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第44話 最前線行きを宣告された時の事

細々と続けてます。

相変わらず不定期です。

20160426修正

 町に帰って七日後。

 仕事が終わり、部屋に戻ろうとすると大家さんから話しかけられた。

「今日の昼に、ギルド職員の来客があって、あなたに言伝と手紙を預かってあるわ、手紙の方はドアの隙間から入れからから、開けたらわかる思うけど、私がいるから今言うわね。『言伝を聞くか手紙を見たら早急にギルドハウスに来てください』だそうよ、確かに伝えたわ」

「わかりました、ありがとうございます」

 そう言って部屋にギルドカードを取りに行くと床に手紙が落ちていた。まぁ一応これも持って行くか。

俺は小走りでギルド支店へ向かい受付のお姉さんの所に向かう。

「カームです言伝を聞いて来ました」

 そう言って、開けてない手紙もカウンターの上に乗せ椅子に座る事にする。

「夜にならないで助かりました、簡潔に申し上げますと、貴方宛に召集が来ています、詳しくは支部長からお聞きください」

「は? ……はい?」

 そう言われカウンター脇から奥に入り二階の支部長室に案内された。

 お姉さんがノックをし「カーム様がお越しになりました」と言うと「どうぞ」

という声が聞こえ、ドアを開け一礼してから入る。

 いちいち動作が丁寧なお姉さんだな、なんで支部とかで働いてるのかが不思議だ。

 机に座って書類を見ては印鑑を押したり、サインをしたりしていた手を区切りが良いところで止めて、こちらを見る。

 見た目は物凄く年を取った男のワーウルフだ。

「君がカーム君か、噂は良く耳にしているよ、まぁ掛けたまえ」

 そう言われ、ソファーを進められ座る事にする。

 支部長は上質な丸まった紙に、封蝋がしてある書類と一枚の紙を持って対面に座った。

「受付から軽く聞いたと思うが、君宛に召集が来ている、これがカーム君宛の書類だ。ちなみにこっちの紙が、私に送られて来た正式な書類の中身を、ある程度伝える箇条書きみたいな物だよ」

 フフッと笑い丸まった紙の方を渡してくる。

「開けても良いんでしょうか?」

「もちろん、君宛の書類だ。私もかなり興味があるから是非見せて欲しい物だね」

 軽い物言いで言ってくるが、笑顔で目が得物を狩る目の様に細くなっている。

 俺は封蝋を剥がし紙を広げると、二枚紙が入っていた、召集命令書と私的な手紙みたいだ。それを軽く目を通し、手紙の方には『君の噂は聞いている』『最前線の砦の援軍に協力してほしい』『君みたいな魔族がギルドに所属していてよかった』みたいな文が書いてあった。

「一応熟読はしていませんが読み終わりましたのでそちらも目を通してください」

「私が読んでも、平気な手紙なのかね?」

「えぇ、命令書と私的な自分宛の手紙です、多分大丈夫でしょう」

 そう言って紙を渡すと文面を目で追い始める。

 その時にノックがして、お姉さんが「お茶をお持ちしました」と言ったので、支部長が軽く返事をして、お姉さんがお茶を置いて一礼をして退室していく。

「確かに命令書と私的な手紙だな」

「少々よろしいでしょうか?」

「構わない、それと無理に喋り慣れない言葉を使わなくても良いぞ」

「はい、そのサインですがクラヴァッテ=テルノって誰でしょうか?自分は学が無いので教えて欲しいのですが?」

「最前線付近を領地とする、かなり権力のある貴族の一人だ、祖父が王国に多大な貢献をしたみたいだが、クラヴァッテ殿は広すぎる領地を守る努力を惜しまない、比較的まともな貴族だ。税を上げて私腹を肥やすとかそういう噂は聞いたことがないな」

