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第235話 協力を依頼した時の事

 目を覚ますと、故郷のベッドではない事が一瞬でわかる白い空間に浮いていた。

「知ってる空間だ……」

「お久しぶりです。シスターにK2を教えた時以来ですね」

「えぇ、そうでしたね。何かあるんですか? なんか大抵ろくでもない時に出てきますよね?」

「そうでしたね。そろそろ性欲に関するスキルが欲しいかどうかの打診なんですけど、いりますか? なんか最近夫婦仲の営みが異様に多いですよね?」

 紳士っぽい神はニコニコと言い、カウンターでコーヒー豆を炒っていた。

「見ないとか最初期辺りに言ってましたよね?」

 まさか覗いてるんじゃないだろうな? そしたら最悪だぞ?

「いえいえ、ちゃんと席は外しておりますよ? それにお昼近くや、朝になれば終わってるでしょうし、終わるタイミングは合っています」

「そうっすか……」

 俺は喫茶店のカウンターに座り、ブレンドを頼んで出てきたコーヒーをブラック無糖で一口飲む。美味いな。

 そして砂糖とミルクを足して飲み始める。

「で、いりますか?」

「いえ、結構です!」

 それだけを力強く言い、コーヒーを飲み切る。

 本当に夜中大変な事になる。まぁ、こっちから誘わなくても、向こうが乗り気なのは良いんだけどさ、スキルをもらったら本当に朝までコースもあり得るから勘弁してほしい。

 俺が第二のキースになっちまう。

「奥さんが五人くらいいれば頼んでたかもしれませんがね」

「増やします?」

「増やしません!」

 コーヒーのお代わりをもらい、後ろに飾ってある写真をなんとなく見るが、なんか空想上の神話生物だ。ネタで合成した写真であって欲しい……。

「そういえば最近、色々とお菓子作りもしているんですがね。地球の神がレシピ本を大量に持ってくるんですよ」

 神はそう言い、サマープティングを出してきた。真っ赤な果汁が毒々しく見えるが、ベリー系の香りや酸味で物凄く美味しい。

 日本人の俺からしてみれば、本当見た目が悪いだけで物凄く美味しいから困る。

「それとこれなんですけどね……」

 神が何もない空間に画像を出してきた。

「地球の神の神経が良くわかりません」

 出てきた画像は、切り口が七色のケーキだった。

「作れって言うんですよ……これ」

 俺はため息と乾いた笑いを出す。

「一回は食べてみたいと思いますけどね。怖い物見たさで。ご馳走様でした」

 俺はコーヒーカップを起き席を立つ。

「お粗末さまでした。では、性欲は増やしませんが、回復力だけは少し上げておきますね」

「おい! 勝手なこ――」


 そこで目を覚ますと、両隣には裸で寝ているスズランとラッテ。そしてムラムラはしていないが、男性特有の朝の生理現象が……。


【下半身の回復力:1】を習得しました。


 ひでぇ……。

 二つの意味で頭が痛い。本当に勘弁してくれ。もう中身は五十超えてんだぞ? 最近こっちの肉体年齢に、精神が引っ張られ気味だけどさ……。

 ってかこれ楽しんでるだろ? むしろ面白くするような事も言ってたし、なんか絶対神様の玩具だよな。

 俺は皆が起きる前に風呂場に行き、軽く汗を流して朝食を作る。

「ってか、回復力あったら終わんねぇよ……」


【下半身の回復力:1】は神の力により消去されました。


「電源のオンオフみたいにされてもなぁ……」

 竈に火を入れ、少しだけ愚痴る。

「おはよー」

「おはよう」

 ベーコンを焼いた油で卵を焼き始め、少し寝坊してきたラッテに挨拶をする。

「んふふー。今日は半熟な気分だよー」

 ラッテがニコニコとしながら、胸を押し付け、そんな事を言ってきた。

「はいはい。んじゃ面倒だから全員半熟でー」

 焼きあがった卵を皿に移し、まだ燃えている薪を火鉢にいれて消し、スズランを起こしに行く。


「起きろー、ご飯できてるぞー」

 スズランを揺らすと眠そうに半分だけ目を開け、腕を掴まれ引き寄せられキスをされた。

「少し甘えたい」

「なら少し早く起きてくれ、もう子供達も起こして食事だからそれはできない」

 スズランはため息を吐き、ゆっくりと体を起こして俺に抱き付いてきた。

「少しだけ……」

 そして俺の臭いを嗅ぎ、少し顔をこすりつけてくるが角が痛い……。けど頭を撫でて少しだけ甘えさせてやり、体感で二分くらいで離れてくれた。

「着替えるから」

「あぁ、わかった」

 裸は平気なのに、相変わらず着替えだけは恥ずかしいらしい。


 俺は朝食を食べ終わらせ、アクアマリンに戻り書類仕事を片付けてるとフルールさんが変化した。またかな?

