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第153話 世間話をしに行った時の事  

おまけSSの掲載二周年記念と一緒に予約投稿するはずが、日にちを間違えて覚えてたので、慌てて投稿しました。

 島に戻り、パーラーさんに頼んでいた糠床は、問題なくかき混ぜてくれていた。

 そして、ぬか漬けにはまってしまったのか、糠床にゆで卵が増えていた。

「カームさん! 私もこれ欲しいです! 分けて下さい。あと、ものすごく卵がおいしかったので、事後承諾になりますが入れさせていただきました」

「あ、はぃ……」

 急に床分けを言われたので、仕方なく分けてあげ、減った分はまたバナナで補充して、うれしそうにキッチンに持ち込んでいった。

 ふむ、ピルツさんも増やしたし平気かな?菌の違いで味が変わるから、各家庭の味を楽しむのがどうのこうのと聞いたことがあるが、あのキッチンに早く馴染んでくれればいいな。

 まぁ。チャレンジャー精神満載の、試験的に入れた漬け物を、コーヒーと一緒に出されない事を祈ろう。



 翌日、菌の有効性をものすごく思い出し、人族の大陸に連れて行っていいか?と、足下の床板をはがして聞いてみた。

「べ……別にいいよ? 居心地が良ければね……ひひっ」

「多分平気だと思うよ? フルールさん、会田さんに今から行くから、体感で三十分後に地下室に来てと言って下さい」

「わかったわ。体感でサンジュップン後ね」

 特に花が変化することなく、声だけ帰ってきた。

 俺はその辺に転がっていた丸太を【チェーンソー】でくり抜いて、スコップで適当な場所の森の土を掘って入れ、朽ち木を軽く乗せ、ピルツさんを呼んでみた。

 全体的に、毒々しい青色の茸が生えてきた。さわりたくないな……これ。なんか触っただけで、毒で死にそうな色だぞ。

「んじゃ行きますよ、なにか問題あります?」

「向かう先が、カラカラで太陽が眩しくなければ特にないよ」

「なら平気ですね」

 一言だけ言ってから、俺は城の地下に転移した。


「お久しぶりです」

 地下には、やっぱり一人は見張りとしているのか、テーブルで書類みたいなのを書いていた。

「あ、どうもカームさん、お久しぶりです、今年の米はどうっすか?」

「米の管轄は、榎本さんだからよくわかりませんが、重たそうに垂れ下がってましたよ」

「ほー、今年も期待していいですかね?」

「えぇ、問題無いと思います。それと……ふふーふ、俺には強い味方が付いたんですよ。マタンゴのピルツさんです。この方はフルールさんみたいに、菌を操れるんです」

「な、なんだってー!」

 テーブルに鉢植えを置き、毒々しい色の茸を見せつける

「おぅ……いかにも毒って感じですね」

「ひひ……これは毒じゃないよ。ものすごく苦くて、二度と食べたくないって言われてるやつ」

「声だけめっちゃ可愛いんですけど」

「声だけは……ね?」

「あー、ここ、ものすごくジメジメしてて、さいっこぉー」

 相変わらずクネクネ動いている。傘が広いから、卑猥には感じない。

「昔、花でこんな感じで動くおもちゃを、動画で見たことがあります」

 俺は持ってたけどな……。

 そんなやりとりをしていたら、会田さんが、ティーポットを持ちながら、歩いてきた。

「あれ? 遅れちゃいましたか? 申し訳ないです」

「いやいや、俺が早かっただけですよ」

 イスに座り、ピルツさんの事をもう一度話した。

「……考え方によっては、ものすごく頼もしいですが、怒らせると、本当にまずいですね」

「えぇ、菌は恐ろしい物も多いですからね」

「ひひ、人族も魔族も私に怯えるがいい」

「「「……」」」

「まぁ、ほらあれですよ。青カビからインスリンが作れますし」

「……ペニシリンでは?」

「カームさん、おもしろくないっす」

「……すみません、頭の中でごっちゃになってました」

「それでも、リンしか合ってないっすよ?」

「あるぇー?」

「変な方向に、変な知識があるのに、なんでこういうのは間違えますかね?」

「前世で、リコピンをピコリンって言ったことが一回だけあるんで、それと似たような間違えって事で……」

「うひひ……滅びろ……」

「「「……」」」

「本当に大丈夫ですか? この子」

「平気だと思います……」

「なんで語尾が小さくなってるんっすか」

「いやー、まだ協力してもらって、酒作りとかしてなくて、糠床の隣にしか置いてないんですよ。そっち関係本当に駄目なんで、皆さんに丸投げしたいと思ってて」

「確かに一人の知識では限界がありますし、こんな頼りがいのある方がいてくれるなら助かりますけど」

「頼りにされてるぅ。私がんばっちゃう……くひひ」

「多少不安ですが、剣崎にでも任せましょう。ある意味淡々としてる理系教師でしたし、その手の分野は得意でしょう」

「剣崎?」

 聞いた事ねぇな、誰だろう?

