第42話 収穫祭にラッテが付いて来た時の事 前編
細々と続けてます。
相変わらず不定期です。
どうしてこうなった!
肌着の話が有りますが時代背景が中世ヨーロッパ辺りなのにブラやショーツの話が少し出てきます。まぁ異世界なので・・・と言い訳をしてみます。
20160420修正
季節は秋の始まり。まだまだ残暑が厳しいが、大分過ごしやすくなって来た。
スズランが夕方近くに町に来てくれて、家に行く前に仕事場に顔を出してくれたので、帰りに肉屋に寄って、少し分厚い肉を買って帰った。
ちなみに仕事仲間はスズランと目を合そうとしなかった。ちなみに暑かったので甚平だったので腋とかに目がいってしまった。
合鍵は大家さんに頼んで作ってもらったので、既に渡してある、帰ってからもお互いダラダラと過ごしていたが、汗を拭きたいので上半身裸になって拭いていたらスズランの視線が少し気になったが毎度の事なので気にしない事にした。其の内ラッテも部屋にやって来たので、暑いから麦茶を出してやった。麦を乾煎りしてお湯で煮だした奴を冷やしただけだ。
「いやー、カーム君のお茶は美味しいですなー」
「なんだよ……その口調は」
スズランは特に何も言わずに、コクコク頷いてるだけで何も言わない。
「忘れてた。そろそろ麦の収穫時期。だから後十五日くらいで帰って来て。じゃないと少し大変なの。人手はあるけどカームの魔法に頼ってる人が多いから」
「んーそうかー、もうそんな時期か。少し多めに休み貰って早めに帰るか」
「私もカーム君の村にいーきーたーいー」
「あー構わないけど、歩きだぞ?」
「んー別に平気だよ、それにいい加減スズランちゃんとカーム君の両親に挨拶も済ませないとねー」
スズランの方を見るが麦茶を何気ない顔で飲んでいる。あ、その辺はノータッチですか。
「まぁその辺は夕飯食べながらで、俺作って来るわ」
鹿肉の良い所が手に入ったとか言って、肉屋のおっちゃんが勧めて来たけど、スズランが来てるから買っちまったよ。
ソースとかお洒落な物作っても良いけど、スズランは肉そのものとかが好きだしなぁ、けどラッテはあった方が良さそうだし……林檎のコンポートの余りで代用するかねぇ。まぁ、かけなくても小皿に置けば各自勝手に肉に付けるしな。
鹿肉を厚めに切って筋切して叩いて、塩胡椒して寝かしてる間に、コンポートでなんちゃってソースでもつくるか。
本当は砂糖で果物を炒めてから、蒸し焼きにしてレモン汁入れて潰すんだけど、もう砂糖で煮てあるからな。焦げ目付けてレモン汁入れて潰すだけでいいや。
そしたら肉を焼き始め、ミディアムレアで少し赤みが残る程度にして完成、野菜?嫌いな子が居るからボウルに別けてますよ。お代りも多めに焼いてありますよ。
「あいよー鹿肉のソテーね、塩胡椒はしてあるけど、この林檎ソースはお好みで、スズランが野菜嫌いだから、ボウルに別けて来たから」
コトコトと皿を小さ目のテーブルに置いていく。
「おぉ!」
「おいしそー」
「はい、スズランはどうせ頬張るんだから、この骨の付いてる奴で食べやすい奴ね」
「ありがとう。いただきます」
「早いよ、皆でいただきますしないと」
掴んだ肉を置いて、少し不機嫌になっている、犬でも躾ければ少しは待てると思うけどな。
「じゃぁ、いただきます」
「いただきます」「いただきまーす」
そういうと、スズランがまた肉を掴み、かぶりついて首を振って引きちぎる。なんかジ○リの食事シーンみたいだ。美味しそうに食ってくれるなら良いけどな。
「んー、分厚いお肉はあまり好きじゃなかったけど、コレは美味しいー、この少し酸味の利いた甘いソースも合うし、カーム君のご飯はさいこーです」
こっちは丁寧にフォークとナイフで丁寧に食べる、本当2人は性格が真逆だな。
「まぁそう言ってもらえればうれしいよ、スズランは反応見れば解るし。作り手としては嬉しいね」
夕食後に銭湯に行くが何故か俺の部屋にラッテの着替えが何着か有るのでそれをもって三人で行く事になった。
