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魔王になったら領地が無人島だった  作者: 昼寝する亡霊
無人島開拓四年目

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第255話 スキンケアっぽい試作品を作った時の事

ちょっと長いです。具体的には1万文字近くあるのでいつもの二倍くらい。

 喧嘩祭りから一ヶ月、そろそろ夏前なのに日差しが強くなり、熱く感じ始める頃、第四村で作業中に飼育員がラクダから乳を搾っているのを見かけた。

「あれ、子供のラクダっていないですよね?」

「えぇ、この子は子供を産みましたが、その……」

 飼育員さんは言葉を濁し、苦笑いをしながら器用に乳を搾っていた。

 なので俺も苦笑いをしつつ、その光景を見ていたが、少しだけ脳内にあった情報を引き出した。

「それって飲みます?」

「はい、もったいないですから。けど皆は癖が強くて飲まないんです。牛の方がこちらで()一般的ですからね」

 も? あぁ、宗教上の理由とかで牛とかに禁忌とかないのか。地球じゃ色々あったからな。

「では、ご実家の方でも牛はいました?」

「えぇ、ラクダよりは繁殖は楽でした。ただ、こちらの牛とは少し何かが違うのを感じます。こちらは緑が豊富で食べる物も多いからですかね?」

 砂漠系の牛って皮膚がダランとしてるイメージが強いんだよなぁ。色々なTVとかで動物の見てたけど。

「どうでしょうか? 失礼ですが少しいただきますね」

 飼育員さんから少しだけラクダの乳をもらって飲むが、確かに少し癖が強すぎる。

「これは……。飲み慣れないと確かに……」

 なんか少し塩味が。

「カームさんでもそう感じますか」

 飼育員さんはため息を吐きつつ、ごくごくと飲んでいた。消費に対して生産が……。確か結構な期間を毎日一定量出した気がするな。

「おー何やってんだ。さっさと農地広げようぜ」

 少しだけ考えてたら北川がやって来た。こいつも色々な意味で見聞が広いからな。聞いてみるか。

「少し知恵を貸してくれ。キャメルミルクなんだが、何か知ってる事を教えてくれ」

「あ? あー。牛乳と違ってアレルギーが出ない。免疫が高まる。ビタミン類が多い。高い。とにかく高い!」

「高いのか……。需要と供給の問題? あとは品質保持とか」

「違う違う。良くある固形牛乳石鹸。百グラムで百円程度だけど、二十倍はしてた。肌に良いし、それを売りにしてるから天然成分の物しか使わないんだよ。栄養豊富って事はそれなりに肌トラブルにもいいんだ。免疫力も高まる、アレルギーも押さえる。それを石鹸にすれば肌にもそれ相応って意味だろ」

「二十倍……。クソ高いな」

「ホルスタインみたいに、乳牛にされた牛は結構な量を出すが、普通の肉牛とか有名なジャージーとかだと乳を出す量が四分の一程度だ。ジャージー牛の奴はリッター千円とか普通にしてたからな。ラクダは牛と違って母数が少ないからそのくらいになるだろ」

 確かに牧場で売ってたジャージー牛乳はリッター千円くらいしてたけど、飲んでみて納得できた。アレは普通の牛乳が飲みたくなくなる美味さだった。まぁ、牛乳好きだから飲んでたけど、そういやこっちじゃあまり飲まなくなったな。

「こっちの牛もあまり出さないからな。けど数はいるしな……。差別化するか。ちょっと開拓始めるの待っててくれ」

 俺はその辺のテーブルに紙を広げ、木炭で簡単なメモを取りはじめる。

「本当に変わったお方ですね」

「あぁ、頭のいい馬鹿だな」

 後ろで何か言っているが気にしない気にしない。

 体に良いけど飲みにくいなら飲まなければいい。そもそも島内での需要はどうかしらないけど、高温多湿で雑菌が怖い。なら石鹸にしちまえばいい。ニルスさんには悪いけど香油も使って高級感出そう。ついでだから余り気味のカカオバターで保湿できるスキンケア系にも手を出そう。

