攻撃を仕掛ける事にする。

 ドットサイトをオンにして『イメージ・視線の先・小爆発・発動』

 ゴウッ!とガスに引火したような火が巻き起こる。気密性の高い物に入ってないと派手な爆音とかはならないからな。けど奇襲にはなったはずだ。

「左側に敵だ!」

 そう叫びながら、右手に【黒曜石の斧】を生成し、左手にスコップを持ちながら距離を一気に詰める。

 キースが慌てて立ち上がった人族に、矢を射ってゆく。

 俺も、斧を太ももに当て、他の人族をスコップを平にして頭を殴っていく。寝かせて斧の様に使ってないから、多分気絶で済んでいて欲しい。兜あるし。

 合計で十人か、一小隊分か?

 キースが射った人族は、見事に急所か血管の太い所に当たっており、放って置いても何もできずに死ぬと思うし、手当しても無駄だろう。

 俺もそろそろ、殺しの覚悟を決めておいた方が良いのかもしれない。

 後から駆け付けた兵士が、生きている数人を取り囲み、騒ぎを聞きつけたヤウールがやって来る。

「お手柄ですよ、襲われる前に片付けてくれてありがとうございます。生きてる奴を縛って下さい、後で交渉なり拷問にでもかけますので。いやー良く生かしておいてくれました」

 そう言って、苦しんでる奴等に止めを刺し、俺が殴って気絶している奴だけ縛らせている。

「おーい大丈夫だー、そのまま進めー」

 そう言って、馬車を進ませるが、俺は周りの警戒を続けている。他に斥候がいたら困るからな。

 ヤウールさんが、俺に何か礼を言っているが、相槌だけかえして周りを見渡すのを止めない。

 俺は遠くの茂みを指指し。

「あそこ、風が無いのに変に揺れてますよね」

 と言ったら、ヤウールさんが「おい!」と言うと周りの兵士たちが駆け出し、動いている茂みに駆け寄り、槍を地面に刺すような動作をしているので、多分いたんだろう。



『第一部隊の十四名がやられた、四人が捕まって俺だけが逃げて来た、全滅だ。奴らに恐ろしく感の良い奴か注意深い奴が居る、いきなり魔法を撃たれた、多分傭兵だ』

『そうか、だが我々の任務は、輜重兵の物資の破壊だ、どうにかして……いや、必ず破壊しなければ、砦に食料や武器や医療品が届き、そこから最前線に物資が運ばれる事になる、そうすればこちらが不利になる』

『そうですが、減った我々だけで、どの様にどうすればいいかわかりません』

『この先に森が有る、森に潜んでる第三部隊と合流してどうにかしてそこで少しでも数を減らすんだ』

『わかりました。自分も、この第二部隊に加わります』

『わかった、急いで移動するぞ』



 襲撃から一時間後、また奇襲が有るかもしれないと言う事で、歩兵部隊の間に輜重兵が入り、進行速度が大幅に落ちている。援軍に行く皆に奇襲されそうになったと言う話が回ったからだ。

「少し良いですか、ヤウールさん」

 俺は部隊の一番前まで走って行き、思いついた事を告げる。

「この先に森があります、俺が敵なら、そこで奇襲をかけます。軍に所属してない俺に先行させてください」

 森で襲われたくないからな。

「んー、確かにカーム君は傭兵として、輜重兵の護衛を任されてるけど、前後に歩兵部隊がいるから平気かな? ちょっとわからないけど、軍とは違うし、そう言う考えなら離れても護衛とも言えるのかな? まぁキース君もいるからこっちは任せてくれていいよ、気を付けてね。けど危なくなったら逃げて来るんだよ」

「わかりました」

 そう言ってスコップを置き、馬車の中のリュックから、深緑の服を取り出して着替え、体中に粘液を纏い草原で【ウインドカッター】を使って転がり、即席ギリースーツを作る。歩兵部隊や輜重兵が奇妙な目で見て来るが、脇道に反れて草むらの中を移動し、マチェットだけを持って森に向かう。

