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第248話 視察って言うより島内見学だった時の事

気が付いたら8500文字に。

FPSみたいに別けるわけにもいきませんので少し長いです。

 子供をクリノクロアに預けて十日、年越祭を故郷で無事に終え、執務室で作業していたら昼過ぎに着く定期船で手紙が届いた。

「んー、ついに来たか……。この手紙が届いてから三回目の定期船と一緒に自分の船で来ると……。九日後か」

 俺は机に肘を突いて頭を押さえ、ボソリと呟きながら正直クソ面倒くさいと思う。

 まずは宿泊施設の清掃とかパーラーさんに頼まないと……。別に気を使うなとか言ったけど、掃除くらいは必要だよな。


「パーラーさん。申し訳りませんが来客用の家の掃除を八日後にお願いします」

 俺は午後のお茶休憩の時にパーラーさんに掃除を頼んだ。

「どなたかの来島の予定でもありましたっけ?」

「えぇ、おっかない貴族が税金を取る為の下準備の為に視察です」

「……あー」

 パーラーさんが変な声を出すが、ウルレさんは普通にお茶を飲んでいる。まぁ、怪しい場所を見たりするだけで、怪しい物は俺の座ってるイスの下にある謎の空間の、パンとビールで作ったぬか床なんだけどね。

「では、自分は必要な書類はある程度こちらで纏めておきますね。視察になった場合はお任せしてよろしいでしょうか?」

「えぇ、わかりました。森に連れ込んで全員を暗殺って感じにしないように努力します」

「……何があったのかは大体聞いてますが、本当だったんですね」

「えぇ!」

 俺は物凄く良い笑顔で親指を立てて、即返事をした。



 そして手紙の通りに来る事はなく、前に島に来た船でカルツァが朝にやってきた。早速俺が出迎え、応接室に案内をする。

「こちらがまとめた書類になります、ご同行された方と一緒に見ますか? それとも任せます? 任せるなら事務室をお貸ししますが?」

「ここで雑に見させてもらうわ」

 カルツァは、前に来た時と同じヘソ出しの服装で島に来て、高圧的な感じでお茶を飲んでから端に寄せ、分厚い書類を捲った。

「これが一個前の春からの物ね……」

 それだけを言い、ペラペラとどんどんめくっていくが、本当にしっかりと見ているんだろうか?

「もう一個前のをお願い」

 俺は言われた通りに書類を出すと捲りだし、とある場所で指を置いた。

「売上が急に出てるのはアレかしら? セレナイトに酒場を作ったから? けど出金も多いのは仕方ないわね。確かにこの分だと季節が五回巡るくらいには出したお金は取り戻せるわね……」

「まぁ、そういう風にやらせていただいたので」

 ちゃんと見てたわ……

「下級区の労働賃金としては少し高いけど。どういう意図が?」

 一緒に来た部下が質問をしてきた。

「賃金を上げればその分他にお金を落としたり、生活に余裕ができて出生率もあがり孤児院に入る子供が減ります。多少下級区の税収も増えてると思いますよ。それと犯罪率の低下も」

 俺はそれっぽい事を言いつつ、適当に誤魔化す。多分あってると思いたい。

「それはここに来る前に確認してきたわ。目に見えて下がってるし、言われた通り出生率も税収も上がってる。お供を連れて歩いたけれど、歩けるようになってたのが不思議で仕方ないわ」

 あっててよかったわ。

「細かい所に目を向けないとダメですよ。税金は取りやすい所から取るのではなく、ある所から取らないと。それとスラム化したら、弾圧じゃ心象も悪くなるから手を付けられないって思ってるうちは駄目です。テストケースとしてうちの例を使って、スラムに仕事を落とす様にしたんですよね?」

「えぇ、多少は稼働しているわ。ただ潜り込ませた私の部下の部下が思った通りに動いてくれなくて、少し手を焼いてるのよ。先の見えない馬鹿なのか、ただ権力者に反抗したい馬鹿なのかわからないわ」

 カルツァは脇の方に置いたお茶をと取って飲み、ため息を吐いた。本当に頭痛の種らしい。

「今までないがしろにしてたのに、いきなりなんか気に食わねぇ! 兄貴! あの貴族に目にもの見せてやりましょうぜ! って感じですかね? いつも重大な問題をおこしたり、計画を狂わすのは、末端の先の読めない血気盛んな奴ですし。魔王が出張るのだけは勘弁してくださいね。どうしてもというなら出ますのでお手紙下さい」

