第238話 かぼちゃの煮物を作った時の事
タイトル通り少しテロ
あれから特にファーシルが子供を連れてこないので、容体は安定していると思うが、なんか子供が産まれてるとか知ると、出産祝いとかあげたくなるが、もらった事あげた事がないので多分そういう文化はないんだろう。ただ、成長してもう死なないんじゃないのか? って感じの年齢になったら少し贅沢な食事が出た気がする。
まぁ、七五三的な物だと思ってる。海外じゃ男の子が女の子の名前付けられてたりとか恰好とか、なんか凄く嫌な名前を仮につけてたりとか。
まぁ、そのうち訪ねて来たら何か作ってやるか。
そしてティラさんが帰って来て、ねぎらいの言葉と一緒にパンケーキを渡したら速攻で食べられた。丸々一本ほど。
そして笑顔でナッツ類の蜂蜜漬けをお茶請けにしていた。
まぁ、労いにあげた物だからいいけどね。
そして数日第一村で休息をとってから、また森に入って行った。まさにレンジャー……。ってか既にここがベースキャンプになってるな。
そしてニルスさんの紹介で来島した商人さんの倉庫が完成し、どんどん荷物が運び込まれてるが、商人ネットワークで既に五件程予約が入っている状況だ……。
「んーどうすっかなー」
執務室で一人で悩んでいると、書類を持ったウルレさんが入ってきた。
「少し相談があるんですがいいですかね?」
俺は机に書類を置いたウルレさんに言ってみた。
「えぇ、多少なら助言できると思いますが。どうしました?」
「商人の倉庫の件です。もう各村に順番に建てて、そこで商売させた方がいい気がしてきました」
「普通そうしませんか?」
ウルレさんは首を傾げ、なんでそうしなかったのかを疑問に思っている。
「今まで防衛面の都合で、船が乗り入れられる湾を主体に動かしていましたが、最近襲撃もありませんし、第三第四村に桟橋も作ってしまいました。なので第二村にも桟橋を作り、もう防衛に重点を置かずに、防衛力を保持して島を繁栄させ、通貨の普及を考えてます。この職人以外に払ってない給金を見て下さいよ……。まぁ、いつでも払えるように別に管理してるので問題はありませんがね」
そして第一村から第四村の村人の給料の書類を出す。一日いくらで、日数をかけているだけだ。
「船に乗って買い物に行きたいと言った方には、島民を管理してる方に別途に書いてありますので問題はありませんが、商店が……。売り買いはもちろんですが、物品不足と偏り。どの商店さんも物があまりかぶってないんですよ……。専門でやってる方なら良いんですが、畑違いの物を扱うと潰れる可能性もあります」
物品の品薄は離島あるあるだと思うが、幸い文化的な物はあまり発達していないので、ないと困る物とかは本当に少ない。もう釘とか鉄関係とかそういう物だけだ。
「あー。うちの実家が青果扱う感じですね。巨大倉庫を第一村に建てて、水生系魔族の方が船で配達するとかはどうです?」
「んーそれでもいいんですけどね。ある程度は自給自足できてるので、嗜好品とか娯楽関係の問題でもあるので。それに、青果を大陸から大陸に運ぶメリットが少なく、島に売りに来る目的じゃないと厳しいですよ」
「あーそれもそうですね……。最悪島での生産も視野に入れれば、もっと必要じゃなくなると?」
二人で唸りつつ、何かいい案はないかと考える。
「第一次産業だからなぁー。何か製品にすればいいんだけど、まだそんな余力ないしなー。それなら巨大倉庫でもいいな……。ってか島を中継地点兼補給場所にしてもらえてるんだから、そっち系の商売もそろそろ必要だよなー」
「娼館とかですか?」
「まぁ、海の男には必要不可欠な感じはしますね。けど専門職の方がですね? とりあえず資材的な面で各村に倉庫を分散させ、2の1とか3の1って感じで管理はとりあえず確定でいいかなー。とりあえず第一村みたいに海からは離れた場所に建設で」
どうせそのうち増えるんだし、各村で栄えさせた方が良いに決まってる。
