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第228話 キースに相談された時の事

会話多めです。

 翌日の午後、第四村の手伝いに行くと北川に何があったと聞かれた。

「午後に子供達の稽古をしようと島に来たら、姐さんが来た」

「……ほう。何をされたんだ?」

 なにかをされた前提で言うのかよ。

「殺気を当てられただけだ。リリーが首を、ミエルが胴体を真っ二つにされた錯覚を見せられたらしい。鮮明に。そして冷や汗だらだら、俺もできるかもとか言いやがった」

 俺はため息を吐き、首を横に振る。

「できると思うか?」

「できんじゃね? 仮にでも魔王だし。ほれ、やってみ」

 北川が親指で胸をトントンとやっている。

「んな事言われてもなー」

 俺は頭を掻きつつ、明確に殺すという意思表示はないが、銃口を突きつける程度の気持ちで、少し目を据わらせて、エアガンのサイトを覗く様に北川を見る。

「ふむ、なんか殺気の質が違うな。こう、ドラゴンとか巨大生物の凶悪な物っていうより、アイスピックみたいな最小限の物だな。俺の場合は、首の後ろがチリチリする感じなんだがそれが全くない。ってかもしかして胸の辺り狙ってる?」

「スゲーヘコム。そうだよ胸を狙ってたよ」

「けど逆に、殺気で相手に危機感を与えないのはいいな。簡単に殺せる、まったくお前は本当に暗殺者向きだな、稽古を含めて」

「そうか? 全然うれしくねぇんだけど? 威圧で回避できた方がいいわ。ってかそう言うの全然ないからスラムで絡まれるんだよ。逆に欲しいわー。って事でほら、やってみてくれ」

 そんな子供みたいなやりとりで、仕事前に少しふざけるが、北川が睨むだけで何とも感じない。

「お前鈍いだけだわ……。その辺の奴なら逃げ出す殺気だぞ。周りを見ろよ、遠巻きにこっち見てるだろ。勇者と魔王が一触即発状態だと思ってるぜ?」

「あちゃー。俺駄目だわー。死んだわー。もしかしたら姐さんに何回か殺気飛ばされてるかも」

「かもな。ってかお前の場合はもう少しわかりやすい方法で脅さないと駄目だな」

「ふむ……」

 俺は【チェーンソー】を左右に二本作りだし、ブレードを高速回転させながら笑顔で北川に一歩近づいたら一歩下がった。

「いや、それは反則だろう……」

 北川は、少し硬い笑顔で冷や汗をかいている。俺の殺気は一か九しかないみたいだ。ってかこれ殺気じゃねぇよな。

「今やっちゃいけない事をやったけど、高速回転してる工具や道具はなんでも武器になるからな。改めて注意しないと、かすっただけで最悪致命傷になるからな。さて、お遊びはここまでにして開拓すっぺ」

「んだんだ」

 その後はノリノリで、木を切ったり根っこを抜いたりで木材と畑を増やしていく。

「あ、姐さんからミスリルを買う時に、かしこまって火山に向かって名前で呼んだら、ドラゴンのまま現れてさー」

「おー。それでー?」

「いきなり人型になって、笑顔のまま顔を突きつけられてものすごく熱かったけど、変に威圧感合ったけどあれが殺気だったのかな?」

「多分そうじゃね? お前殺気に鈍いし、ってか良く殺されなかったな」

「だなー」

 手を動かしながら少し前にあった事を言うと、あきれた顔でそんな事を言われた。いや、仕方ないじゃん? ちょっと怖いなー程度だったし。



 夕方になり第一村に戻ると、俺の家にキースがやってきた。凄く珍しい。とりあえずコーヒーを出してやることにする。

「おい、本人がいる前じゃ聞けねぇけどよ。親父になる心構えって何だ? 教えてくれ」

 キースにしては珍しく真面目すぎる相談内容だ。ってか相談された事って過去にあったっけ?

 そんな事を聞かれたので、俺は嫁達が妊娠していた時の事を全て話した。

「嘘だろ……。料理までしてたのかよ……」

「なんだ苦手か? 慣れれば簡単だぞ?」

「狩りに出て、下処理した肉に塩と香辛料ぶっかけて焼いた奴しか、今まで作ってなかったぞ!?」

「そうか……。まぁ俺のは特殊な事例(ケース)だからな。洗濯と掃除、食器の洗い物くらいは手伝った方がいいな。逆算して冬の頃に出来たって話だから、秋には産まれるな。ってかそろそろ経産婦に色々聞いた方がいいな。アドレアさんかアントニオさんの所に行け、そして色々教わってこい。炊事洗濯は教えてやる」

「いや、同じ村の奴が多いところじゃ、誰かに聞かれたら確実にルッシュの耳に入るだろ」

「あぁ……。キースはそういうのが駄目か。隠れて努力タイプなんだな」

「うるせぇな。俺にも威厳ってものがあるんだよ」

 ほっこりとした笑顔で見ていたら、思い切り睨まれた。ふむう。午後の開拓じゃないが、こう言う時に殺気が云々って奴なんだろうな。睨まれてるだけしか感じない。

「黙っててやるから安心しろ。教えるのは多分上手いぞ。って事で、お父さんになる為のお勉強って事で」

 そして俺は体調や心境の変化、ストレスや心労でどう母胎に影響があるかを教え、色々父親としての心構えも教えた。

「ずいぶんと色々あるな。ってか食事も子供に影響すんのかよ」

「へその緒って奴で繋がってるからな、食べた物が血となり肉となる。それが子供にも行く。だからコーヒーとかお酒は駄目なんだ」

「むう……。オヤジが肝臓とか良く取ってきてたけどどうなんだ?」

「あー。食べちゃ駄目な時期と良い時期がある。栄養がありすぎるんだ。おなかの子供が小さいと、少し食べただけでも栄養が行きすぎる。そろそろ食べても良いかもしれないけど、なんでも程々が一番だぞ? あ、生物は駄目、良く噛む物、塩辛い物や辛い物も駄目だったな。それと規則正しい生活を心がける。まぁ、ルッシュさんも色々聞いてるだろうし、知識もあると思う。だから負担を減らす方向で動いた方が良いな」

