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魔王になったら領地が無人島だった  作者: 昼寝する亡霊
無人島開拓三年目

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第212話 毒について教えた時の事

 あれから四日、午前の書類仕事は後回しにして、森の中をある程度正常化するのに一日中狩りをしていたが、大きい奴は消え、細かい虫が物陰に潜むようになったので、第四村の狩り人達に任せても平気だろうという事になった。


 俺は水浴びを済ませ、どっかりとイスに座って盛大にため息を吐く。

 ウルレさんが何か言いたそうにしているが、どう謝意の言葉をかけるか悩んでいるんだろうか? 俺はそういうの気にしないから、労いの言葉でもいいんですよ?

 そんな事を思いつつも、引き出しから乾燥させたカモミールを取り出し、ウルレさんには悪いがお茶を淹れさせてもらい、砂糖を普段から多めに入れているが、いつもより一杯ほど多く入れ、口を半分開けて座ったままの目で書類に目を通す。

 ふと思い出し、足下の漬かりが浅い、バニラの酒をティースプーンで一つ入れて、別な香りをお茶に足す。

「あの、カームさん。書類(それ)、自分がある程度ルッシュさんと相談して片づけておきますので、今日はお休みになられては?」

「あ、うん。ありがとう。俺って明日は休みとって故郷じゃん? 任せても良いかなーって奴だけ、こっちのトレイに入れておくから、明日お願いするよ」

 俺は笑顔を作り、ハーブティーを啜りながら、どんどん書類を選別して、サインを書いたり、判子を押しつつ書類を仕上げていく。

「あーそうだ、俺みたいになっちゃ駄目だよー。なんだかんだでこういうのにはなれてるし、日付が変わるギリギリまで作業とか、経験あるからやれるけど、無茶だけはしないでねー。あ、ちなみにだけど、俺はいーんだよ……って先に言っておく」

 お茶を飲みつつ、どんどん書類に目を通し、ウルレさん用のトレイにも書類を積む。

「いやいや、今まで散々戦闘しておいて、心労も溜まってるのにやらなくていいのでは?」

 だから言ったでしょ、俺はいーんだよって。

「君の仕事を作る為……かな。俺で滞るとそっちにも結構迷惑でしょ?」

 そういうと、ウルレさんは口を軽く開けたまま固まっている。

「勝手に自分が出来そうなの探しますから、今日はもう上がりましょう、ね? ほら、暗くなってから作業すると、ランプの油代がもったいないですし」

 そう言って、俺のイスを無理矢理引っ張って机から離され、手を引っ張られて立たされた。

「……そうだね、ランプの油代がもったいないね」

 俺は軽く笑いながらハーブティーを一気飲みし、机の上をある程度片づけてから、ルッシュさんを迎えに来たキースと共に交易所を出た。

 精神的な疲労で、肉体はさほど疲れてないんだけどな。主に虫と臭いだけど。


 そして俺は、アピスさんの所に向かう。

 夕方だからドアは閉まっているので、ノックをするが返事がない。昨日の夕方に色々依頼して、今日取りに行くって言ったのに。

 仕方がないのでドアを開けると、アピスさんは机に突っ伏して寝ていた。精神疲労が一気に増えたわ。

「起きてくださーい」

 俺がいつも通り体を揺らすと、珍しく一発で起きた。

「んー、あぁー。ちょっと昼寝のつもりがもう夕方に。頼まれた物は出来てるよ。はい、毒薬と解毒剤各種。希望通り希釈して薄めてあるけど、何に使うの? 余計な詮索だって事はわかってるけど、気になるじゃない? この程度じゃ毒殺できないし。まさか、毒が平気だから、毒を飲む奇行に目覚めた?」

