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魔王になったら領地が無人島だった  作者: 昼寝する亡霊
無人島開拓五年目

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第285話 春は出会いと別れって意外に本当だった時の事

「本当に転移で送らなくて良いのか?」

「旅ってよ、不便を楽しむ物だと思ってるからな。それにパトロナにも、大海原を見せてやりてぇ」

「ルッシュさんは?」

「えぇ、問題ありません。少し船旅も経験させたいので」

「そうですか。ならこれ以上は聞きませんし言いません。んじゃ、またな(・・・)

「おう、夏の終わりか秋の半ば辺りまでに帰って来るわ。帰って来れたらな……。死ぬつもりはねぇし、死ぬような旅路じゃねぇけど、じーちゃんが孫の顔を見てどうなるかなんだよなぁ……」

 そう笑顔で言いながら拳を突き出してきたので、俺も突き出して軽く叩く。

「気を付けて。キースと狼がいるから平気だと思うけど」

「お水に気を付けてねー。家の換気とかは任せてね」

「ありがとうございます。ではもう船が出るみたいなので、失礼します」

 あれから二週間後、そろそろ大陸も温かくなるので、キース達が故郷に孫のパトロナちゃんを見せに行くと言ったので、こうして見送りに来ている。

「んじゃ。またな」

「おう。ルッシュさんの親に会って、気まずくなって来い」

 そして片手を上げて船に乗り込んだが、甲板に出たままこちらを見ているので、船が帆を張って出港するまで見送っていた。


「まぁルッシュさんの話では、手紙でキースの事を報告しつつ、別に結婚した相手が商人じゃなくても問題ないらしいけど、悪友としては少し不安にさせるべきだよな」

「男って不思議」

「まぁそんなもんだって。女みたいにドロドロしてないから私は好きだなー」

「あー、女性はそういうところは怖いって聞くね。んじゃ俺は仕事に戻るわ。じゃーねー、コルキス、メル」

 俺は二人の頭を撫で、笑顔のまま執務室に向かい、午後には戦闘訓練に顔を出した。



 その三日後、定期船がいつも通りに来て、荷下ろしやら補給を済ませていると、執務室のドアがノックされた。

「はい。どうぞ」

 持っているペンを止めずに返事をして、軽く顔を上げると、黒髪のアジア顔の男と、暑いのにローブを深々と被った男が立っていた。

「岩本……武君? かな?」

「えぇ、お久しぶりです。約四年ですかね?」

「見違えるほど変わってはいないけど、なんかスッキリした顔になってるね。とりあえずここじゃなんだから、応接室に行こうか。で、そちらはジャクソンさん? ローブと細身の体でわかりました」

「あぁ、久しいな。このまま無視されるのかと思ったぞ?」

「縛って森に放置したのは謝ってましたっけ?」

「さぁな。忘れた」

 そんなやり取りをしつつ、パーラーさんにお茶を頼んで応接室に行き、あれからの事を聞いてみた。

「王様の使い走りを簡単に辞めさせてもらって、その後は冒険者稼業ですよ。簡単に言うなら、人族側の大陸を巡ってました。寒い山の上だったり砂漠だったりで。魔物の大量発生で町を救ったり。ね?」

「あぁ、お人好しの誰かさんのせいで、依頼人に騙されたり。死にかけたりもしたな」

「まぁ、そこは色々学んだって事で。それにしても随分発展しましたね」

「えぇ、色々順調ですよ。今じゃ第四村まで増えましたからね」

「そんなに……」

「この短期間でそこまで増えるとは……凄いな」

 岩本君とジャクソンさんは驚いている、この世界観の四年で村が四つ増えるっていうのは、確かにすごいとは思う。けど、魔法を使ったり、人脈やタイミングがあったからこそだとは思っている。

「聞き辛い事を言いますが……。残りのお二人は?」

 確かクッコロ剣士っぽいメイソンさんと、遊撃っぽいソフィアさんだったとは思う。まさか死んでないよな?