スズランと二人で来た時と、同じくらいに出るが、一向に二人とも出てこない。
秋口と言っても、まだ少し暑いから良いけどな。けど虫が気になる。それから二人が出て来たのは俺が出てから二十分後だった。
「いやー2人で洗い合ってたからさー、遅くなっちゃった」
スズランは少し頬を赤らめながら、コクコク頷いてるだけだ。
「仲が良いのは良いけど公共の場で変な事はするなよ」
「はーい」
そう言ってラッテは自分の家へ、俺とスズランは部屋に戻った。
気を利かせてくれたつもりなのかは知らないが一応感謝しておこう。
◇
翌朝、俺は半裸で目が覚め、隣には半裸のスズランが腕にくっついている。物凄く嬉しいが、少し暑いので、暑い季節は少し勘弁してほしい。
体を拭いて、シャツを着てからスズランを起こし、スズランの甚平の上着を投げてやるが着ようとはしない。
「ベタベタするから体拭きたい。カーム水をだして。少し大きめで」
眠そうに半目で言って来た。あー、見られても平気になったんですかね?俺は言われた通りバランスボール大の水球を出してやるがスズランは上半身を突っ込み顔を洗っている。
ズボラなのもここまで来たか。いや、豪快なのか?
水球から顔をだして、タオルで顔と髪を拭いてから、体を拭き始め着替えはじめる。髪を拭いている時の腋とか胸とか、色々とありがとうございました!
男として、着替えを見るのも楽しみなので、胸に布を巻く所や下着姿をジロジロ見ていたが、今回は殴られなかった。
昨日の残りの肉で朝食と弁当を作ってやったが、少し熱く感じる。そんな朝から肉は勘弁なので軽めに済まし、弁当も極力水分を飛ばし十分に冷めてから包んでやった。
今回は収穫と収穫祭が近いのでとんぼ返りだ、門の所で別れる事にする。
「とんぼ帰りだけど、気を付けて帰れよ」
「うん。昨日の夜に十分やる気を貰ったから平気。体力はそこそこある積もりだから心配しないで」
「あぁ、わかった。じゃぁ今度は何時もの半分の十五日で帰るよ」
「村長やみんなには伝えておく」
そう言って手を振る事も無く帰っていく。もう少し愛嬌とか欲しいけどそう言うのはラッテに任せよう。
さて、今日もレンガでも作りますかね。
◇
スズランが帰り十三日、早めに帰ると言ってあるので、おやかたには「村で収穫があるのでかなり長めに帰ります」と伝えた。
おやかたから「お前は日雇いだから、別に構いはしねぇよ」と言われた。町に来て初めての収穫だからな、少し長めに帰省するか。
仕事から帰って来て、一息ついた頃に必ずラッテがやってくる、すでに日課だ。なんか特殊スキルでもあるんだろうか?俺は脳内にアナウンスが流れるけど他人の事は聞いた時がない。聞く気も無いけどな、変な風に思われたら嫌だし。
特に何もない普段通りの時間を過ごし、夕飯を一緒に食べ終わった時に切り出した。
「んじゃ明日の朝、門が開く時間に村に行くからな、少し早目に来てくれ」
「私が泊まればいーんじゃない?」
「あーそれでも別に良いけど今日はなしね」
「わかってるよー」
片方の頬を膨らませながら、言ってくるがかなり可愛いと思う。
そんな会話をしているとドアがノックされる。セレッソさんだ。
「失礼するわよ」
「あどうぞ、まだ食器片付けてませんが」
俺は、部屋の隅に有る椅子を持って来て、テーブルの近くに置く。
「お気遣いなく。ラッテに話があるんだけど借りて良いかしら?」
「構いませんけど、返して下さいね」
「それくらいわかってるわよ、それにカーム君も一緒でも良いのよ?」
「俺にも関係が?」
「明日、ラッテがカーム君の村に行って、ご両親に挨拶するって聞いたからね。だから軽い注意を少しね……」
「あー、確かに俺がいてもいなくても構わない話ですね。いや、いた方が良いのかな?」
「任せるわ」
「じゃぁ、います」
「じゃぁここでいいわね? 直ぐに済むわ、いい? 貴女は少しふざけたり、フワフワしたり、奇行が目立つけど、絶対にご両親に粗相のない様にね」
「はい」
