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第223話 麻を収穫した時の事

タイトルが思いつかなかったので、半分はタイトル詐欺。

 あれから第四村の村長と北川と話し合い、なるべく早く麻の収穫をしたい事を伝えると、明日にでもしようと言われたので、麻を乾燥させておく場所が必要と伝えると、とりあえず空き家に突っ込もうと言うことになった。ある意味第四村の村長も大胆というか大雑把だな。



 翌日、朝から第四村に行き、麻の収穫を始める。

「このように簡単に抜けます。なので数本まとめて勢いよく引っ張れば! このように抜けます。そしたら別な方に渡し、根と葉を落としてもらい、さらに別な方が空き家前に運びます。そしたら俺が熱湯を作り出しますので、そこに突っ込んでカビの元を殺します。そしたら家の中で乾燥です」

「お湯に突っ込まなくてもいいんじゃないのか?」

 とある男性が疑問に思ったのか、そんな事を言ってきた。

「放っておくと、切り口が腐ったりカビたりする。熱湯ってのはそう言うのを殺す事も出来る。火を通して物を食うってのは、そういう物を殺してるって事だ。生のまま食うと腹を下す奴があるのと同じだ、豚肉とかが有名だな。だから腐ったりカビたりしにくくするのに熱を使う。新鮮な物以外は火を通して食うのと同じだ」

 北川が補足してくれた、ありがたい。けどちょっと違うね……。

「続けます。根っ子はこの辺から切り、葉の生えてる辺りから切り落とし、大体の長さをそろえて下さい」

 俺はマチェットで試しに一本だけ切る。

「力仕事は男性で、細かい事は女性で良いですかね? まぁ熱湯は俺が出します、んじゃここの列のは種を残すので抜かないように。では、怪我のないようにお願いします。んじゃ北川、こっちの監督頼む」

「おう。そっちも熱湯に気をつけろよ」

 そして作業が始まったので、俺も空き家前に移動して【熱湯】を浮かせ、竈の灰を持ってきて熱湯に入れ水流を作ってかき混ぜる。多分アルカリになればいいんだろ? と思いつつ、女性達と世間話をする。

「季節が二つ巡りましたが、何か女性目線で不都合はありますか?」

「そうねぇ。個人的な家がまだ少ないから、夜の方が不便かしら」

「そうですねぇ。男性の目線も気になりますし、ちょっと着替えとかも不便ですね」

 ふむ、出生率とかに関わりそう。けど後者は許してあげて。その気がなくても、目に入っちゃうし。

「わかりました。職人を今募集していますので、直に改善されるかと思います」

 第一村の時はかなりオープンだったけど、一回港町で過ごしてるからそう言う感情が生まれたんだろうな。

「あ、最初の麻が来ましたね」

 俺は受け取った麻を灰を入れた水球にぶち込み、ある程度したら適当な枝を使ってベシベシと叩いて水球の外に出た奴を女性に掴んでもらい、空き家の隅から立てかけてもらう。


 一回目の収穫だから数が少なかったが、なんか途中から効率も上がって水球が二つに増えたけど特に問題なく終わった。

 問題という問題は、北川が両手を上に広げ、ワイの字みたいにして乗せられるだけ乗せてきて、こちらの作業のタイミングが狂わされたくらいだ。

「まだ乗るけど、バランスの問題で無理だった」

「木材になる丸太が持てるんだから当たり前だろ。ってか北○の拳のシ○ウかよ」

「わりぃ、〇斗は名前だけしか知らん」

 コレが歳の差か。俺が死んでから十年以上過ぎてからこっちに来たしな。しかたねぇか。

 そんなやりとりがあったから少しだけへこんだ。精神年齢があの時から成長していない気もするが、魂? 的にはもう五十歳超えてんだよなぁ。

「んじゃ残ったのは、種を取るのにそのままで。ここに山になってるのはその辺の草と変わらないので埋めて土にしちゃいましょう。生ゴミ捨ててる穴までは遠いなぁ……」

 そう言って地面をへこませ、両手でわしゃりと掴んで穴に放り込んでいく。

「家畜に食わせたらいいんじゃねぇっすか?」

無毒化(・・・)した、元々()のある植物ですので埋めた方が安全です。何があるかわかりませんからね。落ちて腐ったリンゴが勝手に酒になって、それを食べた動物がぐでんぐでんになり、その辺の木にぶつかって寝転がることもありますから」