「あぁ、二人はくっ付いてコランダムに住んでますよ。一緒に来てって誘ったんですけど、情報収集的な感じと、イチャイチャしたいが半々ですね」

「ほほー。まぁ長々と一緒にいれば、男女の仲になっちゃうかー」

「炭鉱跡地の調査で崩落があり、二人が分断された時だったな。話では奥の坑道が別な道に続いていて助かったらしいが、三日で戻って来た。まあその時だとは思っている」

「崩落したから、崩れる危険とかがあるから、何か方法をボロ小屋で模索していたところに、二人が帰ってきましてね」

「それはそれは……。で、滞在ですか? 定住ですか?」

「定住予定で」

 来たという事は、観光っぽい事か、生きてますよって意味合いがあるか、住むのかのどれかだと思ったから聞いてみた。

「あまり発展していなければ、二人とは別にコランダムに住む予定だったけどな。これなら問題はない」

 そしてパーラーさんがお茶を持って来て、どんどん話が進み、昼になったので独身者用の炊き出しの場所に案内をし、俺は自宅で食べて来る事を言った。

「あれ、奥さんをこっちに呼んだんですか?」

「あぁ、子供達が冒険者として旅立ったからね。それを機にこっちに呼んだ。それと……」

 俺は声を小さくし、二人に近寄って指をクイクイとやって更に近づけさせる。

「一応嫁二人には伝えてあるけど、転生者っていうのは伏せててね」

 俺は笑顔で言い、人差し指を口に持って行き顔を離した。

「お嫁さんが二人だって!?」「あぁ、わかった」

「では、午後になったら少し島を案内しますね」

 武君の突っ込みは無視しつつ、一時的に別れる事になった。


「ってな訳で、勇者とその仲間が来た」

 昼食を食べ、少しだけゆっくりしている時に一応その事を伝えた。

「エノモトやオダ。キタガワとは違うの?」

「その前に来た最初の勇者だね」

「あー。あの時言ってた……。戻って来たんだ」

「そうそう。なんかずっと旅をしてたみたいだよ」

「「へー」」

 なんか興味なさそう。個人的には最初に対峙した勇者なんだけどなぁ……。やっぱり島にいる勇者のせいだな。

 それとも無傷で圧勝したからか?


「あれ、そう言えば会田さんや榎本さん、織田さんは知ってるんでしたっけ?」

「あぁ、知ってる」

「北川って人は? 今島にいるんだけど」

「ちょっと知りませんね」

 武君は少しだけ眉間に皺を寄せ、首を捻りながら答えた。

「色々端折るけどさ、あの後ね、会田さんがクーデターを起こして、勇者達を集めて王都を襲撃っていうよりも、王族を拉致して、なんか書類書かせて今じゃ傀儡政治やってるよ。あのクソ王様は飾り」