「夢魔族全員がこうなのか? と思われないようにしっかり考えて発言する事、あとは自分が二人の間に後から入った事は知られてると思うけど、スズランちゃんを立てる事」
「はい」
「収穫後、大抵収穫祭になると思うけど、お酒を飲みすぎて羽目を外さない事、他の人に絶対色目を使わない事、体を触られたり変な事言われたら、カーム君に操を立てた事をしっかり言って断る事。これくらいね覚えられた?」
「はい」
「体を触られたら軽くあしらいなさい、それくらいはいいでしょう?」
そう言いながら、俺の方を見て来る。
「はい」「問題無いと思います、何か有ったら俺が何とかします」
こんな真面目な顔のラッテを、初めて見たな。
「何とかじゃ駄目よ、絶対ラッテを守りなさい!」
「は、はい!」
凄い気迫で、少しどもっちゃったよ。
「以上よ、あとは上手く考えて差し当たりの無い様にやりなさい」
「わかりました」
そういってセレッソさんは部屋から出て行った。
「いやー怖かったよー。たまににセレッソさんって、あんな感じに、夢魔族の事考えて動く事があるからねー」
「まぁ、考えてくれるなら物凄く良い人じゃないか、そんな人がいるなんて幸せな事だよ」
「そうだよねーありがとー、今日は私がお皿洗うねー」
「あぁ、ありがとう」
ラッテって時々真面目になるよなー、どっちが本当のラッテなんだろうか。
□
キッチンにてラッテが皿を洗っているとセレッソさんがやって来た。
「ラッテ、わかってるでしょうね?」
ラッテは手を止めて振り返り。
「わかってます。決して私が優位になる様な行動はしません、二人を立てるように動きます」
「それならいいわ、楽しんできなさい」
今まで雰囲気とは違った、柔らかい声になったセレッソさんに安心したのか、ラッテの返事にも緊張は無かった。
□
「ただいまー、明日の準備はどうするのー?」
「んー、しばらく滞在するから着替えが多めでいいんじゃないかな? 気にしないなら二着を着回せば良いし道具類は向こうに有るし」
「んー、じゃぁ予備で三着でいいかなー」
「俺は実家にも服は有るから、荷物が増えるなら持つよ?」
「けどさー、そう考えると着替えだけでいーんだよね?」
「……そうだな、俺は少しお土産とか持つけど」
そう言いつつスズラン用に、飴玉と大量に買わされた果物で作った、どこかにギリギリ卸せそうな量の林檎のコンポートを指す。なんか、この間の肉に付けた林檎ソースが気に入ったから、せがまれたんだけどね。
「私も、カーム君とスズランちゃんの家に手土産持ってくよー」
「え? 今、荷物ないよね?」
「明日町を出る前に、私が一旦帰れば良いんだよ」
「あー、まぁ。朝食早めに食べれば門が開く前に一旦帰れると思うけど、一緒に行こうか?」
「んー、それはちょっと許してほしいなー」
「荷物もあるし、一回もラッテの部屋に行った事がないから行きたい」
「……わかったよ、じゃぁ明日案内するね」
少し残念そうに言うラッテ。
「じゃー決まりね、明日私の部屋に寄ろうね」
と思ったらすぐに元の声に戻る。
「はいはい、明日は早く起きないとな、風呂に行ってさっさと寝ようぜ」
「はーい」
◇
翌朝、目が覚めると腕にラッテがくっついている。
なんでスズランといいラッテといい腕にくっついて来るのか。まぁラッテの場合は胸が有るから少し柔らかいけどな。
少し長く部屋を空けるので食材は残したくない。だから今日の朝食や弁当は簡素な物になった。
「じゃー私の家に行こうか」
「そういえば、どこに住んでるんだ?」
「ふふーん、今まで内緒にしてたからねー、あと来させないようにもしてたし」
「まぁ、ほぼ毎日こっちに来てればそうなるな」
「私ね、下級区に住んでるの、だから門から少し遠いけど、少しくらい遅れてもいーよね?」
「少しって言っても、そんなに太陽は傾かないだろ? ならかまわないよ」
そう言いながら、下級区の奥にどんどん進んでいくラッテ、なんか薄汚れてて浮浪者っぽいのも見かける、こんな所に住んでるのかよ。半分くらいスラムに突っ込んでそうな雰囲気だぞ?
