第20話 相場や価値観が解らなかった時の事
細々と続けてます。
相変わらず不定期です。
20150602 本編に影響が無い程度に修正しました
収穫祭後、学校に行くが三馬鹿の顔が三者三様だった。
1人は自信に満ち溢れ。
1人は何かすっきりしていて。
1人は少しへこんでいる。
・・・そっとしておこう。
森の訓練所で、相変わらず毒草をかじりながら、投擲訓練をマチェットや石、黒曜石ナイフでしていると「よう」と三馬鹿がやってきたのでマチェットだけ拾いに行く。黒曜石のナイフはばれてないよな?
「なぁカーム、おまえ初めての時どうだったよ?」
答えを濁そうとしていたがヴルストは真面目に聞いて来るのである程度の事を教えてやった。
こいつ等は、ある程度情報共有をして、知識の底上げをしようとしているのだろうか?
前世の知識として、ある程度特殊過ぎない行為は知っているので、ある程度基礎知識を教え特殊な方は触りだけにして置く。教えていると皆真剣に聞いている、こっちの世界ではネットはもちろん書物もあまり普及していないのでこういう話も重要なんだろう。
「なぁお前はなんでそんなの知ってるんだ?スズランとしかしてねぇだろ」
「あー・・・この間町の本屋で手解き書みたいなのを軽く読んでね」
適当にその辺は誤魔化しておく。
「ねぇ?前から気になってたんだけど、偶に口の中でもごもごしてるの干し肉じゃないよね? 物凄く青臭い臭いなんだよね」
流石わんこ、嗅覚は俺等以上だ。
「あ、あー。えっと・・・その。毒草」
「はぁ!?」「っ!」「え!?」
「いや、聞いた話だと死なない程度に、毒を受けたり食べたりすると、どんどん体が毒に強くなって行くらしいんだ、だから続けてる。ちなみに最初はコレを磨り潰した汁を水で薄めて飲んでも2日くらい調子悪くなったからやるなら気を付けろよ」
「誰もしないから。母さんでもそんな事言って無かったよ」
エルフでもしませんか・・・知りませんか、そうですか・・・
「そうか? もしかしたら毒を盛られたりするかもしれないだろ?」
「どこの王族か貴族様だよ、普通に生きてりゃ毒なんか盛られねぇよ」
「そうだよー止めときなよ」
「いやー平気だから、今は葉っぱ食べても平気になってきたけど1日1枚までしか食ってないよ? 2枚目食べたら死ぬかもしれないから」
ニコニコしながら言うけど流石に引いているのが目に見えて解る。
しばらくどうでも良い事を話しながらシンケンが「そういえば村長が「カーム君を見かけたら探してたって言っておいて下さい」って言ってたよ。なんだろうね」
「あーなんとなく想像はできるね、多分畑の拡張だと思う、俺さ、魔法を農業に転用するの上手いらしいから。ほら、収穫祭の最初の挨拶で言ってたじゃん?なんか嫌な予感したんだよね」
「あー言ってたねぇ・・・どうするんだい?」
「あーこうしようかな?と」と言いつつ『イメージ・0.1m×0.1m×0.2mの土を隆起後沈下・範囲1m×1m・手前から発動』と簡単にイメージた物を目の前で発動させる。目の前の土がモコモコと波の様に発動し沈んでいく。
「ほら、スコップで掘り返すイメージ、これで掘り返す必要は無いから。後は」『イメージ・目の前の土の表面を渦の様に・発動』旧式洗濯機の様に土がうねり、さらに土が柔らかくなる。
【スキル・属性攻撃・土:3】を習得しました。
お?久しぶりに上がった
「こんな感じを考えてる、これで大きな塊は粉々になるからね」
三馬鹿は「「「おー」」」と感心している。
「これ位なら種撒きしても根付くな、やっぱお前すげぇな」
目の前のモコモコになった土を踏んだり手で触ったりしている、やっぱり魔法=攻撃のイメージが強いらしい。
その後、猥談をしたり、あの後どうなったのか少しだけ話した、シュペックはご愁傷様としか言えなかった。
少しした後、村に戻り村長を探す為に聞き込みを開始する、あの人はいつも何所に居るか解らないからな。むしろ神出鬼没過ぎて探さなくても向こうからやって来る事も有る、いつも背後からだけど。「私が村長です」うをぃ!また背後か!
しかも物凄くムカつく台詞をサラッと吐かれた気がする。よし殺そう。
まぁ殺す訳にはいかないので我慢する。
「話が有ると聞いてるのですが」
「収穫祭で話してた、畑の拡張の件なのだが、今度村の男総出でやろうと思うのじゃが。ほら、少しでも負担を減らしたくてのう。何かいい方法を考えてほしいんじゃ、カーム君は魔法を便利に使うのが得意じゃろう? 場合によっては報酬も出すから」
「え、えぇ。まぁそれらしいのはできますが」
「なんだ、出来るのか。それは素晴らしい。少し見せてくれんか? 拡張予定はエジリンの町に行く道沿いを開墾しようと思っている。あそこは草とかも刈ってあるからのう」
歩きながら話を進める
「どの位開墾するんでしょうか?」
「10面位かのう、今年の種蒔きや収穫速度を見たらそれ位は増やしても問題無いじゃろう」
「種蒔きの労力とかも有るんじゃないですか?」俺は魔法で種を蒔く方法はまだ考えてないし思い浮かばない
「そんときゃ適当に蒔けばええじゃろう」あ、そんなんで良いんですか?規則正しく線で蒔くのかと思ってたわ、それ位なら風に乗せれば簡単じゃね?