 俺は少しだけピリピリとした空気の中でお茶を飲みながら、任侠映画とかでよくあるシチュエーションを言い、トローさんやビゾンの事を思い出す。二人とも裏に大きな組織がなくて良かったわ。


 それからはお供や旦那が書類を確認しつつ、言われた事だけを答え、足りない書類はウルレさんが取りに行き、応接室で昼食を挟んで旦那や従者を引き連れて視察が始まった。

「蒸留所の一日の生産量ってわかるかしら?」

「どうですかね? 糖化させて発酵の度合いで変わるので大体――」

「この作業場が多い場所では、多種多様な職種の方がいるけれど、島外への輸出はどれ?」

「あぁ、仕立て屋ですね。他はまだ島内需要のみです。それでもジャイアントモスの反物が出来てから、受注生産をしてるので定期的にって訳じゃないのですよ」

「あぁ、前に言ってた件ね。そうそう、貴方の家を見せてちょうだい」

 そんな事を話しながら歩いていると、いきなりそんな事を言われた。

「はぁぁーー?」

 素でそんな声が出てしまった。

「代表の生活水準が見たいだけよ。それとも見せられないのかしら?」

「自分が屋敷に行き、寝室を見せろって言ったらどう思います?」

「なにも中を見せろとは言わないわよ。外観だけよ。中なんか興味すらないわ」

「そうっすか……」

 俺は盛大にため息を吐き、レンガ作りの家に向かった。


「カーム、こんな所でどうしたの? あぁ、貴族様の視察だっけ」

 家に向かう途中に、スズランがどっかの映画の最初期みたいに、丸太を肩に乗せて歩いていた。長さが三倍くらい違うけど。地面が柔らかいと沈んだりしない?

「そうだね。あ、こちら妻のスズランです」

「スズランです、よろしくお願いします。では、今は仕事中ですので失礼します」

 ズンという音と共に肩から丸太を下ろし、丁寧にあいさつをし、丸太の端の方を掴んで上げ、真ん中に来るまで肩を使ってどんどん滑り込んでいき、バランスの取れる場所まで来たら手を添えて、商業区の方に歩いていった。

「凄い奥さんですね……。普通はもう少し小さい物を、荷車的な物で運ぶと思うのだけれど?」

「あぁ、力があるのでそのまま運べる物は運んでくれと言われて、長くて太い木材が作り易いって事で皆に喜ばれてます」

「そ、そう……」

 眉間に皺を寄せながら、カルツァは片手で頭を押さえて歩きだした。やっぱりスズランの力は異常なんだな。少し麻痺気味だったわ。力だけなら北川に勝てそうだし。

「ここです。少し前まであそこに住んでたんですけど、指導者が立派な家に住んでないと示しがつかないとか、後で家を建てる人が遠慮するって理由でかなり説得されてここに住んでいます」

「思っていた以上に質素ね」

 どんな家を想像してたんだよ……。俺があんたみたいな家に住んで落ち着くと思ってるのか? こっちは根っからの庶民だよ。

「元が寒村出身ですからね、本当はアレでも十分なんですよ」

 そう言いつつ、前に住んでいた家の方を見ていたら、今住んでいる方のドアが開いた。

「……あぁ、話に聞いていた貴族の方ですね。いつも旦那がお世話になっております」

「妻のラッテです。自分が気が付かない事を指摘してくれるので、いつも助かっております」

 ラッテが何かを収穫しに行こうとしていたのか、木の皮で編んだ籠を持って出てきて笑顔で挨拶をしたが、目が笑っていなかった。

 そしてカルツァが少しだけ目元をひくつかせ、無理矢理笑顔を作っている。夢魔族同士、俺に見えない何かを、瞬間的にやり合ったのだろうか?

「え、えぇ。こちらこそいつもカームさんにはお世話になっておりまして……。今後ともよろしくお願いします」

 なんで丁寧語なの? ちょっと何があったの!? ってかさっき微妙にスズランにも丁寧語だったよね?