「ここねー」
そう言って、かなり古い酒場に入っていく。早朝でも酒場は経営しており、中は煙が充満していてこっちの世界に来て、あまり見た時の無い煙草かな?と思っていた。
【スキル・毒耐性:4】を習得しました。
【スキル・混乱耐性:2】を習得しました。
なんだこれ毒が上がって混乱耐性も一気に【2】が付いたぞ。
「あー、この煙あまり吸っちゃだめだよー、癖になるからね。私の部屋は二階の宿屋を借りてるんだー」
危ない薬の類かよ、しかも客に柄悪いのが多すぎだ。
そして客に睨まれながら、一緒に部屋に行こうとしたら片目の無い犬か狼かわからない、獣人族に声を掛けられた。
「おい、兄ちゃんよ。その嬢ちゃんは最近客は取ってねぇんだよ、さっさと帰んな」
一緒にいるのがよっぽど気に食わなかったのか、息がかかる位まで顔を近づけて威嚇してきた。
「ラッテ?この人は?」
「前まで私の客だった人だよ。多分君に嫉妬してる、お酒も薬も入ってるから、軽くあしらって良いよ」
名前を呼ばなかったのは気遣いだろうか?あといつもとは違う低い声、正直ゾクッとしたがいつも明るいのには訳が有りそうなので向こうから話してくれるまで聞かない事にしよう。
「あーはいはい、俺は別に客じゃなくてお手伝いで着いて来ただけだから、大丈夫ですよ、部屋に入っても直ぐに出てきますよ」
「あーわかったぞ、テメェが最近ラッテに粉かけてるって噂の男だろ。アイツは色町で働いてるからな。何回か寝て惚れた口だろ? だったら手を引いて母ちゃんと乳繰り合ってればいいんだよ」
この世界には、煽り耐性とかあまりないんだろうか? 全然頭に来ないんだが。海外で似たような事言うと、マジで殺されても文句は言えない程度の煽りになるらしいが、俺は利かん。
そう言いながら腰のナイフを抜き、脅してくる。後ろの方では、仲間か知り合いか知らないが「殺すんじゃねぇぞー」と、笑いながら言って来るしマスターも我関せずだった。
あーあ、抜いちゃったよ。あんまり騒ぎを起こしたくないんだけどね。
俺はナイフを握っていない方の手首を掴んで、捻りながら背中に周り、ナイフを持っている手ごと掴み、喉元に突きつけ毛が少し床に落ちる。
いやーゲームとか映画とかそう言うの見てて良かったし。そう言うのにやけに詳しい渡辺君に教わってて良かったよ。アイツはたしか警官になってた気がするな。まぁ「怖がらない事とあとは度胸かな」って言ってたしやってみるもんだ。
ありがとう沈黙シリーズの無双系主人公と蛇の人と渡辺君。
「いやー怖いんでこのナイフ仕舞ってくれませんかね?じゃないと少し先っぽが喉に食いこんじゃうんですけど」
出来るだけ優しい声で、後ろの奴らにも見えるように笑顔で話す。
「お、おい。俺を殺したら最前線送りだぞ、解ってんのか」
「先に抜いたのはあんたでしょう? 脅す為に刃物抜くとか阿呆ですよ、それにやるなら脅しとか抜きに最初から切りかかってくればいいんですよ。それに殺すつもりはないです、ただ少し手が滑って血が多く出ちゃうかもしませんが、なぁに死ぬ事はないと思いますよ」
そう言いながら肉体強化を十パーセントまで上げて、手に力を込めて喉にナイフを近づけて行く。
「おい! お前等! 見てねぇで助けろ!」
あーあ、さらに騒ぎを大きくしちゃったよ。仲間らしき奴らは椅子から立ち上がろうとしていたので、思い切り男の背中に蹴りを入れ、机事吹き飛ばし、料理や乾燥した葉っぱが散らばる。