 殺しはしたくないが、殺されるのはもっと嫌だ。だったら危険は少ない方が良いし、殺す方が良い。


 道は整備はされてるけど、森が深いな。迂回すると時間がかかるらしいから森を通るらしいが、どのくらい危険か、魔物がどれだけいたかを口頭で伝えてるので、報告書はあるが俺みたいな雇われが、事前に地図と書類を見せてもらえるはずも無い。だから『俺なら』と言う感じだ。むしろゲームとかのイベントで森の左右から敵が出てきたりしそうな場所を探す。気は乗らないが、仕事なのでやるしかない。そう心に言い聞かせ覚悟を決める。

 皆より一足先に森に入り、道から目視五十メートル離れた場所付近をゆっくり音を立てずに中腰で歩く。

 森に入り一キロメートル付近、丁度後列の四人一列の歩兵部隊が全部入りきる辺りが個人的狙い目だと思い、一端止まり耳に神経を収集し、森の中には無い音を拾う事にする。

 前後に歩兵部隊がいたら、輜重兵が逃げられないからな。俺ならこの辺で襲う。

 しばらく音を聞くが、聞こえないのでゆっくりと移動する事にした。

それから十五分、距離にして七百メートル程度進むと、微かに話し声が聞こえる。

『そろそろだろうか?』

『もうすこしだろう』

『俺はちょっとションベンに行って来る』

 何を喋っているかは、大陸共通語ではなかったのでわからないが、この先にいるのは確かだ。

 そうしたら一人がフラフラッと離れて行くのが見える。……アイツからか。

 俺はバクバク鳴っている心臓を落ち着かせる為に、大きく深呼吸を二回してからゆっくりと近づく。森の中の奇襲って事で、人族は鎧は脱いでいるらしい。

 部隊から離れた人族は、少し離れた木の近くでズボンの紐を緩め上を見始めた。

 この人族は、排尿の為に部隊から離れたらしい。単独行動とはなかなか舐められてるな。

 コレはもうやるしかないよな。とっくに覚悟を決めたつもりだったが、なかなか踏ん切りがなかなかつかず、喉を切ろうとして出した【黒曜石のナイフ】を、どう持って良いかわからなくなった。

 ジョボジョボと音が聞こえてきたので、俺はもう一度深呼吸をして近づき、左手で口を塞ぎ、結局順手で持ったナイフを横から串を刺す様にしてのどに突き刺しそのまま手を外に振る様にして切り裂き、体が少し痙攣し動かなくなったらゆっくりと地面に寝かせる。

 心臓が更にバクバクなっているが、これで終わりではない。潜んでいる敵を処理しなくてはならない。俺は中腰でゆっくりと近づき数を数える。

 十五人?さっき一人倒したから、片側十六人だと!?さっきの部隊も十四人程度だったらしいからな。多分もう片方にも確実にいるな。コレは勘だ。片方から襲撃するより両側からの方が良いに決まってる。

 喉が渇き、ハーッハーッと軽い運動をしたような息遣いになってる自分に気が付き、慌てて口を閉じた。ナイフじゃ全員倒す前に気が付かれる、仕方ないがあまり使いたくなかった魔法を解禁させる。

 散弾だ。石弾を多数生成してサブマシンガンの様に撃ち込んでも良いが、急所を外し生き残られるのも困る。

 現実世界と違って、火薬で打ち出さないからほぼ無音だし、板金鎧や皮鎧すら着てないから、当たっても多分あまり音がしないだろう。事前に色々な動物で試しておくべきだったな。

 そう思い、俺は全員しとめる覚悟を決めた。


『イメージ・一センチメートルの球状のマラカイトを十個・秒速四百メートル・直径三センチメートルで纏めて射出』

 視線の先に見えている赤い点を人族の胴体に合せ頭の中で『ダンッ』と射出して『ジャッカン』と排莢する為に、ポンプアクションをする音を、ゲームのショットガンの音を思い出しながら、マラカイト弾を次々と発射していく。