「成分が良くわかんねぇな……。そのままでも十分だって聞いてたけど、アピスさんと相談して簡単な裂傷にも効く万能系にしちまえ」

「何か呟いてますが」

「たまにいるだろ? 考え事を口に出して、自分自身に納得させてる奴」

「あぁ……」

 あぁ……じゃねぇよ。癖なんだからいいだろ。


「待たせた。草案はまとまった。開拓するぞ」

「いや、やりたい事があるなら今日はいいぞ?」

「それはそれ、これはこれ。明日の午前中にやる」

「たまにわからない単語が出るんですが。大陸の中の方でしか使わない言葉ですか?」

「あー……。勇者の母国語です。気にしないでください。俺は勇者との付き合いが長いので、覚えてるだけです」

 笑顔で飼育員さんを誤魔化しつつ、北川を誘って森の開拓をやっと始める事にした。


「でー。どんな風にするん?」

 ある程度木を切り始めたら、北川からそんな声がかかった。

「島内需要が低くて、消費しきれないなら金になる石鹸にする。それと合わせ技で余り気味のカカオバターでスキンケア商品。常温だと溶けないから、湯煎してオリーブオイルでも混ぜて、体温で溶ける系にしつつ、ポーション入れて分離しない様に何か乳化剤的な物で。日差しの強い場所だし、船乗りってロープとかで結構肌やりそうだし。ってか軟膏系っぽいから最悪乳化剤とか必要なさそうな気がする」

 あの人天才肌だし、多分どうにかしてくれるだろう。

「屈強な船乗りがスキンケアか。考えただけでも嫌だな……」

「忘れてた……。あいつ等多分使わねぇわ……。島内の女性に配りつつ、肌荒れとか異常がないなら製品化。ご機嫌取りって事で、上に献上してくるわ」

 確かにマッソーな兄貴達が、夜な夜な潮風で傷んだ肌のケアとかしてるの見たくねぇわ……。

「あぁ、例の貴族様ね」

「姐さんが暴走気味で圧力かけちゃったしな。嫌いな奴でもアレは流石にかわいそうだったわ。ついでに知り合いの務めてる例の娼館にもテスターをお願いしてもらってくる」

 アレは本当に酷かったし。あと女性の多い職場なら忌憚のない意見も聞けるだろうし。

「あぁ、あそこな。あそこはあそこで……。惜しい線までの子がいたんだよなぁ。けどあそこで選ばないで、店の子の知り合いの店伝いで旅して良かったと思ってる」

「あぁ、そうかい……。フォルマさんには黙っててやるから、そう言う事はあまり言うなよ。ったく」

「元娼婦でも気にすんのかな?」

「男同士でも気にしろよ! 口が堅くて言わなくても、知ってたら何かの間違いでポロっと言っちゃう場合があるだろうが!」

 とりあえず北川を叱りつつ、もう一度前方の九十度の人の有無と安全を確認してから木を切り始めた。


 そして夜中にパーラーさんのキッチンを借り、自宅の倉庫から持ってきた、食品用じゃない鍋にキャメルミルクを入れ、オリーブオイルと石鹸を作るために灰汁から作った綺麗なアルカリの強い水を入れて煮込んでいく。

 そうすると鍋の上部に石鹸の成分が浮いて来て、水分となんか分離し始めた。

「普通の石鹸とできる方法が少し違うんだな」

 後はこれを容器に入れて乾燥っと。まぁ、生乾きでも液体石鹸に近いから使用には問題はないだろう。



「ってな訳で、服着て下さい」

「ベッドで全裸で寝てないだけマシだと思いなさい。ってか……いきなり朝一でなによ?」

 翌日に草案を綺麗な紙に纏め、一仕事して、十時頃にお茶を飲んでから来たのにこの対応ですよ。起きた瞬間は朝一なんですかね?