 キまった牛や羊がハイになって大暴走されたくないしな。ってかあんな大きなヘラジカは島に確認はされてないけど、集団で暴走したらたまったもんじゃない。

 説明したら大笑いしてるが、人にとってのほぼ無毒化であって、直接食べたり、動物にまで有毒かはわからない。ウサギはナス科の植物の毒に耐性があるから、タバコとかホオズキやジャガイモの芽とか食べても平気らしい(・・・)けど、最悪毒ウサギになるよな。名前の響きはRPGのモンスターみたいだよなぁ。

「さて、収穫終わっちゃいましたね。一回休憩入れちゃいますか」



 昼過ぎ、業務が入れ替わっただけなので俺は執務室で作業をするが、書類を持ってきたウルレさんが真剣な顔で話しかけてきた。

「カームさん。昨日のお菓子ですが、アレは冒険者向けに売り込めば莫大な売り上げになると思うんです。本格的な事業展開とかしないんですか?」

「そうだねぇ……。してもいいんですけど、簡単に模倣品が出回ると思いますよ。材料はその辺にある穀物と蜂蜜で出来ちゃいますし。俺は冒険者になりたい子供達に故郷に戻ったら教えるつもりでいます。こういう物は多く広まった方が、冒険者にありがたがられると思うんですよ。だからもし作るとしたら、アクアマリンの名を落とさないように品質を維持し続ける事だけです。ウルレさん、やるなら計画書を書いて運営してみますか? 金銭面とかアクアマリンから支援しますよ? コーヒー店みたいに新しい広告塔作ります?」

「いえ、結構です!」

 ウルレさんは凄い勢いで首を横に振り拒否している。個人的にはコーヒー店みたいにやってくれてもよかったんだけどな。

「まぁ、飽き飽きしてる保存食に新しいメニューが増えるので、喜ばれるとおもいます。アクアマリンでも島内需要を満たしつつ、船乗りに売りつけ、ギルドにレシピ公開。たまには無償で良い事しておけば、心情も良くなります。情けは人の為ならず、ってやつです」

 損して得取れ。の方がよかったかな?

「はぁ、それはどういう意味で?」

 ウルレさんは、本当にわからないと言う顔で聞き返してきた。

「人に親切にしておけば、その相手の為になるばかりでなく、やがては良い報いとなって自分にもどってくるという事。って意味で使われてます。ですので、模倣品が簡単に出回りそうな物は、先にそう言う風に情報を公開してた方が良いと俺は思うんです。あー、孤児院の収入源としても使えそうだな、焼き印した袋とレシピも渡すか。久しぶりにサンドイッチマンもやるかな」

「あの、代表自らそう言う事をしなくてもいいのでは? もうアクアマリンの顔なんですし、変な噂が出回るのも……」

「代表自ら売り込みもしてると思われるか、代表もあんな事しないといけないのかと思われるか。その辺はわかりませんね、止めておきましょうか。ってか変な噂はもう十分に出回ってるんですよ……」

「なんで、そんなものすごく残念な顔してるんですか?」

「そう見える? そうか、そんな残念に見えちゃったか」

 どうやら顔に出ていたみたいだ。まぁ、当時ノリノリだったからなぁ。楽しんでもいたし、ああいうの結構好きだったからな。


「ただいまー」

 夕方になり、俺は故郷に帰る事にした。

「あ、おかえりー。夕飯作ってる途中で良かったよー」

 家に入るとラッテがキッチンに立っており、夕食の準備をしていた。

「んー? その袋は何?」

 俺が持っていた袋が気になるのか、ラッテは野菜を切りながらこちらを少しだけ見た。

「冒険者用の保存食を考えた。島でも売り出すけど、町にもあるような材料で作れるから、まずミエルに教える」

 俺はキッチンの邪魔にならない所に袋を置き、居間に行くが子供達の姿がない。稽古だろうか?

