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第173話 女性は怖いって思った時の事

 翌日、ジョンさんは野草さんと一緒に事務所に来て、島に移住する流れになった。

 話を聞く限り、ジョンさんと野草さんが住んでいた村は、戦争の為に働き盛りの男が徴兵され、畑を耕したり麦の収穫が思うようにいかず、偉い奴からは例年と同じ税を求められ、払えずに若い女性が奴隷として売られ、村には年寄りだらけになり、多分もう村として機能していないと結論が出たらしい。

 聞いてて悲しくなってくる状態だったんだな。

 そして俺は、勇者達が政変(クーデター)した事を言い、かなりマシになってる事を伝えた。

「まぁ、魔族の町がかなりマシだったし、魔族に偏見がなければ、ずっと住んでたくなる感じだったからなぁ……」

「昔お世話になった共同住宅にも人族の方が住んでましたね。その方からある程度の事は聞いてましたが、実際見てみたらひどい状況でしたからね。その方は、別の国の出身である事を願いたいですね」

「まぁ、あの国が酷すぎただけで、ほかの国はマシかもしれないね。ってな訳で、オリヴィアと一緒に住むから、登録をお願いするよ」

「わかりました」

 ルッシュさんは、第一村の戸籍表を取り出し、野草さんの住んでいる家の覧にジョンさんの名前を付け足していた。

「特に犯罪歴はないですよね?」

「戦争で多少殺しはしてるし、まだ人の道から外れるような事はしてないつもりだけど……。ここではどの程度から犯罪なんだい?」

「一回捕まれば犯罪歴が付くんじゃないですかね? 過去に数人に絡まれて、全員暴力で黙らせ、兵士に突き出した事がありますので、そういう事してれば犯罪ですかね? あ、もちろん俺はお咎めなしでしたよ」

「あー駄目だ。捕虜として捕まってたわ」

「いや、わかってて言ってますよね? 戦争中の捕虜なんか、別もんでしょう」

「戦争中の殺しは無罪、わかってるよ。んじゃ犯罪歴はないかな。死体から物を漁ったり、使えそうな物ははぎ取ったりしたけど、徒歩で移動してた時に見つけた奴だし、問題ないな」

「倫理的な物ですね。野盗とかに襲われて死んでたなら別ですが、のたれ死んでるんだったら仕方ないですよね。何か身分を証明できるものがあれば残しておいた方がいいでしょうね」

「そういうのはちゃんと残しておいたから平気だね。たぶん馬車とかで移動してる人が見かけたら報告するか対応するでしょう。こっちは一人だから、他人の死体を気にしてるどころじゃないからね。戦争中に何人も見捨ててきたからね」

 確かにそうだ。助けたくても助けられない事もある。虹の谷の話なんかが有名だからな。

 助けてたらこっちも死ぬかもしれない。だから助けを求められてもどうすることも出来ないし、見捨てて先に進むしかない。すでに死んでたら、せめて装備品や金品、保存食を有効活用するくらいだ。

「さて、仕事ですけどどうします? 野草さんと一緒に野良仕事ですか? ここで書き物します?」

「あぁ、どっちでもいい。ただ、ここの手が足りてなさそうだから、書き物でもいいな。ところで、野草さんってのはオリヴィアの事かい?」

「えぇ、最初に俺の奴隷として与えられたんですが、名前を聞く機会を逃しまして。そのままズルズルと……」

「私は別に気にしてないから良いですよ? 他の方からも野草さんですし」

「そうですか、昔お世話になった親方もそうですが、皆の事を渾名(あだな)で呼ぶんですよね。だからそれに倣ってるのかもしれません」

「へー、じゃあ俺は?」

「人族語先生」

「まんまじゃないか……」

「なら私はなんですか?」

「申し訳ありません、俺の中でルッシュさんはルッシュさんなんですよ」

 ちなみにルッシュさんは、犬耳ジト目三白眼か、犬耳事務(ジム)だ。だから言えるはずがない! ってかあの有名なロボットアニメのと音と同じ読みの奴に、犬耳付けたらかわいいんじゃないかと思ってる。