「とりあえず大筋の流れです」

 そう言って草案を、ベッドで上半身だけ起こしてるアピスさんに渡す。新人錬金術士? 自分の仕事やってるよ。もう慣れたみたいで良かったよ……。

「ふむ。回復ポーション入りの保湿クリームねぇ。肌に良い物だらけで、水仕事で手荒れの酷い女性用と肌の保湿か。けど水と油で分離するから、この乳化剤なる物が必要と言う訳ね」

 飲み込みが早いな。水と油を混ぜる必要なんかこの時代あまりないしな。

「飲む訳じゃないし、薬草を酒に漬けるみたいに油に入れて薬効成分を移せばいいだけね。はい解決。保存用の大き目の瓶はーっと……」

 アピスさんはそう言い、下着姿のままで歩き回り、棚の下段にある瓶を取っているが、アングル的には下着姿で蹲踞(そんきょ)かヤンキー座り状態を晒してるって事だよな? マジで女性の自覚あるのかよ……。

 前世のノリなら、おい瓶、ちょっとそこ代われ。とかありそうだ。

「んじゃ油持ってきて、頭の上に干してある薬草を弱火の油で煮てみるから」

「服着て下さい」

「持ってきたら着てあげる」

 頼んでるのは俺なので、服着ないと持ってこないとか言うと確実に負ける気がするので、無言で瓶を受け取り、第二村に転移して、オリーブオイルを入れて戻って来た。

「本当便利ね、ソレ」

 帰ってきたら、投げ捨ててあった上着だけを着ている状態で出迎えられた。頼むからその格好で外に出ないでくれよ。なんかTシャツだけで宅配便に対応している、一人暮らしの女性っぽい漫画みたいな展開になるし。

「んじゃ夕方また来ますね」

「試作品だから少し熱めでやっちゃうわよ? その方が煮出すみたいに早いし」

「もう任せます……。油で揚げなければいいです。あとズボン履いて下さい」

 俺はため息を吐きながら工房を出て仕事に戻った。


 夕方、俺はカカオバターを持ってアピスさんの工房に向かうが、また寝ていた。

「なんで寝てんだよ……。しかも目の毒な感じで」

「今日寝たのが明け方だったので、睡眠時間が足りないとの事でした。なのでさっさと作って寝ちゃいましたよ」

「そうですか。頭痛とか胃痛って出てます? 平気ですか?」

「えぇ、平気です。たまに色々見えてたりしますので役得と言う事にしております。今とか」

 とりあえず新人錬金術士さんを気遣ってみるが、やっぱり男は男だったか。

「襲わずにお互い合意でお願いしますね」

「そうですねぇ……。全裸か下着姿で踊っている女性がいる酒場で飲んでいる気分でしょうか。しっかり目に焼き付けて、自室で消化するだけです」

「あぁ……。一番自分に被害が少ない方法ですね」

 もうオカズ指定だよ……。いっそくっ付いてくれれば心配事の一つは減るんだけれどな。十八禁指定の肌色の多い本とかないだろうし、そういう感じの店が栄えるのか……。

 けど、確かにシルエットだけ見れば凄くスタイルは良いんだよなぁ……。この残念過ぎる美人は。

 一回綺麗に髪洗わせて、セットして化粧とかさせて、まともな服を着せれば、魔族大陸の方じゃ声かけられまくる気がする。

「んじゃちょっと作業台借りますね」

「どうぞ。ある物は使っちゃってください」

 俺はボウルにカカオバターを入れ、湯煎して溶かし、オリーブオイルを匙で掬っては冷ましてを繰り返し、冷めきっても指で掬える状態までにする。

「ふむ……。傷がないから良くわからない。ただ、油で保湿されてて二の腕とか良い感じだ少しギトギトしてる感じがあるけど軽いな。スキンケアってこんなもんなのか? しばらくこのままで、後で布でふき取れば……。次は香油で香りも少しだけつけるか……」

 溶けたカカオバターにラベンダーの香油を少し入れて、さっきと同じ分量の薬草入オリーブオイル……。お、なんか良い感じになったな。

 俺は先ほどと同じ分量を入れ、体温で簡単に溶ける程度にして、容器に入れて完成だけど……。容器はまた今度考えよう。

「んじゃありがとうございましたー。男性のチラ見は女性からしてみれば簡単に気が付くみたいなので、寝てる時だけにした方が良いですよ。あ、これ少し置いていくので、起きたら肌に塗る様に言っておいて下さい。無駄だと思いますが」

 俺はとりあえず余計な事を言い、自宅に戻った。人の視線って結構気が付くもので、かなり分かりやすいとかネットの掲示板で見た事がある。

 男性でもカツラの人はやっぱり視線が気になるとかも見た事も。


「ただいまー」

「おかえり」「おかえりー」

 自宅に帰り、とりあえずチョコとか普通に食べていた嫁達にカカオバターで作ったクリームをテーブルの上に置く。まぁ、液体と固体の中間の粘性のある物でもクリームっていうから、もうクリームで良いなコレ。