町に続く街道に着き「この辺一面を考えておるんじゃが」とかなり開けてる場所を指す。
「とりあえず冬までに出来るだけ広げておきたいんじゃ、この辺も遊ばせておくのももったいないしのう」
10面くらいとって言ったが1面100m×100mでも畑としては大きいが全体的には狭く感じる、俺は辺り一面に広がる金色の麦畑とかのイメージがあるが現実は非情である。
前世では色々な仕事が有って、若者が村から出て行き、限界集落とかになって廃村とかが増えていたが、こっちの世界じゃ農業は立派な収入源で、それくらいしかないしな、こっちの世界では特別学が必要って訳でも無さそうだ、村長の話だと種とか適当に蒔いてるみたいだし。
「村長、人が増えれば畑とか増やそうと思います?」
「まぁ人手が有れば畑も増えるし村も賑わうが」
「畑が増えれば人が増えるって考えてみてはどうです?」
「どういう事じゃ?」
「ちょっと見ててください」と言いながらさっきヴルスト達に見せた魔法を発動させる。次々土が隆起し沈み一気に荒野が柔らかい土になって行く。その後土を混ぜふわふわにしていく。村長が体を震わせながら「おぉ」と声を上げ「こんなにも簡単に」と独り言のように呟き。
「どの位出来るんじゃ!」老体とは思えないほど興奮し声を荒げる。そんなに大きな声を出したら体に悪いですよ村長。
「えー? 試した事が無いので解りませんが。一回疲れるまでやってみます?」「頼む!」即答だった。
俺はモモモモモと土を隆起させ混ぜて柔らかくし、村長と話し合い馬車がすれ違える程度に道を拓き次の畑を耕す事にする。1面10分ほどで6面ほど耕したら軽い気だるさを感じたので村長に声をかける。「これ位で少し気だるいです」
これですでに100m×100mの畑が6面、村長が考えてた数の半分を超えた。
「1日でこれじゃと・・・」「もっと増やすか?」「いや、けど種蒔きや収穫」「人手」と言う単語がぶつぶつ聞こえる。
「村長? とりあえず作っておいて遊ばせておけばいいんじゃないですか? それか家畜の放牧や村人に『好きに使って良いよ』と言って貸せばいいんですよ、この辺は誰の物でもないんでしょう? そうすれば村に人も増えます」
「あ、あぁ。そうじゃ、な。すまんが報酬の話はもう少し待ってくれ、色々と考える事がかなり多くなった、少し時間をくれないか?」
「まぁ別に俺は良いですが、増やすか増やさないかは決めるのは村長ですがこの6面分の報酬はお願いしますね」と軽い声で言い、帰って特にさっきの事を親に話す事も無く、マチェットとナイフの手入れをしてから寝た。別に話しても良かったがまだ決定事項じゃないので言うだけ無駄だろう。
◇
次の日俺が学校に行っている内に開墾した畑の前で会議が開かれていたらしい。
「カーム君がこれを日が少し傾くだけでやってしまった。畑を耕したまま遊ばせて置き、借りたい人が居れば貸せばいいんじゃないか?
そうすれば村に人が来て畑を耕す手間が無くなり家を建てるだけで済むのではないか?
コレは儂が考えたんだが家を建てて貸せばいいんじゃないか? 試しに2軒ほど建てて農地を拡大してみてはどうかのう? そうすれば村に住人も増えるかもしれん」
「村長が言うなら俺は構わないが他の奴はどう思うかだ」
そう言うと反対の声は特に上がらず開墾と借家として家を建てる事に決まった。
20年後大陸上位の小麦の生産地になり人口も増え店や鍛冶屋も出来て村とは呼べない人口になるがそれは別の話。
◇
「カーム君、一応方針が決まったよ」と会議の内容を言われ、「最初の予定通り畑は今の所10面作る事にして君には報酬として銀貨20枚でどうじゃろうか?」
どうじゃろうか?と言われても100m×100mの畑1枚銀貨2枚って妥当なのか?大人の労力とか色々考慮して畑1枚大体何人で何日かかるんだ?それを2日で出来る俺、日給銀貨10枚と考えればこっちの世界じゃ高給取りの部類だよな?2日だけだけど。
「えぇ大丈夫ですよ、まだ学校行ってる俺としては十分すぎます」
「じゃぁ残りの4面と申し訳ないのじゃが土魔法使える者に魔法のイメージを教えてくれないかのう?」
特殊な魔法を教えるのってこの世界的にどうなんだろうか?なんか秘伝とか秘術って言葉が脳内に出て来るが知った事じゃ無い、危険過ぎない魔法はどんどん教えるか。
「良いですよ、生活が便利になるならいくらでも教えますよ」
笑顔で答えて残りの畑を耕しておいた。




