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第251話 ラクダが届いた時の事

 あれからは島に夫婦で住み始めるが、特に変わった事はない。けど十日に一度は故郷に帰ってドアや窓を開けたり、島の物で村の人が必要だと思っている物を卸しに来る程度になっている。

 そして子供達がお世話になったお礼を持って行った三日後に、懐かしい人から連絡が入る。

「アイダって人から連絡だよ。予定より遅れてラクダが届いたって」

「……わかりました。昼過ぎ、午後二時に伺います。って伝えて下さい」

「ゴゴニジね」

 フルールさんは復唱すると、元の花に戻った。本当久しぶりだなー。個人的な用事でちょこちょこタバコや、味噌醤油を持っていったり、米の在庫がないと地下で見張りの勇者から連絡が入って持っていったりだったけど、会田さんに会うのは。

 行きに百日、帰りに百日。たしか冬に来る予定だったがすっかり忘れてた。

 向こうや道中でトラブルか、物が集まらなかったか、奴隷を探すのに手間取ったかだな。個人的には最初のだけは勘弁してもらいたい。

「ちょっと第四村に行ってきます。昼過ぎには王都に行くので、色々な対応はよろしくお願いします。何かあればフルールさんかパルマさんに」

「あ、はい。わかりました」

 ウルレさんに一言だけ声をかけ、俺は第四村に転移をした。


「北川、ちょっと時間良いか?」

「ん? なんだ改まって?」

 俺は作業中の北川に声をかけ、皆から少し離れた場所に来てもらう。

「人族の王都に毛とかを取るラクダが届いた。もしかしたら柵とかが必要になるから、急で悪いがその時は頼んだ」

「それは構わねぇけどよ、数を言え数を」

「あぁ、うっかり忘れてた。五十頭だ。それに管理用の奴隷も購入したから、とりあえずは空き家があれば問題ない」

 そう言った瞬間、俺は北川に二の腕を軽くどつかれた。確かに五十頭は多かったか?

