第24話 蒸留酒を作った時の事
細々と続けてます。
相変わらず不定期です。
御陰様でPVが30000を超えました。(20141003現在)ありがとうございます、まだまだ荒削りで行ったり来たりや矛盾や知識が足りなかったりで無駄が多いですが生暖かい目で見てやってください。
20150608 本編に影響が無い程度に修正しました。
スズラン用の鴨小屋と簡素な池を作ってから3ヶ月後。
俺はある程度与えられた仕事をこなす様になっていた。
村内の見回り、櫓で見張り、疎水管理。比較的安全な場所での仕事だが、一応魔物対策として、村外の見回りも、数ヵ月前に提案したので、そっちの方は実戦経験の有る大人達が担当している。
その傍らに、新しい酒作りをしようとおもう。知識として残ってる蒸留器だ。
とりあえず試験的に、悪い麦で酒を造って、蒸留させようと思う。
あとは町の酒場に行って、技術交流させようと思ったが、町に行った時の、酒場兼宿屋の状況を思い出し、酒場のおやじが瓶から注いでるだけだったのを思い出し、その案は自分の中で却下した。
村長に提案し「試験的な物なら」と言う事で、速攻村の道具屋のおっちゃんの所に向かった。
「おっちゃん最近どう?」
「まぁ新人が増えたからそれなりだな、で、なんだ? またガラスか?」
「おっちゃんある程度の鍛冶も出来る?」
「おう、鋳掛もできるぜ!」
そう言うどうでも良い会話から始まり、良い感じになってきたら、本題に切り出す。
「おっちゃんって酒好きかい?」
「おいおい、散々飲んでるの知ってるだろうが、なんだ、奢ってくれるのか?」年下に奢らせんなよ。
「いやーちょっと新しい酒を造る道具をね」
「樽じゃ駄目なんか?」
「いやーこういうのをね」
そう言いながら、おっちゃんの目の前で、魔法で土を形成して、ひな型を見せる。単式蒸留器だ、俺の知識ではこれが限界だし構造も結構に単純だ。
「なんだよこれ変な水差しか?」
「酒って水より早く湯気になるんだよ、だからコレの中に酒を入れて、下から火で炙れば、水より先に、酒の素だけ上から蒸気みたいに出て来るんだよ、それを冷やして集めれば麦酒や葡萄酒より強い酒が出来るんだよ」
「おう、面白そうじゃねぇか、材質は何だ?」
ひな型を縦半分に切って見せながら
「銅でお願いします」工場見学で見に行った時は銅っぽい色だったからね。
ひな型を興味深そうに眺めながら「おう」と言っているから平気だろう。
「大体頭に叩き込んだからこれは良いぞ、どうせ直ぐ消えるんだろ?」
「まぁ」
「んじゃ大きさはどうなんだ?」
「とりあえずはこの大きさで、生産を考えると家位の大きさのが何個も必要ですけどね」
「そりゃ俺一人にはどうにもなんねぇな」
その後、どうでも良いやり取りをしつつ見回りに戻る。
◇
数日後、道具屋のおっちゃんが家に蒸留器を届けに来た。値段を聞いたら「最初にその酒を飲ませてくれればいい」と言って戻って行った。
早速酒場に酒を買いに行く。
「カーム君、昼間から酒かい? お父さんに似てきたね」
そう言われたが「新しい酒作りです」と言ったら、興味深そうに内容を聞いてきた。
「その作った酒を、飲ませてもらえれば、質の悪いワインの料金はタダでいいよ」
前者は酒が飲みたいだけで、後者は酒場の店主としての興味だろうな。
家に帰り、蒸留しようとしたら早速母さんに見つかり。
「あら昼間からお酒? 貴方も父さんに似てきたわねー」
と言われた。そんなに父さんは昼間から酒を飲んでたのか?