「そうなんですか」

 貴族って初めて聞いたし、苗字持ちも初めて聞いたぞ。俺のイメージでは重税をしいて、贅肉と性欲にまみれた口だけってイメージの方が強いが。

「その方の耳に君の噂が入り、直々にギルドに依頼して、召集命令と私的な手紙を出したんだろう。マメな御方だ」

 そーっすか、俺の平和に暮らしていく計画が台無しになったけどな。

「じゃぁ、自分はどうすれば」

「私に来た手紙には、なるべく早く三つ隣りの町まで行き、そのまま輜重兵の馬車の護衛として援軍に加わり、交戦域に達したら、護衛から前線で戦う手はずになっているな」

「はぁ……そうですか」

「覇気が無いな」

「自分なりの解釈ですが、発言良いですか?」

「かまわんぞ」

「早い話が『援軍の補給部隊の護衛をしつつ、最前線の砦を攻める人族を倒すのを手伝え』であってます?」

「あってるな」

 そう言って、支部長がお茶を飲んでいる。

「わざわざ難しい文章で、わかり難くくする必要はないと思うんですよね、俺は」

「仕方ないだろう、命令書が『ちょっと部隊の護衛しながら、砦を攻める奴らを追っ払うの手伝って』じゃ示しが付かないだろう」

 あ、この支部長かなりお茶目だ。

「……ですよねー。もしこれを断ったら?」

「何かしらの罰があるかもしれん」

「あるかもしれん、って事は無いかもしれないんでしょうか?」

「それは、クラヴァッテ殿の裁量しだいだな、性格上無理強いはしないが、周りに示しがつかないから仕方なく罰するかもしれん」

「あー頭いてぇ……。そうですか、わかりました。自分はまずどうすればいいですか?」

 ため息を吐きながら答える。

「君の準備が整い次第、馬車で囚人達とテフロイトに向かい、ソコから軍隊に合流して、最前線の砦まで同行って形じゃな」

「囚人ですか、ってかそんなに溜まってるんですか?」

「こまめに送れとの上からの命令らしい、その辺は管轄が違うからわからんが、六人くらい溜まれば送っているらしい」

「じゃぁ、都合良く溜まっていると」

「いや、急ぎだから三人じゃ、君を入れて四人じゃがな。だから君の準備が整ったら、自警団のお偉いさんに言って次の日に出発じゃ」

 六人って輸送費とか考えたら赤字じゃねぇの?まぁ、どっかから金は出てるんだろうけど。

「あそこはいつでも手が足りん、だからこまめに連れて行くんじゃ」

 囚人兵ね……士気とか指揮とか平気なのかよ。

「その馬車って安全ですか?」

「手枷足枷は付いてるから、殺されはしないじゃろ」

「最悪ですね」

「実費で、テフロイトに向かっても良いのじゃぞ?」

「馬に乗れないので、その方達とご一緒させてください」

「馬に乗れないとは珍しい奴だ。じゃぁ決まりだな、準備が整い次第受付に話をしてくれ、そうしたらまた詳しい事を話す」

「あ、移動中の食事はどうなってます?」

「囚人は最低限の食事で、見張りの兵士は別に支給されてると思う、その辺は詳しくはわからぬが、多少の金があれば途中の町で買い物や、戦地にも出稼ぎの娼婦がいるから女も買えるぞ」

 つまり金は多少あった方が良いと。

「わかりました、それじゃ失礼します」

 そういって部屋を出て、何が必要かを考えながらギルドを出て部屋に帰りメモに纏める。


『かもしれない』で物事を考え万全に行くしかないな。

・どのくらい時間がかかるのか。不明、とりあえず準備万全に物資は多めに。家賃も多めに。

・何が必要か。支給されるかもしれないが、いつまでかかるかわからないから、個別に保存食や嗜好品を持つ。

・靴は1足で足りるか。不明、予備を一組持つ。

・気候に合った服か。そろそろ冬、厚着必須。

・地形に合った特別な装備は。戦場、砦が有るから多分平地。風景に溶け込める服を用意。

・必要な医療品。ポーション類を支給される可能性は高いが、私的に色々少し用意。


現地入りしたら、サバイバルの教訓で使えそうなのを思い出し抜粋。

・自分自身を守れ

・状況を的確に把握

・すべての感覚を動員し絶対に焦るな

・現在地を忘れるな

・恐怖とパニックに打ち勝て

・工夫して間に合わせろ

・生命を大切にせよ

・ストレスと向き合え

・現実的になれ

・自分自身の問題点を思い出せ


 こんな物か。

 恐怖のコントロールと、鬱の誘惑に負けないって言うのは難しいな。俺は魔物は殺した事はあるが、まだ人族や魔族を殺した事がないからな。人族は高確率で捕虜にした魔族を、兵として捨て駒にして来るかもしれない。その時に俺は殺せるのだろうか?