「少しだけ期待してたんですけど、私の事をどう思ってるのか良くわかりました……」

 ルッシュさんは更に目つきが悪くなり、不機嫌になった。

「欲しいんですか? んー……ルーさん?」

「うわー、そのままだ」

「渾名ってそんなんてそんなものでしょう? 事務員さんでも良いですが、今後増える予定ですし」

 ってか、変に日本語と英語を混ぜて言う人を思い出した。微妙に言ってる事が、わかりにくかった記憶しかない。

「まぁ、この話は終わりです。最悪今まで築き上げた信頼とかなくなりそうですので……。あ、子供達の教師もやってもらっていいですかね? 今まで、孤児院もしていた教会のシスターに一任してたんですが、先生は多い方が知識の幅が広がりますし」

「わかった。とりあえず色々教えればいいんだね?」

「そうですね」

「私も野草の知識を教えてもらったから、勉強以外の事でも良いかも」

 野草さんが、子供達に何を教えるかを提案している。この世界じゃ勉強意外の事も大切だからな。

「でさぁ。売れると思って死体から引っぺがした荷物の中に禁輸品の葉っぱがあってね。どうしようか迷ってるんだよねー。街での手荷物の確認も雑だったし、島に入る時もなかったからね」

 んーまだ検閲的な物は船の荷物しかしてないからな。

「どうしても個人の荷物は、まだまだ手が回らないんですよ。ここで生活するなら出して下さい」

「はいよ」

 ジョンさんは、ポケットから小さい麻袋を取り出し、こちらに投げて来た。

「さて、どうやって処理しよう……、燃やすわけにもいかないしなー。穴掘って埋めたら土壌汚染とかはどうなんだろうか? どう思います?」

「アピスさんに任せてはどうでしょうか?」

「あー。何かには使ってくれそうですね」


「で、これをどうすればいいの? 毒にするの? 薬にするの?」

 禁輸品の監視という名目でルッシュさんと共に行き、状況を説明したら真っ先にこんな答えが返ってきた。先に毒がでてくる時点で志向と思考がやばいが、薬になるなら薬にしちまうか。

「薬でお願いします。効能は?」

 一応聞いておかないとまずいよな。

「そうねぇ……。物凄く強力な鎮痛剤かしら? とりあえず煮だしてから、毒成分を他の薬で中和して、不純物を取り除く為に蒸留して、一回分ずつ分割かしら? 一回で二回分使うと中毒になるから危ないわね。毒にするなら、煮だして水分を飛ばして残った物を薬品で溶かして摂取するだけね。純度を上げたいなら、煮だして残った物の不純物も取る必要があるけれど? ってかこれをそのまま燻して吸うのって効率が悪いのよねー。手軽だけど」

 恐ろしい言葉が出てきたな。ってか既に工房が汚い。どうやったらこうなるんだ? 荷物を箱から出して、放り投げて、必要な物だけ机に置いたの? ってか毒の方は聞いてないよ?

「ここにある器具だけでできますよね?」

「全部持って来たからできるわよ?」

「器具は綺麗にしていますか?」

「貴女、私をナメてるの? 薬品に不純物が混ざるでしょう? 道具を綺麗にするのは当たり前でしょ?」

「すみませんでした」

 あー俺も思ったわ、この状況を見たら、なんかそんなこと聞きたくなるな。ルッシュさんも一応気にしていたみたいだ。なら服とか体、部屋や工房も綺麗にして欲しい。道具をきっちりさせるのは、職人魂か、薬品に対する愛か……。