「まぁ飲まないけどね、村に新しい仕事が出来るかもしれないんだよ」
「んー、本当に私達の子なのかしら? けど父さんとしかしてないし確実に私達の子なのよねー」
いや、親のそんな話はあんまり聞きたくなかったよ。
部屋に戻り、少し焦げた机の上に簡易三脚を『木』で作る、彫刻は駄目だけど日曜大工程度ならこの間の小屋作りで少しはマシになったんだぜ?
脇の小さな穴から酒を入れ、指先から出した火魔法で、弱火で炙り続ける。そうすると先端から蒸留酒が出てきたので洗って乾かしておいた瓶に溜める。
出て来た量は少ない。
「元のアルコール度数考えたらこんなもんだよなー」
独り言をもらし、香りや味を少し確かめる。
これは原酒だからな、香りもきつい。あと少し度数がきつい。
これを加水して樽で寝かせれば、ワインから作ったからブランデーか。けど量が少ない。
村長、道具屋のおっちゃん、マスター、とりあえずこの三人か。
◇
後日連絡を取り合い、酒場に3人に集まってもらい原酒を振る舞う。
「これがワインを暖めて、酒を凝縮したものです、ワイン瓶1本からこれだけしか取れませんが強いので注意してください」
ゲフッゲフッ「強いのう」
「んー辛いってか痛いな、けど飲めなくはない」
「そうですね辛いですし、角が立ってる感じですね」
三者三様の反応。
「これを樽に入れて1年位寝かせれば香りも付きますし味も変わりますので飲みやすくなりますね、水で割ったりレモンや砂糖を入れて飲んだり」
加水して樽に入れるんだろうが俺の技術とか知識じゃどうにもならんので諦める、飲む時に薄めれば良いからね。
「あとこれを樽に入れずに瓶に入れて果物の汁に混ぜて飲めば美味しいと思います、あとこの酒にそのまま漬けるか」
「強い酒の香りに釣られてきたのじゃが・・・荒削りですがこれは美味しいのう、竜族でもこんな強い酒は造れぬ。これだったら個人的に投資しても構わぬぞ、詳しい話を聞かせてほしいのう」
三人が振り返ると校長が居た、頼むからこの村の年長組は気配を消さないでくれ。あと、さらっとすげぇ話が出たな。
「えー、単式蒸留器を町にあるような二階建ての建物の高さ位の小屋を作って、その大きさに合わせて作ります」
から始まり最後まで丁寧に説明する。
「酒を温めて、酒から酒の成分だけを抜き取るのか! なぜ今まで我が部族でこんな簡単な事が思いつかなかったのか! 上手くできたら故郷の仲間にも持って行かねば!」
やる気満々だな校長。
その後、校長の私財とやる気と酒好きが集まり、村に単式蒸留器1機と、それ専用の醸造蔵が出来て、村の名前が付いた『ベリル酒』と言うものが出回り。様々な町や村から研修をしに来た職人が技術を学び、蒸留した強い酒の事もベリルと言うようになった。
酒場で「ベリル」と言うとその町や村で作られた蒸留酒が出て来る、材料が異なれば味も違う。だから各酒場の味を飲み歩く酒好きも出て来るようになるのは数年後の話。
「そろそろ収穫時期じゃから古い麦を全部酒にして蒸留じゃ!」
見た目が幼い校長の暴走が始まる。
「飲めるのは早くても来年ですからね? 熟成させないと!」
俺が言ってもきかず。
「いいえ! 同郷の者にこの1樽だけでも先に届け、来年熟成されたのも持って行くのじゃ! 知識も! 技術も! 更なる酒の発展の為に! むしろ今回多めに作っとかないと来年絶対足りなくなるんじゃ! 断言する!」
こいつ頻繁に試飲するつもりかよ。
「学校はどうするんですか!」
「私が居なくても学校なんか回る! わしが趣味で始めた学校じゃ、少しくらいいなくても平気じゃ! 2ヶ月位どうにかなる!」言い切りやがった。だから学費もいらないんだな、この村は転生先としては当たりって訳か。
それにしても、この小さい見た目可愛い系おっさんも、暴走したら止まらないタイプか。校長してる時はまともだったのに、学校の関係者もまともなのは実技指導のモーアさんくらいしかいねぇ・・・