「ちょっとこれを二人に使ってもらいたい。肌に良い石鹸とクリームだ。お風呂とかに入れると肌がツヤツヤになる奴が入ってる。こっちは人の肌で溶ける様にした薬草入りの油っていうか軟膏? クリームだ。こんな感じで……」

 おれは薬指で工房の時よりクリームを少し多めに取り、二の腕に塗り付け伸ばしまくる。なんか手の甲まで伸びるな。

 化粧品の事は良くわからないけど、ベタつかないで伸びるって良い事なのか?

「肌の手入れに使う。石鹸は普通の物より肌荒れしにくくなってるから、それで洗ってからこっちで保湿」

「私、肌とか荒れないんだけど」

 スズランはそう言いながら、とりあえず塗っている感はある。そういえば化粧品とか元々少ないけど、肌荒れとか一切気にしているのを見た事がなかったな。

「こういうのは嬉しいなー。こっちは日差しが強くてさー、気を抜くとすぐ真っ赤になっちゃうし」

 ラッテはそう言いながらも、ニコニコとしながら肌に塗りつけている。

 そういや二人ともなんで日焼けしてないの? 俺は肌がアレだから焼けてるかどうかわからないけど。

「スズランは色々な意味で肌とか強そうだからいいけど、そういえばラッテは日焼けしないよね? 何かしてるの?」

 UVカットのUVってなんだっけ? 紫外線だからなんちゃらバイオレットとかだよな?

 確かそういう系のクリームはまだないはず。ってかUVカットの何の成分が紫外線を防いでるんだろう?

 そんな事を思っていたら二の腕を軽く叩かれた。

「色んな意味って何?」

「あ、いや。全然焼けないし、肌荒れもないから皮膚が強くて、かぶれとかもないって意味。そういう原因って大抵皮膚の油とか植物毒だから、種族的な問題かも。俺も肌荒れはないし」

 ウルシとか持っても平気そう。ってか友人の弟がウルシを掴んでも平気だったのに、友人がかぶれた事もあったな。

 スズランのは純粋に防御力(VIT)的な意味合いが強そう。なんかこの世界ってステータスあるっぽいし。

「けど気になるのはラッテだよ。日の光に当たると真っ赤になりそうなくらい白い肌なのに、そういうのもないし、何か塗ってるってのも見た事がない」

「あーその辺は。ほら。アレで」

「アレじゃわからないです……」

「セレッソさん直伝で、この辺りに霧の魔法を使って、お日様の光を直接肌に当たらない様にね」

 ラッテは片手を高く上げ、手をグルグルさせている。少し可愛いと思ってしまった。

「ふーん、そうなんだ。凄い魔法なんだね」

 曇りとか濃い霧とかでも、紫外線は地表に届くとか聞いた事あるけど。どんな原理だ? 本当に魔法って良くわからないし凄いと思うわ……。

「けどこれってさ。確かに良いね。なんか肌がモチモチプルンってな感じになりそう。ちょっとだけ潮風でカサカサだったんだよねー」

「本当は、肌荒れとか傷がある人に使ってもらいたかったけど。うちの嫁達はそういうの一切なくて傷にも平気って事が証明できない……。ちょっとセレッソさんの所に行ってくるわ。島にいない女性の意見も聞きたいし。しかもかなりそう言うのに気を遣う職場だし、店の皆に使ってもらって意見を取り入れたい」

「そんな事言っちゃってー。娼館で飲みたいだけなんじゃないのー?」

 ラッテはからかっているのかニヤニヤとしているが、スズランの反応は特にない。寛容なのか、他の女性に絶対変な事をしないって確信があるかだな。

「酔えないのに高い金を払ってまでそういう所に行く必要ありません! ってか倦怠期とかなく頻繁に夜もあるし、かなり仲良しじゃん。行く必要性はないよ」

「カーム君必死過ぎー。カーム君はそういうのはあまり好きじゃないって知ってるから安心して」

「そうね。けど、仕事の付き合いで行かなかったら今の生活はなかったわ。付き合いでもそういう所には行くなとは言えないけど、カームからは手を一切出してないから私は問題ない。行ってらっしゃい」

