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第199話 喧嘩祭り前日の時の事

区切りが悪くなりそうなので二話同時投稿です。200話あります。

 姐さんから剣をもらった三日後、春の喧嘩祭りは五日後に迫って来ている。ってか皆が喧嘩祭りって言ってるから、そう言う名前になってしまった。

 各村を見て回ったら、砂浜に杭が打たれていてリングができている。そして力自慢的な男達が、実戦形式での練習もしていた。そして代表ではない人達も……。

 すげぇ熱の入れようだな。

 俺は別に関係ないので、各村にテーラーさんに作ってもらったグローブを、二日後には数組届けてあるから半分以上は仕事は終わってる。ってか全ての重さとかも同じだし、注文通りで驚いた。


 今日も午前中は書類仕事をして、午後は第四村の開墾に行き、畑を耕したり、木を切り倒したりして、灌漑(かんがい)用の水路も引いたりしている。

 そして仕事が終わると、ボクシングの練習が始まるが、この間罰を与えた二人が叫び声を上げながら殴り合っている。そしてダウン中に拳での追撃が入ると、北川が殴って止めていた。

 ってか蹴らないんだな、そこだけはルールを守ってるのか……。

「お前達、いつになったらルールを守るんだ! 約束が守れねぇなら今日はもうリングに立つんじゃねぇ。とりあえず砂浜ダッシュ五十回と腕立てと腹筋背筋十セットだ! 悔しいならリングの上で決着付けろ! 恨みがあっても、いちね……季節が一巡するまで殴り合いのいざこざはできねぇんだぞ!」

 北川も張り切ってるな。

 第一村は猫のおっさんが張り切ってるし、第二村は織田さんが、第三村はトローさんが張り切ってる。なんか本格的になってきてるな。

 そして島全体が、なんか熱気に包まれている。俺も組み合わせとかどうするか考えよう。

 各村で予選をして、決勝は第四村。島民全員の移動は厳しいからな。とりあえず代表は、魔族と人族が二人ずつの四人になるように言ってあるし、代表になりたい人達が各村に二十人はいるそうだ。大半は私怨で、相手指名制だけど。

 この機会に、恨みがあれば発散しておけって流れができている。負けたら来年リベンジなんだろうなぁ……。

 てか最初は代表十人だったけど、面倒だから四人に減らした。四十人の試合なんか見てられない……。

 執務室で色々と後片づけをしていたら怒声が聞こえた。

「代表にはなりたくねぇが、てめぇには言いたい事があるんだよ。リングに来いや!」

「俺も言いたい事がっあったんだよ。上等だオラァ!」

 若いなぁ――

「年越祭で唐揚げにレモンかけやがって! 個人の皿に取り分けてから個人的に楽しめ!」

「てめぇだって、からあげをマヨネーズにどっぷり浸しやがって! マヨネーズの味しかしねぇじゃねぇかよ! 見てて気持ち悪いんだよ!」

 まさか異世界で、からあげレモン戦争を見るとは思わなかったぜ……。俺? 俺は小皿にレモン絞ってたまに付ける派だから……。たまに味を変えたいだけだから! マヨもソースもチョビ付け派だから。ライムも試したし!

 そんな事を言い合っていたので、俺もリングに向かうとすでに人集(ひとだか)りができていた。

「代表の邪魔すんじゃねぇぞ」

 猫のおっさんが、猫耳のウエイトレスさんに抱きつかれ、胸を押しつけられながら注意している。威厳がないな……。

 あれから特に嫌がるそぶりも、振り払う素振りも見せないから、おっさんが折れたんだろうな。

「おーカーム。仕上げはこっちで勝手にやるぞ」

「任せますよ。冒険者時代の、少し汚い方法以外ならですがね」

「お前にだけは言われたくねぇよ!」

「俺は敵だけに卑怯ですよ。包囲されて退路がない、物資や食料が尽き、そのうえ戦わないと生きられないって状態の、拠点防衛とかの極限状態って知ってます? 一日の食事がパン半分と塩水だけの状態で、バケツにお湯や油を入れて、梯子や階段を日の出から日の入りまで休みなしで上り下りとかね」