「では夕食用の野菜を、村人共同の畑から収穫しないといけないので失礼しますね」

「あぁ、ありがとう。多分夕食は一緒に食べられると思うから」

 簡単なやり取りだけをしてラッテと別れるが、カルツァが物凄く小さなため息を吐いたのを見逃さなかった。やっぱりなにかあったんだな。見なかった事にしよう。

「では朝日を背にして左手側から順に、各村を案内しますね」

 俺はそう言って第二村に転移をした。


「う゛ぉぇぇ……」

 カルツァの旦那が吐いた。この人も弱い人だったか……。

「あの、大丈夫ですか? 一旦戻りますか?」

「も、戻る時もコレなんだろ? 今日は宿泊するから、私はどうにかして第一村に戻る。皆は自分の仕事をしててくれ」

「では、荷物を運ぶ海運用の小舟を……」

 俺は海に石を投げ、しばらくするとガウリさんが出てきた。今一番出ちゃいけない奴だ。

「どうした?」

「転移でここまで来たんですけど、この方が吐いちゃいまして。他の村の視察にも転移を使う予定なので、多分これ以上は無理だと判断し、第一村まで送り届けて欲しいんですけど」

「あぁ、問題はない。出荷用の油とかを運ぶ予定があったからな。ふむ、予定ではそろそろ小舟に積み終わる時間だな。あんた、あそこの桟橋まで歩けるかい?」

 頭だけ魚の水生系魔族が指を指しているが、視察団一行は全員ドン引きだ。まぁ、最初はだれもが似たような反応になるよな。

「あ、あぁ。歩くのには問題はない」

「小舟は揺れるが、転移よりはマシだろう」

 あんたモーターボートみたいな速度で泳ぐじゃん。最悪小船を丸洗いコースだな。

「桟橋近くの木陰にイスがあるので、そこで休んでて下さい。俺は案内を続けますので」

「あ、あぁ。すまない。では後は頼みましたカルツァ様」

「――へ? え、えぇ。わかったわ」

 脳が思考を放棄してたな。多分数ヵ月は忘れられねぇだろうなぁ……。


「ここが村長も良く来る相談役の執務室です。まぁ自分もお世話になってるんですけどね」

 そして少し歩いて織田さんの執務室と言うより小屋をノックして、返事を待ってから中に入る。

「……あぁ、視察か。少し待っててくれ」

 織田さんはそう言うと棚の書類を出し、隅のテーブルを指した。

「そこを使ってくれ、光が差し込むから問題はないだろ。税務調査官みたいな奴には十分だ」

「一応お偉いさんなんですが……」

「金取りに来てるだけの役人に近いんだから、ある意味敵だ。茶も出さんぞ」

「何か向こうで嫌な事でもありました?」

「あぁ、友人の個人経営の店に税務調査が入った。少しの申告漏れで数日潰されて、持ってかれたのが十数万。店を休んだ損害の方が多かった。ってな訳で何か聞きたい事があれば言ってくれ」

 確実に敵視してるわ……。ってか日本円の単位言ってもわからないだろうなぁ……。


「生産品にあるニホンシュ、ミソ、ショーユという物は何でしょうか?」

「あぁ。米で作る酒と豆で作る調味料だ」

「この方は勇者なんですよ。紆余曲折を経て島に来て、故郷の味を再現するって取り組みで、もう一人の勇者の方と協力しました。これもまだ島内需要分と、人族の王都に拠点を持ってる勇者にしか卸してません」

「生産数と卸値は合ってるはずだが? 何か問題でもあるのか?」

 織田さんは少しだけ頭を上げて睨みつける様に言うと、視察団一行は黙ってしまった。まぁ技術系勇者だけど、勇者は勇者だしな。

「ちょっと、何で勇者がここにいるのよ!? あんた魔王でしょ!」

「仲良くなっちゃったので……としか言えませんね。とりあえず終わる頃には説明も終わるかな?」

 俺は岩本君の事を話し、その後に織田さん達が来て、例の王族拉致の事は少し濁しつつ、数名の勇者を預かる事にし、停戦を結んで第三王女を撃退したところまで言った。

「で、貴族である貴女が来たと……」

 そして手の平を上にして軽く指して説明を閉める。

「……貴方。猫を被りすぎじゃない? 二枚三枚ほど」

「そうですかね? 普通に過ごしてたらこんなもんですよ。魔王になったからって性格まで変わりません。魔王が全員やばい奴だと思ったら大間違いですよ。ははははははは」

 俺は自分で言った事がおかしくて笑ってしまった。

「カーム。お前も十二分にヤバイ奴だからな? 一応自覚しておけよ?」

「やだなぁ織田さん。俺は普通ですよ」

「やばい奴ほど姿を偽る。これはお前の為にあるような言葉だ。勇者と魔王が一緒にいる事自体が異常だと思え。まぁ、アレ(・・)の件があるから仕方ないと思うが……。それと個人の能力は北川からも聞いている。お前、大岩を割らずに攻撃魔法で綺麗に穴を開けたらしいじゃないか。向こうの兵器並みと言っていたが?」