「ティラさんが第四村に今いるらしいんだけれど、魔力溜まりの件で話があるって」

「ですよね……。北川と一回処理したんだけどなぁ……」

 俺はウルレさんに一言声をかけて第四村に転移する。


「お疲れ様です。魔力溜まりがあると聞きましたが?」

 消耗品の補給をしていたティラさんに話しかける。

「おう、聞いたぜ。この間暴走してたから散らしたんだけどな」

 北川も来て、ティラさんにこの間処理した事を言っている。

「それは暴走してた物でしょ。こっちは暴走しそうな場所の特定と排除、それに管理よ。そして初めまして、ティラよ」

「あぁ、北川だ。初めまして」

 なんだかんだで挨拶はしっかりするんだな。

「で、今回はどの辺ですか?」

「無理に散らした場所から、さらに島中央に向かった場所よ。ってか処理が雑だったから、向かう途中で、少し切ってもらう事になるわ」

「……そうっすか」

 俺は北川と目を合わせ、軽く両手を広げて首を傾げる。処理が雑だったとか言われると、無知を恥じた方がいいのか、経験不足を嘆いた方がいいのかわからない……。

「いつ出ますか?」

「まだ余裕があるから明日からでいいわ。私も少し休みたいし」

 ティラさんはリュックに荷物を詰め終わらせるとそれを背負い、集合住宅の方に歩いていった。

「魔力溜まりの事で呼ばれたんだけど、詳しい説明が少なかった。俺が呼ばれるの明日でいいんじゃね?」

「このまま開拓してけよ」

「書類仕事が残ってるんだけど……。北川が行ってくれない? ってか明日出るなら、今日の午後も書類と格闘しないとまずい。俺は戻るぞ?」

「女性と二人っきりになって、理性を保てる自信はあるが、気まずくなりそう」

「俺は異性とみられてなかったぞ? なんか便利屋扱い。調理できない二人の食事。悲惨な事になるからやっぱり俺か……」

 頭を掻きながらとりあえず今日の予定を組み直す。一応明日の準備をして、その後に書類仕事にするだけだけどな。

「んじゃ帰るわ……」

「あぁ、わかった。ってか、なんかついてねぇな」

「運的な物はないと自覚してるさ」

 そう言って執務室に転移をし、隅に準備だけを済ませ書類と格闘をする。

 そして夕食後にカロリーバーとナッツの蜂蜜漬けを作り、ティラさんに渡せるようにしておく。詰めていた消耗品の食料が、全部乾き物だったし。



 翌日、朝一で向かう事を言ってあるのでそのまま荷物を取って第四村に転移をし、配っている朝食を食べてると隣に北川とフォルマさんが向かいに座り、ティラさんが俺の隣に座った。

「おう、おはようさん」

 北川に挨拶されたので軽く挨拶を返す。

「で、何日くらいかかるんだ?」

 北川がパンを千切り、何かベリー系のジャムを大量に塗り付けていたが、人の食べ方なので特に気にしない。多分肉体労働で大量にカロリーを消費するだろうからな。

 けどティラさん。あんたはジャムをそのまま食べないでくれ。見てて胸やけがするわ……。

「進行速度によるな、大体太陽一個分の傾きで四千歩前後。島中央までゆっくり歩いても休みなしで半日。けどそんな訳にもいかないからな。明日朝には処理して、早ければ明日昼には戻って来れる。何ヶ所あるか聞いてないけどね」

 俺はティラさんの方を見ると、豪快に目玉焼きを食べていた。全部食べてもカロリー消費が激しいから、痩せているんだろうか?

 そして視線に気が付いたのか、親指と人差し指の二本を立てた。

「二ヶ所らしい」

 ってか誰かが小指から立ててたし、ティラさんは親指からか。お国柄? 種族柄? 地球でも確かあったな。六以降は特殊な形とか。

 そして食事を食べ終わらせ、リュックを背負って出発する事にする。

「んじゃ悪いが行ってる時は手伝いに来れない」

「あいよ。作業効率は下がるが、俺がいる時点でもう開墾作業は村人五十人分だと思ってくれ」

「実際それくらいだからな。んじゃ怪我のないように注意も払ってくれ」


 そして出発をして最初の休憩中に、ちょっとした話をティラさんにする。

「ちょっとティラさんにお願いがあるんですが、聞いてもらえます?」

「内容にもよりますが、どんな感じでしょうか?」

「俺には同い年の双子ではない娘と息子がいるんですが、次の春に冒険者になると言って故郷を出るんです」

「……えぇ。少し聞きたい事もありますが、まずは全て話してください」

 そして俺は、学校に通っている事、雪が降ると春まで休みになる事、その冬の間に教える事が沢山あるが、その中の一つに野営能力の向上や薬草採取がある事を言う。

「私に教師になれと?」

「えぇ、常に森の中を歩き回り、脳内で大体今どの辺にいるかとか、狩りの仕方や野草の見分け方が物凄く詳しそうですので」

 シンケンの母親は教え方が下手だし、最初から雪中での野営とか無理だろうからな。それは慣れたら俺が故郷で教えるつもりだ。

「わかりました。それは引き受けます。けど同い年の姉弟ってなんです?」

「嫁が二人います。そして狙ったかのように片方の妊娠が発覚してからの、もう一人のアピール。正妻の妊娠より前に、自分が妊娠する訳にもいかないと言っていましたので、そのような事になっております」

