第43話 収穫祭にラッテが付いて来た時の事 後編
細々と続けてます。
相変わらず不定期です。
20160424修正
朝食の時に父さんから「早い所はもう刈り始めてるぞ」と言われたので、今年村に来た人や、人手の少ない家の手伝いをしてくれと村長に言われ、とりあえず俺は麦を魔法で刈り取るだけ刈り取り、後はその人達が荷車に乗せて村の貯蔵庫に運ぶという流れで作業が進んでいく。
うん今年も良く実っている、ナ○シカごっこをやりたくなる。まぁ……麦を潰すから出来ないけどな。
「それにしても随分耕地が広がったよな」と呟き。俺がいない間に人手が増え、荒れ地を開墾してどんどん広げて行ったらしい。新しい畑には芋やトマトやナスが植えてあるし、森側の方には葡萄や林檎の苗を植えたりもしているらしい。
好き勝手やっているが、口を出すと面倒事になるので止めて置こう。俺が学校の三年生をやらないで良いと言われ、村の為に働き、村長に言われ荒れ地を魔法で耕したのが始まりだったな、と昔の様に思いつつ、昼飯の為にいったん戻る事にする。スズラン達と食べるかなと思っていたら三馬鹿に捕まりそいつ等と食べる事になった。
「よーし食おうぜ」
「別に良いけどよ、お前等相方はどうした、できれば俺もスズランとラッテのところに行きたいんだが」
「ああ、皆ラッテさんの所に行ってるよ、男共は来るなって言われてね」
「ひでぇ話だな」
「そうだよねー」
眉を下げ、シュンとした表情になっているシュペックは可愛いな、動物的な意味で。
「ってな訳で男は男で集まって話そうぜ? って事になってな」
「うんうん」
「ほう……」
「町ではどうなんだよ」
「四十日くらい前に帰って来ただろうに、そうそう変化があってたまるかよ」
「いやいや、カームの事だから色々な人に物事を頼まれてるんじゃないかって皆は思ってるんだよ、ハイゴブリンやスライムの件だってあるし」
「そうだぞ」
「ないから! 全くないから、普通にレンガ練ったり、最近は焼かせてもらったりしてるくらいだぞ」
「つまんねぇな」
「つまらない生き方で良いんだよ、急に変わったら禿げるぜ」
「なんで禿げるんだよ」
「イライラしたり悩み事が多いと禿げるんだよ」
「じゃぁ僕は禿げないね!」
そうだね、君は一生悩みとは無縁そうな感じだもんね、悩みってちょっと前にトリャープカさんにストーカーされてたくらいじゃないか?
そんなどうでも良い会話をしながら、食う食事は美味かった。
□
「スズランちゃーん、お昼だってー」
「わかった」
女性なのに男性以上の力仕事を任されてるスズランちゃんのところに向かい、カームくんのところに行こうとしたら、仲の良さそうな女性三人がやってきた。
「あのー、コチラの方々は?」
「知り合い」
私は知らないんだけどなー
「スズラン、それじゃあ伝わりませんわ。初めましてラッテさん、私はミールと言います」
あー、この方々全員スズランちゃんの知り合いですかー。
「あ、はじめましてー」
そういうと、残りの二人も自己紹介をしてくれる。クチナシちゃんとトリャープカちゃんね、忘れないようにしないと。
「一時期、ラッテさんの話題で持ちきりだったんですよ。最近大きくなったけどまだまだ町って言えない規模だから、噂もほとんどの人が知ってましたし」
カーム君が堰を切ってから、村が大きくなったって聞いたなー。
「あー、その辺はカーム君からよーくと聞いてます。ご迷惑をおかけしました」
「いえいえ、良い方に転んだから良かったんですけど。その……スズランのお父さんって怖いって話をよく聞きますし、本当にカームが殺されるんじゃないかって噂で」
んー胸が大きいなー、羨ましいなー。
「そうですわね、あの頃はその話題で持ち切りでお母様も心配してましたし」
綺麗なサラサラした銀髪だなー、胸もちょっと私より大きいくらい?