「マジっすか!?」

「ロックの仲間も中々やるな」

「元々雑兵が束になっても、素手で勝てる勇者を使おうっていうのが問題だったんだよ。戻ってくる時に感じなかった? なんかマシになってるって」

「そう言えば……」

「確かに。なんかマシになっていたな」

「あれ、会田さんを筆頭に、勇者達が苦労して色々国を整えた結果だね。んじゃ、まずは榎本さん達かな?」

 そう言って俺は転移魔法を発動させ、円の外に出ない様に言い、第二村に転移した。


「うお、すげぇ! 魔族の魔法って便利」

「魔族側にあるんだ。人族側にもこんな物があってもいいはずだ……」

 日本人らしいコメントと、魔法使いらしいコメントありがとうございます。

「ってか、半分日本で半分洋風なんですけど……」

「ご老人二人に言ってくれ……。田んぼとか水車、日本酒や味噌を作ってる筆頭だから……」

 俺は榎本さんの家の縁側に行き、中を覗くが誰もいなかったので田んぼの方を見てみるが、見当たらなかったので織田さんの執務室に行く事にした。

「酒蔵の増設か、森を切り拓いて新しく建てるかだな。米の生産量を考えたら、秋までには建ててぇな」

「拡張性を考えて作ったけど、既に手狭だしなぁ……。少し考えてみる」

 そんな声が聞こえたが、一応ノックをして返事を待ってから中に入った。

「おう、カームじゃ……。お前、あん時の坊主か?」

「お久しぶりです。会田さんに頼まれて、一度だけお会いしましたよね」

「あぁ、確かあの時の。表情が明るくなった。まだ旅の途中か? それともここで終わらせるのか?」

「終わらせても良いと思っています」

 何か俺の知らないやり取りをしているが、あの後色々あったんだろう。

「よし、もう酒が飲める年齢だな。後で温泉付き合え」

「温泉ですか。いいですね!」

 まぁ、当時落ち込んでたしな。かなり励まされたんだろう。そして湯に浸かりながら飲む酒の恐ろしさを知るが良い。

「なぁ魔王。少し席を外した方がいい気がするんだが」

「んー。そうですね」

 そして俺達は事務所を出て、その辺にあるベンチに座って待つ事にした。

「この風景は凄いな。俺の故郷の倍は畑がある」

「そっちの故郷は知りませんが、圧政がなくのびのびとやってればこうもなります。収穫した物がほぼ自分達の物になりますので。それに知識のある人間がいますからね。脱穀や製粉が楽ですし、海があるので塩もある。寒さや色々な死の恐怖がなければ、こんなもんですよ」

「そう言えば、昔俺達が少し滞在していた時も、全員が笑顔だった気がするな。上に立つものが違うと、こうも違う物なのだな」

「そんなもんすよ」

 そう言ってジャクソンさんがパイプを取り出し、タバコを吸い始めた。

「いいなぁ。俺もこんな環境で子供の頃を過ごしたかった」

 ジャクソンさんは、その辺を走り回っている子供達を目で追いながら、そんな事を呟いた。

「今からでも遅くはないですよ。隠居にはまだ早いですけどね」

「俺はな、故郷での暮らしが嫌で飛び出してきたんだ。魔法適正があっても、学ぶ場所もなかった。冬を越せるかどうか、秋に不安がる親を見て育ってきた。それが嫌で嫌で仕方なかったよ。そして死に物狂いで頑張って、運よくロックと出会った。子供の頃からこんな生活を送りたかったよ……」