 その時に考えよう。今考える事じゃない。

 後は手紙か、死亡フラグビンビンだが、ないよりは良いだろう。

『かなり偉い貴族から指名があり、最前線に行く事になりました。原因は俺の魔法使いとしての噂が広がりすぎた事らしいです。まぁ、気軽にいつも通り生活しててください。読み終わったら俺の親しい人にも見せてあげて下さい』

 うん、この軽い感じ。戦場に行くとは思えない文面だ。まぁ重いより良いだろう。

 手紙を書いている途中で、いつも通りラッテが部屋に遊びに来て、メモと手紙を見て最前線に行くのがばれた。まぁ隠す積りもなかったけどね。

「なんなのよコレ!」

 珍しく声を荒げる。

「ん? あー、貴族様直々のご指名で、最前線行き。俺の魔法に期待してるみたいなんだ」

「何でそんなに軽いのよ! 死ぬかもしれないのよ!」

「んー、戦場を知らないからね、どう言う風に感情に出していいかわからないんだよ。なるべく早くって言われてるから、村に戻って報告も出来ない。だから手紙書いてた」

「最悪……。私がどんな顔してスズランちゃんに、こんな事書いてある手紙渡せばいいのよ!」

「はい、って」

 パンッ!と乾いた音が響き頬に痛みが走った。あぁ、俺ビンタされたのか。

「ごめん」

 そういって、優しく抱き付き頭を撫でてやる。多分泣いているんだろうか、肩が震えている。

「多分俺自身も、気がどうにかしてるみたいだ。だけどまぎれもない事実だし、受けとめて欲しい」

 そう言って十分ほど泣いているラッテを抱きしめてたが、騒ぎを聞きつけ、やっぱりヘングストの部屋に集まって聞き耳を立てているらしい。さっき物音がしたし気配もする、本当どうにかしてくれよこの集合住宅の連中。


「えーってな訳で……、俺の最前線行きが決まりました」

 キッチンで、こんな間抜けな報告を空気を読まず、飄々と言ってみた。変に心配させない為だったが。

「何をそんな軽々しく言ってるんだ!」

 フォリさんに物凄く怒鳴られた。

「いきなりこんな事になって、こっちだってどうしたら良いかわからないんですよ!」

 怒鳴り返してしまった。

「すまない」と謝られたが、キッチンの空気は重いままだ。

「まぁ、戻ってこなかったら、こんな奴がいたって事を覚えててくれれば良いですから。悲しまないようにお願いしますね」

 そんなの無理だろ……。みたいな空気になったが、大家さんが俺の肩に手を乗せ言った。

「相手を殺す時は目を見ちゃ駄目よ、引き込まれるから。それと相手と力比べになったら、相手が息を吐いた時を狙いなさい。まぁ、しばらく荷物はそのままにしておいてあげるわ」

 そう言って部屋に戻っていた。

 そうしたら続々と皆が

「スズランちゃんとラッテさんを泣かせたら、僕が慰めながら口説くから、それが嫌なら戻ってきなよ」

 おい馬、ラッテとセレッソさんが睨んでるから、その辺で辞めておけ。

「死んだら、必ずあの世で見つけてビンタするから」

 笑顔で言うが、肩に爪が食い込んで痛いですよ、セレッソさん。

「まぁ、最悪逃げて来い。その後の事はその時に考えろ」

 フォリさん、為に成るお言葉をありがとうございます。

「帰ってきたら焼き菓子を作ってくれ」

「じゃぁ私シフォンケーキ」

「はいはい、わかりましたよ」

「俺にお金を預けて行かないか?」

 うん、この町の人族代表。お前も付いて来るか?

 各々一言づついただき解散となった。


この後風呂に行き、ラッテが泊まると言いだし一緒に寝るが、空気を読んで抱き付いて来ただけだった。いやーこういう時って「しばらく会えないから」ってならない?まぁスズランとの約束を守ってるんだろうね。



 さて朝だ。やる事は沢山ある!