「……はい。なんか色々と悔しいのでセレッソさんと話しながら一杯飲んできます。ほとんどない、男の威厳とか沽券的な感じで……。セレッソさんの顔もあるし」

「そうね」「そうだねー」

 嫁達は俺の身の固さを知ってるから言える事だよな。うれしい事だ。

「んじゃ行ってきます」



 俺はとりあえずエジリンに転移し、通行料を払って通ろうとしたらいつもの兵士がやって来た。

「うぉい! アレすんげぇ美味かったぞ。気が向いたらまた作って持ってきてくれよ」

 なんか三点倒立したりする、三時に近い名前の芸人さんを思い出した。最初だけ物凄く似てたわ。

「あぁ、気が向いたらな。子供達が旅立ったし、もう来る事も少ないだろうけど」

「悲しい事言うなよなー。で、今日はこんな時間になんなんだ? 珍しいじゃないか」

「あぁ、少し娼館に用事があってな。こいつを店の女性に使って欲しくて持ってきた」

 俺は陶器でできたマグカップくらいのサイズの物を取り出し、蓋を開けて中のクリームを見せる。どこで手に入れたかって? 転移する前に陶芸家の工房に行ってもらってきたさ。そのままボウルでドンじゃ不味いし。素焼きではないけど、上薬が塗ってあって中はツルツルだったから。ってか元々何に使う予定だったんだろうか? 茶葉とかスパイス類を入れる為?

「食い物か?」

「食えない物は使ってないけど、止めた方がいいな。ちなみに肌荒れとかに効くクリーム。肌がツヤツヤのスベスベ。ポーションに使う薬草も入ってるから、小さな切り傷とか肌荒れにも効果的。女性に嬉しい効果だろ?」

「おー。商人みたいだな」

 あー言ってなかったっけ……。俺は今商人の真似事をしているって。

「ほら、やるよ。噂くらいは耳にしたことあるだろ?」

 そう言って俺はトートバックから炒ってあるコーヒー豆を取り出し、コーンフラワー孤児院で作らせている布袋ごと軽く放り投げる。

「あぁ、アクアマリン商会な。たまにこのエンブレムをこの町でも見かけるな。行商人でもしてんのか?」

「俺が代表だ。粉々に砕いて、綺麗な布か何かに入れてお湯に入れろ。コーヒーって奴が飲める」

 そう言った瞬間に門番の口が半開きになり、何を言っていいのかわからない変な表情になった。今まで絡んでた奴が実は凄く有名だった時って、こんな顔になるのか。

 最悪魔王が経営してるとかの噂も流れてそうだから、俺が魔王ってのもバレるな。

「仕事サボらせて悪かったな」

 まだ思考が停止している門番の肩を叩き、俺は町の中に入り、微妙に懐かしい通りを歩いて娼館に向かった。


「いらっしゃいませ。どなたかご指名はありますか?」

 受付の女性がまた違うが、特に気にする事なくセレッソさんを指名し、人気があるのか接客中だったので、酔えない酒を飲んで待たせてもらう事にした。

「お客さーん。隅っこで一人で飲んじゃってー。寂しい人みたいじゃないですかー。それか私達がサボってる様に思われるので隣に座らせてもらいますねー。あ、何か食べますか?」

 うーむ。妻子持ちの身としては、どう対処していいのかわからない……。

「いえ、接客中のセレッソさんを待っているだけですのでお構いなく。自分より他の方の接客をお願いします」

 俺の取った行動は、目的の女性以外は淡々とあしらうだけの嫌な客になる事にした。


「待たせちゃってごめんなさいね」

「いえ、問題ないです。来るタイミングも悪いですし、人気のある方をご指名するならこれくらいは問題ないです」

 一時間、隅でちびちびとやりながら客の行動を観察していたが、やっぱりこういう所に来る客は好かれようとしたり、自分をよく見せようとしたり、初めてなのかおどおどしてたりで面白かった。

 こんな場所で一人で人間観察をしている俺は、どう見られていたかは不明だけどな。きっと阿呆だと思われてるに違いない。だって普通に飲むなら酒場に行くし、隣に女性も座らせないんだもんな。