「おかえり」

「ただいまー」

 スズランは窓を全開にして暖炉に火を入れ、下処理した鶏肉を直火の遠火でじっくりと炙っていた。油とタレが垂れて、煙で燻された香りが胃を刺激する。

「今日は甘いショウユで炙ってみたの。想像してたよりかなり美味しそうな香りで、かぶりつきたい衝動を抑えるのが大変」

 うん、焼き鳥でタレだね。去年照り焼き作ったからな、炙ってみたんだろう。もう肉に関しては本能レベルで当たりを一発で引いてくるなー。

「麦酒を瓶に移してくる」

「お願い」

 裏庭の倉庫に入り、中くらいの樽から麦酒を数本の瓶に移し替え、家に戻ると子供達が戻っていた。

「あ、お父さんお帰り」「お帰り父さん」

「はい、ただいま」

 その後は夕食になるが、俺は一言聞いて全員に麦酒を注いでやり、食事を始める。

 鶏肉をかじると、プリプリの肉と程良く油の落ちた皮がもの凄く絶妙な火加減で調理されており、それをビールで流し込み、ラッテの作った野菜スープも美味しくいただく。


 夕食後、俺はちょっとした知識を子供達に教える事にした。

「もしもの話だ。食べ物と水がなくなったとしよう。水はなくなると三日くらいで衰弱して、五日目くらいには死ぬ。食べ物がなくても水だけ飲んでれば二十日は生きられる。それだけ水が重要だって事はわかるか? まぁ、二人とも水が出せるから問題はないと思うけどな」

 二人は授業を聞くみたいに、真剣な顔になったので続けることにする。

「ついでに言うと、水と塩と砂糖があれば少しは楽になる。生きるのに必要な物の半分くらいがその二つだからだ。塩は干し肉、砂糖はパンでとれる。なんでパンが砂糖かって言うと、噛み砕いて胃に入れると溶けて砂糖になるからだ」

 でんぷんとか言っても多分わからないだろうからな。

「そこでだ、気まぐれに一握りで一食分の栄養のあるお菓子を作ったら、皆美味しそうに食べたし、日持ちもするから保存食として売り出そうと思ってる。ミエル、キッチンに来てくれ」

 俺はミエルをキッチンに呼び出し、説明を続ける。

「ちょっとお父さん、なんで私も呼ばないの!?」

 裏でリリーが吠えたので、仕方なくキッチンに呼ぶ。

「町で手に入って、宿屋のキッチンを借りれば簡単に出来るから安心しろ」

 俺は袋の中から材料を出し説明をしていく。

「精麦した小麦、まぁパンの材料だ。生だとお腹で砂糖にならないから気をつけろ。各種ナッツ、種ってのは芽を出すために色々な栄養が詰まっている。だからこれだけでも栄養はあるが、コレもローストする」

 俺は小麦を炒り、ナッツ類は塩を軽く振ってローストし、袋に入れて粉々にする。

「これで食べれば栄養になる物だらけ、塩も振ってある。そしてコレに蜂蜜を垂らし、適当に伸ばしてオーブンへ。砂糖や蜂蜜は焼くと固まる。そして水分も少なくなるから腐りにくい。湿気と水、虫に気をつけてれば長持ちする」

 そして焼いて固まった物を取り出し、あら熱を取ってから適当な大きさに切って居間のテーブルに持って行く。

「はい、美味しい保存食。これ一本でパン一個と半分くらいの栄養がある。食べ過ぎると太るぞ」

 夕食後なのに、焼きたての甘い香りを出しているソレをラッテがじーっと見ている。手を出そうか出さないか迷っているらしい。

 そうしているうちに、スズランが手を伸ばし黙々と咀嚼しながら頭を縦に振っている。美味しいらしい。

 それを見てラッテも手を伸ばし、半分に折ってから口に運んで、噛んで良く味わってから飲み込み、物凄く名残惜しそうな顔をしていたが、かなり悩んでから残った半分を口に入れた。美味しかったらしい。

「ちょっとカーム君! 食後にこんなの作るなんて卑怯だよ!」

「これが保存食なら確かに食べ過ぎちゃうね」

「うん……恐ろしい保存食だ。けど、どの保存食よりも美味しいし、ドライフルーツも好みで入れられるんじゃ……」

 子供達にも好評だが、ミエルがドライフルーツとか言っている。ドライフルーツは好みがあるからあえて入れなかったけど、好きなの入れたらいいんじゃないかな?

「けど湿気に弱いから、持っても十日くらいだけどな。島にはチョコレートがあるからそっちでコーティングしたけど、油が多いから多少水は弾くな。そっちは油と砂糖の塊だけど、蜂蜜ならどこでも手に入るだろ?」

 一言だけ付け加え、俺達は少しだけ戦略の思考ゲームをしてから寝る事にした。

 そして寝室に入ると、ラッテに押し倒された。

「食べた分は運動しないとね。ねぇ、カーム君?」

 少しだけ陰のある笑顔で言われ、俺は乾いた声で笑うしかなかった……。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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