しばらく様子を見て、全員でかかって来るならそれなりに対応するけど、今の所そんな事は無いみたいだ。
「あーもう良いですかね? マスター、迷惑かけて申し訳ない」
そう言うと軽く頷くだけで、特に何か言ってくるとかはなかった。これで無言でグラスとか拭いてれば渋くてかっこいいって思えるけど、流石にガラスの製品はまだ高いからな。
「じゃー、部屋に行こうか」
さっきのやり取りを見ていたラッテが声をかけて来た。加勢しないでくれたおかげで事が大きくならないで済んで良かったよ。
「ここが私の部屋だよー」
さっきの雰囲気とはやっぱり全然違う。もう気にしないでおこうか。
建材が古いから全体的に汚く見えだけで部屋はかなり清潔に保たれている。そう思っていると大き目の肩掛け鞄を準備して着替えをベッドに並べている。よく見ると汚れても良く動きやすい服も並べている。そんな服も持ってたのか、全然想像できなかったな。
「んーカーム君、こんなんでへーきかな?」
「いいんじゃないかな? 作業着も有るし」
「じゃー服はこれで良いねー」
そう言いながらリュックに服を詰め、小物が入っているポーチみたいな物もいれている、多分化粧品やアクセサリーだろう、あとタンスをチラッと見たら可愛い物や少し際どいショーツがあった、少しだけ穿いてほしいなと思ったけど、言ったら穿いてくれるかな? ってかアレ、スキャンティーじゃね? それともローレグって言った方が良いか? まぁ、この世界にゴムは見た事はないから、いままで見たときあるショーツは全部紐パンだけどさ、俺だって物凄く肌触りの良い綿の短パンで腰で紐で縛る様な下着だし。あんな布面積少ないのに紐ってどうよ? 今度お願いしてみよう。
「はーい準備かんりょーです」
肩掛け鞄を掛けて小さ目のリュックを背負い、ビシッっと立っている。カバンが重いからか普通より少し小さい位なのにパイスラッシュが決まっているので、心の中で親指を立てて置いた。ありがとう。肩掛け鞄を作った職人さん。
「了解です、じゃぁ行きましょう」
そう言って軽いノリで出発するが、下の奴等が反応しそうなのが少し怖い。
下に降りたが、目を合わせてくる様子はない、こちらから波風を立てる必要はないのでそのまま門に向かう。
門に行くと、馴染の門番が出迎えてくれる、
「おー、今日は仕事じゃないのか」
「まぁ、故郷の村が収穫時期なので手伝いに」
「ほーう、そっちの相方も一緒かな?」
すでに関係はばれているので、気兼ねなく聞いて来る。
「そうですね」
「はい、丁度いい機会なので、カーム君のご両親に挨拶しに行くんですよー」
「そうかそうか、カームの村でのいざこざは飲み屋で聞いてるから、今更反対される事はないと思うが頑張って来いよ」
「はーい」
「じゃあ気をつけてな」
軽く話をしているが、俺の肩をバンバン思いっきり叩いて来るのは止めて欲しい。正直かなり痛い。後で酒でも奢らせよう。
一応スコップを構えてはいるが、魔物に遭遇する事もなく東屋に付き早目の昼にする。
パンにベーコンとチーズを挟んだだけの、簡単な物だけど。「気にしないでー」「美味しいよー」と言ってくれ、二人でのんびり食べた。少し茂みが不自然に揺れていたが、気にしないで村に向かった。
歩きながら、まず俺の親に挨拶したいって事で家に向かったが、この時間に両親はいないので、部屋に荷物を置きに行った。ちなみにシンケンの攻撃はなかった。
