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第200話 喧嘩祭り当日の時

二話同時更新です。199話あります。

 喧嘩祭り本番。十数名が平底船で第四村に向かう。試合としては魔族八名、人族八名のトーナメント式だ。最悪決勝で同族同士が戦う事になるが仕方がない。ただ一ブロックと二ブロックで分かれてるから、準決勝で当たる事もあるだろう。

「さて、ついに春の喧嘩祭り当日になりました。回りをみれば前日の、代表戦を決めるための闘いの方が盛り上がっていた事がわかります。普段からため込んでいた不満やストレス発散していたみたいですね」

 だって結構な人数が顔中痣だらけだし……。

「第一村だって、からあげにレモン汁をかけるかどうかで殴り合いしてました。その程度の不満でも問題ありません。どんどん後腐れのないように、この祭りで発散して下さい」

 から揚げにレモン論争を言うと、わずかに笑い声が聞こえた。前世じゃ話題に出したらいけないレベルの問題だ。しかも北川が笑ってない。奴も思うところがあるのだろうか?

「さてさて、もう聞いてるとは思いますが、審判は両者を止められる勇者が。判定は村長達がやります。ですが公平になるように、試合中の選手の村の村長は見てるだけです、安心しましょう。では村長方で何かある場合はどうぞ」

 そう言うと北川が手を上げたので、とりあえず名前を呼んだ。

「俺は勇者で、第四村のコーチを任されてきた。けど今日はそういう事は一切関係なく、人族でも魔族でも公平に審判する。一切不平不満を漏らすなよ。コレは神聖な祭りだ。反則した場合は種族や村に関係なくその時点で反則負けにするからな。以上だ」

「ほかにいないなら試合を始めましょうか。この大きな紙の上からですね。順番は、番号の書いてある紙を選手にとってもらいます。同じ村が左右に固まらないようにするために、箱が二つ用意してありますよー」

 そう言って、丸く口が開いてる箱を二つ取り出して見せた。


 選手達の試合の順番が決まり、第一試合が始まるが、異変に気が付いた。織田さんがバケツとタオルを持ち、榎本さんが左目に黒の眼帯をしている。

 正直頭が痛いし、北川は笑いをこらえてる。なんで地球人にしか通じないネタをここで持ってくる……。

 そして試合が順調に進んでいたが、第二村の選手が殴られてフラフラで立てそうにない状態になった。

「立て! 立つんだジョージ!」

 榎本さんの言葉に、俺を含む地球組みが吹き出し、結局ジョージさんが立てずに第四村の選手が勝ったが、北川が笑いをこらえてる顔で、選手の腕を持ち上げて勝ちの宣言をした。

 試合の紙を見ると、第二村の三人にジョーとついている。なんでジョーが付く名前をこんなに選んだ……。

 そして老人二人を見るとニヤニヤしている。確信犯か……。戦後産まれ……、時代的にはあの漫画やアニメをリアルタイムで見てた世代かもしれない。 俺も見たことはあるが、放送コードにひっかかる言葉が多すぎて放送できないか、そのままの物に無理矢理ピー音が入ってるものか、物真似芸人のネタでちらっと見るだけだったな。

 榎本さんは年寄りの割に、娯楽系大好きだから知っててもおかしくないし、織田さんはヤンキーやってたから、そう言うのを中学高校時代に読んでてもおかしくない。あと二人も同じ事するのか……。お茶目すぎるだろ老人組……。


 途中で選手以外が好きに食べ物や、飲み物を取ってきて、食べながらの観戦をしているが、一番近くの家の屋根でハーピー族がいて、酒を持ったピンク色の髪の女性が近くで試合を見ていた。