「で、私を買いに来た訳じゃないんでしょ?」

「えぇ、早速本題です」

「知ってたけど、口に出して言われると結構心に来るわね」

 俺はその言葉を無視し、石鹸とクリームを見せ、一応説明もしっかりとし、島以外の日差しがそこまできつくない場所でのテストも必要とも言った。

「ふーん」

 説明を聞いていたのか聞いてないのかわからないけど、セレッソさんは興味なさそうに指でクリームを掬って腕や手に塗っている。

「思っていた以上にのびるわね。あら、ツヤツヤ。香りもほのかに香るのが下品じゃないのがいいわね。で、これを店の子に使わせて、意見を聞けと」

「えぇ。ついでにまだ乾燥してないのでドロドロですが、顔から足の指先まで肌という肌ならどこでも問題ない石鹸です。これもお願いします」

 俺は手が入るくらい大きなガラス瓶を出し、まだ乾いていないキャメルミルク石鹸を取り出して目の前に出す。

「わかったわ。なくなる頃に、昼にクリノクロア……やっぱり店に来て頂戴。お菓子を持って」

「はぁ……わかりました。この間の十本あれば、一人二本食べられますね。喧嘩しない様に全部同じで。何がいいですか? セレッソさんの好みで今回は作ってきます」

 ため息を吐きつつ、俺のお菓子でテスターに協力してくれるのなら安いと思い、セレッソさんの好みのパウンドケーキを作る事を約束した。

「貴方、完璧に一人記憶から消えてないかしら? 人族のジョンソンを忘れてるわよ?」

「……あぁ。確かそんな名前でしたね。なら十二本で」

「実は今出稼ぎに出てて、ね……。何が言いたいかわかるわよね?」

 セレッソさんは、ニヤニヤとしながらそんな事を言った。

「二本多くセレッソさんが受け取る……と」

「トレーネにも渡すから十四本ね。ちなみに私()ドライフルーツの奴が好きだったわ」

「はいはい。古い奴を消費しないと駄目だって事で、全部これだったわって事にしておいてください。では、十五から二十日後くらいにまた伺わせていただきます」

 古株同士仲が良かったのかな?

「えぇ、お菓子さえあれば問題はないわ。こんな化粧品っぽい物のテストくらい私達には嬉しい限りだしね」

「そういう本音は多少は隠してください。俺だってお菓子で店にいる女性全員の使った感想が聞けるなら、安いもんだって思ってる事ばらしますよ?」

 そう言ってお互いニヤニヤしながらグラスの酒を飲み干し、セレッソさんに言われた、普通に飲むよりかなり安い金額のお金を払ってから店を出て、門がまだ開いている時間だったので外に出て転移をした。

 クリノクロアに寄ると、少し面倒事に巻き込まれそうだし。ってか最近会ったばかりだし。ちなみに門番はもう帰ったのか、帰りには出てこなかったよ……。


「ただいまー」

「あ、おかえりー。遅かったねー、誰か買っちゃったー?」

 ラッテはニヤニヤしながら迎えてくれ、冗談でそんな事を言って来た。

「セレッソさんが買われてたから遅れた。いつも行くと会えない。かなり人気があるんだね」

「すんごい人気だねぇ。男の人は大きいおっぱい大好きだし。それに話によるとセレッソさんって凄いらしいし」

「何が凄いかは聞かないけど、確かに男はおっぱい大好きだね。って事でもうこんな時間だし、寝ようか」

「うんうん寝ようか。もうスズランちゃんは寝室に入ってるよー。ってな訳でー……ね?」

 ラッテは俺にすり寄る様にして胸を押しつけて来た。なんか最近多い気がするんだよなぁ……。

 二人目が欲しいって言ってたから仕方ないけどさ。最近は当たる日当たらない日関係なしに誘ってきてる気がするんだよなぁ……。

キャメルミルクの粉末……。300gで3万とか高すぎるでしょう……

アメリカのオーガニック系の店でも500mlで2000円。1Lにすると4000円。ジャジー牛の四倍ですか……


一応紫外線の事とかを調べ、日焼け止め成分とかどういう仕組みになっているかは知りましたが、作中では知らない体で行っております。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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