フィグ先生は酒飲むとガッカリ美人だし、ビルケ先生は鉢植えで枝別けした鉢植えにしか移動できないし、助手のガイケちゃんはマンドラゴラだし、トリャープカさんはシュペックに暴走中だし・・・まぁ慣れないとな。
あと蒸留小屋の監視も増やそう。勝手に酒を造って蒸留する可能性も、試飲する可能性も低くない。
「味見味見」とか言いながら毎日盗み飲みして気が付いたら樽が空って事もあり得る。
「校長、その酒って寝かせれば寝かせるほど美味しくなりますよ? 麦酒と違って古い方が美味しいんですよ?」牽制もして置こう。
「むぅ・・・宝物庫の奥に、季節が100巡するまで開けるなと札でもして3樽ほど置くかのう」
「いや、それだと酒が無くなってしまいますから、年越祭10回で良いと思いますよ」
どうやら長寿種の火に油を注いでしまったようだ・・・
◇
校長が出かけて数日、心配していた拡張した畑の麦の収穫も、特に長引く事なく終わる。
新規入村者にも少なからず魔法の適正が有った事が幸いだった。
教えられる技術は教えないともったいない、どんどん他村や町の人々にも伝播すれば良いと思う。
収穫祭の準備で忙しい時に校長が戻って来た、仲間を数人引き連れて。
「やぁカーム君、この子達は竜族でもまだ若い子でね、この蒸留の技術を学ばせたいんだがいいかのう?」
「「「よろしくお願いします」」」
女性3人が丁寧に頭を下げて来る、高慢じゃ無い事が救いだ。生前のイメージだとプライドが高くて「我に教える事こそ至高じゃないのか人間よ?」とか言い出しそうなんだが、偏見は良くないね。
ちなみにお辞儀をした時に2人胸がたゆんと揺れ、周りの醸造蔵に居た男が「「おぉー」」とか言ってたが俺は「こちらこそよろしくお願いします」と返しておいた。
最低限紳士的な態度はとっておかないとね。あと胸を凝視してたとかばれたらスズランから素晴らしいキレのあるボディブローが飛んでくるからな。
ちなみに若いみたいだけど校長より身長が高い、むしろ校長がどう見ても子供にしか見えない。不思議な種族だ。
竜族では代々酒作りは女性の仕事らしい、確かに前世の記憶だと、ワイン作りのブドウを踏む作業は、綺麗な女性の仕事だったらしいからな。
ムサイ男の足で踏んだワインなんか、ムサイ男の足成分が菌で分解され、跡形も無くなっても、飲む気にはなれないもんな。そう考えると女性がブドウを踏むのは当たり前だな。
日本でも口噛み酒作りは、巫女の仕事だったし。
一通り説明を終わらせ、前に作った小型蒸留器のひな型を進呈し、とりあえず無駄に建てた空家に泊まって、数日後の収穫祭に参加してから帰るみたいだ。
◇
今年の収穫祭は荒れに荒れた。
新規入村者も打ち解けて飲みまくり、加水してないうえに、樽に寝かせて無い原酒を。
「これくらい平気だろう! お前飲めねぇの?」
と煽りながら飲み、周りも挑発に乗り、飲み始め、フルーツを絞った物に入れて割って飲んでも、普段飲んでる物よりも物凄く強いので。
女性でも、酒を飲みなれてる大人達も流石にグデングデン。
校長が連れてきた竜族の女性達は、普通に飲んでいるが「このままでも」「もう少し辛い方が」「甘くてもいいですね」と意見を交換しながら飲んでいる所に、酔っ払いが乱入し胸を揉もうとして組み伏せられて「痛てぇ!けど胸が背中に当たって幸せだぁ!」とか、客人に対しても歯止めが利かないので比較的酔ってない人達に退場させられてた。
男達は、事有るごとに揺れる『たゆんたゆん』を楽しみたいのだろうか、龍族の女性達にちょっかいを出している。見てるだけも眼福ですけどねー。
スズランも普段通りに飲んでたが、様子がおかしい。目が据わってるのは、いつもの事だが色々と服が乱れてるのも気にしないで肉を食いまくっている。
あーあー口元あんなに汚しちゃって、後で拭きに行ってやるか。
三馬鹿もすでに潰れている、吐いてないだけマシだ。
ミールもかなり酔ってるのか笑いながらシンケンに更に飲ませようとしている。死んじゃうからやめてあげて!