 小さな(つぶて)が肉にめり込む音が聞こえ、一発目で二人が吹き飛び、二発目で一人の胴体が千切れ、残りがこちらに気が付くがもう遅い。

 人族は、いきなり吹き飛び、千切れたのを見ても、最初何が起こってるかわからないような感じで俺を見て、なんだかわからない様子で声すらも出さなかった。

『コレはリアルすぎるゲーム、コレはリアルなゲーム。臓物の臭いや血しぶきが飛び散って、顔に付き生暖かく感じるゲーム』

 日本語で呟きながら、脳で無理矢理変換して、機械的に次々と敵を処理していく。

『ははは、リロード必要ねぇや。ポンプアクションだけすれば、弾が無限に出るんだからな。これで全員だっけ? あぁ、道の向こうにもいるんだっけ。このまま道を渡って正面から倒した方が良いのか? 裏を取るか? 俺なら裏を取って背中から撃ち殺すな、だって集団でキャンプしてるんだからな。あー良い鴨だぜ。これでチームに貢献できるな。食らえ丈○郎、エメラルドス○ラッシュ』

とボソボソと呟きながら処理をする。

 何を話しているのか解らない15人の人族はそのまま動けずナマモノになった。


 道を見ると歩兵部隊の先頭が小さく見え始める。あの軍行速度だと輜重兵まで十分って所か余裕だな。


 道の向こう側に回り込むため進行方向に中腰で三十m程小走りで移動して道を堂々と横断してまた歩兵部隊が歩いて来る方になるべく足音を立てない様に注意して歩く。

 金髪を発見。もう少し道から離れるか頭を下げるかしろよ、森の中じゃ丸解りじゃないか。

俺は歩兵部隊に流れ弾が行かない様に注意しつつ集団キャンプしている奴らに向かって処理を始める。

『フー、31キル0デスか、調子が良いな今日の俺は……はぁ。……畜生、俺は何をやってるんだ。ははっ……畜生――』

 ナマモノを見ながら呟き、乾いた笑いを出していた。


『気分じゃないが、使える物を探そうドロップ品だ』

 独り言を言いながら、千切れ飛んだ下半身の腰の当たりから皮の小物入れを見つけ、比較的無事な奴だけを見つけ出して漁り出す。

『人族の貨幣と煙草とパイプか。まぁ、無いよりはマシだ。換金もできるって話だからな。色的に銀貨か? それが十三枚っと……』

 取る物を取ったら、腰についている草をかき分け、戦利品をポケットにしまい道に出て両手を振り叫ぶ。

『おーい』

 出来るだけ大声で叫び、歩兵達を呼ぶ。

 馬に乗った隊長らしき、羊っぽい獣人族がやって来た。

「貴様何者だ!」

 あ、俺日本語使ってた。しかも全身草まみれの血まみれで、目元しか出てないのは流石に怪しいか。

「ギルドから派遣され、輜重兵の護衛をしていたカームと言います。ヤウール隊長の許可をもらい、単独で森に入り、敵を探し出し処理してました。ここから先に進む場合は更に警戒してください、まだいるかもしれません」

「わかった。して、その殺した敵は!」

「左右の茂みにいます」

 そう言って、俺は両手を広げ指を指す。

「わかった部下に確認させよう」

 そう言うと、列の1番前の兵士四人を連れて戻って来て、確認させに行った。

 そして四人は涙目になり、口元を汚しながら帰って来た。

「こちらは十人以上の人族を確認」

「こちらも、おそらく十人以上だと思われます」

「何だその報告は! はっきりしろ!」

 そして四人は狼狽えながら。

「頭を数えましたが損傷が激しく、体がなかったり、体はあるのに頭がない者があり、詳しい数は……ですが首を切られ死んでいた者は一人いました」

 あー、あの立ションか。

「こちらもほぼ同じです」

「実際はどうなんだ? どうしてそんなに体を損壊させた」

 俺の方を見て言ってくる。

「十五人の十六人だと思います、俺は護衛として雇われたので、早くしないと皆が危ないと思い魔法で一掃しました」

「わ……わかった、そう伝えておこう。輜重兵の援護に戻れ」

「了解」

「化け物め……」

 俺は血まみれ草まみれの状態で、輜重兵達が来るまで隊列を組んで歩く歩兵たちにジロジロ見られながら待つ事にした。

「どうしたカーム、すげぇ目が座ってて別人みたいだぞ?」

「あぁ、気にしないでくれ」

「声もすごく低くて怖いな、少し落ち着けよ」

「あぁ、気にしないでくれ」

 そう言って馬車の左右にお互い戻るが、キースがこちらを心配そうに見ている。

 俺の何かがおかしいのか?

