第19話 やっぱり今年も刈り取り要員だった時の事
細々と続けてます。
相変わらず不定期です。
毎度の事ながら飲みすぎ後の表現は濁してます。お気を付け下さい。
20150602 本編に影響が無い程度に修正しました
去年の収穫の時に【芝刈りウインドカッター】を使ったのが原因か、さり気無く風属性の魔法を使える村人数人が、練習していたらしく収穫速度が飛躍的に上がり、しっかり担当箇所も割り振られていた。村長、学生に期待しないでください・・・
単純に、村の畑の数を魔法が使える人数で割っただけの役割分担だったが俺は元日本人特有の効率化が発動し、魔力が上がっているのか、去年より早くより多く刈り取り、作業が遅い人の所の手伝いに回される、無論使えない人は麦穂の回収だ。
ちなみに土手の開けた場所はそれぞれが練習したのか虎刈りだったり、波打ってたりで、かなり練習してたみたいだ。
「ようシンケン、手伝いに来たぜ」
「あぁ、助かるよ。意外に難しいなこれ、地面スレスレで発動して距離を間違え無い様にするのがこんなに大変だったなんて、実はカームって意外にすごいのか?」
「まぁ、去年もやったからね」と誤魔化しておく。
「母さんだって『む、少し加減が解りません』とか言って最初は刈り取るのに切り口が波打ってたんだから」
あの土手はアルクさんか、堅そうなイメージしか湧かないが意外に可愛い所も有るんだな、弓は完璧そうなんだけど。
魔法を使ってた人達は、魔力切れなのかふらふらしているし「ダンジョンに潜ってた時でさえこんなに魔法を使った事は無いですよ!」とか聞こえた。有るんだ、ダンジョン。
ちなみに収穫は2日で終わった。人が多いとそれだけで早いね「戦いは数だよ!」とか言ってた顔が直方体のたくましい人の言う通りだ。本当素晴らしいね人海戦術。ちなみに【属性攻撃・風:2】のアナウンスがちょっと前に流れた。
「おいおいカーム君」
渋いワーキャットのおっさんに声を掛けられる。
「なんですか?」
「今年は流石に余裕が有るだろう?豚の解体を手伝ってくれないか?猪を狩って来る事が有るなら、覚えないとねぇ」
ニヤニヤしながらワーウルフのおっさんも言ってくる。
「え・・・えぇ、是非ご教授下さい」
絶対逃げられないと思ったので返事したら速攻で掴まった宇宙人みたいに連れてかれた、なんだかんだで期待されてるみたいだ。
そこには先客が居て「よーうおまえもか!」とヴルストが声をかけて来る。なんだかんだ言って本当に若い者を育てるらしい。
1匹目は丁寧に教えられ、2匹目は部分的にやらされ3匹目は全部任された。頭の中で「これは作業、これは作業、これは練習、これは練習」と言い聞かせ解体していく。慣れないと色々ときつい、臭いとか。
少し休憩をしてると、視界の端に嬉々として鶏を絞めているスズラン。そんなにから揚げが楽しみですか?目が合ったが物凄い笑顔だ、頬についてる血は拭き取ろうね、なんか見た目が怖いから。
まぁ、鶏小屋を作り始めて少しずつ鶏が増え始めた頃に。
「から揚げの作り方知ってるの?」と聞いて見たら、顔を真っ青にしてうつむき「知らない」と力無く返された時は、世界の終りみたいな顔してたのを覚えてる、仕方ないのでスズランの家でリコリスさんにも教えた。
「あらー、カーム君って料理もできるの? 良い子が幼馴染で良かったわー」とニコニコしている。
ある程度の手順を教え「後はお好みで香辛料を増やしたり調味料を増やしてみたりして下さい」と言って休日を過ごした事が有るが、イチイさんの殺気が背中に刺さって痛かったが、から揚げを食った瞬間に殺気が吹っ飛んだ。
美味しい料理は世界を救う!ありがとう前世で自炊してた俺!