 食糧が支給されなかった時の為に、非常食も持って行くのに、南北戦争時代に作られたハードタック、別名鉄板と言うパンを作る。堅すぎて弾が当たっても割れないと酷評されてた物だが、保存目的なら妥当だろう。あと嗜好品でハードビスケット。


 ラッテが今日一日ずっと付き合うと言ってくれたので、早速調理開始、作るのは簡単だ。どっちも分量を決めて練って焼くだけ。

 ハードタックをつまみ食いしたラッテが。

「これ柔らかくておいしいよー?」

「んーそれはね三日目以降は割るのにも苦労するくらい固くなるんだよ、そのつまみ食いした奴を持ってて、あとで食べてごらん、歯が欠けるから」

 知識だけしかないし、食べた事もないんだけど、そう言われてるからね。まぁ無いよりはマシだろう。


 その後朝食を取り、下準備をして、おやかたに訳を話したら涙を流しながら「生きて帰って来いよ!」と両肩をバンバン叩かれ他の職人も、見事な死亡フラグを建ててくれた。

「今度酒を奢ってやるよ」

「飯が美味い店知ってんだ、今度行こうぜ」

「俺、本当はお前のこと嫌いじゃなかったぜ……」

 誰か一人だけ俺のフラグじゃない奴が居た気がする。


 さて、帰りは消耗品や嗜好品と服だな。

 あの犬耳の、お姉さんの服屋にでも行こう。

 あれ?お姉さんの隣に男の人が、あー告白してOKでも貰ったんだな。まさに「おめでとう」だな。

「すみません、灰色か白の大き目の服ってありますか? 無ければ布だけ売ってください」

「うーん、白い服は有るけど、灰色のはないわねぇー、もしかしてズボンも?」

「え? えぇ」

「あーやっぱりぃ、この前紺色の服と深緑の服を上下で買って行ってくれた子よね? かなり変わった買い方だったから覚えてるわよー、けどごめんなさいね。白いズボンは無いのよー」

「あー、ないなら重ね着するんで目立たない色の……やっぱりあのこげ茶の服で大きいの上下ください、あと白い布とこげ茶の布も」

「あ、はーいわかりましたー、あなたー品物を持って来て頂戴」

「カーム君、本当に変わった買い方するんだねー」

「んー普段着なら普通に買うけど、魔物との戦闘、戦争中は目立たない服一択だね、白は雪が降った時に風景に溶け込むし、こげ茶だったら地面に溶け込む。灰色だったら遠くに居る時に、ぼやけて見えるから相手の目を少しは誤魔化せる、大きいのを買ったのは、これから冬だから重ね着をするからだよ。暗殺者が夜中に黒っぽい服着てるのと同じで、それの昼の奴って思って」

「ふーん」「へぇー」「ほぅ」

 三者三様の返事が帰って来る。

 なんだかんだで品物は纏めてくれたみたいだ。

「「ありがとうございましたー」」


「ねーねー次はー?」

「嗜好品類かなー、ハードクッキーは作ったけど、甘酸っぱいドライフルーツとかも欲しいね、あとお茶とクルミと飴かな」

「なんで飴なのー?」

「甘い物は疲れを取ってくれるし、安心すると言うか心がほっとして落ち着くからね」

 この時代に栄養とか言っても、理解してくれなさそうだからな。詳しくは止めて置こう。

 どうせ食糧だって、固焼きパンと干し肉くらいなんだろうし、個人的にクルミとかドライフルーツでも食ってりゃ良いし。つぶれたり日持ちしなさそうなレモンや果物類とかは、仕方ないので今回は諦めよう。現地で調達できればいいけど。


そんな感じで買い物も終わり床に布を敷き買って来た物や持って行く物を並べる。

・衣類(多め)

・嗜好品(甘味、お茶)

・医療品(私物のポーション類)

・針と糸(切り傷を縫ったり服を縫ったり)

・紐(有れば便利)

・防水用の油紙と革袋数枚

・羊皮紙(メモ用)

・岩塩と黒砂糖多め

・ツールナイフ

・調理器具

・手鏡

・蒸留酒(多目的用)

・小物を纏めて居れる小箱

・毛布

・小さ目の背嚢

・武器

・銀貨五枚、大銅貨三十枚。

 こんな物か。

「これ全部入るの?」

「入れるんだよ」

 そう言って、衣類は畳まず丸めるようにして、油紙と革袋に入れて縦に入れたり。小物を買って来てポーチに入れ、側面や背面にベルトで固定。よく使う物は、リュックの上部や側面の袋に入れ、毛布を丸めてリュックの上に固定。最後にベルトで全体を絞る様に固定して、音が鳴らないか確認して終了。