「あぁ、会った事はありませんでしたね。大きな袋作戦と言って、無制限に物が入れられる魔法を開発しようとしたんですが、四次元空間を再現したら、時間と共に空間が広がり続けちゃいましてね。荷物はこの空間のどこかにはあるよって事で、頓挫中です」

 誰だろうと、思い出してるような表情をしてたら、丁寧に教えてくれた。

「すげぇ面白い事してますね」

「例のゲームをやってる方が多いので、出た案ですけどね」

 紳士風の神が、そんなのあるような事言ってたけど、とりあえず黙ってよう。

「では、この子は預かってもよろしいので?」

「えぇ、俺だけじゃ扱い切れません。専門の知識のある方にお願いして、薬作りとかしてもらえたら、いいかなーと思いまして」

「……そうですね。ポーションで治せないのもあるかもしれませんし」

「毒消しのポーションも数種類ありましたが、毒にも色々ありますからね、性病の類って毒消しポーションで治るんですかね? 治らないなら作って、薬効ありーとか叫びたいんですけど」

「ははは、面白い事言いますね。毒消しで性病云々はわかりませんが、ポーションもあんまり万能じゃないですからね」

「そうですね、俺も説明聞いたときは、傷口にぶっかけても、飲んでも治る。疲れてるとき飲めば利くって程度でしたし」

「傷に利く栄養剤?」

「あのにがしょっぱあまいのは、好きになれねぇっす」

「私アレ嫌い、地面にこぼれたところは、仲間が死んじゃう」

 岩本君達が来て、ポーション瓶を割った時の事だろうか?

「殺菌作用ですか、霧吹きでも作って適度に噴霧したら、治療に役立つかもしれませんね」

「ひ……ひひ……。私を殺すの?」

「「「……」」」

 いつもより、陰のある笑顔で、目のハイライトが消えている。なんだろう、この散々絶望して、最後に殺されるときのような笑顔は。

「いやいやいや、雑菌って言って、悪さをする菌達やっつけるだけですよ」

「殺すんでしょ?」

「……はい、すみませんでした」

 なんだろう、会田さんが言い負かされてる。珍しいな。助け船でもだすか。

「あ、そうだ。第三王女の妊娠……」

「あ……あー、特に問題がないので報告していませんでしたが、家族のサポートと、ジャスティス君の献身的な行動で母胎も精神も安定しています。それに城内にも我々勇者にも知人が増え、かなり充実してますし、制限付きですが、幽閉から城内での監視対象に変えて、中庭を散歩してますよ」

「へぇ……親になるってすげぇ」

「地球での知識を教え、どのように過ごせば母子共に健康かを教えてますし」

「女性の勇者っていましたっけ?」

「……聞かないで下さい」

 いきなり能面のような顔になり、小声で言われた。触れるな関わるなって感じだな。女性だし色々あったんだろうなぁ……。

「わかりました。まぁ、色々安定してるならいいです。で、そちらの情勢は?」

「結果だけ言うなら、まぁまぁ、あくまでもまぁまぁ。元々色々マイナスでしたからね。税も色々減らして、今までため込んでた金でインフラ整備。教会の炊き出し、どんどんそういうのを増やし、信頼回復に当ててます。現王に関しては、支持する人間が増え、なんだかんだいって、文句は言ってきませんね。じょじょにですが良い方向に向かっています」