「あー。いや……その……」

「まぁいい、設計図が出来上がったから届けてくる。役人と一緒の空間にいると息が詰まる」

「終わったら、全て元の場所に戻しておきますね」

 そう言うと織田さんは軽く手を上げて出て行ってしまった。

「貴方、魔法でそんな事もできるの!?」

「えぇ、まぁ……。お遊び程度に」

「お遊びって……。岩と同じ硬さの鱗を持つ魔物も倒せるって事を理解してる?」

「あー。ミスリルの刃物とかを弾くサソリをソレで吹き飛ばしましたね。ってかおとぎ話に聞いてた魔法生物用に考えてたんですけどね。ゴーレムとか。残念ながらまだ見た事はありませんね。さっき話に出たミスリルの鎧を着込んだ奴だったら、衝撃で中身が死ぬとは思いますけど」

「はぁ……。その発想がやばいって言われてるのよ。性格が穏和で本当良かったわ……」

 カルツァは頭を押さえ、盛大にため息を吐きながら足を組み直した。

 ここで俺が冗談を言って、視認外から貴様の屋敷を吹き飛ばす事も可能なんだぞ。って言わないだけましだな。

 織田さんも、なんだかんだで俺のやばさをカルツァに伝えてたっぽいしなぁ……。昼行燈風を装うのは、もう性格みたいなもんだから仕方ないし。

 靴ペロ事件で仕返しされるとでも思ってて、内心バクバクしてるんだろうか? んー別にアレは個人的に本気で気にしてねぇしなぁ……。


 調査団は書類の確認を終わらせたみたいなので、今度は第四村に飛ぶ事にした。

「最近作ったばかりなので、ここは収穫見込みや、何を生産してるか。今後の商人の倉庫の出来具合って感じでしょうか? ここでは主に繊維系を生産していこうと。暑さに強い羊や、乾燥帯に生息する――」

 そんな説明をしていたら、北川がやってきた。

「おっす、なーにやって……。あー噂に聞いてた貴族様ですか、こりゃ失礼」

 北川は軽く頭を下げ謝罪したが、カルツァの表情が物凄く硬かった。

「黒髪……黒い瞳。ゆ、勇者?」

「えぇ、勇者として召喚されましたよ」

「なんで魔王と仲良く……」

 あ、これ織田さんの所で見たわ。

「あー。俺の好みが魔族側の女性なんで、夢魔族の娼館を紹介してもらったんですよ。それで仲良くなったんだよな」

「……あぁ、そうだな。ちなみに補足しますけど、昔住んでた共同住宅のお隣さんが夢魔族でしてね。その方が務めてる娼館に行きました。俺は酒を飲んでただけです」

 俺は腕を組みながらため息を吐き、本当の事なのでそれくらいしか言えなかった。

「勇者ってお盛んなのね、夢魔族をわざわざ選ぶだなんて」

 いや、こいつオタクで好みが凄い奴だし……。

「あれ、貴女も夢魔族ですよね」

 北川がカルツァの腰にある羽根を見つけ、別に言わなくていい事を言った。

「悪いけど、私には旦那がいるので!」

「あ、大丈夫です。全然好みじゃないので!」

「仕事に戻ってろクソが!」

 俺は超笑顔で親指を立ててた北川に体当たりをして吹き飛ばし、開墾作業中の森を指さして叫んだ。

「本当に申し訳ありませんでした!」

 俺が軽く頭を下げて謝って顔をあげたら、カルツァは苦笑いをしていた。多分じゃれ合いにしか見られてないだろう。

「べ、別に気にしてませんわ」

 そして後ろにいた視察団の面々は青い顔をしていた。魔王と勇者の一触即発の喧嘩に見られたんだろうか?

「一回は一回だ!」

 そして俺は北川からドロップキックを食らい、盛大に横に吹き飛んだ。

「いってぇ……。あー、口に土が……」

 俺は【水球】を二個浮かせ、口を漱いでから顔を洗い、北川の方にも水球を移動させる。

「悪かった。汚れた所でも洗ってくれ。まぁ、魔王と勇者って言ってもこんなもんですよ。仲の良い馬鹿やってる大人です。書類は第一村で見ましたよね? んじゃ第三村にも行きましょうか。じゃー事故のない様にいつも通り頼んだわ」

「あいよー。お前こそ転移のし過ぎでぶっ倒れんなよ」

「これくらいは平気だ。んじゃ、また今度」

 俺は口を半開きにしていた視察団を近くに寄せ、転移魔法を発動して第三村に飛んだ。


「ってな訳でここが第三村ですが……。酒飲んでますね。ここの村はセレナイトのごろつきの寄せ集めなので一日のノルマを終わらせると、直ぐに酒飲むんですよ……。あーあ、果物で勝手に酒作っちゃって……。後は、孤児院の子供だった子が多いですね」