「いえ、アピスさんほど奇行が目立つ事はそんなにないです。子供達への教育ですね」

「躾で毒……。過激ね」

「今すぐこの毒を、全て飲ませてもいいんですよ?」

「あら、偶然ここに余った解毒剤が」

 そう言って、机にある瓶をポンポンと叩いている。ノリノリだな。なんか楽しくなってきたわ。

「冒険者になりたいから、毒を一括りでまとめるなって勉強ですよ」

「あー。はいはいはい。蛇とか魚とか昆虫の毒ね。全部違うからね、複合毒も持って行く? ここにザビザビの釘もあるわよ?」

「やばすぎる毒は、まだ早いと思いますよ」

 そう言いつつ複合毒の瓶が出てきたので、蓋を開けて小指で少し舐めてみる。酸っぱい。

「あら、大胆」

「俺に毒は殆ど利かないんで」

「けどそれ、刃物とかに塗る用よ、粘膜摂取でも多少効果はあるかしら?」

 ドヤ顔で言ったら、あきれた顔で返された。恥ずかしい――

 とりあえず俺はお礼を言い、森で虫を焼いていた時に見つけた蛇の入った袋をもって、故郷に転移した。


「ただいまー」

「「おかえりー」」

 毎日は帰ってないが、最近はかなりの頻度で帰ってきているので、料理が用意されてることが多くて嬉しいな。主に増えてるのは肉料理だから、俺が帰らないとスズランが食べるんだけどね。

 さっそく肉メインの夕食の配膳を手伝い、夕食を済ませてから毒の瓶をテーブルに並べる。

「今日は魔法って言うより、勉強だな。俺は学校でやった記憶がないから、多分だけどやらないと思う」

 三年目は自由登校扱いだったから、もしかしたらやってるかもしれないけど。

「まぁ、まずは毒の怖さだな。スズラン、ちょっと潰しても良い鶏を選んで欲しいんだけど、頼める?」

「えぇ。明日の朝食にも使えるからかまわないわ」

 そう言いながらスズランは居間から出て行ったので、俺もついて行き、鶏の首を飛ばして血を瓶に溜めて、一応血抜きのためにぶら下げたまま中に戻る。

「さて、毒の怖さだったな。この袋に今日捕まえた毒蛇がいるんだけどな」

 俺は袋に手を突っ込み、頭をつかんで口を開かせて、牙を瓶の縁にひっかけて、毒が数滴垂れたのを確認して、袋に戻してから棒で軽くかき混ぜて少し待つ。

 そして瓶を皿の上でひっくり返すと、ゼリーみたいになった血がどろりと、瓶の形のまま落ちてきた。まぁ、有名なプリンみたいな感じだ。

 それを見せたら、子供達はもの凄く驚いた顔になった。嫁達は両隣だからどんな顔かわからないけどね。

「毒がどのくらい危険かわかったか? 実は錆びた鉄も毒だから、釘とか踏んだりするとパンパンに腫れるからな。毒は体内に入ると危険な物や、触れるだけで毒だったりするものもある。遅効性かもしれない。だから甘くみるなよ。ちなみに触っただけで、死にたくなるような痛みが季節が三巡するまで続く物もある。痛すぎて自殺したり、腕を切り落としたやつもいるぞ」

 そして毒の入った瓶の蓋を開ける。

「無味無臭無色の毒もあるし、新鮮じゃないと効かない物もあるけど、とりあえず食事に混ぜたりするのもありだな。父さんは一回だけ食事に毒を盛られた事があるから、とりあえず毒の味を知っておいた方がいいな。それと種類によって解毒剤も違うから、事前の情報収集は怠るなよ」

 俺は毒を小皿に垂らし、小指を付けて舐めてみる。苦いな……。

「これは島の錬金術師に頼んで、薄めてもらった奴だから飲んでも死なないし、解毒剤もある」

 俺はニコニコとしながら子供達に毒を勧めるが、子供達はもの凄く引いている。現に、口角がヒクついてるし。

「カーム君、これはちょーっとやり過ぎじゃない?」

「実際に知ってないと、食べ物で毒殺って事もあるからね。経験はさせておくべきだよ」

 ラッテに注意され、俺は少しだけ反論する。

「えー、そんな事あるの?」

「食べ物に毒を混ぜて装備と儲けを独り占め、睡眠薬を入れて襲われる。物が盗まれる。ただでさえミスリル製品の武器や盾を持ってるんだから注意だよ。あとリリーは女の子だし」