「な?どうにかするもんなんだよ」

「んーーー! けどこれ重いよ?」

 持ち上げようとして顔を赤くするが、持ち上がらず諦めたようだ。

 まぁ、俺でも少し重いけど背負えないほどじゃない。むしろスズランやラッテより軽い。

「後は武器だけど。これで十分かな、バールをもう少し長いのにした方が良いかな? いや、けど重いしな、片手で難無く振れるのが理想だからな・・・まぁいいか」

そう言って腰にバールとマチェットをひっかけスコップを抱えるようにして持ちその場でジャンプしたり反復横跳びをする。

「何やってるの?」

「音が鳴らないか、リュックの中身の重心が偏ってないか、動きに支障が無いかの確認」

「んー、かなり念入りだよねー」

「念入にしないと、もしかしたら死んじゃうからね」

「鎧来て、ガッチャガッチャ音を立てて槍か剣をもって歩くのしか、見た事がないから、音があまりしないのって不思議ー」

 まぁ門番や父さん、フォリさんの軽装を見ればわかるが、こっちの世界じゃ当たり前の様にフルプレートとか軽装なんだろう。

 あーもう夕方か、報告に行かないとな。

 今まで装備していた物を全部下ろし、ギルド支部に向かう。受付のお姉さんと目が合ったら「こちらへどうぞ」と要件も言わず直ぐに通してくれた。まぁ昨日だしな。

 昨日と同じ様にして支部長室に入り、お姉さんは出て行った。

「もう準備は良いのか?」

「はい、初めてですので、考え得られるだけの事はしました。後は現地でどうにかします」

「良い心がけだ、私はこれから君の準備が整ったと報告しに行く。向こうはいつでも行ける様になっているので、明日の朝に門が開くと同時に出発するだろう。集合場所は門の前で拾ってもらってくれ。遅れるなよ?」

