第158話 久しぶりに授業を受けた時の事
作者は馬鹿です。多分で書いてます。
島の収穫祭が終わると、故郷の収穫祭までに多少時間がある。その間に俺はどうしても炭酸が欲しくて、会田さんに連絡を取り、剣崎さんとか言う理系教師だった知識系勇者に会う約束を取ってもらい、さっそく出向くことにした。
いつもの地下室に行き、会田さんを待っていたら、前に着た砂漠の民の衣装を持ってきた。
「さすがに城内で、カームさんの存在を知ってる人は少ないので、コレを着て下さい」
「デスヨネー」
俺は服の上からポンチョのような薄い布を羽織り、顔に布を巻いて目だけを出した。
「ゲームに出てきた暗殺者みたいっすね」
見張りとして常にいる勇者がそう呟き、
「左手の薬指でも切り落とします?」
「結婚指輪はめらんねぇ。こっちにそんな文化ねぇけど」
「なら広めればいいんじゃないんですか? ちょうどジャスティス君とレルスさんが夫婦してますし、大々的にやってみるのも良いかもしれませんね」
と、会田さんが真面目に言っている。どこまで本当かわからねぇよ。
俺達は、火の付いてない暖炉から城内に入り、その部屋は勇者の談話室になっていた。そして堂々と廊下を歩き、すれ違った兵士が会田さんに会釈をしているが、俺に何の疑問も持っていない。会田さんの隣だからか?どんだけ城の中で影響力持ってるんだよ……。
「この部屋ですね。失礼します、会田です」
会田さんがノックをして部屋にはいると、光を多く取り込めるように、ガラス窓が多い中庭に面した部屋だった。元々お茶会か何かに利用されてそうな場所だな。
窓際にはフルールさん。そして日当たりの悪い棚には、ガラス瓶の底を切って蓋の代わりに綿が詰められて、鉢に覆い被さって、そして水がたっぷりと染み込んでる土の上で、ピルツさんが心地よさそうにしていた。高温多湿状態?
「おぉ、そいつが噂のカーム君か」
休憩中だったのか、紙巻き煙草を指で摘み、煙を噴きだしてから話しかけてきた。
部屋には、後二人ほどいたが、必死に何かを書いている。
「初めまして、ご存じかと思いますが、カームと言います」
「剣崎だ、ピルツ君のおかげで色々はかどってるよ。感謝する」
「どうも……」
んー、なんか大雑把な感じがするな。
「じゃ、俺は仕事に戻りますね。終わったらフルールさんを通して呼んでください」
会田さんが逃げるように出て行った……。
「さて、炭酸水の作り方だったな。具体的にはどうしたいんだ?」
「え? あー、大量生産ですかね。なんか工場的な場所で、水に炭酸ガスを加圧して溶け込ませてると記憶してるんですけど、そういう施設は技術的にまだ無理でしょうし、ですので何かいい方法はないものかと思いまして」
「ほう……続けて?」
う、なんかやり辛い。
「ほかの方法だと、クエン酸と重曹を混ぜて作るってのは知ってるんですが、レモンとかからどうやってクエン酸だけを抽出するとか、重曹ってそもそも何? ってかんじで、諦めてたんですよ」
「んー……。今の技術で安全に大量生産するなら、ビール樽の蓋を開けて、水の入ったボウルを吊せばいい。確か千七百年頃にその方法で誰かが、水に炭酸ガスが溶け込むって発見してたな。低コストで作るならそれだね」
「おぉ!」
「けどさ、カーム君って魔族だろ? 魔法でどうにかできるだろうに……」
そう言われると、何か書いていた二人が、すごい勢いで頭を上げてこっちを見ている。まぁ今更だしいいか。
「えぇっと、魔法というと?」
「魔族側の魔法はイメージと聞いた。なら魔法で水に二酸化炭素でも混ぜ込むイメージでもすれば早いだろ?」
「え? 二酸化炭素?」
「そうだ、何か問題があるか?」
「えぇっと、炭酸ガスって二酸化炭素なんですか?」
「当たり前だろう、何を言ってるんだ君は? もしかして馬鹿なのか?」
「え……まぁ、化け学は嫌いでして……」
「ほう……、ちょっと説明するから座りなさい」
「え、あ、はい……」
その後、壁に立てかかってる黒い板に化学式を描かれ、長々と説明が始まり、開始五分で俺の脳が聞く事を拒否して、聞いているフリをして右から左に聞き流していた。大学はどうやって卒業したかっって?そりゃ友人の園原君のノートをコピーしてだな……。ってか本当に化学だけは勘弁してくれ。俺には小学生の理科で十分だよ。
三十分後には説明が終わり、「こんな感じだ」で授業が終わった。
わざわざ難しく説明してないか?