クチナシもヴルストに胸を押し付け絡んでる。胸が押し付けられ、物凄く潰れている、意外に大きいんですね。
トリャープカさんに至っては、シュペックの事を、人目が有るのに襲おうとしている。流石に公共の場での行為は不味いし、周りの女性は、可愛い系の男が脱がされるのを、頬を染めながら黙って見ているので俺が止めに入る。
少し野次が飛んだが、友達が襲われてる所を見るのは嫌なので無視して外に放り出す。多分家にお持ち帰りコースだろう。
グラナーテはやっぱり『彼は女性です』『おっぱいの付いたイケメン』と言う表現が似合うくらいに豪快に飲んでいる。
怖いから近づかないでおこう、絡まれたら何されるか解らない。肉の塊にナイフ突き立てながら食ってるし、イメージした事の有る盗賊より怖いよ。
大人達も「またカームか」「俺の倅はすげぇだろ!」「コレカームが考えたんだよな」「村の名産品に」とかのやり取りが、すでに4回は聞こえている。同じ言葉を繰り返すのは酒が小脳の方にまで来てるのか?
かなり不味いので「氷水でも飲んでろ酔っ払い」と言って水差しに水を入れて持って行くが「冷たいのもいけるな!」「そうだな!」「これに少しレモン入れるか」と聞こえたので水割りで飲んでるのだろう。
駄目だこの大人達。
俺はある程度、周りの面倒を見つつ、竜族の3人と話を始める。
「コレの作り方はなんとなく解りましたか?」
「えぇ、おかげさまで。問題はこの蒸留器を大きく作るのが難しい所ですね、1樽では飲むのには少ないですが、部族の皆が気に入り、長が知り合いの鍛冶屋に頼むような事を言ってましたからその辺は問題無いでしょう」
「この村の道具屋のおっちゃんが、ドワーフの血を持ってるらしいんですが、1人じゃ無理だとか言って、男手をかなり借りて、あの大きいのを一つ作りましたからね、蒸留器が作れたら、あとは酒になる穀物とか芋ですかね? どの辺に住んでいるのか解りませんが」
「山岳地帯です、山を下りれば麦も有りますが冬は雪が多く、土地も痩せているので芋が主流です、蕎麦も少し育てております」
「じゃぁ平気ですね、発酵させて、酒にさえしちゃえば、飲むのには多少不味くても少し味の違う蒸留酒になりますし、ただ混ぜるとどうなるか解りませんね、まだやった事が無いので」
芋焼酎とか蕎麦焼酎とか。
「他にも作り方とか無いんですかー?」
「出来上がった酒に、果物を砂糖と一緒に漬けたり、香辛料を漬けたり、後から味を付ける方法も試しました。ですので、その場合は樽では無く、香りの移らない瓶や壷に保存するのも良いかもしれません。体に良い薬草を漬けこんでも良いかもしれませんね、その場合は飲み過ぎちゃ逆効果ですけどね」
そう言うと笑いが広がる。
前世の記憶で、唐辛子入りとか、香草が入ってたり、瓶に丸々林檎が入ってたり、体に良い香辛料や生薬が入ってる茶色いアレも有ったしな。
飲みすぎなければ体には良いじゃないかな?もともと不老不死の秘薬を作るのに酒に体に良い物を入れて、飲み辛さをなくして、甘くしたのがリキュールの始まりって言われてるからな。まぁ、別に酒の製法が広がって、その土地独自の酒が増えるのは好い事だ。あー、日本酒が飲みたくなってきた。
米か、水田はこの辺いは無いからな。あと梅酒も飲みたい。
話し込んでいたら、スズランが面白く無い顔で乱入してきて、俺の隣に座り腕を絡めて来る。
「あらあら、嫉妬させちゃったみたいですね、大丈夫ですよお嬢さん、取ったりしませんから」