「あー……」

 そう言うとラッテは、何かを思い出すように上の方をみながら、変な声を出しつつテーブルを指で少し早めにトントンとしている。自分か知り合いがやったかやられたかだな。

「んじゃ舐めたり、臭いを嗅いだりしてみろ」

 俺がそう言うと子供達はまず臭いを嗅ぎ、舐めたら苦虫を噛み潰したような顔になっている。実際に、虫食った人の顔を知ってるからなぁ。

「うぇ、らんふぁしははしひれる」

「すごく……苦い」

「はは、わかりやすい毒で良かったな。んじゃコレが解毒剤だから」

 子供達の前に解毒剤を出してやると、口を濯ぐようにして飲んでいる。

「あとは……あぁ、そうだ。致死量って言って、この量があれば必ず殺せますよって基準があるんだ。体って面白くてな、毎日ちょっとずつ毒を死なない量食べたり飲んだりしてると、致死量が増える、つまり毒に強くなる。だから食べ物に混ぜたり、弱い毒蛇とかに噛まれたりしてる人もいるんだぞ。まぁ、偉い奴には毒味役って奴がいるけどな」

 そう言いながら俺は瓶を片付け、とりあえず黙っていた事を言う。

「あ、そうだ。先に謝っておく。すまない。おまえ達の夕食に睡眠薬を混ぜておいたから、そろそろベッドに入っておけよ」

「うっそ! なにやってんのカーム君!」

「こうやってシレっと毒を混ぜて、微塵もそんなそぶりを見せない奴の練習、毒でも良かっうぼぁ――」

 そこまで言ったら、スズランに思い切り胸を裏拳で殴られた。心臓止まるかと思ったわ。

「やるならやるで私達に相談して。さすがに親として心配になるわ。次は相談なしでやったら顎をねらう」

「はい……」

 そして毒の授業はお開きになって、それぞれ寝室に入る。


「ねぇ、子供達に睡眠薬を入れたのは本当?」

 スズランはベッドに座り、そんな事を聞いてきた。

「あぁ、本当だ。ほら」

 俺はポケットから、空になった睡眠薬が入っていた瓶を見せる。そうしたら、スズランがラッテの方を向いて、軽く首を縦に振ったと思ったら、ラッテも首を軽く縦に振った。

 あ、コレやばい奴だ――

 そう思ったら、俺は口を手で塞がれてベッドに押し倒され、ラッテがランプの芯を短くして明かりを落とした。

 普通に毒を盛っておけば良かったよ……マジで!

「この為に、毒じゃなくて睡眠薬を盛ったんでしょ? もーカーム君たらエッチなんだからー」

 睡眠薬にした事をすごく後悔した……。



 翌日、俺は子供達の目の前に座り、朝食はラッテが作り、配膳もさせてもらえなかった。

 子供達を送り出したら、父さん()が訪ねてきた。珍しい。

 そして、ラッテが急いでお茶を入れてくれ、いつも通り両隣にスズランとラッテ、正面に父親二人が座る。

「カーム、お前に聞いておきたい事が一つある。孫達に、最近変な魔法か何かを教えたか?」

 父さんが睨むように言い、イチイさんも腕を組みながら睨んでくる。

「うん、まぁ。肉体強化の魔法をちょっと」

「ちょっとだぁ!? アレがちょっとなら、他に何もいらねぇよ!」

 イチイさんが吠え、何があったのかを聞いてみた。

「リリーの攻撃が急に重くなったし、不自然に筋肉が付いてる。瞬発力も上がってるし、こっちの攻撃も重心移動とか関係なく無理矢理避けている。まぁ動体視力があるから出来る事だが……。最悪稽古が殺し合いになるぞ?」

