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第169話 煙草と日本酒について考えた時の事

 あれから一週間、おれはフルールさんにたばこの育て方を聞いて試しに植えてみた。

 薄いトレイみたいなところに土を乗せて種を蒔いて、発芽したら別な場所に植え替えるみたいだ。

 そしてその通りにして、しばらく執務室の日当たりの良い場にトレイを置いて発芽させた。

「そういえば、触るとニコチンって毒が皮膚から吸収されるから、ニコチン中毒に気を付けろ。ってケンザキが言ってたわよ。何の事?」

 執務室で作業していたら、いきなりそんな事を言われた。

「んー。タバコって実は毒でね。葉っぱが大きくなったら乾燥させて、煙にして吸ってニコチンとタールを摂取するんだよ」

 摂取であってるんだろうか?

「え? 毒を体にわざわざ入れるの? 人間って凄いんだね、常に毒に耐性付けようとしてるんだもの!」

 そんなキラキラした目で俺を見ないでくれ。確かに人にとってはガソリンだったり、命の源だったりするらしいけど……。けど常習性な問題だったような?

 まぁ良くわからないけどね。前世で常習的に吸ってなかったし。

 禁煙の為にニコチンが入ってないタバコとかあったな。美味くないって聞いたけど、どうなんだろうか? 毒に耐性持ってる俺としては、薫煙室に入ってむせるだけに近い気がする。

「この毒の性分ってなくせます? いや、半分の半分かな?」

 ニコチンをなくすと煙吸うだけの葉っぱになるからな、多少は含ませないと喫煙者としては厳しいんだろうな……。前世でもあまり吸ってなかったから、本当にわからない……。

「できるよ? やる?」

「試しにお願いできます? この指に付いた奴だけ」

 指を舐めて、くっついて来た種をフルールさんの前に出す。すると両手を前に出し、目を瞑りながら何かを念じてるような感じで唸っている。

「いいよー」

 出来たみたいだ。こんな感じで、トマトやカボチャも大きくしたに違いない。最悪この島が生物災害(バイオハザード)化するな。たしか植物系のクリーチャーもいたな……。防衛兵器として、サイバ○マン的なのを作らせたらおもしろいかもしれない。おもしろいと思うだけでやらないけどね。

 指に付いた種を、空いているトレイに指をこするようにして蒔き、これは別で育てよう。混ざると多分大変だし。

「強くねぇぞ!」

 喫煙者からそんな事言われそうだし。俺としては煙なら同じ気がするんだけど。やっぱり違うんだろうな。なんか色々混ざってるのもあったし、メンソールとかいってスースーするもの、バニラやチョコレートの甘い香りのもあった。この葉っぱに何か付けてるのか、混ぜてるのかだよな?

 あと収穫は俺がやろう、だって触れただけでニコチンが皮膚吸収して、ニコチン中毒とかやばすぎるだろう。タバコを煮詰めた物を針とかに付けて傷つけるだけで殺せるしな。

 少数を収穫して、乾燥させた後は渡すだけだけだから別に良いか。けど島内で吸う人っていたっけ? いるなら少し確保しておいた方がいいよな? まぁとりあえず剣崎さん用っぽいから、手間賃だけ請求しよう。ロハでやっても良いけど、気を使わせないためにもこれくらいは必要かもしれない。あんな人だし。

 さて、書類の続きでもするかと意気込んでいたら、

「今度はエノモトが呼んでる!」

 そんな事を言われたので、ルッシュさんに一声かけてから転移した。


 榎本さんの家の前につき、開けっ放しのドアから本人が見えたので早速中に入った。

「おう、呼び出して済まなかったな。とりあえずよ、米蒸かして麹菌と混ぜて水入れて、酵母って奴で発酵してもらったんだけどよ」

「ひひ……、がんばった」

 不敵に笑い、手があったらピースしてそうな感じだな。

「酒っぽい香がしてきたから藁灰入れてかき混ぜて、上澄みを掬ったのがこれ、残ったのをこの間の布で濾したのがこれ。何もしないで濾したのがこれ」

 そんな説明と共に瓶がドンドンとちゃぶ台に置かれ、澄んだ物、白いのが少し沈殿している物、白いのが半分以上沈殿している物が並べられた。

「これは上澄みだから綺麗だけどよ、やっぱ目の細かい布でもダメだな。織田の話だと。フィルター式がどうのこうのっていったからな。袋っぽいのに入れてもたゆんたゆんするくらい細かいらしいな、まぁない物はしかたねぇべ。まだ火入れしてねぇから、発酵が進む前に生酒を少し飲むべ。この島は暑いから、さっさと火入れしねぇと発酵しちまうからな」

 そんな事を言いながら、タンスから着替えを出している。

「あの、何してるんです?」

「折角だから、温泉で海見ながら飲むに決まってんだろ!」

 そう叫んで外に出たら、

「織田ぁ! カームが来たぞ! 温泉だ温泉!」

 どこから出してるのかわからない大声で、織田さんを呼んでいる。もしかしてスキルかもしれない。叫んで勇気とか攻撃力を上げるやつゲームとかであったし。

 しばらくして、小走りでやってきた織田さんも着替えを用意している。

 この爺さん達可愛いな……。

「あ、俺着替えねぇっすよ?」

「タオルで拭いて着回せ。行くぞ」

 そんな感じで、温泉に強制連行された。


 海の見える露天風呂。そして何故か浮いてる桶。そしてその上にあるお猪口(おちょこ)風に削った木と小さい酒瓶。徳利(とっくり)は用意できなかったか。

 そして、カラスミっぽい何の魚かわからない卵巣と、酒粕が付いてる奈良漬け風の漬かりが浅い漬け物……、奈良漬けは間に合わなかったんだな。なにこの温泉で酒飲むセットみたいなの……。すげぇ情熱感じるんだけど。

