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魔王になったら領地が無人島だった  作者: 昼寝する亡霊
無人島開拓三年目

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第189話 炊き出しをした時の事

 十日後、俺はヴァンさんと、バーテンダー見習いのマイスさんを連れて倉庫に転移する。

 そして数回往復し、事前に用意したお菓子と、下準備だけした料理や、鉢植えのミントを運び、倉庫の隣の家で料理を作る。

「カームさん、こっちは準備できました」

 白いシャツに、黒のズボンとベストに蝶ネクタイ。何これ、すごく似合ってるんですけど。俺の雰囲気に合う神のグラスを一杯下さい。

 口調の矯正は済ませ、テーラーさんに服装のイメージを簡単に描いたら、それっぽく作ってくれた。

 テーラーさんもテーラーさんですごいけどな。

「わかりました、こちらも煮込むだけですので、問題はありません。問題は、この寸胴二つで足りる……か? ですね」

「おい、俺はどうすりゃいいんだよ?」

「ヴァンさんは気持ちよく酒飲んで、職人さんとかと仲良くしてて下さい」

「おうよ、んじゃさっそく一杯」

「早いっすよ……」

「おうおう、これはだな……、その……。先に飲んでおいて、皆が気持ちよく飲めるようにだな」

「……一杯だけっすよ」

「おう!」

 なんで祭りとか集まりがあると、先に飲みたがる人がいるんだろうか? 雰囲気だろうか? まぁ謎か酒好きって事でいいか。


 そして昼少し前になり、倉庫の大きな扉を開放すると、職人さんや噂を聞いてた人達が、ぞろぞろと集まってきた。

「今度、この倉庫を改築してお酒作りを始めます。ですので、皆様にご理解いただこうと、今日はこの様な催しを開かせていただきました。たくさん飲んでいって下さい」

 俺が軽い挨拶を終わらせると、皆がぞろぞろとマイスさんの所に集まり、酒をもらって飲み始め、世間話っぽい物を始めている。

 そしておばちゃん達が、俺の所に集まってきた。

「ここに集まってた奴らを懲らしめたのは、アンタって噂で持ちきりよ、この辺一帯のみーんな感謝してるわよ」

「ははは、ありがとうございます」

 情報源はどこだろうか? 誰かがスラムの酒場でグチって、偶然聞いてた人達が情報を広め、おばちゃん達の耳に入ったってかんじだろうか?

 そして寸胴から、具沢山のスープを深皿に装う。うん足りない。絶対に足りない。もう少し人手を連れてくれば良かった。

 そう思っていたら、今度はオルソさん達が遅れてやってきて、蜂蜜酒を飲み始めている。

 一つ目の鍋が空になる頃には、噂が一気に広がったのか人数がさらに増え、見ている限り大人は酒だけ飲んで帰る者が多かった。けど子供達はお菓子に群がり、具沢山のスープのお代わりをこれでもかとしてくる。

「食べ盛りなんだ。遠慮すんなよー」

 そんな事を言いつつ内心はすごく焦っている。パンなんか速攻でなくなったわ!

 持ってきた材料をとりあえず刻み、空になった洗った寸胴にまとめてぶち込み、塩コショウしてから油で炒める。

 そして【水】を入れて煮込み、干し肉を削って入れ、煮ておいた豆をぶち込んでカサ増し。これくらいしないと本当に足りねぇ!

 そして煮込んでる最中に、味見をして塩投下。酒飲みがいるから、少しくらい濃いめでもいいさ。


 しばらくして、コーンフラワー寺院のセルピさん姉妹が来てくれた。

「いつもお世話になっております。アクアマリン商会の雰囲気を少しでも肌で感じさせたかったので」

「面白そうな事をやってるって聞いてな」

 子供達を連れて……。

 俺は渋い顔をしながら、眉間を中指でトントンと叩き、考えた末に最終手段に出る。

「セルピさん、鍋の世話と配膳お願いします!」

 そう叫び、俺はスラムの酒場に走った。最終手段は、顔見知りに手伝わせる事だ……。本当申し訳ありません。

「マスター、食材と調味料売って下さい!」

 ドアを開けた瞬間に叫び、カウンターに近づいていく。

「いきなりどうした」

「炊き出しが、寸胴鍋二つと予備の材料じゃ足りなかったんです。とりあえずキャベツとトマト、人参と玉ねぎ、何か旬の野菜と香草と調味料を。具沢山食べる系スープ作ります。市場に行ってたらまにあわねぇっす。売って下さい、炊き出しナメてました!」