「わかりました」

「何があるかわからん、親にはこの事は言ったのか?」

「出身はベリル村なので、時間がありませんでした、ですので手紙で」

「そうか、急で済まないな」

「いえ、連れの一人が手紙を村に持って行ってくれるそうです」

「一人? 何人かいるのか?」

「二人です、もう一人は故郷にいます、村から出稼ぎに来ていたのですが。その……こっちで好かれてしまいまして」

 一応言い訳をしておく。

「そうか、二人か。死なないようにな」

 おっさんそれフラグだから。

「はい、じゃぁ明日朝。門の開く時間に、門の前で拾ってもらえると言う事で?」

「そうだ」

「では、失礼します」

 そう言ってお茶を運んでくるお姉さんとすれ違い「あ、お茶飲めなくてすみません」と言って、足早に帰っていく。


 部屋に帰ると、ラッテが夕飯を作ってくれて待っていた。

「おかえりー、思ったより早かったね」

「まぁ報告だけだからね、夕飯ありがとう」

「うん、冷めない内に食べよー」

「はいはい」

「いただきまーす」「いただきます」

 明日戦地に向かうのに、そう言う話題は一切なくいつも通り食べた。気を使ってくれているんだろう。それが逆にありがたい。

「食器も私が洗うね」

 そう言ってキッチンに向かったので、俺は大家さんに家賃を多めに払いに行く事にする。

 部屋をノックし出て来たところで「コレ九十日分の家賃前払いです」と、お金を差し出す。

 いつもは「たしかに」と言って、素っ気無く受け取るのだが今回は違っていた。

「百五十日は部屋をそのままにしておくわ、それ以上は待てないからラッテかスズランに荷物を預けるわ」

「あー、はい。ありがとうございます」

 そう言うと、ドアを直ぐに閉められた。まぁいつも通りと言えばいつも通りだったな。

 食器を洗い終わったラッテと銭湯に行くが、今日も泊まると言って一緒に寝る事になった。

今日はくっついて来る事は無く、背中を向けている。寝ようかな?と思ったら。小声で話しかけてきた。

「ねぇ帰って来るよね?」

「わからないな、何も聞かされてないし。呼ばれただけだから危険か安全かもわからない」

「……そっか、手紙はお義父さん達やお義母さん達、スズランちゃんやヴルスト君達に絶対届けるから、明日行くから」

「急がなくてもいいよ、けど遅すぎるのも駄目かなー」

 そう言って会話がなくなる、今日こそあるか?と思ったがそれもなかった。



 朝起きると、既にラッテが起きており、朝食の準備と弁当が用意してあった。そして、目の前で少し髪を切って小さな革袋に入れて渡してきた。

「これ、お、お守りだから」

 こういうのどっかで見たな、と思いつつ。

「俺のも要るか?」

 聞き返してみた。

「形見になっちゃいそうだから要らない」

 と、きっぱり断られた。

「じゃぁ、勝手に置いて行くから、俺が戻ってこなかったら村に埋めてくれ」

「なんでそう言う事言うかな……」

 物凄く悲しそうに言ってくる。

「もしもの為に」

「もしもがあっちゃいけないの!」

 注意され、俺の髪の一部が短くなる事はなかった。

 その後も、部屋を出るまでキスすらなかった。こっちのジンクスとか死亡フラグとかなのだろうか?それともそういう事をすると、もしもがあったら悲しくなるからかはわからない。

 そして「いってらっしゃい」とだけ言われ「行ってきます」とだけ返しておいた。


 門の前に行くと、何時もの門番がすでにいて、眠そうにあくびをしていた。そいつは俺を見かけると。

「おー? なんだカーム、長期討伐に行くみたいな格好だな、また手伝いか?」

「ん? あー、俺最前線に行くんだよ」

「は?」

「最前線」

「なんでだよ!」

「物凄く偉い、最前線付近に領地を持ってる貴族様のご指名でね、頼まれちゃって」

「……そうか」

 それ以上何も言わず、肩を叩いて門を開ける準備に行ってしまった。奴なりの別れの挨拶だったんだろうか?まぁ帰ってきたら酒でも奢らせてやるか。


 門が開いて、しばらくしたら馬車が一台やって来て、鎧を着た爬虫類系の御者が「君がカームか」と聞いて来たので「そうです」と答えたら「乗ってくれ」とだけ言われ後ろを指差した。俺が乗ったのを確認したら馬車を出した。

 中には見張りの兵士がいて、手枷足枷をした囚人が睨んできた。囚人は全員獣人族系だ、猫耳、犬耳、狐耳。妙に筋肉の有るおっさん風の獣耳は、見慣れてるとは言え、同行するなら可愛い子の方が絶対良いに決まってる。

「あ、どうも。カームって言います、しばらくよろしくお願いします」

 まぁ、嫌な雰囲気よりよりかはと思い、気軽に挨拶と自己紹介をした。

「囚人に話しかけるな!」

 目の前に座ってる兵士に怒鳴られた。はい……この先の移動は御通夜状態決定。最悪な旅になるな。

 まぁ、俺は囚人じゃないからな。そう思い、席の前に背嚢を置き、上部から毛布を外し尻の下に、座布団代わりに敷こうとしたら。

「勝手な事をするな!」

 また怒鳴られたよ。囚人達もニヤニヤしているし流石にコレは怒って良いよな?いや、皮肉で行こう。

「あ、俺囚人じゃないんで」

 そう言って、空気を読まない面接を受ける人の様に、構わず尻に毛布を敷いたら殴られた。正直かなり痛い。

「勝手な事をするなと言っただろう! そんな反抗的な態度を取ってると貴様にも枷を付けるぞ!」

 流石にこの扱いには、流石に元日本人の俺も怒るしかないよな。これだけされて怒らなかったら聖人だぞ?

「俺はな、クラヴァッテってどのくらい偉いかわからねぇ、貴族様から届いた命令書一枚で、兵士でもないのにギルドに在籍してるって理由で依頼されたんだよ。行きたくもない戦場に、行かなきゃなんねぇんだよ! 囚人を届けたら、町に戻る様な奴等にとやかく言われたくねぇんだよ。俺はギルドに所属してるだけだ、囚人でも兵士でもねぇ、そんな奴に規則を強要するんじゃねよ。囚人に何かするつもりはねぇが、俺の事くらい好きにさせろよな糞が! それともなんだ? 俺は今ここで降りても良いんだぞ? そうしたらお前が責任取れるのかよ? 魔法使いとして召喚された、俺の代わりが出来るのかよ! お前の名前を教えろよ、ギルドに戻って適当な理由と、お前の名前を言って、俺はいつもの日常に戻るからな」