後日リコリスさんに「あの子、肉料理だけしか覚えないのよ、何か良い手は無い?」と相談されたが俺は申し訳なさそうに首を横に振った。食わず嫌いの極みみたいなスズランに、興味の無い料理を教えるのは至難の業ですよ。
そして休憩中にヴルストに話しかけられた。
「スズランって本当肉好きだよな、俺だって少しは野菜くらい食うぜ?」
「肉料理しか覚えないっておばさんに相談されたけど、無理って言っておいたよ」
「そうか・・・だろうな。結婚したら肉料理以外はお前が作るしかないな」
「は?なんでそこで結婚の話が出る」
「実際出来てんだろ?お前等」
「まぁ、な?」
「なんで疑問系なんだ?あんなに好かれててお前も嫌いじゃないんだろ?ならもう決まりだろ?」
「まぁ」
「けどよく生きてたよな、あのおじさん超怖いもん。どうやって説得したんだよ」
「説得って言うより説明かな、殺気飛ばされながら、何が有ったか言っただけだよ、逢引宿が予約されてて、街歩いてたら行きたい所が有るって力任せに連れ込まれて俺が襲われて、って。まぁおばさんはニコニコしてたけどおじさんは謝ってたなぁ、折れそうだった事を言ったら」
「そうか、生きてて良かったな二つの意味で、殺気飛ばされたまま、事の説明したら確実に殺されそうだ」
「まったくだ、良く生きてたよ俺」
男同士の、どうでも良い会話をしてると、女同士のどうでも良い会話も、向こうからキャキャー聞こえてくるが、どうでも良かった。
下手したら明日も誘われる可能性だって有るんだからな、せめて少しくらいは主導権を握りたい、握れないなら優しくしてほしい。
まぁ、もう1回経験してるからがっつく事は無いだろうと思いたい・・・せめて紐無しロデオは勘弁して下さい、あと可動範囲を覚えて下さい、それはこっちには倒れるけどそっちには倒れ無い様になってるんですよ。
そして俺達は小休止を終わらせ豚の解体や下処理に戻ることにする。
◇
「えー今年は皆さんのおかげで収穫が2日で終わりました。これを機に少し畑も増やしてみるのも良いかもしれませんね。こういう場所で長い話は嫌われるので終わります。では収穫祭の始まりです。乾杯」
村長が挨拶をし「「「「「「乾杯!!」」」」」」と色々な所で大声が上がる。
「毒耐性で酒に強くなっててあまり酔えないんだよな~」と周りに聞こえない様にぼやきながらちびちび飲み、三馬鹿達とどうでも良い話をしながら酒を楽しむ。なんだかんだで酔えた方が楽しいんだよな、酒って。
ちなみに、氷は俺が出さなくても他の人が出してくれた。攻撃魔法にならない様に調節して出すのに苦労したような事が聞こえてきたので、意外に魔法に対する生活向上の意識は薄いと改めて認識させられる。
三馬鹿は土石流をぶちまけて、ある程度酒の飲み方を覚えたのか少し抑え気味に飲んでいるが、顔が赤くなってたり、目が据わってたり、笑い声が絶えなかったりで相変わらず解りやすい変化だ。
しばらくすると、いつもの女子組が大皿に適当に肴を盛ってやってきて、一緒のテーブルに座る事に成り、町での思い出話に花を咲かせている。
スズランは『から揚げ5:その他肉料理5』の割合で皿に盛って来た。相変わらずブレ無い子だ。
お互い良い感じに酔っているので、異性がいるのも関係無しに猥談になりつつある、むしろ異性がいるからなのか、良く解らん。
酔った勢いでミールが「町ではどうだったのよ? 私達が気を利かせてあげたんだからそれくらい聞かせなさいよ」と言ってきたが。
「俺はある意味嵌められたと思ってるんだが」
「貴方達が良い感じなのに一線を超えないから、私たちが苦労してあげたんじゃない、感謝しなさい」
隣で酒を飲みながらクチナシが無言で首を縦に振っている。
「まぁ、ある意味感謝はしてるが、一応雰囲気とか場所とかタイミングとかだな」
「その結果が1年以上何も無かったんじゃない、逆にスズランが可哀想よ」
相変わらず首を縦に振ってるクチナシ。肉をモリモリ食ってるスズラン。君の話をしてるんですよー。
「まぁ、一線は超えたからお互いに変化が有った(肉を食べているスズランを見ながら)・・・ような気もするが、日常生活にあまり変化が無いな。見て見ろよ、俺が作り方教えたから揚げをさっきから食いまくってるだろ?」
ミールは、から揚げを頬張るスズランを見ながら
「え・・・えぇ、まぁイチャついてる所はあまり見ませんね」
「そうねぇ」「だなぁ」「うんうん」「そうだねぇ」と言う声。
そうしたらいきなりスズランが立ち上がり、ヴルストの襟をつかみ、無理矢理立たせ俺の隣に座り体を預けて来る。あー話は聞いてたんですね。
口に含んでいた物を飲み込んでから「なんだか周りが期待してるみたいだから。嫌?」
小首を傾げて俺に聞いて来る、この仕草は反則だ。