 そして森を抜けたら、大休止になり昼食が配られた。

 相変わらず黒パンと干し肉だけだった。

「なぁ、いつまでそんな格好してるんだ?」

「戦場で飯食う時に、鎧脱がないのと同じだよ」

 その後は、お互い無言で飯を食べるが、キースはなんか可愛そうな眼をしてこちらを見ている。

 昼食を食べ終わり、無言で空を虚ろな目で眺めていたら、キースがやけに低い声で脅す様に話しかけて来た。

「いいからその格好辞めろ……そして体を拭いて血の臭いを取れ」

「でもこの先にまだ――」

「うるせえよ!」

 会話の途中で、そう言いながら思い切り腹を殴られ、胸倉を掴まれた。

「大体何があったかはわかる、だからこそ経験者の話は聞いておけ」

 キースは、俺が初めて殺しを経験した事に気が付いたのか、いつもの雰囲気とは思えない声で、胸倉をつかんだまま耳元で真剣に言って来る。

「わかったなら着替えろ」

「……わかったよ」

 馬車から着替えとタオルを出して、ぬるま湯の巨大な【水球】を出し、そこに倒れ込む様にして入り、全身の草や血を洗い流し、体を拭いて馬車の幌に濡れた着替えを干しておく。

「なんか気がまぎれる様な物はないのか? あるならそれで紛らわせろ」

 そう言って、どこかに行ってしまった。

「紛らわせろ……か」

 先ほど手に入れた、前世でもあまり吸った事の無かった煙草を、何故か吸おうと思い、パイプに刻んである草を詰め、指先から【火】を出して、火を付けて吸ってみる事にした。

 前世で紙巻き煙草を吸った時はむせたが、フィルターを通して無い煙を直接口に含み、スーーッと肺に入れ、ハーーッと深呼吸みたいにして煙を吐き出す。

 毒耐性が効いてるのか、むせる事も無い。煙を吸った時の何とも言えない味が口内に広がり、変な感じがする。コレの何が良いのかわからない。パイプや葉巻は肺に入れず、香りを楽しむ物と言う知識はあるが、焼き菓子を焼くバターや、砂糖が焦げる香り、新鮮な果物の香りの方が何倍もマシだ。

 だが火を付けてしまったので、戻す訳にも行かず、誰かに「吸うかい?」と聞こうとしても周りに誰もいない。

 獣人族は鼻が良いから、多分嫌いな奴が多いんだろう。

 仕方がないので残りもふかしてしまおう。口腔喫煙(ふかし)って言うんだっけ?

 あー不味いなー。俺にはタールやニコチンは必要はないな、甘味をくれ。

 ボーッと空を眺めながら、そんな事を考えてたらキースが戻って来て、俺を見ると少し距離を取った。

「お前、今まで煙草なんかやってなかったよな?」

「あぁ、今初めてやったさ、さっき偶然拾った……からな。けどやらない方が良いな、煙や臭いで敵にばれるかもしれない。で、これの処理ってどうするか知ってる?」

「知るか! その辺に捨てて、火事にならない様にしておけ」

「だよなー」

 そう言って、パイプを逆さにして灰を落とし、足で踏み消し戦利品としてリュックに突っ込み、飴を取り出し口に入れるが、先ほどのタバコのせいでいつもと味が違う。

「不味い」

 煙草を止めて太るって言うのは、食べ物がおいしく感じるからって言うのは本当かもしれない。

 その内昼休憩も終わり、進軍を再開するが奇襲もなく夜になり、野営の準備を始め、具の少ないスープと一緒に黒パンを胃に流し込み、食事を終了させる。

 そして俺はとある場所に向かい始める。娼婦のところだ。

 戦場に向かう一団の中、夜に金の入った袋を持って、どこかに行こうとしてたら、目的は聞かなくても誰にだってわかる。だから散々キースにからかわれたが、そういう事目的ではない、癒しが欲しかっただけだ。

「俺も行こうっと」

 散々俺の事からかって置いて自分も行くのかよ!