「私の家もそうだったよ?」
「学校でも持ち切りでしたね、生徒達でもその話題で持ちきりだったらしいですよ」
セレッソさんくらい?地味で汚れても良い恰好でダボダボしてる服だけど、私にはわかる。むー、なんで私の周りは大きい女性が多いのかな?私だってそれなりにあるのに。
そう思いながら、黙々と野菜を刎ねのけ、サンドイッチを頬張るスズランちゃんを見ながら『スズランちゃんだけ例外なんだけどね』と思いつつ、皆と仲良くする努力を私は惜しまなかった。
□
「さて、そろそろはじめっか」
「あーそうだなー、食いすぎてまだ動きたくないけどな。どうしても実家に戻って来ると食い過ぎちゃう」
「いい事じゃないか、それだけ母さんの料理が美味しいって事だろ」
「……まぁな」
そう言いながらも麦の刈り取りを再開した。
◇
村に帰り五日目の朝
例年通り、かなり早めに収穫が終わり、村人が祭りの準備を始め出す。
スズランは、ワーウルフやワーキャットのおっさんに頼んで、豚の解体を手伝うとか言い出し、現在進行形で俺の隣で解体している。
「いやースズランちゃん、オヤジさんと違って筋が良いよ、あいつは豪快に切るからな」
「そうそうスズランちゃんは力も有って丁寧に扱うからな、その辺は女の子だよな」
俺とヴルストを放って置いて付きっきりだ。野郎連中より、可愛い女の子の方が良いのか、それとも豚の解体は初めてだからなのかわからないが、俺の時より親切丁寧に教えているのは確かだ。ひでぇ話だ。
ラッテは料理の下準備を手伝っている。なんだかんだ言って村に馴染んでるから良かったよ。
そして、待ちきれないおっさん連中がフライングで酒を飲み始めて、ダラダラと祭りがはじまる。
村長が挨拶をしていた気もするが、既に飲んでてどうでも良いらしい。
竜族三人娘もいて、酒の話になった。
「最近色々な木材を試したり、色々な果実を漬けたりしているのですが、やはり完成するまで長いですね」
「そうですねー、そろそろうっすらと、色が付いて来たくらいですかね?」
「えぇ、確かに少し香りも微かに付いてきたくらいですね、相変わらずツンとする香りがまだしますが」
「まぁ、そうでしょうね。あと数回季節が巡るまで待ってください」
「確かに長寿種なので、数回はすぐに感じますが、目の前に酒が有るのに、待たされるのは厳しいです」
そう言い、笑いながら酒を呷るのはかなりたくましく見える、その後雑談をしていると、酔ったシンケンに拉致られ、皆のいるテーブルに連れて行かれる。
両隣はスズランとラッテだ。
二人とも既に酔っていて、両腕にくっ付いてくる。酒が飲めない、物が食えない。俺にどうしろと?
「おー、イチャついてるねぇ」
「酒が飲めないんだが……」
そう言うと、ラッテがカップをもって「はーい」と言って、俺の口元に持ってくる。
「ちゃんと飲めるな」
「飲めるけど、つまみも欲しい」
そう言うと、スズランが「ん」と言いながら、肉を口に運んでくる、ってかデカい、もう少し小さく切り分けてくれ。
「なんだこれ……」
「僕もわからないよ」
あぁ、シュペックを撫でて癒されたい、アニマルセラピー的な意味で。けどトリャープカさんに捕まっているので無理か。
「これが奥さんを多くもらう者の末路か、僕はミール以外を愛さないって決めたよ」
「シンケン、そう思っててもな……好かれちゃう場合もあるんだぜ?」
「そうか、気を付けないとな……すまなかった」
「まぁ、俺もカームと同じで気が付いたらクチナシといい感じになってたからな、なぁ?」
「だね、ヴルストは子供にも優しいし今から楽しみだよ」
そう言って、微笑みながらお腹を擦っている。
「クチナシ! 子供ができたの!?」
ミールが飲んでいたカップを、ダンッ!とテーブルに置き驚きながら聞く。
「うん、もう三回来ても良いはずなのに、一回も来てないからね、多分お腹にいると思うの」
「おめでとう! ヴルストとクチナシの子供にかんぱーい」
そう言いながら一人で盛り上がって、酒を飲み干すミール。
「いやー産まれてくるまでは安心できないけどおめでとう、俺からもお祝いするよ。な、お父さん」
「俺が、俺が親になるのか、平気か? 平気なのか?」
そう言ってるヴルストを見るが、カップを両手で持って目が泳いでいるし、手も震えている、かなり動揺しているみたいだ。
「ヴルストくーん、誰にでも初めては有るし、誰だって最初は不安なのー。頼れるお友達がこーんなにいるんだから、頼っても恥ずかしくないんだよ」