ニコニコと笑顔を振りまいているが、スズランは警戒を解かない。どうやら胸を見ているみたいだ、別に俺は胸に拘りは無いんだけどね。
その視線に気が付いたのか「あら、胸に興味が有るの?」と両手で持ち上げたゆんたゆんさせる。眼福です、ごちそうさまでした。
「どうやったら大きくなるの。私全然大きくならないの」
スズランは胸の辺りを擦る。一応コンプレックスは有ったんですね、小さい胸を気にしてる子も可愛いね。
「特になにもしてないわ」
「そうよねぇ? 気が付いたら育ってたわ」
「うむ、私は皆より大きくは無いが、特に何もしていない、むしろ小さい方だ。だが胸が無くとも子は産めるし乳も出る案ずるな」
三人の中でも、一番胸の小さい人が「小さくても特に問題は無い」と言ってはいるが、それでも少しは膨らんでいる、スズランより大きいのは確かだ。
自分より大きい人に言われても、説得力はあまり無い。
だらだらと5人で酒を飲んでいて「カームさんお酒強いですよねー」と言われるが。
「そりゃ毒耐性2ついてますから」とは言えない。
【スキル・毒耐性・3】を習得しました。
スキルの何かが上がるのは久しぶりだ、一応上がり易い体質にしてあるって、転生前におまけしてくれたって話だけど、何かを忘れてて、神様が慌ててボタン押して、能力を上げてるように感じるのは気のせいだろうか?
三人の中でもスレンダーな女性がいきなり「そなた達は番なのか?」と本当いきなり言われて、酒が気管に入り物凄くむせた。
「まぁ、一応しましたけど、まだ子を作る気は無いですよ、稼ぎも安定して無いですし、貧しくて飢えるのも嫌なので、食い扶持を稼げるようになってか「あまいです!女はそんな事気にしません、早く好きな人の子を成したいのですよ」
話しの途中で会話を遮られた。
「そうですよー。この村は食べ物が豊富です、その時はその時で、どうにかすればいいのですよー」
「うむ、私も気にしなかったな、むしろ子が欲しくてこっちから襲いに行ったくらいだ、そちらのお嬢さんが可哀想だ」
なに?竜族ってこんなに勇ましいの?俺には考えられない。
いきなりの大声に、周りがこちらを見ている。
『子作り』『子が欲しい』とか単語が聞こえたらそりゃ誰もが見るよな。
「いや、俺学校が終わったら、町に働きに行こうと思ってたんですよ、金はもちろん欲しいですが、物を作る腕が無いんです。だから色々勉強してこようかなと思ってます、この間、町に行った時に冒険者ギルドの日雇いの仕事を少し見てきたんですよ。外壁の補修工事やレンガ作り、色々有りました。
聞いてるとは思いますが、井戸を掘るのに魔法を使いましたが、掘っただけです、周りを石で補強する事も出来ないから掘るだけ掘って他の人に任せる、それじゃ大人としてどうよ? って思ったわけですよ。
色々出来ても所詮はまだ子供なんですよね、だからスズランには悪いけど少し待ってもらうかなと思ってます」
竜族三人から少しきつい言葉が飛んでくるがその中に最悪の一言が。
「浮気しない様に子供を作ってから行きなさい、子は親がいなくても育ちます、母親だけでも事足ります。男は戦場に行き死ぬ事も有る、だから子供を作ってから行きなさい、お嬢さんが可哀想です」
「うむ、その通りだ。まずは子を成してからの方が良いと思うぞ」
前世じゃ考えられないわー。ほらそんな事言うからスズランがその気になってる。あー、もう目が獲物を狩る目になってるよ。
しかも俺、シングルマザーにさせる気は一切ないよ。若い子が避妊しないで子供作って別れるって話良く有ったし。その辺は本当に勘弁してほしい。