「ここがカーム君のお部屋ですか」
ラッテが、ムッフッフと不気味に笑いながらベッドにダイブして、ゴロゴロし始める。
「あー、ここが子供の頃から過ごしてるカーム君のベッドォォ!」
と少し暴走してたので、頭にチョップを入れて大人しくさせた。
全然力を入れてないのに「いたーい」とか言っていたが、反省はしていないみたいだ。今度は枕の香りをフガフガと嗅いでいる。
もう、ため息しかでねぇよ。
しばらく好きにさせていたら、今度はタンスをあけて下着に手を出そうとしたので、後ろから羽交い絞めにしてベッドに座らせた。
全く何するかわからねぇよ、子供かよ。
すると今度は、机の物に興味を持ち出し、小箱の中に割れたガラスが入っているので、今度はそっちに興味が移ったみたいだ。
「ねーねー、コレって髪飾り作った奴?」
「ん? あーそうだよ、ここで作った。クリノクロアは借家だから、色々出来ないからな、前にも見せたトンボ玉もここで作ってたよ」
「ふーん、他にも色々有るね、男の子の机って皆こんな感じなの?」
「さぁ、良くわからないな。ただ女の子みたいに鏡が有ったり小物が有ったり化粧品が有ったりってな感じで、そう言う小物がまったく、正反対なガラクタっぽい物になってたりするんじゃないか?」
実際、前世の仕事机とか書類とか山になってたし、引き出しの中も整理してなかったな。部屋のPC周りも利便性しか求めてなかったから、カップや判子やリモコン類や携帯の充電器や時計、爪切りとか体温計とか耳かきとか小物類も手の届くところに全部あったしな。
「ふーんこういうのが男の子って感じなのか、カーム君の部屋以外にあまり行った事ないから、その辺わからないや」
あまり……ねぇ。深く考えないようにしないとな。
そうして、いつもの様にグダグダすごしてたら、親が戻って来る気配がしたのでリビングに行く事にする。
「ただいまー」
「あらーおかえりなさい、そっちの子はラッテちゃんね、初めまして。私はスリートよ」
微笑みながら挨拶をしている。母さんはいつも通りか。
「ラッテと言います、初めまして」
こっちは少し緊張気味と言った所か。
「あらあら、緊張しないで頂戴。もう家族同然なんだから」
「は、はい」
珍しいな、こんなラッテも。
この後、父さんが帰って来るまで差し当たりの無い世間話をして、なんとか緊張をといていく。
そのうち父さんが戻って来て、全員そろったところでお互い、再び自己紹介を再開。特に修羅場とかはなく、父さんもラッテの事を受け入れているみたいだ。
そのあと「お話が有ります」とラッテが切り出し、今までにない真剣な表情を見せる。
「なんだい? ラッテちゃん」
「私は、カーム君とスズランちゃんの仲に割って入る様な事をしてしまい、お互いの仲や家族に大変ご迷惑をお掛けしました」
そんな真剣な表情と言葉に、両親は黙って次の言葉を待つ。
「ですので、自分なりに何かお詫びが出来ないかと考え、償いとして手土産を用意しようと思いましたが、ヘイルさんやスリートさんに会った事もなく、好みもわかりません。カーム君にも聞く訳にもいかず、何が良いか結局わからず、手土産を用意できませんでした。ですので、慰謝料と言う形でお金を用意したのでどうかお受け取り下さい」
今までに聞いた事のない真剣な声と表情。どこに隠してたのかわからないが、綺麗な紙に包まれた一枚の貨幣を取り出し、テーブルに置く、大きさから見て金貨か?