「不思議に思ってな。この間二人で飲んだ時に、あいつしかいねぇってなってな。ちょっとその肉体強化ってのを見せてみろ」

 睨まれつつ脅されるように言われたので、この間みたいにシャツを捲り、前腕だけをバッキバキにする。

「うお。すげぇなこれ」

「あぁ、まさか息子がこんな風な魔法を使えるとは……。全盛期前にコレが使えてれば――」

「まぁ、あれだ。今日の昼過ぎはいつも通り稽古なんだろ? リリーの攻撃を受けて後悔するんだな」

「あぁ、俺も盾を吹き飛ばされ、三日ほど腕の痺れが取れなかった。自分が教えた事に後悔しろ。そして俺達にも魔法を教えろ、とても対抗できん。お前は魔法を教えるのが昔から上手かったからな、多分俺達でも覚えられるだろう。リリーだって覚えられたんだからな」

 基準がリリーかよ……。

「スズランもラッテも覚えられましたけど? なぁ」

「うん、ほら」

 スズランも袖を捲り、イチイさんみたいにカチカチにさせ、ラッテもうっすらと筋肉を付けた。

「お、おう!?」

「アレやって見せたら? お義父さん達驚くかもよ?」

 ラッテがそう言ったので、俺は○兄貴みたいに表情筋も数秒だけムキムキにして、超笑顔を作ってポーズを決めてみた。

 この美しい僧帽筋を見てください。

「おう、それで一回俺とやり合おうぜ」

 イチイさんが、心底楽しそうにニコニコとしながら言ってきた。やめてくれ、イチイさんとやり合う覚悟はまだないぞ。

「いえ……、コレやりすぎると、次の日筋肉痛で動けなくなるので」

「あー、子供の頃に一回あったな。その頃から使えたのか……納得だ」

 イチイさんはムッキムキの俺と一戦交えたがってるし、父さんは一人で納得しているし……。なんか酷い空間だな。

 とりあえずラッテは牧場に仕事に行き、スズランが鶏を捌き、筋肉繊維の説明と、紐に魔力を通す事を教え、昼前には父さん達が肉体強化を使えるようになっており、少しだけハシャぎながら、筋肉を見せ合っている。明日筋肉痛になってしまえばいい!


 昼過ぎは稽古になったが、なぜか父さん達が見学する事になり、リリーは槍を振って当てる瞬間だけ肉体強化を使い、衝撃だけ重くする工夫をし、簡単にスコップ毎吹き飛ばされた。

 父さん達……ニヤニヤするの止めてくれませんかね? そしてリリー、そのドヤ顔を止めてくれ。

 ミエルは俺のように常に弱く使用して底上げをしていて、走ったり、避けたりの動作が多少速くなっていたし。なんか魔法の質が全体的に上がっている。火の授業で、魔力の使い方のコツでも掴んで、全てに応用させているのだろうか?

 仕方がないので、二回戦目は俺は魔法を使いまくり、リリーの攻撃を石壁で防いだり、水球で衝撃だけを各所に与えたり、武器を吹き飛ばしたりした。

 ミエルは、手数を同じにして相殺しまくり、中々勝負が付かなかったので、最終的には黒曜石のナイフを一本ずつ増やしていき、ミエルの制御系のミスで勝った。


「お爺ちゃん達がいるから、久しぶりに平地での戦闘だったが、二人とも結構強くなったな」

「けど、お父さんはまだまだ本気じゃないんでしょう?」

「だろうね。しかもまだまだ余裕そう」

「だろうな。俺の体に穴を開けた、殺傷力のある魔法や目潰しを使っていないし、殺気もない」

「けどよ、魔法でリリーの攻撃を防ぐのも、武器を吹き飛ばしたのも見事だな。俺も一戦交えてみたくなった」

 子供達は悔しそうに言い、父さん達は冷静に俺の動きや魔法を見ていた。ってかイチイさんとは絶対やりたくない。

「確かに本気でもないし、父さん達とは絶対やりたくはない。だって殺し合いになりそうだし」

「はん、何言ってやがんだ。そう言うのは一回やってから言え。ってか若い頃にヘイルに風穴開けまくったくせに何言ってやがる。実の父親と既に一回殺し合いしてるだろうが」

「いや、肉親を傷つける事は極力したくないので……」

 タジタジになりながらも、言い訳をして逃げておいた。ってか子供達の前で叱らないで下さい……。泣きたくなります。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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