「そんだけ多いと規模がわからねぇよ。木材は確保しておくが、その奴隷を一人連れてこい。じゃなきゃ柵の作り様がねぇぞ?」

「あいよ。午後に伺う予定だけど……。一緒に来るか? 積もる話もあるだろ」

「あ? あー……。そうだな。櫛野にも会いてぇな。連れて行ってくれ」

「あいよ。時間の感覚はわかるか? 午後二時頃って言ったんだが。俺は地球表記で大体どの程度か太陽を見ればわかるが」

「迎えに来い」

「あいよ。一番確実だな」

 俺は軽く手を上げ、了解したとジェスチャーをしてから転移魔法を発動すると北川は五歩ほど下がって手を上げ返してきた。


 そして昼過ぎ、俺は転移をして北川を拾いながら王都の地下に向かう。

「おー、なつかしーなー」

 北川は別に興奮するわけでもないが、そんな声を出して地下で見張りをしている男に手を上げて寄っていき、二の腕をバンバン叩いて久しぶりとか言っている。

「お疲れ様です。では早速これに……。久しぶりだね北川」

 会田さんが少ししてから地下に来て、俺に挨拶をしてから北川に気が付いた。

「うっす久しぶっりっす。アレ? ほんの少しだけ太りました?」

「え? あぁ、まぁ少しね」

「ストレス太りっすか? 外に出て太陽の光を浴びましょうぜ。あいつ(カーム)は午前中は書類。午後は開拓ですぜ? そんな感じでストレスを発散してますよ」

 別にストレスに思った事は開拓初期だけで、今ではそうでもないけどな。そして北川が少し強引に話を進めていたら、会田さんが恥ずかしそうに左手を上げた。

「お? 結婚おめでとうございます! ついにあの時のメイドさんですか」

「あちゃー。幸せ太りっすかー。なおさら外に出ないとまずいっすね! 勇者直伝アクアマリン式ブートキャンプに来ませんか?」

 何を言っているんだこいつは? もしかして第四村の住人をボクシングの時から鍛えてる? 後で話を聞いて、アレだったら各村に配属させて鍛えさせよう。治安維持だ。

「いや、城の内側の防壁沿いを、早朝ランニングはしてるんだけど。ってかこれがこっちに来る前のほぼ健康体の体。あの時はストレスで痩せてただけ」

「食が細くなるタイプっすか。いや、健康ならいいんすよ」

 北川が笑いながらバシバシと二の腕を叩いてる。

「北川こそかなりフランクになったね。島の影響かい?」

 あーうん。多分そうだと思う。ジャスティスを迎えに来た頃はもう少し硬かった気がする。

「地はこっちっすよ」

「そして仲良くなりすぎると、容赦ない腹パンが飛んでくると。勇者の物理攻撃は、魔法タイプの魔王に良く通る……」

「ははは、仲が良さそうでいいねぇ。んじゃ言い損ねたけどこれに着替えて」

 会田さんはそう言って、ボロいフード付きローブを出してきた。またこれか……。そして無言で羽織る事にする。

「今回は外なんだ」

「外……ですか。城門の中じゃないんですか?」

 俺はそう呟き、防犯上の理由から城内に入ってから馬車で門の外に出た。秘密の地下通路なんか出入り口にできねぇしな。


 そして外に向かうが、なんか専用の柵があって、そこにラクダが入っていた。

「んー圧巻だなー、ラクダ五十頭ってのは。ここだけラクダ市場みたいになってるぞ」

 俺は会田さんに案内され、王都の外に作られた柵の中のラクダを見ている。

「うおーすげぇ。動物園でも見られねぇぞこんなの」

「砂丘のラクダに乗れる場所でもこんなにはいないでしょうね」

「前に興味本位で調べましたが、俺が死ぬ前で一頭五百万でしたね」

 ちなみにペンギンとかカワウソも調べたけど、ペンギンって三百万するのね。普通の一般大衆車でちょっといいのが買えるわ。

 ってかペンギンとかカワウソってかわいいよな。

「少しお高い国産車が買えるじゃねぇか。けどこいつは燃費悪いだろうなー」

「ってかリッター換算だと店売りの水の方が高いですよ。五百ミリリットルでコンビニでいくらだったっけ? まぁ、確実にガソリンよりは高い。電気自動車を普及させようとする取り組みも進んでたなぁ」

 俺が死んだ時はフル充電で七百キロだったなぁ。技術の進歩ってマジ凄いよなぁ。ひと昔で三百とか五百キロとかだったし。

「砂漠で水とか食事を一切飲まず食わずで二ヶ月は生きられるから、燃費はいいんじゃない? 一回でどれくらい食べて何リッターくらい飲むのか知らないけど」

「あのコブの脂肪使うんすよね」

「そうですね。過酷な旅をしてると、どんどん萎んでいきます」 

 そして、独特のイントネーションをしている櫛野さんの嫁さんが来て、話を聞いていたのか話しかけてきた。

 とりあえず動物園とか国産車とか無視してくれたので良かったけど。

「あ、どうもお久しぶりです」「よう、久しぶり」

 北川も一回王都に戻って来た時に会ってたのかな?

「久しいな北川、随分焼けたな」

 そして櫛野さんもやって来た。

「お久しぶ――」

「久しぶりじゃねぇか! 元気だったか? 島はいいぞー。やりがいがある。お前達も後で観光にでも来いよ」

 北川は俺の言葉を遮り櫛野さんと話しているが、まだ村が四つしかないし、施設も整えてない。店もない。観光施設とはとても呼べない。けどお化け屋敷並みの驚きが、最低一回は経験できるぞ。主に顔だけ魚のアレで。

「話が盛り上がってるみたいなので、こっちで飼育できる奴隷との顔合わせしましょう。奥で作業しています」

 そして旦那(くしの)が北川とイチャイチャしてるので、こっちに来て紹介を始めようとしてくれている。

「では行きましょうか」

 俺はとりあえず櫛野さんの嫁さんについて行く事にした。なんだかんだで人より大きい動物って怖いし。実は牛くらいでも怖い。だって質量で負けるし。極力反撃したくないし。

 そして牛とヤギを混ぜたような鳴き声が聞こえ、少しだけ体をビクつかせつつラクダから距離を置いて柵の奥の方に向かう。

「こちら、貴方達のご主人様になるカームさんです」

 俺達が歩いて来てるのが見えたのか、作業を止めて三人が綺麗に並んで背筋を伸ばした。

「いえ、ご主人様になるつもりも、酷使する気もありませんので……。とりあえず楽にしてください」

 俺はフードを取り、知っていると思うが魔族と言う事を明かしていつも通りに話す。

「ある程度話は聞いてると思いますが、ここにいるラクダを五十頭ほど、近くの港町から船で五日離れてる離島まで運びます。まぁ、それは建前で、魔法で数日かけてここから運びます。それでですね、先ほども言った通り数日かかります。一人だけ先に島に来てもらい、柵を作ったり、餌には何が必要かなどの指示をしてもらいます。そして半分運んだらもう一人、残りは運び終わるまでラクダの世話を頼みたいんです」

 そう言ったら飼育員達は小声で相談する様に話し合っている。あれ? 会田さんが頼んだ他のラクダの飼育は?

「会田さーん! ちょっといいですかね?」

 俺は叫んで会田さんを呼んだ。

「はいはい。なんですか?」

 会田さんも少し怖いのか、ラクダから距離を離して走ってきた。

「この飼育員さん達ですが、自分が島に全員連れて行ったら誰が世話するんですか?」

「あー……うっかりしてた。どうしよう……」

「私ができますよ。新人の教育も」

 櫛野さんの奥さんが笑顔で言い、会田さんが凄く安心した顔になっていた。

「ってな訳で平気そうですね。ん゛ん。では、そちらも話し合いが終わってるみたいですので、話を聞きましょうか。誰が付いて来てくれるんですか?」

「自分が行きます」

 名乗り出たのは、褐色の肌で短く髭を生やした、独特な雰囲気の男性だった。

 もうアラブ的な人にしか見えないわー。金髪碧眼以外だけど。彫も深いしかっこよすぎだろ……。なんで奴隷になったし……。

「この中では一番年上で経験もあります。多くの色々な事が正確に教えられると思います」

 んー。やっぱりイントネーションが独特だな。喋り方とか語尾も少しだけど変だ。奴隷の頃の癖が出てるな。そのうち直るだろ。まぁ、これが地だったらすげぇ丁寧な喋り方だけど。