「ラッテちゃん、君はもうカームと褥を共にしている、もしかしたら家族になる人だ。そんな人からはそんな物は受け取れない」
「ですが!」
「ラッテちゃん、私も同じ意見よ。それを受け取ったら、本当の家族にはなれないわ、だからそれはカームとスズランちゃんと一緒になって、子供が生まれたら使ってあげてちょうだい」
「……はい、わかりました」
ラッテは少し涙目になっている。
見かねた母さんが、お茶を淹れて来てくれた。
そして全員無言のままお茶を飲みながら、少しだけ気まずい時間を過ごす。
そして、ラッテのお茶を飲み干す頃合いをみて父さんが、
「俺達に挨拶をしに来たって事は、スズランちゃんの両親にも挨拶にきたんじゃないのか? なら本格的に暗くなる前に行った方が良い」
「……わかりました、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」
そう言って、頭を下げるラッテ。
「こちらこそ」
「よろしくね」
と優しい言葉がかけられ、少しだけ笑顔になる。
「女の子なんだから笑顔のほうがずっと素敵よ、これからも笑顔でね」
「はい」
「じゃぁ、行ってくる」
「気を付けてな」
そう言って立ち上がり、スズランの家に向かう。
歩いて直ぐだが、会話がなく黙って歩く二人、正直気まずい。まさかあんな事するとは思わなかったからな。どう声をかけていいかわからない。
そう思っていると、既にスズランの家の前に付いた。
「ここだけど大丈夫かい? もう少し歩いて落ち着く?」
「ううん、大丈夫。カーム君ノックお願い」
そう言われたのでノックをして誰かが出て来るまで待つ。
「はーい」
この声はリコリスさんだ。
「こんばんはー、カームです。少し大切な話しがあるので伺いました」
ドアが開いて「何かしらー?」と顔を出すが、ラッテに気が付き、笑顔になり「いらっしゃい」とやんわり挨拶をしてくる。
どうぞどうぞと中に案内され、顔合わせになる。椅子が四脚しかないので、スズランが自分の部屋から椅子を持って来た。
お互いに挨拶を済ませ、俺の両親の時みたいに慰謝料として、先ほどと同じ様に紙に包まった金貨だと思われる物を出すが、紙の折目が少し違う。紙が違うと言う訳で、ラッテは金貨かもしれない物を二枚も用意してきたって事かよ。コレは深くは聞かない方が良いな。
「そいつは受け取れねぇ、引っ込めてくれ」
「ですが!」
さっきと似たような流れになって来たな。
「母ちゃんも言ってやってくれ、いらねぇって」
「そうねー、ソレは受け取れないわね。お願いだからしまってってちょうだい。私達はそんなに迷惑だって思ってもいないし、怒ってもいないの。だからそれは自分達の為に取っておいてちょうだい、スズランだってカリカリしてなかったし、ねぇ?」
お茶を飲みながら、コクコクと頷いているだけだった。
「ちゃんと言葉にしないとわからないわよ」
「怒ってない。この間だって一緒にお風呂に入って、もっと仲良くなったし。私にとっては背は小さいけど、お姉ちゃんみたいな感じだから」
あーあの時か、妙に長かった風呂の時間にそんな事があったのか。
「ありがとう、スズランちゃん」
今度は涙目では無く涙を流している。この村の人は優しいなぁ。俺なにもしてねぇや。いや、ノックしたな。
「今日は家に泊まってほしい」
スズランが空気を読まずに切り出し、ラッテが「でも」とか揉めてるが、イチイさんやリコリスさんの半ば強引な説得に負けて、スズランの家にお世話になるみたいだ。
「じゃぁ、俺はラッテの荷物持ってきますね」
区切りが良さそうな所で切りだし、荷物を取りに戻った。
少しだけ取り残された雰囲気だったけど、まぁいいか。
明日からいろんな意味で忙しくなりそうだ。
肌着の歴史は1900年の初期の頃です。
まぁ肌着類は作者が出したかったと言う事で