「不純物から、精力増強剤と毒が出来るけどどうする? この量だと両方十個分は作れないけど」

「毒を作らせると思います?」

 不純物にも使い道があったか。

「いやん、貴方ってお盛んなのね」

 いや、複眼の目で頬を赤らめながら、頬に手を当てて流し目をされてもねぇ……。

「そんな物があったら、俺の体が色々な意味でカラカラになるので使いませんよ。子供が欲しい島民用にお願いしますよ」

 毒や薬の類は効かないけどな。

「娼館に流すのもありよ?」

「それは娼館を作ってから、島内需要が上がったらで。出来上がった薬は、アントニオさんのところに届けて下さい」

「あー、あの人族の医者ね、わかったわ。ってか作るのね……。娼館」

「殆どが停泊した船舶の船員用ですが、島民も利用するんじゃないんですかね?」

 もう少し先になるけどね。

「人口が増えないわよ?」

「痛いところ突いてきますね、なら島民用には出会いの場として、未婚の男女しか入れない酒場みたいな場所でいいんじゃないんですか?」

「そこにも媚薬を卸すと……なんか(ただ)れてるわね」

「酒に混ぜるのは禁止ですがね、禁輸品以外でも媚薬って作れます?」

「代用品なら多いわね。なに、そんなに私に媚薬を作らせたいの?」

「禁輸品がないと作れないなら、それはそれでって程度です。別に作らせたい訳じゃないです。需要の問題です」

「そう。あ、工房の裏手に、小さな畑を作ってくれないかしら? 色々な薬品になる、植物の種も持ってきたのよ」

「わかりました。アルラウネのフルールさんにも協力してもらいますね」

「なに? そんなのもいるの? この島便利ねぇ。マタンゴとかもいないの?」

「いますよ? 菌類も薬に?」

「怒りっぽい人の頭痛、心臓が弱い人、酒を飲む前に飲むと悪酔いしないやつ。キノコは変な意味で万能よ? 幻覚、嘔吐、体が動かなくなる毒。まさにこの島は錬金術師にとっての聖地ね」

 高血圧に、心臓系? 不整脈とか脈が弱くなった時? あとは肝臓関係を強化する奴かな?

「あの、後半のは毒では?」

 ルッシュさんがつっこみを入れている。

「暴れるほど苦しい病気や怪我、悪い物を食べた時、色々考え方次第で使い道は多いわよ」

「考え方と使い方次第では……ですね。では、キノコが育ちやすいように暗室もですね」

 まったく、余計な事は言わなくてもいいんじゃないかな?

 さて、数日後に控えた年越祭の準備でも始めるかな。

「で、その精力増強剤ですが。いつ頃までに出来ますか?」

「ん!?」

 ちょっとルッシュさん? 何を言ってるんですかねぇ?

「あら、お盛んなのね」

「お盛んと言うよりは、年越祭で使う予定があるだけです」

「あらあら、ならさっさと取りかからないとまずいわね。まぁ明日の夕方には出来てるから、取りに来なさい」

「わかりました」

 何も言うまい……。なま暖かい目で見ていたら、俺の視線に気が付いたのか。

「去年の返事です。なんだかんだで私の事で本気みたいですし、約束事も守ってますので」

「そうですか。お幸せに」

「なんだかんだでちょこちょこ会いに来てくれてますし、話をしてても悪い気はしませんし。返事をして、即座にってのを計画してます」

「御馳走様です」

 こんな女性だったっけ?

「ふむ……。発情期を無理矢理押さえ込んでた反動かしら? 獣人系って大変よねー」

 あー、発情期。セルピさんが孤児院でもちょっと大変とか言ってたな。つまりキースもあんな顔して無理矢理押さえ込んでて、自分で処理してて大変だったと。

 人に酷似してるスズランや、夢魔族のラッテは年中発情期だけど、やっぱり色々あるんだなー。

「私は良いですが、相手が男ですので。まぁ、色々我慢したご褒美でしょうか?」

 生々しい会話をしないで下さい。隣に男性がいるんですよ!

「これで相手を手玉にとって、手綱を握るのね。分量を間違えて、自分が腰を抜かさないように気をつけてね」

「まぁ、明日の夕方にでも使い方分量は詳しく聞きにきます」

 やめて! 俺の精神はもういっぱいいっぱいよ!

「と言うわけで、内緒にしておいて下さい」

「わかりました。俺が言うのも何ですが、手心を加えてやって下さい」

「私はごく普通の性交を望んでいますよ? 欲を押さえ込んでいたのは私も同じですので。とりあえず両親に手紙を書かないといけませんね。孫の顔はもう少しだと」

「あら、気が早いんじゃない?」

「偶然にも年越祭頃だと、丁度当たる頃なんですよね」

 ルッシュさんが微笑み、アピスさんがニヤニヤしていた。

 キースは早期に子供を望んでいるんだろうか? ってか既成事実を作ろうとしてる!?

 この世界の女性って怖いわー……。

脳内の設定的にはキースはカームより少しだけ年上ですが、ルッシュさんは少しだけ年下です。

早めに子供を作って、親を安心させたかったんでしょうか? 別に長女ではないんですけどね。

カームの結婚や子作りが早かっただけで、二人ともまだまだ結婚適齢期です。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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