「ではよろしくお願いします。まぁ、あそこの笑いながら喋ってる二人が、大人しくなったら早速向かいますので、楽にしてて下さい」

 そう言ったら、会田さんに小突かれて紙を一枚渡されたのでそれを開くと、見られてもいい様にか、日本語で一頭の値段と奴隷だった人達の値段、ここに来るまでの運搬費やその他が書かれていた。共通語でもいいんじゃね? ウルレさんに渡すのに俺が書き直さないといけないじゃん。

「後日……。いえ、今日の夕方にもう一度来ます。地下の勇者さんに渡せばいいですかね? あー一括払いで」

「ならその金額で領収書を書いて渡しておきますね。印紙はありませんが」

 会田さんが軽く冗談を飛ばしてきたが、これって異世界ジョークだよな?


 そして北川と櫛野さんのイチャイチャが終わったので、先ほどの飼育員さんと北川、ラクダを一頭連れて第四村まで転移した。

「気分は平気ですか? 吐き気とかは?」

 俺は一応転移後のフワッとする感覚で、吐きそうになってないかを聞いてみる。

「平気です。それにしても……。村にしては物凄く栄えてますね。それと故郷とは全く違う暑さです。で、この大きな向こう側まで見えない湖はなんですか?」

「湿気がありますからね。乾燥してる暑さとは別物です。それとこれは海と言って、湖ではありませんよ」

 ってか離島って確か言ったよな? 島って単語自体が通じてなかった? この人の地域は単語があるかどうかも怪しいな。

「こうなっています」

 俺はわかる限りの地図を描き、さっきまでいた城がこの辺で、ここの港まで馬車で十数日、島まで船で五日と教え、こっちに行くと魔族の大陸と言う事を教えた。

「これが婆さんから聞いた海……。てっきり嘘だと思っていましたが。本当だったんだ……」

 そりゃ王都まで片道が歩きで百日の場所まで旅はできないわな。この人のお婆さんは、行商人とかやってたか、嫁に来たか、奴隷だったかだな。

「物凄くしょっぱいですよ。水がなくなるまで煮れば塩が出来ます」

「塩! 岩塩採掘場から取ってるのかと思ってました。故郷に売りに行けば大金持ちですよ」

「ははは、多分さっきの俺と同じ黒髪の人が道を整備してくれる。そうすれば値段も下がるぜ」

「あと雨とか湿気で運搬が難しいからね。だから遠ければ値段も上がる。俺が場所を覚えれば売りに行けるが、行商人に背中から刺されるな。それと多分だけど、貴方達を運んで来た商人が買って帰ったかもしれない。濡れない事を祈るだけだね。さて北川、後は頼んだ。俺はこの簡易書きされた値段を清書しつつ、金を払いに行かないと」

 俺は軽く手を上げ、ラクダから少しだけ毛を毟ってから転移をした。

 毛は洗ってないのか少し……いや、かなり汚く質は悪いが、綺麗にすれば希少繊維としてセーターとか毛布にして売れるな。

「戻りました。ちょっと書き物してますね」

 北川には清書と言ったが、日本語のメモを共通語に直すだけだ。


「んじゃちょっとテーラーさんの所に行ってきます。これはラクダの値段やかかった経費です。夕方には払いに行くので、お金の用意だけお願いします」

 そう言ってウルレさんに書き直したメモを渡し、気が乗らないけどテーラーさんの所に向かった。

「あら、珍しい。今日はどんな用で?」

「ラクダが届きました。少しだけ毛を毟ってきたので、質感だけは確かめて下さい。主にセーターやコート、防寒着類や毛布にして売る事になると思います。この島じゃ防寒着は必要ないですし、毛布も必要ないですからね。数は少ないのでかなり先になると思いますが」

「……あぁ、前に話してた。あら、毛質は羊より軽いわね、つまり細いって事かしら。質が悪いのは手入れしてないからね。ふむふむ」

 テーラーさんは毛をいじりながら注意深く見ていた。まぁある意味職業病みたいな物か。

「性質的にフェルトっぽくするか、この間みたいにコートにするしかないわね。紡ぐ場合は太目にしないと無理そうよ? 目の粗いセーター……どの太さの編み棒が必要なのかしら……」

「まぁ、その辺はお任せします。実は乳も肉もいけるらしいので」

「あら、優秀な家畜ね。頑張って増やさないと」

「ですねー。陸路の運搬にも優れているので、増やしたいです。では失礼しますね」

「わざわざお疲れ様。じゃ、これも量産できる事を祈ってるわ」

 そしてさっさと戻って、執務室で書類を片付けに入った。

175話以降のキャラを、自分で読み返しながらメモを取り、終わったら250話と251話の間に挟みます。

その時はブックマークがズレる可能性がありますが、予めご了承下さい。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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