「っしゃ、とりあえず濁ってねぇのからいくべ」

「だな!」

「あ、はい」

「面倒だ、各自手酌でいいな」

「おう!」

「あ、はい」

 俺は流されるまま自分のお猪口に注ぎ、榎本さんの取った音頭にあわせ乾杯をした。

 まずは香りを嗅ぎ、一口だけ口に含み、舌の上で転がすようにして味を確かめる。

 白ワインを思わせるフルーティーな香りが鼻から抜け、辛みの中に甘みもあるような感じだな。本当に米だけしか使ってないから素人が作ってもこんな感じになるんだろうか? 多分これは日本酒の中では甘口に部類されるだろうな。

「甘いな……もう少し辛いのがいいんだけどなぁ」

「俺はこれでも平気だが?」

 二人は一気に飲み干して、カラスミっぽいのを摘んでいる。

 やっぱり甘口だったか。

 そしてもう一度注ぎ、水みたいにぐいぐい飲んでいる。よっぽど日本酒に飢えてたんだと思う。まぁ、俺は何でもいける口だったから、こだわりはないし、飲めればいいやって感じだったから、別にそこまでがっつく必要はないので、香りを楽しみながらチビチビやらせてもらっている。

「いやー、キノコの嬢ちゃんに感謝だな」

「確かに。これなら味噌醤油も期待できそうだ」

 そしてヒタヒタと濡れた石の上を、素足で歩く音と共に突然の珍入者が……。

「姐さん」

(あねご)!」

「姐貴!」

 全員姉呼ばわりかよ……。まぁ、榎本さんなんか百年も生きてないから、確かに年下だけどな。ってかこの人は島のどこにでも現れるな。

 織田さんはなんか、Vシネに出てきそうな感じな呼び方だったな。

「姐、こっちは男湯だぜ?」

「あらー? エノモトちゃんはそんな事気にする年でもないでしょうに」

「いや、俺達は良いがカームが……」

「カームちゃんなら平気よ。前に二人っきりで山の方の温泉に入ったのに、襲いかかるどころか見向きもしなかったのよー、女として自信なくしちゃうわー」

 少し拗ねながらそんな事を言うが、全く悔しそうにしていない。

「いや……混浴ではじろじろ見ないのがマナーですし。ってか、溶岩から出て直接来ないで下さい。全身火傷するところでしたよ」

「あら? ここって、見えそうで見えないギリギリの裸を見せつける場所じゃないの?」

 なにその湯煙フィルター。変な知識だけ持ってるな。

「姐を見ても襲えないなら、最初からムラムラしないで済む方を選ぶぜ? 若い男をからかうなよ……」

 確かに……。抱きついた男を脅すのに、ソニックブームが見えるパンチ出して、海を割るような姐さんとは一緒に入るだけで毒だ。

「それ……おいしそうね?」

 姐さんが物凄い笑顔でそう言うと、榎本さんが急いでお猪口に酒を注いで渡していた。

「あらー、甘くていい香りね。何で作ったの?」

「ほら、この村にある水浸しの畑あるだろ? アレが実った奴で作ったんだよ」

「へー。まぁ、麦で酒も造る、あの変な奴で作ってもありよねー」

 試作した日本酒をぐびぐびと、どんどん飲んでいる。

「他にもあるみたいだけどー?」

 桶の上に乗っていない、温泉の縁にあった瓶もニコニコとしながら指差している。

 結局その後は、濁り酒と、甘酒みたいなドロドロした日本酒を一杯だけ飲み、ほとんどが姐さんに飲まれてしまった。

 榎本さんと織田さんは、目に見えてテンションが下がっている。この二人も、ほぼ何も言えず振り回されてるのか。なんか小悪魔っていうより、サタンとかデーモンって言うのが似合う。まぁ、成功してたし、大量生産すれば飲めるよ……うん。

「酔えないけど美味しいわねーこれー。うん、このままもう少し強くならないかしらー」

 おかしいな、たしか度数的に十五度前後だったはずだけど。それ以上は焼酎にならないと無理だぞ? たしか日本酒作ってる蔵元で作った焼酎とかあったな。香りがまんま日本酒で驚いた記憶がかすかに残ってる。

 親戚の爺さんは、なんか大きいペットボトルの奴で飲んでたけど、あれはなんか匂いが駄目で飲めなかったけど、ああいうのでも樽とか瓶で保存すれば変わるんだろうな。

 まぁ、コーヒー豆を入れて茶色くなったらお湯割りで飲んでたけど、香りと味をコーヒーで誤魔化してるのと同じだったからなぁ。美味しかったけど。

 そして俺達は温泉から帰るが、最後まで二人は残念そうにしていた。姐さんって、酒の事になると妥協しないからなー。仕方ないよね。

 俺は執務室に戻って書類の続きを始め、日本酒でに合うつまみを今から考えておいた方がいいかな? と思ったら、書類より先にメモを残していた。

 いや、ダメだね。仕事の途中で温泉はいると、脳がもう仕事したくないモードだわ。今日はもうダラダラしよう。

 

前回の後書きに書き忘れました。なので今回も載せておきます。


会田さんのメイドの愚痴は、おまけSSの男だらけの温泉回で出てます。

書き忘れていました。


http://ncode.syosetu.com/n4699cq/6/

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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