「……意外にやり手なのね」

「惚れられただけです。まぁ、外堀も埋められてましたし」

「ご馳走様……」

 ティラさんはそれだけを言うと、休憩は終わりと言わんばかりに立ち上がったので、俺はリュックからカロリーバーを取り出し、ティラさんに渡す。

「何ですかコレ?」

「数カケ食べるだけでパン一個分の栄養のある保存食みたいなものです。干し肉より持ちませんけどね」

 そう言うとティラさんは袋を開けて確認すると、目付きが変わって大き目の欠片を口に放り込み、ザクザクと音をたてながらかみ砕いている。

「甘くておいしいけど穀物が多いわね。ドライフルーツが多めだと嬉しかったわ」

「次回作る時はそうします」

 超甘党のエルフ……。森というか故郷の厳しい戒律から解放され、町や村に来て、初めて食べた物が美味しすぎて……。なんか良くありそう……。後は血が濃くなるから森の外から結婚相手を見つけてきたり、違う場所に住んでる同族訪ねたりとか。

「何ボーっとしてるのよ。おいてくわよ?」

「あぁ、すみません」

 あまり見ない希少種だからね。変な妄想が……。


そして北川と魔力溜まりを散らした場所まで来ると、木にバツ印が付いていた物が多かった。

「これを切ってちょうだい」

 木をペシペシと叩きながら言われたので切り倒し、根っ子を起こして土をかぶせてピルツさんに声をかけておく。茸化しないけど、多分聞こえてるだろ。

「ってかあのサソリの外皮、まだ残ってんだな」

 そう呟き、どこかの大きな虫が脱皮したみたいに、綺麗に中身がなくなってる殻を蹴り飛ばす。腐ったか食われたかだな。

「サソリが出たのね。ってか、何で真ん中だけ吹き飛んでるのよ。どうやったらこうなるの?」

「魔法で吹き飛ばしました。最初は村で挨拶した北川が処理しようとしてたんですがね」

 俺はサソリを吹き飛ばした経緯を話した。

「魔法で吹き飛ばせるものなのね……。最悪貴方に緊急として手を貸してもらうわ」

「わかりました。で、もしティラさん一人の場合はどう処理してました?」

「逃げるわ。弓と相性悪すぎるし。どうしてもの場合は外皮の薄い場所か関節部分、腹の方をどうにかしてかしら?」

 ティラさんはそう言うと、森の奥の方に歩き出したので、俺もリュックを背負い森の奥まで行く事にした。


「二ヶ所目までもう少しだけど第三村みたいに無理する必要もないわ。ここで野営にしましょう」

「わかりました。では野営の準備しますね。水浴びはどうします?」

「少し離れた所に水路があったからそこで済ませるわ」

「はいはい。では準備しておきますねー」

 俺はこの間みたいな簡易的な物を用意し、火を起こしてのんびりと待つ。

「ここをキャンプ地とする!」


 そしてティラさんは、蛇や鳥を捕まえて来たので俺が調理をするが、カロリーバーを食べていた。頼むから一日で食わないでくれよ?

 そして料理を作り終わらせ、食べ終わったら洗い物をして、特にやる事がないのでもう寝る事にした。



 翌日、練っておいた小麦粉が自然醗酵していたのでそれをフライパンで焼き、ジャムを直接食べているのを見た俺は、急遽荷物にジャムを足しておいたのでそれを渡す。

「あら、気が利くわね。ありがとう」

「あーそうそう、保存食ではないですが、嗜好品として作っておいたのも差し上げます」

 そう言って、今回の休憩中のどこかで食べようと思っていた、ナッツ類の蜂蜜漬けを取り出す。

「お菓子作りの時とか、小腹が空いた時に食べられますからね」

 そう言ってティラさんの目の前に出すと、ジャムのコルクの蓋を閉め、蜂蜜漬けの蓋を開け、焼いた小麦粉の上に半分以上載せ、半分に折って一気に齧りついた。

「森の恵みに蜂蜜。これ以上ない贅沢ね」

 そして二枚目の焼いた小麦に残りを全部載せて、ティラさんは一回で蜂蜜漬けを食べきった。

「好きなんですか? ってか好きなんでしょうねぇ……」

「ナッツ類は好物よ、それに甘い物も。それが合わさった物に勝るものはないわ!」

「そうっすか……」

 糖尿に気を付けて欲しいくらいだ。どうせ俺と別れたら、ジャムを直で食べるんだろ? まぁ、森の管理をして島を安全にしてくれれば俺は問題はないけどね。

 今度第一村に来たら、ナッツ類を大量に入れたパウンドケーキでも持たせてやるか。一日でなくなりそうだけどな。半日? 一回目の休憩中かなー。

どんどん女性キャラが残念とかポンコツになっていく。


指を出して物を数える方法ですが、どこで出したか忘れました。

最悪あっち(FPSの方だった)かもしれません。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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