ヴルストとシンケンは「そうなの?」とかそれぞれの相手に聞いてるし。本当に勘弁してくれ。
「いやー、考え方や種族の違いって有ると思いますが、相方に苦労させるくらいなら戻って来てから子供作った方が良いですよ。子供だって父親がいた方が断然良いでしょうし」
「死んだらどうするんですか、お嬢さんが可哀想でしょう」
「うむ、女だから言えるが、男が死んでも忘れ形見が有った方が幸せだ、子を作ってから行け」
「いや。隣町まで片道半日で、街道も魔物のゴブリンくらいしか出ませんし。だったら定期的に帰って来てまぐわいますよ」
お互い一歩も譲らない、これが種族の違いか。ってか俺の考えは前世基準だし。ってか変な事口走った。スズランがこっち見て嬉しそうにしている。周りからヒューヒュー聞こえる。
無視する事にする。
「うむ、それなら女も納得する、お嬢さんを幸せにしてやれ、もしお前が死んだと聞いたら死体を見つけだして蹴りに行くからな」
褒められてるのか、貶されてるのか良く解らんが、死体蹴りとか屍に鞭打つみたいな事で良いのか、前者は少し違うが。
まぁ少しは、研修後の異種族間交流が出来て打ち解けたと言えるのかな?
ちなみに、話し終わった後、スズランに無理矢理腕を掴まれ、家に連れ込まれた。
無理矢理引っ張られた時に。
「お嬢さんの方がたくましいですね」
「女もあれくらい度胸が無いとな、私もそうだったぞ、頑張れよお嬢さん」
「お幸せにー」
とか聞こえた、もう完全にスズラン側の応援だ。
ちなみに今回はしばらくしてなかったのに、物凄く優しかったので、ある意味男として助かった。
前回の冬のが利いたかのかね。まぁ機会が有ったら回数を増やしたほうがいいのかな。
まぁ、その辺は今一緒に寝てる、胸の無い事を気にしてるかなり強引な子と相談かな。
【スキル・魅了耐性・3】を習得しました。
祭り時に上がりやすいのは、神様が見てるからかね?「情事中は見ないよー」とか言ってたけど怪しいな。今度またあの空間に行けたら問いただそう。
閑話
とある新規入村者がこう言った
「なぁ、なんで酔いつぶれてるのに、みんな家に帰らねぇんですかい?」
「それはだな、年頃の子供の為に、大人が気を使って祭りの日は家に帰らないんだよ」
「ってーと、今頃家でヤってるって事ですかい?」
「そーそー、最近じゃ村が広がったけど昔は小さくてな、子供達はどこでヤるか? そのヤる場所が無い訳だ。小さな村だから宿も無いし、有ったとしてもバレバレだろ? その辺でする訳にもいかないし、させる訳にもいかない。だから大人は朝まで帰らないんだよ。俺の頃もそうだったしこれからもそうするだろうな」
絞った果実に蒸留酒を入れた酒をチビチビ飲みながら懐かしい目をしている。
「今じゃ借家用に建てた家も余ってるから、そっちも使ってるんじゃないか?まぁ汚したら自分等で掃除だろうがな」
「そうなんですかぃ、郷に入っては郷に従えって言いますが、細かい事はやっぱ聞かねぇと解らねぇですねぇ。俺はずっと町で過ごしてましたからねぇ、逢引宿を使うくらいでしたねぇ。今じゃ相手が居ませんがね」
男は、ははっと笑いながら一気に酒を呷り、近くに居た女が空になったカップに酒を注いでいく、隣で話してた男が肩を叩くと席を立ち、そこに女が座って来る。
男はまんざらでも無いらしい、女は最初からその気だったらしい、そして二人がいなくなるのに、そう時間はかからなかった。