「そうか。どこかずれてるところかなりあるけど、やっぱりお前は学があるな。相談して良かった」

「一言多いけどどういたしまして。とりあえずウルレさんに引継は済んでるから、こっちはいつでも休みに入ってもらってかまわないぞ。それとなく言っておいてくれ。それとそろそろって時は家の近くにいろ。森の奥だと戻ってくるのが大変だからな。せめてもの救いは、フルールさんがいる事だな。連絡が取れる。子供が産まれたら故郷に戻って子供の顔を見せに行っても良いぞ。子供が落ち着いたらだけどな」

「ってか、色々万全すぎて驚いたわ……。故郷じゃ、腹の大きい近所の姉ちゃんも畑で働いてたぞ?」

「別に悪い事じゃないんだぞ? 下半身の筋肉がしっかりしてると難産になりにくい。全く動いてない、大切にされてて蝶よ花よだと難産になるらしい。まぁ子供は大切だからな。職場や周りが気を使うべきなんだよ。出産祝いってのも多少出す事にしてるしな」

 まぁ、全て前世基準だけどな。あと難産とかはお○んでやってた。

「まぁ、あれだ。この事は黙っててくれよ」

「おうよ。さっさと戻らないと料理も愛も冷めるぞ」

 俺はそう言い、キースをさっさと追い返すことにした。浮気はしないと思うけど、旦那を疑わせたら悪いしな。



 翌日になり、事務所の二人に挨拶をして執務室のイスに座ると、ルッシュさんがやってきた。

「キースが昨晩おじゃましたみたいですが、それから様子が少しおかしいんですが何かありました?」

 おいキース、速攻でバレてるぞ。騙しようがないし、こんな事言われたら言い訳できねぇぞ! なにやってんだよあいつ!

「えぇ、父親になる為の心構えを教えろと言われたので、俺がやっていた事を教えました」

 俺は速攻でキースを売る事にした。妊婦でもあの眼力……。黙ってることなんかできないさ。

「……そうですか。急に普段にやらない事をやり始めたので、怪しいと思っていたんです。そう言う事でしたか……」

「えぇ、そう言うことです。黙ってろと言われましたが、ここまでバレてたら意味がないですからね。この事は内緒って事で……」

 俺は微笑みながら人差し指を唇に当て、とりあえず心の中でキースに謝っておいた。

「さて、仕込んだのは年越祭の後ですよね? 秋には産まれる予定だとは思いますが、引継も済んでいるようですし、休日を増やしてウルレさんに任せる日を多くしても良いと思うんです。どうします?」

 時代が時代ならセクハラになるが、この世界にそんな物はないのでストレートに聞いてみる。

「そうですね。まだ不安ですので、もう少しやらせてみてからそうさせていただきます」

「わかりました。ではそのようによろしくお願いします」

 俺は笑顔でルッシュさんが執務室から出ていくのを見送り、書類の山に手を伸ばすが一番上に封書があった。昨日の午後の船で届いたんだろうか? げっ。カルツァの家の紋章じゃねぇか。

 俺は封蝋を剥がし中身を読むと、ジャイアントモスの服が社交界で話題になり、布が欲しいという貴族が多く、仲介するから布だけをできるだけ多く売って欲しいという内容だった。しかも二行三行で済むのに便箋二枚にびっちりと文字が……。貴族の体裁って奴か。

 朝から頭痛が痛いって言いたい……。けど、宿泊施設のまだない島まで来てもらうよりいいか。

 反物で出るし、在庫残るかな……。まぁ、書類に区切り付いたら聞きに行くか。


「お疲れさまです。いきなりで申し訳ありませんが、ジャイアントモスの布ってどのくらい余ってます? 例の貴族から売ってくれって手紙が来たんですよ」

 俺は昼食前にテーラーさんの工房に行き、いきなり本題に入る事にした。実はテーラーさんも少しだけ苦手だからな。

「ずいぶん急ねぇ……。今妹達が織ってるから、あるのはアレだけ。全部持って行きなさい。島での原価で売って、ついでに恩も売っておきなさい」

 そう言って紐に値段を書いた紙を付け、反物になっている布を袋に入れて縛ってくれた。

 故郷に家が十軒以上建つ値段なんですけど……。まぁマントであの値段だしな。反物だったらこれくらいするか。

「ありがとうございます」

 俺は素直に受け取り、帰ろうとしたら呼び止められた。

「職人募集の結果ってどうだったの?」

 やっぱり耳に入ってたか。

「皮なめし職人、染色屋は確保できました」

「いいわね。上々よ。ただ皮手芸、皮細工が欲しいわね」

「靴職人がいますので、併用ってのは? 人族ですが」

「ふむぅ……。垣根は低くなってるけど、人族との結婚はねぇ……。ちょっと抵抗あるわね」

「そうですか。まぁそのうち良い方が島に来てくれますよ」

 本当皮系の職人が狼だったらおもしろそうなんだけどね。狼さん一に対して嫁が三……。ある意味見てみたいね、姉妹の好みが同じみたいだし。ってかやっぱり結婚願望はあるよなー。さて、昼食でも食べるか……。

次話は、明日の201801011800時に予約投稿しました。

皆様、いつも作品を読んでいただきありがとうございました。良いお年を。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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