「ふむー。現王に対する暗殺とかは?」

「不思議と有りません、それと他国の使者が来て、内政を学んで帰ってますね」

「他国……まぁ、あるとは思ってましたが、あったんですね」

「この国の国土は結構多く、対魔族戦にむけて、海岸線の土地が多いですがね。他の国から、物資やお金を貰って、防衛や攻撃をしていたみたいです」

「防衛?」

 過去に魔族が攻めてた時期があるんだろうか?学校の授業じゃ一切やってねぇぞ。

「えぇ、過去にあったらしく、他国から防衛を任されてたらしいです」

「聞いた事ないですね……」

「一応過去の文献には乗ってましたので、一応そういう事実はあるそうです」

「んー、魔族が攻められた理由には、そんな理由があったんですか」

「大体三百年前に攻められたらしいですね、それからさらに関係が悪化してるらしいです」

「生まれてすらないですね。つまり、その頃からさらに仲が悪くなった、けど商人は危険を承知で交易はしてる。商人ってたくましい」

「儲けがあれば、なんでもするイメージしかないですからね」

 んーニルスさんも、最初魔族側の大陸の方から、傭兵連れて航行してたからな。今のところ停戦に持ち込んだけど、未だ戦場になった場所や、海岸線付近ではお互い嫌悪してるかもしれないし、実際どうなんだろう。俺には普通に接して来るし……。考えても仕方ないか、今は考えるのは止めておこう。

「そうですね。まぁ、人族の商人と仲良くやらせていただいてますので、そういうのない人はないんじゃないんですかね?」

「でしょうね。みんな商人みたいな考えの人なら良いんですけどね……」

 会話が途切れたので、別の話題を振ってみるか。

「そう言えば、会田さんの恋愛事情はどうなんでしょうか? 小柄な方に目を付けていたと言ってたじゃないですか」

「あー、そんな事も言ってましたね。最初は王族にあんな事やこんな事をして、怖がられてましたが、最近国が安定して、王の支持率も増えて、治安も回復してますので、勇者の地位も見直されてますし、最近では頼まなくても、お茶を淹れてくれるようになったんですよ」

「おぉ、すごい急展開、あとは世間話して、少しずつ親しくなって行けば……」

「はは、止めて下さいよ」

 珍しくはにかんでいる、まんざらでもない様だ。

「櫛野さんとかはどうなってるんですか? まぁ宇賀神さんは人魚が好きだから、最低でも海岸線か俺の島に来ないとアレですけど」

「櫛野さんは、町で一回だけ褐色の子をみかけ、それから奴隷市場を回って、褐色の子をさがしてますよ」

「おー、奴隷を買う。なんかファンタジー系の王道ですね」

 櫛野さんが主人公でもいいんじゃね?なんか王道物を地で行ってるし。

「あの性格で日本人ですから、酷使するとか強要する事は無いでしょうね。多分幸せにするんじゃないんですか?」

「北川さんは、もういかにも魔族らしい魔族が好きなので、ある程度区切りがついたら、魔族側の大陸を旅してまわるとか言い出しそうですね」

「そうですねー、戦争中は、多少現地に娼婦とかがいて、魔族が奴隷として入って来てたみたいですが、今は全くですからね。櫛野さんみたいに、買い取って信頼を築き上げていくとかは、ないんじゃないんですか?」

 んー俺の事を、なんで女で生まれて来なかったんだとか言ってたからな。俺みたいな女性の事が好きなんだろうな。

 しばらくは、娼館巡りだろうか?

 平和になると、色々余裕が出て来て、恋愛にも手が回せるのか。

 あーそう言えば岩本君、そろそろ旅立って二年か。どうなってるんだろう。あの一緒にいた女性とくっついたか?それとも仲間として信頼関係を結んでるか……。男の割合が多かったから、下手したら解散かもしれないけど、向こうから来るまで、情報が手に入れられないのが悔しいな。

「ひひ……仲間はずれ……」

「あーすみません」

「へへ……別にいいんだ。ここ居心地がいいから、仲間を増やしちゃうよー」

 そういって、頭を前後に振っている、胞子でも飛ばしてるんだろうか?

「あの、それってなにを……」

「仲間を増やす行為」

「体に悪そうっす」

「……あの、紹介したい人がいるんで、少し移動しましょうか?」

「ひひ……乱暴しなければいいよ」

 なんだろう、エロ同人誌みたいにとか、いきなり言い出しそうで怖い。

「では失礼しますね。ピルツさんをお借りします」

「私は男共に貸し借りされる安い女……ひひ。なんかエッチな響き」

 胞子で増える癖に何言ってんだろう。会田さんも、笑顔が引きつってるし。なんか癖強すぎだな。

「た、たぶん良い子ですので、よろしくお願いします」

「え、えぇ。では失礼しますね」

 んー、未だに掴み所がわからない。謎系の子だな。まぁ、上手くやってくれる事を祈ろう。

ピコリンは作者の実話です


二周年記念の作者の対話風ぶっちゃけた、読むと気分を害する可能性の有る、ネタバレが有るかもしれないおまけ

を書き来ました、もし宜しければお読みください。

http://ncode.syosetu.com/n4699cq/14/

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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