 そう言いながら、鎧から少し出てる服の胸倉を、肉体強化を使って捻り上げながら言い放ち、奴が座っていた席に突き飛ばした。

「どうなんだよ? 俺の尻に毛布を敷かせるか、お前が責任を取るか選べ」

横の囚人は大声で腹を抱えながら笑い、同じ兵士の御者はこちらを見ている、おいおい脇見運転しないでくれよ、馬が暴れたらどうするんだよ。

「す、好きにしろ!けどな、囚人とは馴れ合うなよな!」

精一杯虚勢張りながらそれだけ言って不機嫌そうに馬車の後方を見ている。

 囚人は「お前最高だぜ」と言って「喋るな!」と言って殴られていた。

 この兵士達より、囚人達の方が仲良くなれそうな気がする。


 夕方になり、一つ目の村に着いたが、馬車で約十時間の移動、徒歩は時速三から四キロメートル。馬車は時速約十kmだったか?そう考えると結構町から離れてるんだな。こっちの村まで徒歩で移動ってなると三日くらい見た方が良いな、俺の村が最寄りの町まで近くて良かったわ。それにしてもかなりの寒村だ、生きて戻ったら、村長に相談して少し技術指導とか派遣してみるかな。

「村に到着したが宿も空家も無い、我々には詰所があるが、貴様等にはベッドはない。詰所裏の馬小屋の藁の上で寝ろ、今から食料を配る。ありがたく食う様に。カームは、可能なら村人と交渉して泊まらせてもらっても構わないが、遅れたら置いて行くからな。それとカーム、お前が井戸から水を汲んで来てこいつ等に与えろ、あと誰かが逃げたらお前も同罪として、めでたく囚人だ」

 俺、かなり恨まれてるな。

そう言って昼と同じ固焼き黒パンと干し肉を支給してくる。村なんだから普通の白パンとスープで良いんじゃね?と思ったが個人的にその辺の家で交渉して買えって事か。

 囚人達は、手枷をロープで縛られていたが、夜は一人ずつ長いロープで繋がれて、排泄くらいは出来るようにされていた。コレって、どうにかすれば本当に逃げられるんじゃね?って思うけどな。

 兵士が詰所に入っていくのを見ていた囚人が、小声で話しかけて来た。

「お前最高だったぜ。確かに俺達みたいに囚人でもねぇし、兵士でもねぇから、きまり事は守る必要はねぇわけだ」

「ですよねー、頭の固い奴はこれだから嫌なんですよ。あとアイツ職務怠慢、アイツが水汲んで来るのが仕事だろ? って言いたいですね」

 とりあえず食糧交渉は良いや、この人達と親交を深めよう。

 黒パンを齧りながら、魔法で【熱湯】を出し、カップに茶葉を入れお茶を入れ回し飲みする事にした。飲み物がないと、流石に黒パンはのどに詰まる。

「ありがてぇ、温かい物を口にしたのは、捕まってから一回もねぇんだ」

と猫耳

「あぁ、スープの一杯すら出なかった」

と犬耳

「酷い時は、飯抜きだったな」

と狐耳

 このおっさん達すげぇ萌えない。

「けどよ、魔法使いって本当なんだな。お湯を出すって聞いた事無いぞ、おかげでもう飲めないって思ってた茶が飲めたぜ」

「あぁ、火を起すと詰所にいる奴等にばれるからな、助かったよ」

「俺、お前の噂聞いたぜ。巨大なドロ玉作ったり、一人でハイゴブリン倒した奴だろ?」

「もしかしたら全部俺かもしれない。けど噂って大きく成ってくか、俺じゃないかもしれませんよ?」

「いやいや、実際に討伐に行く前に外でドロ玉見たぞ、春と夏の間くらいだったな」

 ばれてら。

「あーはい、それ俺です」

 そう言ったら、全員が声を出さないように笑いをこらえている。

 捨て駒扱いされてる同行人と、仲良くなると情が湧くかもしれないが、暇よりは良い。「名前を教えてくれ」と言ったが「これから戦場で確実に死ぬしかない奴の事を覚えて何になる」と言われ全員言おうとはしない。

「体拭きます?」

 そう聞いたら「俺等が小綺麗になってたらお前が怒鳴られる」と言って断られた。まぁ、少し匂うから言ったんだけど仕方ない。俺だけ拭くか。

 これと言ってする事もなく、寝るしかないので早めに寝た。

 案外、こいつおっさん達は良い奴なのかもしれない、流石に毛布は貸せないけどな。

作中で死亡フラグを乱立させてますがタイトルで死亡フラグが折れる事が解りきっているのでお構いなしです。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


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― 新着の感想 ―
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