 もしかしてと思って後ろを見たら、水性系魔族の方が波打ち際で観戦していた。

「面白そうだな魔王よ。聞けば祭りと言うじゃないか。次は我々も参加させろ」

「陸でする、素手での殴り合いの祭りですけど平気です?」

 俺はまだ数回しか会ったことのない族長に聞いてみた。

「多分平気だろう。だからこうやって見ているんだ」

「そうですか、春の祭りにする予定ですので、季節が巡ったらガウリさんかシーラさんに伝えます」

「うむ、了解した。殺さない程度に殴り合う祭りとは面白いものだな!」

 少し間違ってるけど、だいたい合ってるから何も言わずに、酒と食べ物でも配っておこう……。


 準決勝が始まる頃、酒を持った姐さんが俺の隣に来るし、さらに増えたハーピー族が空中でホバリングしながら観戦しているし、なんか盛り上がってきている。最初の大会だから砂浜でやってるけど、盛り上がり的には本格的なリングを作るべきだな。

 なんだかんだでルッシュさんはふつうに観戦してるし、この盛り上がりなら本格的に来年もできるかもしれない。予算的にも! 練習してた時に買い付けに来た船が一隻来て見学はしてたけど、噂話程度には広まるかもしれない。宿泊施設作らないと……。


 穴の開いたボウルが沈み、フライパンを利用したゴングが鳴ってインターバルに入るが、こっちは少し大きめの穴の開いたボウルだ。ってか五ラウンド目まで来るのは初めてだな。

 魔族と人族の重量級の戦いで、お互いほぼノーガード戦法は迫力があるな。

「カームちゃーん、面白いお祭りねぇ。次は私も参加して良い?」

 姐さんが一人用のイスに座っていた俺を、無理矢理半分だけお尻で退かすようにして座ってきた。しかも何を言ってんだこの竜は……。

「姐さんが参加したら誰も参加しませんよ。それこそ数十人で正式な討伐依頼ですよ」

「冗談よ。けどいい感じで恨みを解消してるわねー。これなら溜まりにたまった恨みとかも解消ね」

 酒をラッパ飲みしながら、肘でドスドスやってくる。本人はもの凄く軽くしているつもりなんだろうが、俺からしてみれば結構痛い。

「話し合いが無理なら殴り合いしかないでしょう。ただ危険なので、こういう風に決まり事を決めて、やらせる方法ですね。見てる方も盛り上がって野次飛ばしてますし」

「そうね、いがみ合ってた二人も、殴り合ってすっきりしてるし、お姉さんが出張らないで済んだわー」

「姐さんが出張ったら、村が吹き飛びますよ……」

 そんな会話をしていたら、リング回りの人達が喚声をあげたので慌ててリングを見ると、魔族が顎にいいのを入れたらしく、人族がうつ伏せで倒れていた。

 急いで北川が仰向けにして、数名に指示を出して担架で運ばせて、魔族の腕を掴んで勝利の宣言をしていた。

 重量級こわいわー。次の祭りの時は階級でもつけるか?

「今のすごかったわねー。ちょっと打たれ弱いのが残念だけど」

「いや……、姐さんを基準にしないで下さいよ。姐さん基準だったらどのくらいが打たれ強いんですか?」

「私のパンチを顎に受けて耐えられるくらいで」

 語尾にハートが付きそうな勢いで言ってきた。ただ、酒瓶をラッパ飲みしてるので、可愛い仕草とは程遠い。

「聞いた俺が馬鹿でした。しかもちょっとどころじゃないですよ? 海割っておいて何を言うんですか……」

「あらー、私だって女性よ? 強い男性にときめきたい時だってあるのよ」

「地上最強クラスがいう言葉じゃないですね……。妥協点を探してください。陸地が更地になる前に」

 大きなため息を出しつつ、決勝戦の前に休憩をはさむことにした。

 来年からは決勝戦翌日にしてやりたいけど、なんか興ざめしそうだから、リングを二つにして、一ブロックと二ブロックで分けた方が公平性は上がるな。


 体感で一時間程休憩を入れ、二人ともアピスさんのポーションで傷と疲労の回復を済ませ、休憩時間内にお互いアップを済ませている。

 そして、決勝戦に残ったのは、第二村の副神父と第四村のスラム出身の、先ほど勝った熊系の獣人族だ。

「ってかなんで副神父が決勝戦出てるんだよ」

 俺は眉間を押さえ頭を軽く振った。

「彼は昔冒険者をしておりまして、素手でオークや熊と戦える程度にはすごかったと酒の席で言っておりました。ただ、過去に何かあったのか、いきなり冒険者を辞めて教会の扉を叩いたそうです」