「いや、そこまで追いつめねぇよ……」

 まぁ、減量失敗の人も似たような運動量っぽい気がするけどな。水道を針金で縛ってたし。

「ルールさえしっかりしてれば問題ありませんよ」

 猫耳のおっさんと話し合ってたら、後ろからテンションの高い叫び声が聞こえた。振り向くと、レモン派が勝っていた。正直どうでもいいが、人の食べ物の趣味嗜好に口出しするのは個人的によくないと思う。

 なんだかんだでかなり少数派の、ご飯にシチューかける派だったし。



 そして春の喧嘩祭り前日、事前にフルールさんに言ってもらい、今日と明日を休日にした。

 今日は代表を決めつつ、野次馬の戦いになるんだが……。酒飲みながら、グローブ付けたただの喧嘩になっている。

「この間は負けたけどよー。今日はぜってー勝ってやる」

「レモンは小皿に絞って付けてたべてただろー。なんでつっかかってくんだよーおらー」

「理由なんかかんけーねー、とりあえず勝っておきてーだけだおらー」

 理由はどうでも良いらしい。負けたのが悔しいだけだったらしい。

「さっさとこいやー! どっちがマリーさんにふさわしいか勝負だ!」

「上等じゃねぇか! 俺の方がふさわしいに決まってるぜ!」

「やめて、私のために争わないで!」

 うわっ……ドロッドロだなぁ……。一夫多妻が良いなら、一妻多夫でも良いんじゃね? ってかスズランとラッテの仲が良くて良かったわ。あの時の一撃で全て水に流してて――

 ってか初めて聞いたわ、あの台詞……。マリーさんは今の状況に酔ってるんだろうか? まぁ、遺恨が残らなければ良いか?

「はい、ちょっとストップ。次の祭りの時も同じ事されて、次はもう一人の男性ってなると、もしお腹に子供とかがいた場合に色々と非常に不味いので、文章に書き起こして下さい。負けた方は絶対に次の大会でやり返さないって……。ちょっと事務所に来て下さい」

 俺は三人を呼んで、事務所で一枚の紙に契約事を書く。

「今なら間に合いますが、三人で仲良くってのは無理なんですね?」

「あぁ」「おう」

「後日仲良くなっても、三人で暮らすって事はできなくなりますよ?」

「「問題ない」」

「なら、このインクを垂らした紙に親指を擦り付けて、指の模様契約書に付けて下さい。もちろん女性もです」

 俺はため息をつき、拇印も押すように促す。

「これに何の意味が?」

「指の模様って人それぞれ違うんですよ、だからですかね? その上から名前を書いて下さいね」

 三人に契約書に名前と拇印を押させ、契約をさせる。

「これで勝った方が夫婦です、負けた方は潔く諦める。良いですね? これはこちらで預かります」

 そう言って三人をリングに送り出し、第二村に転移する。


 俺は村長兼神父様の所に行き、契約書を見せて訳を話すことにした。

「ってな事がありましたので、申し訳ありませんがこのように文章で契約させて下さい。口約束じゃ言った言わないの水掛け論になります」

「わかりました。その書いてもらった文章もこちらで保管しておきます」

「ありがとうございます。そして質問があるんですが、人族の一夫多妻、一妻多夫ってどうなんです? 魔族では良い事になっていますが」

 魔族だけって事もあるからな、聞いておかないと。

「えぇ、問題ありません。神の教えでも明言されていませんし、教会でも産めよ増やせよなので、特に問題はありません。ですが、人の妻や夫を取ったりはいけません。話し合いで円満状態で増えるなら問題ありませんがね。この辺は魔族と同じだと思いますが?」