「別に嫌じゃないけど」と言いながら周りを見たらニヤニヤしている。
「お前等はどうなんだよ、シンケンとミールだって町で二人で甘い物食ってたじゃないか」
「別に私はシンケンの事は嫌いじゃないですわ・・・」と語尾が弱々しくなっていく。
「僕も嫌いじゃないけどさ」お互いチラチラ見ている。気を利かせたヴルストが席を立ち、シュペックがミールを引っ張ってきてシンケンの隣に座らせる。
二人が無言になり、顔を赤くしながらチビチビと酒を飲み始める。解りやすい奴等だ。
ちなみに俺はからかったりしないで気にせず飲んでいる。そしたら今度は何かを覚悟したかの様に、クチナシがヴルストの隣に座りだした。ヴルストは少し驚いたような表情になったが少し恥ずかしそうに酒を飲み始めた。
モリモリ肉を食ってるスズランの脇で俺だけがニヤニヤしながら「いやーこの村の男は女より押しが弱いねぇ」と言いつつ同意を求めるようにシュペックを見るといつの間にか隣にトリャープカさんがニコニコしながら座っていた。
「いつの間に!」と声を上げたらシュペックも気が付いたのか「うひゃぁ!」と声を上げるがもう遅い。逃げる前に抱き付かれ、振り解くのが困難なほどがっちり固められている。流石肉食系。
腕力的に無理矢理剥がそうと思えば出来なくは無いと思うがそれをしないのがシュペックだ、一応女性には優しいみたいだ。
どこかの動物王国の王様みたいに「かわいいですねー」と言いながら頭を撫でて来る。トリャープカさんの行為をまんざらでも無いような表情で受け入れている。嫌がってないだけマシか。お持ち帰りされない様に祈るしかないな。
皆良い感じに、呑まれない程度に呑みつつ、辺りも暗くなり広場の一角がピンクいオーラに包まれそれを大人達がみてニヤニヤしているのが少し気になるが。「少し早めにお開きにしよう」的な雰囲気になり、それぞれの組がどちらかの自宅へ一緒に帰る事になった。
結局シュペックは守れなかったよ・・・俺は無力だ・・・
なんだかんだ言ってスズランは俺の家に来るみたいだ。
「カームの部屋は初めて」そりゃそうですよね、毎回俺が起しに行ってるんだから。
良く言えば整頓された汚さ、悪く言えば物が溢れている。
自分的には掃除はしているつもりだが、机の上に作りかけのコケシ、トンボ玉を作る道具一式、編マットの作りかけなどが有り、各種材料や背嚢等も部屋の隅に置いてある。
「お茶飲むかい?」
「うん」
「適当に座ってて、まぁベッドか机の椅子しかないけど」
少し悩んで椅子にしたようだ。俺はベッドだな。熱いお茶が有るから押し倒す事は無いだろう。
カップを持ってきて乾燥させたカモミールをお湯で蒸らし注ぐ。
「砂糖はお好みで」
「お茶に砂糖?」
「まず、そのまま飲んでからで」
「良い香り。落ち着く」
そう言いながら砂糖を投入していく、確かに甘い方が美味しいと思うけど。
落ち着いた時間が進み切り出す「なぁ、スズラン。俺は別にする事自体は嫌じゃないんだけど、今後は雰囲気も考えてくれると俺としては嬉しい。あと優しくしてくれるともの凄くうれしい」
「ごめん」
「まぁ、謝ってもらう程の事じゃ無いから良いんだけど、今度からは少し落ち着いてって事で、頭の片隅にでも入れて置いてくれると凄くうれしい」
「解った。それと2回も言わないで。悲しくなるから。あと母さんにも言われた。優しくしないと嫌われるって」
少し俯いている、自覚はあるみたいだ。
「まぁ、嫌いにならないから安心して」
そう言いながら立ち上がり頭を撫でに行く。
その後のんびり過すが。この間の暴走が有ったから向こうはそう気にしてるのかそう言う素振りを一切見せない。少しチラチラ見て期待はしているみたいだが、ここは俺から仕掛けますかね・・・
そう思い、立ち上がってスズランに近付いて、キスをしてからベッドに誘導する。
体感で日付が変わる1時間前になり、色々落ち着き。
「そろそろ帰る」
「あぁ、送るよ。あと、毎回さっきの俺みたいに優しくしてくれれば、俺は嬉しいから」
と言ったら腹に1発良いのを貰った。相当恥ずかしかったらしい。
嘔吐感を必死に我慢しながらベッドに横になり悶え、30秒ほど待ってもらってから家まで送り届ける。大人達はまだまだ飲んでるみたいだ。子供に気を使ってくれてありがとう大人達!
「アイツらも上手く行ってりゃいいけどな」
誰も聞いてないが言ってみたくなったので言ってみた。
【スキル:打撃耐性・2】を習得しました
あー、やっぱり覚えるよね、すげぇ痛かったもん、あれ。
最後の辺りにベッドにダイブさせて枕の香りを堪能させるか迷いましたが無難に椅子に座らせました。
後スズランに比較的長く話してもらいました。
スキルの打撃耐性が1だったのを2に直しました。20141112