 俺の独り言に、第二村の村長兼神父様が答えてくれた。

「そうですか。なら強いのには納得行きますが……。あのお年でも筋肉の衰えがないですね」

 実際時々見かける事はあるが、法衣がぶかぶかすぎて筋肉を見ることもなかったな。長袖長ズボンだし。

「この事を知ってから、ただひたすらに木を殴っておりました。あんなに生き生きとした彼は始めて見ましたよ」

「そうですか。昔の血が騒ぐってやつですかね?」

 彼の名前にはジョーが付いてないので、榎本さんも静かだろう。


「今から決勝戦だ! 双方前に出てくれ」

 北川が沈みきったボウルを見て、リングの両脇にいた二人を呼んだ。

「こんなじーさんになりかけのオッサンが、よく最後まで残ってたな。そっちの組には碌なのがいなかったのか?」

「そのうちわかるだろう。いいから始めてくれ勇者さん」

 両者がにらみ合い、開始のフライパン(ゴング)が鳴ると、お互い軽くグローブ同士を合わせ、第一ラウンドが始まった。

 獣人族の男性が大振りのフックを顔面に向かって放つが、軽く身を屈め、副神父がボディーに右ストレートをたたき込み、獣人族の男性が膝を折り、鳩尾の辺りを押さえて吐きそうにしている。

 副神父はコーナーに戻って、ファイティングポーズを取って様子を見ていた。

 そして回りは、うるさいくらいの喚声に包まれた。

 今までの試合は、手加減しまくってたって事か?

「お前は素手で、動物や魔物と戦ったことはあるか? 剣の折れた絶望感を味わったことがあるか? 俺はある!」

 獣人族の魔族が立ち上がり、北川が合図を送ると一気に勝負に出ようと距離を詰め、獣人族の攻撃をしっかりと見て数回かわしながら、左フックを顎にたたき込み、ノックダウンさせた。

 北川がカウントをとろうとしたが、無駄だと思ったのかフライパンを持ってる奴に合図を出し、副神父の腕を持ち上げて勝ちを宣言した。

 決勝戦で一ラウンドで終わらせるなんて、とんだダークホースだな。しかもいちいち言ってる事が重すぎだし、前衛職のオッサン渋すぎる。俺にあの重みは出せないな。


 その後は俺が終了宣言をさせられ、トロフィーも盾やベルトもなかったので後日用意するとして、第四村でそのまま酒盛りにつきあわされた。最近飲み会が多すぎるな。

「オッサンつえぇな! 次は負けねぇから覚悟してろよ!」

「日々精進なさい。貴方に足りないのは経験だ」

 んー結果的に魔族と人族が仲良くなってるけど、想像してたのと少し違う気がする。とりあえずコレで良いか。



 翌日、第四村に行くと雰囲気が少し違っていた。表現するならギスギスしていないって言う感じだ。

「おう、祭りは大成功だな」

「そうだな。なんだかんだでいい雰囲気になってる。あと一ヶ月もすれば、一つの村としていい感じにはなるだろうな」

 北川が拳を付きだしてきたので、俺はその拳を笑顔で軽く殴った。

「この雰囲気だったら、フォルマも安心して村を歩ける」

 けど村にはフォルマさんを見かけない、どこにいるんだろうか?

「あれから一回もみてねぇけど? どこにいるんだ?」

「食事係のおばちゃんに料理を教わりながら、朝昼晩の食事作りだ。最近は簡単なスープくらいは作れるようになったんだぞ」

「へーへーそうですか……。幸せ太りでもするがいいさ!」

「そのうちな……」

 そう言ってお互い自分の仕事をし、あちこちで痣だらけの奴等を見ながら畑を広げる事にした。

皆様のおかげて200話という節目を迎える事が出来ました。ありがとうございます。

138話? 何の事ですか?


※138話は永久欠番(作者のミスで!

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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