「倉庫はこれからは各村に建てる事で草案を書いて、村長達と話し合いをします。その方が栄えますし。最悪露店での商売や補給、宿泊施設や交流ですね。運が良ければ恋に落ちる可能性も」
「男女比ってどうでしたっけ?」
ウルレさんが棚にある書類に手を伸ばし、直ぐに戻した。
「ほぼ同比率ですね」
「現地妻が増える……。なら娼館で後腐れがない方が良いですね。そっちの方向で。問題は治安の維持と、どうやって人を呼んでくるかですけどね」
俺は草案に書き足し、どんどんウルレさんと意見交換をする。ルッシュさん? 女性の意見も必要だと思うけど、休んでるのに聞きに行くのもアレなので、ソレも各村で話し合って村長会議かな。
そして午後はいつも通り第四村に行くが、北川に笑顔で畑に呼ばれ、巨大化したトマトとカボチャについて突っ込まれた。
第四村開拓時に植えた奴だ……。すっかり忘れてた。
「あぁ、パルマさんやフルールさんが村人の意見を聞いて、ちょーっと品種改良して大きくなりすぎる奴だ。持ち運びに難ありだから出荷はできないし、トマトは海運に向かないから島内消費」
「そんな事は聞いてねぇよ、ってか事前に言えよ。どうすんだよコレ!」
北川は、巨大カボチャを指して騒いでいる。
「違和感感じたら先に言えよ。今の今までネタを温めてたのか?」
「村人も、どこまで大きくなるか放っておいたらしいが、まだデカくなるから相談されたんだよ。俺は畑にはかかわってねぇ!」
「そうっすか……。第一村では収穫祭でカボチャのスープとか、トマトソース系のパスタにつかって消費だけど。一人で大量消費する女性がいるので気が付いたら減ってますけどね。多分一日一個食べてます。愛情注いで育ててますし」
「やばい成分入ってないよな?」
「入ってないけど……。皮が堅すぎて、俺のミスリル包丁でも切れない」
「どうやって食うんだ?」
北川が畝になっているトマトをつっつき、じろじろと見ている。
「切れない包丁みたいな感じで、前後に動かしても切れない。けど刺せば刺さるから力業で」
「味は? ここまで大きいとなんか別物だろ」
「意外に普通。調理用に甘くはなってないけどね」
そして北川はカボチャの方に歩き出し、持とうとするが持ち手もないし、重いので持てずに諦めて立っている。
「これは?」
「フォークリフトがないからその場で解体。これは普通のカボチャと同じだから、良く洗った斧とかマチェットで切っていく感じ。醤油があるから煮物にも挑戦できるかなー」
「あれだ、小豆買って来て、煮た奴の上に乗せてくれ。結構好きなんだよ」
あんこはあった気がするから、多分できるだろうけど……。結構チョイスが渋いな、冬至かよ。
「んじゃ煮込むか……」
俺は足元にある丁度良さそうなカボチャの蔓を、畑で仕事してる村人に許可をもらってから切って、フォルマさんが作業しているキッチンに行ってカボチャを置かせてもらう。
「あ、みりんねぇや……。日本酒と砂糖入れるし問題ねぇか? んじゃ仕事終わったら煮るから、このままちょっと置いといてください」
俺は調理場にカボチャを置き、開墾作業に行こうとするが、その前に北川がフォルマさんとキスをしていた。せめて俺が見てない時にしてください。
「そういえばさー。フォルマさんと今どんな感じなん?」
ファーシルの件があったので気になったので聞いてみた。
「あー? 見てただろ? 喧嘩もなく良い感じだぜ? なんでそんな事聞くんだ?」
「この間さー。仲良くしてたハーピー族の女の子が、俺が知らないうちに子供産んでてさ、子供が高熱出て、助けを求めに来たんだわ」
「おう。で、どうなったんだ?」
「ん? 薬を与えて落ち着いたけど、北川は子供はまだなん? って感じ」
俺がそう言ったら、木の根っ子が明後日の方向に勢いよく飛んでいった。
「お、おい。脈略なさすぎだろ! なんでいきなり子供に飛ぶんだよ!」
「いやー、結構激しいって聞いたけどさ、もう島に来て半年くらいだし、どうなのかなーって?」