「まぁ、空気中に微量の二酸化炭素が含まれてて、ビール樽からもそれが出てるから、吊したボウルの水が炭酸水になると」
「そうだ。水に消石灰を混ぜて、ストローで息を吹き入れ白くしたことはないか? それだ」
一言二言で済むじゃないかよ。なんで三十分も授業したし……。
「では、魔族特有のイメージでやってみてくれ。海賊を酸欠にさせて高山病にさせたみたいに」
「はい……」
情報源は絶対会田さんだな。畜生。
俺は言われた通りにやってみることにする。空中に【水】を浮かせ、風属性を使って加圧して、空気を練り込むようにしてみる。さっき絵で説明された、炭酸水を作るサーバーのように、風魔法でペットボトルをイメージして、水全体を押さえ込み、下の方からボコボコと空気をどんどん送り込んで、しばらくしてからカップに水を落とすと、炭酸水の気泡がどんどん浮いてくる。
「ほら、魔族なら簡単じゃないか」
そう言いながら、紙巻き煙草をくわえてマッチで火をつけている。
「えぇ……そうっすね」
炭酸水が出来たのに、素直に喜べない。まさか二酸化炭素が炭酸ガスだったなんんて……。
「その様子だと、偏った知識しかないんだろう? なんか面白い事してくれれば、貸しはなしにするよ?」
ニヤニヤしながら煙草を吸って、煙を吐きながら言ってくる。仕方がないので、水に圧力をかけて、加熱して三百度以上にしてみる。
「はははははは! コレが出来るのに、炭酸水が作れないとかやっぱり馬鹿だなー。お前等見て見ろ、水を熱すると蒸気になって、体積が千倍近く増えるが、蒸気が膨れないようにして熱し続けるとこのように水が黒くなる。その辺のオーブンと同じくらい熱くなるんだぞ! いやー面白い物が生で見れたぞ。で、なんでそんな事知ってるんだ?」
『生前に、ネットで、三百度のお湯でカップ麺を作ると一分で済むって奴を見かけたんで、水を三百度にする方法だけ知ってたんですよ』
一応この世界の人間がいるから、日本語を使っておいた。
「んー、興味があることだけ覚えてる系か。授業は嫌いでも、実験は好きだったタイプだろう?」
「えぇ、まぁ……」
「生徒ってそんなモンなんだよなぁ……」
煙草の煙を、勢い無く口と鼻からモクモクと煙突の煙のように出している。教師全員の悩みなんだろうか?