 神父さんは、俺にも確認を取るように聞き返してきた。お互いの文化に不明な点があったんだろうな。

「そうですね。そんな感じです。俺にも妻が二人いますが、仲が良いので平和です。両親や義父母も認めてくれています」

「それはそれは……。どうしても多少の不満とかが残る場合がありますが、お互い仲良くなる努力をしてすばらしい家庭を築いている。見習わせたいものです」

 神父様は笑顔で首を縦に振りながら、俺を模範にしたいとか言っている。全員の性格が関係しそうだなぁ……。

「では、そのような事があったらよろしくお願いします」

 その後は色々と世間話をしつつお茶を飲み、しばらくしてから第三、第四村と回り、同じ様な事を話した。


 そして第一村に帰ったら二人の勝負が偶然付いていた。そして負けた方の男性に女性が寄り添っていた。

 あぁ、この展開は想像できたのに、勝った方が妻にとか書いちゃったよ……。勝った男の方が面白くなさそうにしてるし、なんか俺を含む全員悪い気がしてきた。刃傷沙汰だけはやめてくれよ……。どう収拾つけるかな……。この契約書燃やすか? けどここで前例を作る訳にもいかないしな。

 ってか回りが一番盛り上がってるよ。本当どうしよう。

「マリーの気持ちは良くわかった。最初から俺が引いてれば良かったんだな……。俺は第四村に行く。お幸せに――」

「待って!」

 なんだろう、昭和のドラマで一時期こういうの流行ってたらしいが。これが夜で雨降ってて、薄暗い公園とかだったらそれらしく見える気がする。空気を読むか、契約書を見せるか……。

「ちょっとそこのお三方……。お話があります。事務所に来て下さい」

 とりあえず笑顔で言っておいた。

 本当はこういう事はやりたくないんだけどなぁ……。

「さて、来ましたね。この契約書をもう一度見て下さい。このままだと誰も幸せになりません。どうしますか? マリーさんの心はまだ揺れている、契約書では勝者と結婚と……。これを破棄しますか? 勝者が去りますか? 勝った方に付いて、第四村まで二人で行きますか? 和解して三人で暮らしますか? コレはマリーさんだけの問題じゃないですよ? 三人の問題なんですよ?」

 俺は契約書を指でトントンと叩きながら、三人に聞いてみる。

「あのですね……、こんな事言いたくはありませんが、自分達で決めた守り事を守れないなら、最初からこんな物を書かせないで下さい。どちらか二人を選べないから、同意したうえで二人に委ねて名前を書いたんでしょう? 勝者に去らせるような惨めな事をさせないで下さい。負けた方も惨めですよ? これじゃわだかまりしか生まれませんよ? じゃないと全員別の村に行くようにします? ってか勝った方も、負けた方に寄り添った時点で、何か言えよ。もう俺のもんだ! とか。三人ともはっきりしないのが悪ぃんだよ!」

 あまりのイライラに、少し声を荒げてしまった。三角関係のドラマは所詮ドラマか……。目の前でこんな事が起こると、本当に厳しいものがある。

 俺達は和解して、親の理解もあり三人で仲良く続けてるけど、もしかしたらこうなってたかもしれない。表現は悪いが、最悪後から来たラッテを選ぶ事はなかったかと思うけど。

「あの……。もう一度三人で話し合いをさせて下さい。きっと答えが見つかるはずです」

「なら、次があったら許しませんよ? コレはこちらで預かっておきます。話が付いたら、全員で俺の所まで来て下さい。以上です」

 はぁ……頭痛てぇ。今のところ賭け事にはなってないけど、多分将来的には賭けに発展するんだろうな……。規制するのが難しそう……。

 砂浜に戻ると、別の組が殴り合いをしており、叫び声を聞く限り、胸の大きさの好みで殴り合いをしてるみたいだ。もう理由は何でもありだな。

 別のリングを見ると、女性同士が鼻血を出しながら料理の味の濃さや、男性の好みで殴り合っている。頭痛が痛い……。しかも内容は、体毛の有無だった。

 ある程度ないと男性らしさがないとか、濃すぎるとなんか生理的に嫌だとか、最後の方なんか、回りにいた男性が引くような内容を、ぶちまけながら殴り合っていた。

 男のエロはファンタジー、女性のエロはドキュメンタリー。生々しすぎて、聞くに耐えなかったよ……。

 理由なんかどうでも良いってのはわかった。そして祭りの名前が、喧嘩祭りになってて良かったと思った。

「ある程度体毛がないと男らしさが感じられないでしょ!」

「色々と絡まるのよ! 少し薄いくらいがちょうどいいのよ!」

 何も言えねぇ……

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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