「……何かを始めるのに、遅すぎるって事はないとは思いますよ」

「そうだな。もう帰る故郷と家族はなくなってしまったが、そろそろ腰を落ち着けるのにはいい場所だ」

「そう言われると、返す言葉がないのですが。そうですね、ここを故郷にすればいいんじゃないんですか? と、勧誘はしてみます……」

「多分戦いに疲れたんだと思う。しばらく世話になる」

「えぇ、来る者は拒みませんよ。魔法使いが不足してるので、適正がある人は、どんどん任せますから」

「そうだな。引退には少し早いがもう二十五だ。それも良いかもしれん」

「え゛!? 二十五? そろそろ三十かと思ってました」

「魔王、あんた意外に失礼だな」

「それだけ老けてるってこ――」

 そう言ったら、にやけ顔で二の腕を軽く殴られた。

「苦労してるって言え」

 そう言ってパイプを逆さまにして、ポンポンと灰を落としてから足で踏んで消していた。

「あ、すみません。ちょっと話し込んじゃいまして」

 ジャクソンさんがパイプをしまうと、ちょうど武君が出てきた。

「いや、別に平気だよ。んじゃ、第四村に行って、ちょっと先輩と話でもしてみてよ」

 そう言って立ち上がり、ベンチが魔法陣に入らない様に前に出てから転移した。


「うーっす。少し遅れた」

「あぁ、別に構わねぇぜ。で、誰だ?」

「過去に俺を討伐に来た、岩本君と、ジャクソンさん。四人パーティーだったけど、残り二人はコランダムで同棲中っぽい。で、こちらは北川さん」

 俺が間に入り、お互いを紹介する。

「どうも。岩本です。ロックって名乗ってました。今後どうするか悩み中です」

「ジャクソンだ。魔法使いをやっている」

「北川だ。話は聞いてるぜ。お前達が何もできずにやられた、噂の奴だな。今はちょっと、この魔王と島の防衛部隊の育成中だから、やれる事が増えるからありがたい」

「いや、確かに何もできずにやられましたけど……」

「まぁ、こいつが規格外なだけだ。安心しろ。んーロックかー、その流れだと俺はノースかリバーだなー」

「コードネームはモンムススキー。本名だったら海苔バー辺りが妥当だな」

「そっちの魔王はスク水だ。むかつく事に本名がそのまま名前っぽい音になってるのが、むかつく奴だ」

 北川のコードネームを言ったら、言い返された。まぁ当たり前か……。

「で、何をしているんです?」

「屋内に人質を取った凶悪犯が立てこもり、それを制圧する訓練だ。ちょっと上がってこい」

 そして北川が、キルハウスの中が見える(やぐら)っぽい所に上がり、指示を出す。

 丁度赤組が待機状態だったが、北川の声で訓練を始めた。アイコンタクトとハンドサインを駆使し、半分が静かに中に、残りが外に回り込む。

 そして先頭の魔族が小さな鏡で部屋の中を確認し、【フラッシュバン】を使い、二人目と三人目が盾を構えて部屋の中に入り、角にいたマネキンに手裏剣を投げつけ、外の奴等が窓からクロスボウを構えながら顔を出して、二人で一人に狙いを付け、残りの一人が左右の警戒をしていた。

 そして短剣を持った二人がマネキンの腕を掴んで、引っ張りながら足を掛けて、形だけ腕を後ろに回す様にして制圧している間に、フラッシュバンを使った魔族はクロスボウを持って、廊下の警戒をしていた。

「すげぇ。軍隊の訓練みたいだ」

「本当に凄いな」

「遅い! もう一回だ! そこのお前とお前、もう少し足音を消せ。お前は顔を出すタイミングが早すぎるぞ!」

「うぇ!?」「なんだと?」

「「「はい!」」」

 注意された人は元気よく返事をし、倒したマネキンを起こし、手裏剣を回収してから玄関前に戻って行き、北川の合図と共に、もう一度同じ訓練を繰り替えした。

「で、あっちはなんです?」

 そう言って武君が指をさした。

「第一村にあった蒸留所っぽい練習所だ。二十人で訓練する場合にしか、まだ(・・)使ってないが、直に十人、五人と班単位で減らしていくつもりだ」

「本当に凄いな……。ってかあの光のは、そこの魔王に食らった気がする」

「使った気がする。ってかそのままですよ。まだ少し弱いですけどね」

「で、アレはなんなんだ?」

 そう言ってジャクソンさんは、ゴチャゴチャした場所で、短剣を持って訓練している人達を指さした。

「対室内戦闘訓練です。狭い場所で遮蔽物が多い場合を想定してます。最初期は剣を振りかぶって(はり)とか柱にぶつけてたし、味方同士で剣が当たったりで大変でしたけどね。なのでこの訓練です。そのうち、そっちの組と入れ替えで訓練します」

「……なんか。この島、流れてた噂よりヤバイ」

「あぁ、下手な戦力で襲ったら返り討ちだな。ただでさえ海賊が寄り付かないって有名なのに」

 あぁ、うん。改めて外からの評価を聞くと、なんかやり過ぎている感が物凄く強いな……。まぁ噂なんか、多少大げさの方が効果はあるし、別にこのままでいいか。

「ははは。どんな噂はかしらないけど、コランダムまでの噂しか気にしてないよ。まぁ、今は(・・)こんな感じだから、上手く馴染んでよ」

 二人にそう言って、とりあえず笑顔を作っておいた。

岩本君は、初めて出てきた時から再登場させたいなーと思っていましたが、キースとルッシュさんが故郷にパトロナちゃんを見せに少し外すので、減った分の補填みたいな感じにしました。

問題は女性のソフィアを、誰とくっつけるかって感じでしたが、キャラと作者の都合上クッコロ戦士のメイソンとくっつけさせました。

だって戦士系は勇者がいるし、弓はキースとティラさんがいますからね(白目

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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