「この子達はかなりマシだった王宮魔術師で、膿出しで首を免れた子達でね。大きな袋作戦で色々協力してもらったんだけど、この通り座学が苦手でね。今は魔術に科学を練り込んだらどうなるかの、独自の解釈でレポート書かせてるよ」
「なんか錬金術みたいですね」
「おー、面白い事言うねー。いいね、錬金術。アルケミーでも名乗らせるか! 髪の毛一本からクローンが作れるように、科学技術が追いついてないところは魔法で補ってみるか。いいねぇ、豚とか牛とか人外実験から始めよう。食うだけなら、そっちの方がコストが安くなるかもしれないな!」
「そうっすか……モラル的な事は守って下さいね」
「実験に犠牲は付き物さ。成功したら、やわらかい牛肉が食いたい放題、王族の影武者作りたい放題だな? なぁ?」
「しらねぇっすよ……」
ある意味会田さんに似てるわ。成功しないことだけ祈ろう。いや、食肉は増えて欲しいな。
「暴走して、禁呪指定されないようにお願いしますよ。後ろの生徒が糞面倒そうな顔してますよ?」
「まぁ夢物語だ。気にするな」
「そうっすか……あとポーション作る人達が錬金術師なので、差別化するのに別な名前考えた方がいいですよ」
「そうか……錬成士とかかな?」
そんな感じで考え込んでいたので、帰ろうとフルールさんの鉢に近づくと、逃がさないという感じで呼び止められた。
「あーそうだ、カーム君って鉱石類出せる? 出せるなら、金とかの価格暴落するから、止めた方がいいぞ」
「ははは、やってませんよ。そのくらいわかりますよーヤダナーモー」
神様に言われたし。
「けど出来るんだろう?」
「えぇ。ただ、魔力で作り出した物は消えますけどね」
「ほう……なんか作ってくれないか?」
「んじゃわかりやすいように金ですかねー?」
そう言って、ずっしりと重く、五センチメートル角の、鈍く光る金属が手の上に乗っかる。
「おー、コレが魔族のイメージで作る魔法か……魔族側の魔法使いでも雇うか。カーム君が欲しいけど魔王だからなー」
おい。流れるように言うなよ。生徒が部屋の隅に逃げてるだろう。
「さっき魔力で作るって言ったよな? じゃあこの炭酸水は?」
「空気中の水分を集めるイメージですので、消えませんよ」
「ほー。なら金鉱山や鉱脈で金が集まるイメージすれば、大金持ちだな。消えないし」
「金鉱でも微量にしか含まれてませんし、かなりの量の石を粉砕して、高温で金だけ抽出して作るのに、そんな広範囲の金を集めるイメージしたら、速攻で魔力切れでぶっ倒れますよ」
「んーそこまで万能じゃないか……残念だ」
「衝撃を与えると、魔力の消費が早くなるのか早く消えますよ」
俺は作った金塊を床に落とし、何回か足で思い切り踏みつけると消えた。
「だから武器を作る場合は、投げナイフが多いですね」
「ほう……。なあお前等、魔族と仲良くできるか?」
剣崎さんは、部屋の隅に逃げていた生徒に話しかけている。
なにか思いついたのかわからないが、多分碌でもない事だろう。短い時間しか関わってないが、何となくわかる。俺は今度こそフルールさんに話しかけ、会田さんを呼んでから島に帰った。
そして、俺は執務室でモヒート作りをする。
カップにミントと砂糖を入れて棒で潰して、ラムを入れて、クラッシュアイスを大量に入れて、魔法で作った炭酸水を入れてから、潰してないミントを浮かせてモヒートを作った。
そしてそれを一気に呷り、カップをテーブルに叩きつける。
「コレだよコレ。これがモヒートだよ!」
久しぶりに味わう、冷たい炭酸水の口の中ではじける感じと、ミントの清涼感が合わさったモヒートを一気に飲み干し、盛大にゲップを出す。
最高だ! ついでに炭酸水にジンジャービアを入れて、ジンジャエールを作って飲む。
「~~~ッ!!」
いいねいいね! こっちの世界に生まれて十余年。久しぶり炭酸飲料を飲んだぞ! 本当無知って恐ろしいわー。炭酸ガスが二酸化炭素だったなんて。
そんな事を思っていたら、いきなり肩を叩かれた。ルッシュさんは正面のドアから入ってくるし、誰だろうか?
俺は後ろを振り向くと、ピンク色の髪の女性が……。
「どうも、姐さん……」
「それ、ものすごく美味しそうね?」
ものすごい笑顔でカップを指さし、威圧感を放ちながら立っていた。
「え、あ……、はい。今お作りいたします!」
俺は裏口から蒸留所に走り、ラムを取って、その辺に生えてるミントをむしり、パーラーさんのキッチンに寄って砂糖をもらい、空中に【炭酸水】と【氷】を浮かべながら執務室に戻り、急いでモヒートを作った。
「んー、麦酒みたいにシュワシュワパチパチで、冷たくてスースーして美味しいわー」
ものすごい笑顔で言われ、島の守り神の防衛力が上がった気がした。
マジで化学とか勘弁だわ……。