「お、おう。金は後でいいからもってけ」

「助かります」

 俺は数回酒場と倉庫を往復し、食材を運んだらすべての材料をざく切りにして鍋にぶち込み、適当に作り出す。豪快、男の料理! ミネストローネ風! 塩コショウ味!

 ってか魚も持たせてくれたけど、生臭くなるから変にぶち込めない、下処理が! 炊き出しマジでナメてたわ!

 パスタがあれば、材料の関係でなんちゃってボンゴレにしてるわ。

「おーい、手伝うぜ」

「助かります」

 手伝いを申し出てくれたのは、セルピさんの妹のオピスさんだった。

 俺は鍋を任せ、魚を捌いてから切り身だけをぶち込み、鍋に白ワインも匂い消しとして半分くらいぶち込んだ。


「よう。顔見せに来たぜ」

 三回目の寸胴で料理が出来上がる頃、そんな声がしたので入り口の方を見ると、なぜか現れたビゾン一味約三十人……。よく来れたな。

「おいおい、そんな顔で見ないでくれよ、別に場を荒らしに来たんじゃねぇよ。ここの護衛(・・)として顔見せに来ただけだ。俺達がいるだけでも違うんだろう?」

 ビゾンは俺の方を見てニタニタと笑い、持参した深皿を少し前に出して、セルピさんからスープをもらっている。

 頼むから台詞に合った行動してくれ、威厳もクソもないぞ……。しかも食べた後にほっと一息ついてから笑顔になるの止めてくれ、今までのイメージが崩れる。

 けど、一応言い聞かせてあるのか、喧嘩を売るような雰囲気ではないし、なんかさっきのおばちゃん達と話し込んでる一味の女性もいるし、何だよこの雰囲気は。

「あれって噂の奴だろ? お前何したんだよ」

 隣にいたオピスさんが、あきれたような顔で俺に聞いてきた。

「ちょっと脅してここから立ち退かせて、何かあったら全部お前の責任にするから、部下に言い聞かせとけって言っただけなんですけどね……」

「もしかして、根はいい奴なのか?」

「わかんねぇっす……。飯食ってほっこりしつつ、酒飲んでここの倉庫近くのおっさん達と普通に喋ってるのを見れば、仲間内でちょーっと悪い事して粋がってたチンピラにしか見えないんですけど……」

「まぁ、中にはいるよな。悪人になりきれない根はいい奴」

 さーせん……。俺もです。

 まぁ、ちょっとつまずいて転んでただけだろうな。人生に。


 二時くらいになり、人がどんどん帰って行った。

「はー……。なんとか捌けてきましたね」

「そうだな。まぁあれだ。姉さんがいないから言うけどよ、お前の包丁使い姉さんより上手いな。まぁ、姉さんより私の方が下手だけどな」

 オピスさんはペシペシと俺の肩を叩きながら、薄めのモヒートを飲んでいる。

 いつも力の強い人に、肩とかを叩かれるから正直怖かったが、ラミア系の上半身の力は普通らしい。下半身の蛇部分はクソ強力っぽいけど。

 ヴァンさんはまだ職人の人達と飲んでるし、マイスさんは氷の出し過ぎで気だるそうにしてるし、何故かビゾン一味も気がついたら近隣住民と仲良く飲んで潰れてるし。なんだよこの状況……。本当になんなんだよ……。