 俺は一角だけ妙な空気の、小さなテントが並んでいる場所まで行き、目的に合った娼婦を探し始める。

 小さなテントの前に女性が立っていれば客待ち中だ、わかりやすい。

 俺は、露出の多い女性達に声を掛けられながら、目的の女性を探し歩く事にする。

 いた、狐耳の獣人族の女性だ。

「良いかい?」と声をかけ「えぇ、大丈夫よ」と、女性がテントの入り口を捲るが。わからない事だらけなので、正直に聞く事にする。

「こういうのは初めてなんだけど、どういう風な感じで事が進むんですか?」

「そうね……まずは料金先払いで、時間はこの小さな穴の開いた器に水を入れて、水が全部無くなるまで、数が多いんだから一晩中相手にしてられないよ。で、どうなの?」

「料金は?」

「一回大銅貨五枚」

「失礼かもしれないけど、随分安いんだね」

「男なんか沢山いるし、その気になればすぐに出せるんでしょ? さっさと出して帰っていくのも多いわ。あ、処理が面倒だから最後は外よ、あと乱暴な事は駄目よ」

 随分生々しいな、あと病気とかもかなり怖い。

「大体わかったよ」

 そう言って、女性から先に入っていく。

 料金を支払い、女性が脱ごうとしていたところで、俺がそれを止める。

「なに? 貴方って服を着てた方が好みなの? まぁ良いわ」

 フフッと笑いながら、穴の開いた器に水を入れ始め、女性がスカートを捲る。

そして露わになるフサフサの尻尾、そして下着を脱ごうとしてたが、それも止めさせた。

「貴方、相当変わってるわね」

 こういって言って女性は寝転がる。

 そして俺は直ぐに横に座り、尻尾を撫ではじめる。

「ちょ、ちょっと何をしてるのよ!」

「尻尾を撫でてる、このままフサフサしたりモフモフしたりニギニギしたりフリフリしたりする」

「私を抱きに来たんじゃないの!?」

「金を払ったから俺は客だ、別に乱暴な事はしていない」

 金を払えば客だと言う考えはかなり最低だがソコまでの余裕は俺にはもう残っていない。会話中もしっかりモフモフしている。

「……まぁ良いわ」

 認められたので良しとしよう。そして、しばらく撫でたり握ったり振ったりしていたら、女性から話しかけて来た。

「獣人族の尻尾はね、本当は好きな人にしか触らせないの」

「じゃぁ、なんで触らせてるんですか?」

 モフモフモフモフ

「こんな仕事してる時点で、そんな事言う権利はないと思ってるの」

 フサフサフサフサ

「そうですか……。俺もさ、実はこういう事するつもりはなかったんですよ、金を払ったから客だって言っちゃいましたけど。けど、今日物凄く嫌な事があって、乾いた心に潤いが欲しかったんです」

 ニギニギフリフリ

「何よそれ。だからこんなことをしているの?」

「えぇ」

「なら、その辺の男の触れば良いでしょ?」

「見た目が嫌だ」

「そう……」

「しかも男が男に触られてうれしいと思います?」

「……思わないわ」

「でしょう? おれも男の尻尾を撫でたいとは思わないですよ」

 そんな会話中も、しっかり撫でている。

「動物だったらオスメス関係ないんだけど、魔族だったら大有りですよ」

「そうね、たしかにそうだわ」

 そうしてしばらく尻尾で遊んでいたら、耳も触りたくなった。

「頭の上の耳も触ってよいですか?」

「駄目」

「そうですか……そっちは諦めます」

「けど、今日何があったか教えてくれたら、少しだけなら良いわよ」

そうやって聞き出して移動中の話題にするんだろうな。

「俺は、ギルドで日雇いの仕事しかしてないで、討伐とかの依頼はほとんど受けた事がないんですよね。極端な怖がりで怪我もしたくないし、殺されたくないって理由なんだけど、偶に知り合いに誘われて、討伐に協力するだけだったんです。生きてる豚とか羊を殺すのも、できればしたくない。けど俺って色々すごいらしくて、噂が独り歩きしちゃって、テフロイトの貴族様の耳に入っちゃって、護衛の命令書が来て、今日の昼前に初めて魔物や動物以外を殺した、童貞を捨てたとか切ったって言うのかな?」

「……そう。新人の兵士さんがよくなっちゃう心の病気ね、気にしない事が一番よ」

「しかもいきなり三十一人なんだ、未だに飛び散った血の生暖かさを思い出すし、内臓の臭いが鼻から離れない。人族の後ろから近づいて、口を押え喉を切っ時に痙攣する震えを体が覚えている。美味くない飯が更に不味くなったんだ……」