「確かここは例の有名なチョコレートの原料になる、カカオの群生地でしたわよね? 書類にたしか書いてあった気が」

「えぇ、そうですね。作るのに手間がかかるので、一日の収穫量が多いと加工前の在庫が貯まるので今は制限をしています。森の風通しを良くするのに、木を切ってもらってたりしますが、荒くれ者が多いので勢いでやっちゃって早めに終わっちゃうんですよ。それに酒の島内需要の三分の一がこの村で消費されてます」

「四分の一じゃなくて?」

 カルツァは、少し驚いたような顔で聞き返してきた。だよな。普通は四分の一だと思うよな。

「酒盛りが多いんですよ。しかもあぁやって定期的に配ってる酒が減ってくると自分達で作り始めます。材料はその辺にある物で簡単に作れるので」

 俺はため息を吐き、盛大に昼から飲んでいる第三村の住人を見てると、なんか耳の長い痩せた女性が、鍋に大量の砂糖を入れているのを見てしまった。多分ジャム作りだろうな……。

 時期的にこの辺うろついてる頃だったわ……。

「あの女性は……エルフ?」

「えぇ、噂を聞きつけてやって来て、嬉しい事に森の管理をしてくれています。おかげで魔物が減り、魔力溜まりもなくなりました」

「エルフもいるのね……。本当にこの島は凄いわねー。勇者やら希少種やらで……」

 すみません。ドラゴンってか竜族もハーピー族もいるんですよ……。

「で、あの子が報告書にあった、体が少し不自由な子ね。そういうところに目を向けるのは凄いわね。普通の店だったら絶対に雇用しないわよ?」

「今後は噂が広がって、どんどん来るとは思いますけどね。その為の施設とかも考えてますよ。この世界はハンディキャップ持ちに優しくはないので、ある程度はこっちが先駆けでやるしかないんですよ。最悪簡単な作業だけで食事だけでもって考えです。不自由は少しあるけど飢えはしないって奴です」

 俺はつま先で軽く地面を削りながら、腕を組んで酒を飲んでる奴等を見た。

「ここの村長がならず者なんですけどね、孤児院出身だからなんだかんだで面倒見がいいのが良かったです。じゃなけりゃ別な人を充ててましたよ。んじゃここの書類付けてる人はいないので戻りますか」

 第一村に来た、加工されたチョコとかこっちで管理してるからな。もうちょっと数字に強い人でも第三村に連れて行くかな。


「気にしないと言っていましたので、こちらが来客用の家屋になっております。夕食の方はどうしましょうか? 昼と同じく作らせますか?」

「その辺は問題はないわ。お供が作れるし、私だって簡単な物くらいは作れるもの」

「そうですか、では食材はそこのテーブルの上にありますので、ご自由にお使いください。自分は失礼しますね」

 俺は軽く挨拶をして、ドアを開けた瞬間にピンク色の髪の女性がチラリと見えたので無言で閉めた。

「あら、どうかしたの?」

「窓から出て行きますね」

 冷や汗を垂らしながら笑顔で言ったら、ドアに背中を預けて体重をかけて抑えているのに、ゆーっくりと押されるようにドアを開けられた。

「姐さん、今日は! 今日は駄目ですって! この人達は駄目ですから! 畜生! 今まで見かけなかったから平気だと思ったのに最後の最後にこれかよ!」

「あらー大丈夫よー。ちょーっとお話しするだけだからー」

 いつも以上に優しい声でドアがどんどん開いていき、壁とドアに挟まれそうになったので、俺は急いで横に避けた。

「逃げてー!」

 俺が叫んだが全員が動かなかったので、姐さんの顔を見ると物凄く目を細めながらニコニコとしていた。コレ駄目な奴ですわ……。

 そして俺の叫び声で、転移でダウンしていたカルツァの旦那さんが飛び起きたのか、走ってきて姐さんを見て盛大に飛び跳ねて腰を抜かしていた。

「さて、まずは何から聞こうかしら? 靴ペロかしら?」

 あ、終わったわ。カルツァが……。

「なんで知ってんすか!?」

「あら、私って結構耳もいいのよ? どっかの男が窓に近づいて聞き耳を立ててる時、私は裏口辺りでも聞こえてたし」

「うっそだろ! あそこからでも聞こえるのかよ!」

 この後俺が色々フォローを入れつつ、何とかカルツァは生きていた。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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