「いや、まぁ……少し二人でいちゃつきたいから……子供はもう少し待とうね。って……」
「そうか。まぁ、明るい家族計画でなによりだ。今第一村で錬金術師を育成中だから、その人が育ったら第二か第四村に配属するよ。そういえば教会のデザインの草案来てる?」
俺は思い出したかのように聞いてみた。
「あー来てる来てる。あー……ドレアさんだっけ? と一緒にヴァネッサさんが来て……。ほら、あそこ。あそこに教会を建てる予定」
北川が、少しだけ作業の手を止め、指を指したので俺もそっちの方を見ると杭が打ってあり、ロープが張ってあった。
「あ、ならいいわ。おっけーおっけー」
そんな会話をしながら開拓を進め、今日の作業を終わらせる。
そして俺はカボチャをミスリル包丁でさっくりと切り、中の種を取り出し、ちょうどいい大きさに切り分けていく。
「煮崩れ防止に面取りするか?」
「そこまで上品にする必要はねぇよ」
「けどな、取った方が早めに味が染み込むんだよ。残念だったな。あ、黄色い方が良い? 醤油いれるか?」
俺はニヤニヤとしながら切ったカボチャの面を取って、火にかけて落し蓋をする。
まぁ、俺も面取った煮物って上品な感じがするから取りたくないんだけどね。時間がないし仕方がない。
「んー黄色かなー。なんかこの世界での食卓の茶色って受け悪いし」
「だなぁ。初めて醤油使ってタレ風で鶏肉炒めたら、家族から変な目で見られたわー。全部なくなったけどな。んじゃなしで」
そして小豆がないのでレンズ豆を取り出し、隣の竈で水を多めにして柔らかくなるまで煮る。
「んじゃ醤油なしでつくるぞ」
俺は落とし蓋を上げ、砂糖と日本酒を入れてまた煮込む。
「カームさんって、やっぱり料理上手ですよね」
「こんなもん慣れですよ。だってこの料理作るの初めてですし。応用と、どんなものかを知ってるかで、頭の中でどうすればこうなるかなー? ってのがあるので、それっぽくやるとそれらしくなります」
「え? そんな感じでやってるんですか?」
「基礎があれば応用でできますよ。煮込み料理はたまにしょっぱくなったり薄くなったりしますけどね。完成するまでにちょこちょこ作ってる時の味見で微調整ですね」
俺はレンズマメを時々かき混ぜ、へラで取った物を指で潰し、柔らかさを確認し、煮汁を捨てて砂糖を入れ、潰しながら煮詰める。
「アンコはトロトロが好きか? 少しゴテゴテが好きか?」
「は? あー。たい焼きぐらい?」
「あいよ」
俺は二回目の砂糖を入れ、もう少しかき混ぜながら煮込み、適度な硬さになったら焦げないようにさっさと皿に移す。
そしてカボチャの落とし蓋を開け、串を出して煮え具合を確認し、煮汁がかなり余ってしまったが、まぁ仕方ない。
「うん、まぁまぁ」
そしてカボチャを皿に移し、雑にレンズ豆のアンコをカボチャの上にのせて、煮物を完成させる。
「はいよ」
「おー。カボチャの煮物だ……。いただきます! んーやっぱり煮ると味は似るな。俺のばー――」
「お前のばーちゃんと比べたら取り上げるからな」
北川が何かを言おうとした瞬間、俺はそれを牽制した。煮物のプロと比べられたらたまらん。
「いや、初めて作ったにしてはうめぇよ。うんお前才能あるわ」
「ありがとう。結局醤油は使わなかったなー。何か煮込み料理が食いたいなら言ってくれ」
「筑前煮?」
「渋いな……。こんにゃくがねぇなぁ……。練り物も」
「ねぇ、チクゼンニってなに? 食べたいなら私が作るよ?」
フォルマさんが、北川の食べたい物を知り、作りたがっている。健気だねぇ……。
「あぁ、俺の故郷の煮込み料理だ。あそこの醤油って奴を使って、根菜類とかを煮込む。別にこんにゃくなくてもいいかー。悪いけど、フォルマに教えてやってくれねぇか?」
北川が笑顔で拝み倒してきた。いかにも日本人らしい。
「あいよ。後でな。男に作ってもらったんじゃ嬉しさも半減だしな」
俺はニヤニヤとしながら言い、後でフォルマさんに教える事を約束した。