 気が付いたら俺は涙を流していた。

「そう……耳は少しだけよ」

 許しが出たみたいだ。

「……サラサラだ」

 狐耳の女性の顔が少し赤くなり、プルプル震えている、恥ずかしいのかくすぐったいのかわからないが、我慢しているのは確かだ。

「もう駄目」

 そう言われ、手を払いのけられたので、また尻尾を触るが、しばらくして「時間よ」と言われたのですぐに止める事にする。

「泣いて愚痴を言って、心に水をあげたら少しすっきりしました、ありがとうございます」

「どうしたしまして」

 そう言って、女性は入口の布を巻くって送り出してくれた。

 帰ったらキースに「ずいぶん遅かったな、随分すっきりした顔になったな、時間いっぱいまで楽しんでんじゃねぇよ」と言われ、楽しんでたのはある意味事実なので何も言い返せない。

 明日の朝食は今日の昼食や夕食より多少マシになってる事を祈ろう。


閑話


 カームがモフモフした次の日の馬車内。


「昨日さ、噂になってる、奇襲しようとしてた三十人を倒した人が、私のところに来たよ」

「え? あの草を体中にくっ付けた変な人?」

「草は付いてなかったけど、愚痴ってたから多分噂になってる本人だと思う」

 娼婦たちの間で「なにあの体中草だらけの人」「私あの草の人が奇襲しようとしてた人族三十人を倒したって話聞いちゃった」と、昨日の昼時に話題になってたらしい。

「で? どうだったの? 上手だった? 大きかった?」

「ずっと尻尾を触られて終わっちゃった、最初に「脱がなくていい」「下着も下ろさないで」って言われたから変態かな? って思ったけど、変態じゃなくて変な人だったよ、けど喋り方も優しかったし、撫で方とか触り方とか凄く優しかったわ。だから根は優しいんだと思う」

「えー何それー」

「初めて殺しをしたのが人族で、しかも一気に三十人も殺しちゃったから、新人の兵士がよくかかっちゃう、心の病気になっちゃって来たみたい」

「三十人も殺しておいて心の病気ってありえないよ、きっと優しくないよ」

「けどあの草の人が倒してなかったら、私達の馬車も襲われてたかもしれないんだよ? だから無理してでも倒したんじゃないかな? 私はそう思うよー」

「そうね、たしかにそうかもね。あの人ギルドから送られてきた護衛って話も聞いたわ、だから無理したのかもしれないわね」

「じゃあ、変人で良い奴って事で」

 そうして馬車内は笑いに包まれる。


 こうして変な噂が広まります。





閑話2


「カーム君が最前線に行っちゃったのよ!」


スズラン編

「そう」

「それだけなの!スズランちゃんの薄情者!」

「だってカームが怪我したり死んだりする所が想像できない」

(回復魔法が使えるらしいけど内緒らしいし)

両親編

「そうか、活躍してるかな」

「どうでしょうねー?」

「それだけなんですか? 心配じゃないんですか?」

「「だって息子だし」」

((回復魔法使えるし))


スズラン両親編

「ついに戦場か! アイツの事だ、大暴れだな」

「きっとそうね」

「心配しないんですか!?」

「まぁな」

「えぇ」

(回復魔法でどうにかなるだろう)

(回復魔法が有るなら平気よね)


三馬鹿編

「最前線か、怖がりなアイツにしては珍しいな、命令だから仕方ないけどな」

「そうだね」

「うんうん」

「心配にならないの?」

「「「だってカームだし」」」


夜、泊まらせてもらっているスズランの部屋の布団の中で。

「皆の反応が悪すぎよ、なんで誰も心配しないのよ」

と呟き寝る事にした。

両親やスズラン一家は回復魔法が使える事を知っているし、三馬鹿は自分の父親に無傷で勝っている事を知っているのでそんなに心配していないみたいです。

この村のカームへの認識は『常識外れ的な奴』扱いらしいです。


途中で主人公が初の殺しを経験して少しおかしくなって居ますが多分平気でしょう。

前にも本文で書いたと思いますが獣人族の獣系の耳は頭の上に、人間みたいな耳が顔の脇に付いています。

構造はどうなってるとかは考えてませんが両方聞こえるという設定です。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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