そういいながら、俺から少し離れて肩をポンポンと叩いている。
「そうだよ! ヴルストは子供に人気じゃないか! いいお父さんになれるよ、クチナシも優しいし子供はきっと幸せだよ」
「んー、ヒュペック……シュペックがなんか良い事言いましたわよ! しっかりしなしゃいよ、ラッテひゃんだってあーいってくれてるんだから、何かあったら絶対頼りなさいよね」
そう言いつつ呂律が回らないのに更に酒を飲んでいる。ミールは『ガッカリ美人』や『残念な美人』が定着しそうだ。そのうち『酒さえ飲まなければ』とか言われるようになると思う。
トリャープカさんは、良い事を言ったシュペックの頭を撫でている。ってかこの人あまりシュペック絡み以外で喋ってるところを見た事があまりないな。
「私も子供欲しい」
スズランがそう言うが、正直俺だってまだ不安だ。
「貯えもまだあまりないし、俺自身にまだ余裕がないと思っている。だからもう少しお金を溜めてからだね」
「何言ってんだ! 俺なんか余裕もないし金も無いぞ! 何とかなるって」
動揺しすぎて一周した感じだな。悪い方に酒が入らないで良かったよ。
ってかクチナシさん酒飲んで平気なんですか?あーもう『魔族だから』で片付けよう。
その後、女性陣の子供が欲しいという話になり、しばらく名前はどうしようとかお互いに話していたが、シュペックがトリャープカさんに引きずられるように連れ去られ、それが引き金になりシンケンがかなり酔っているミールを連れて帰り、ヴルストとクチナシは恥ずかしそうに手を繋いで帰った。
さて、俺達はどうするかな。と考えてたら「私達もいつもの所に行こう?」と言われたので行く事にする。
「あー、私荷物持ってくるねー」
ラッテがそう言い、小走りでスズランの家の方に行ったので「場所知ってるのかー?」と声を掛けたら「今日の昼にスズランちゃんに聞いたからー」と言って、そのまま行ってしまった、まぁ、ゆっくり歩いて行こう。
二人でお茶を飲もうとしたところで、ラッテがやってきた。お湯は俺が出したから、かなり急いだんじゃないか?と思いつつスズランがカップをもう一つ用意する。
しばらくして、二人がソワソワしだしたので理由を聞いて見たら。
「今日の夜の事なんだけど」
「女の子には準備が有るんですー」
と言って、ラッテがスズランを引っ張ってリビングを出て行った。仕方がないので、ポットやカップを洗って、椅子に座ってたらいきなり半透明な装飾過剰な下着姿のラッテが登場した。
「じゃーん見て見てー、このベビードール。ピンクでヒラヒラで可愛いでしょー、そそるでしょー」
お茶を飲み干しておいて良かったよ、噴き出しそうになった。確かにヒラヒラが多すぎる、あーあー、あんなにレースが。
「うん、かわいいよ。まさかそんなの持ってくるとは思わなかったよ」
この際、どうやって洗濯するのかっていうのは置いておく。
普段からヒラヒラした服を好んでるから、違和感とかもないし、かなり似合っている。
「ふふーん、実はスズランちゃんの分もあるんだよー」
「本当かよ」
「本当本当、この前来た時に、お風呂で見て下着類が充実してないみたいだったから、色々相談して買ってきてあげたのー。ほーらっ、恥ずかしがってないで出てきなよー」
だから、あの時の風呂が遅かったのか。
そう言って廊下にいるであろうスズランの腕を引っ張る。全力で嫌がったら絶対引っ張れないと思うが、顔を真っ赤にして現れた。
「じゃーん、スズランちゃんはキャミソールだよ、髪に合せて黒で纏めてみましたー」
あぁ、うん正直エロ可愛すぎてやばい。
少し透けている黒い布に、かなり面積の少ない黒の紐パン。着丈が少し短くヘソが見えてて、装飾過剰じゃない所もポイントが高い、スズランにかなり似合う。
地味なのも好きだったが、少し冒険したスズランもかなり良い。
「わ。私をベ。ベッドに連れてって?」
胸の前で手を祈る様に組んで、首を傾けてかなり顔を赤くして言って来た。多分ラッテに練習させられたんだろう。普段は絶対に言わない言葉だ。
いつまでも恥ずかしがらせるのも酷なので、お姫様抱っこをしてベッドまで連れて行った。
心配していた扉はラッテが開けてくれました。
あのヒラヒラを、後ろから見るのも良いな。僧帽筋も程良くあるし、綺麗な背中だな。
そろそろ話を動かしたいと思っているのですがもうしばらく御付き合いください。
前にも言った5の倍数が好きなので多分そろそろあるいは・・・