 とりあえずは顔合わせと、近隣住民達との理解とコミュニケーションはとれた。これでとりあえず印象のプラスにはなったな。

 俺は後片付けをして、スラムの酒場までお礼と、お金を払いに行った。

「おう、どうだった?」

 マスターはかなり気になっていたらしく、俺がカウンターに座ったら速攻でやって来た。

「まぁ、大成功なんじゃないんですか? 俺の見積もりの甘さ以外は……。それと食材を売ってくれてありがとうございました。まさかあんなに人が来るとは……。麦酒下さい」

 出された麦酒を水のように飲み、少しだけ愚痴る事にする。

 昼の忙しい時間が過ぎた酒場兼食堂で、昼過ぎは空いてるからな。

「いやー、最初は良かったんですよ。途中からビゾン一味がやってきましてね。俺に訳わからない事を言いながら、具沢山スープと酒貰って飲んで、近所のおば様やおじ様や職人達と仲良く酒飲んでましたよ」

「なんだそれ?」

「俺が聞きたいですよ……」

 地元の優しいヤンキーみたいな位置付けになったわ……。

「で、お前あそこで何やるんだ?」

「あー言ってませんでしたね。あそこに酒造施設を作るんですよ。島での麦の生産とか労働力を考えると、儲けは少ないですが、いろいろ話し合った結果、あそこに作る事になりました」

「お? ってーと酒が安くなるのか?」

 酒場の店長やってるだけある感じのセリフだな。

「いやいや、人件費とか麦の仕入れで、島から運ぶのとあまり変わりませんよ。倉庫を直す手間とか、ベリル酒作る奴作るのに、儲けが出るまでちょっとかかります」

「人族の方に卸す酒はどうなるんだ?」

「島の酒の生産量は変わらないので、少し多くか、今までこっちに卸してた分を人族の港町に持って行きます。噂を聞きつけて、直接島に買い付けに来る商人もいるので、少しだけ備蓄量が増えるかもしれませんね」

 俺はビールを一気に飲み干し、カウンターに代金を置いた。

「で、島への移民の件はどうなってるんだ? いい加減うるさいんだよ……。情報は、俺かトローからしか入らないからな」

「あー。そうですね……。この間様子を見に行ったらそろそろできあがりそうだったので、もうちょっとですね。目標は春くらいだったのでちょっとだけ早いですが。まぁ、出来上がってからの募集ですので、今ここでってのは無理ですね」

「そうか、うるせぇ連中にはそろそろって言っておくわ」

「ありがとうございます」

 俺はお礼を言って酒場を出た。

「そうかそうか、お前がここの警備か」

 倉庫に戻ると、潰れてた近隣住民は殆どいなくなっており、逃げ遅れたビゾンが、ヴァンさんに絡まれて酒を飲まされていた。

「そうだぜ~。悪人がいれば、他の悪人が手を出しづれぇって言ってたんだ。だから俺等が警備だ」

 ヤンキー一味が警備……。つとまるか? 少しだけ雇ってみるのも良いかもしれないな。

「おーカーム、どうした」

「いえ、そろそろお開きにしてもらわないと、帰れませんので。ヴァンさんはいいですが。マイスさんがだるそうですので」

「お、そうか。すまんすまん。気の良い若造がいたからな、ついつい酒が楽しくて」

「おいおっさん、若造はねぇーぜ。俺はもう大人だぜ?」

「俺からすれば、お前もカームも若造だ!」

「それもそうか!」

 二人は大声で笑い、本当に調子のいいヤンキーにしか見えなくなったわ。あの時傷つけてすまなかったな……。

「まぁまぁ二人とも。今日はこの辺にしておきましょう。ほら、空き瓶に酒持たせてやるからビゾンも帰れ、梯子から落ちるなよ」

「うーーっす」

 駄目だ、こいつに警備任せるの不安だわ……。真面目な人を雇用して、ビゾン一味は日雇いで日替わり警備だな。

 俺等は空の寸胴や、残った酒樽を持って島に帰った。

多分これで島の外に施設作るのは一区切りだと思いたい。

長くなって申し訳ありません。


トロー=雄牛 敵対したから ビゾン=野牛

モブ予定だった奴の後付けの名前って、こんな感じで簡単に決まてったりします。

そして凄い小物臭。使えそうだからやった、後悔は何となくしてる。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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