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第150話 なんか偉い奴が来た時の事 後編

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 俺は応接室に戻り、カルツァの前に帳簿類を投げ出した。

「コレが望んでいた帳簿です。そこに書いてある額の七割を三回でしたね。カルツァ様のことでしょうから、物よりもお金の方が良いとおっっしゃるんでしょう? 今は島にそれだけのお金がありませんので、数回に分けてお支払いします」

 俺の言葉に、カルツァは勝ち誇ったような顔をしていたが、俺が常識のない奴に素直に従う事はしたくない。

「まぁ、コレは義理みたいな物です。とりあえず、この島は独立しますので、二度と関わらないで下さい」

「はぁ! こんな金の成る木を、私が易々と手放すと思っているのかしら?」

「別に負けを認めた訳じゃありません、手切れ金です。どうぞ、出口はあちらです。あの旗が掲げてある船は、二度と入港させませんので、くれぐれもお気をつけ下さい。燃やして、全員沈めますよ?」

「ちょ、ちょっと何を言っているのよ!?」

「ご理解いただけないのでしょうか? 俺()の敵になっただけですよ。俺は、敵には容赦はしないので。ではお帰り下さい。もたもたしてたら、船を燃やしますよ」

「独立なんかさせないわ! この島は、代々スリップ家の「欲を出さずに、強盗みたいな真似をしないで、常識の範囲内の税を取ろうと思えば、こうはならなかったんですよ。あと、これ以上島民を刺激しない方がいいですよ? 彼等は人族の寒村出身で、重税の重さを知っている方々ですので……。この開放感のある執務室で、大声を出せば周りに丸聞こえですよ? 後ろをご覧下さい」

「な、何よ」

 俺が手を窓の方に向けて、それに従うようにカルツァが立ち上がり後ろを見ると、怒りを隠そうとしない目つきと、開墾用の農具を持っている島民が窓際に集まっていた。

「カーム、こいつ敵になったんだろ? 射っていいか? いいよな?」

「キース、一発で殺すなよ? 俺もぶん殴るからよ」

 キースもヴァンさんも気に入らなかったのか、キースは弓に矢をつがえ、ヴァンさんは鍛冶に使う大きいハンマーをもっている。

「キース、ヴァンさん止めてくれ。独立を宣言して、それを拒否されたけど、まだ武力で押さえ込むような事は言われてない。こちらから攻撃を仕掛けると、色々面倒です。殺るなら、攻撃されるか攻め込まれてからにしてください」

「い、いったい貴男は何を言っているのかしら……り、理解できませんわ」

 カルツァの声は震え、隣にいた男はオロオロしている。

「独立する、させないって言い争ってるだけじゃ子供でもできますし、どうにもなりません。独立をさせないために、武力行使に出るなら戦争しかないですよね? って話しですよ。拒否されても、こっちは独立を宣言したので……。税を取りに来た役人は無視すれば良いだけですし、しつこいなら殺して、首を塩漬けにして送ります」

 俺は微笑み、もう一度確認する。

「もう一度聞きますよ? 新しく土地をもらった奴は、色々落ち着くまでの十回ほど税の免除、その後常識の範囲内で、税を払うのが一般的らしいので、それに習う。七割の税金を取り立て、独立される。過去十五回の税と、罰金の大金貨十五枚を無理矢理取ろうとして誰か(・・)に暗殺される。どれが良いですか?」

 指を一本ずつ立て、子供に言い聞かせるように選択肢を出した。

 これで三番目を選んだら、ただの馬鹿で、わがままにに育てられたお嬢様だな。

「カ、カルツァ様……」

「貴男は黙ってなさい!」

 かなり焦ってるな、ちょっと脅しすぎたかもしれない……。

 そして、重苦しい空気が体感で五分ほど流れるが、俺は気にせず、ぬるくなった茶を飲み、答えを待つ。ルッシュさんとパーラーさんは、とてもお茶を飲めるような心境ではないみたいだ。

 二番目と三番目を選ばせないように、一番目の選択肢だけ、かなりハードルを低くしたんだけどなぁ……。

「い、一番最初のでお願いしますわ。残り七回の税を免除、その後に良識のある税を取りに行かせます」

「わかりました。これからも何かあったらよろしくお願いします、カルツァ様。とりあえず事後報告になりますが、蒸留所を作る為にかかった初期投資の資金をいただきたいのですが? これだけ成功してますし、計画書も監査もいらないですよね? 後ほど、建造にかかった総額の詳細を書いた紙を届けに行きますので、どうか一考下さい。だって、自分の領地を豊かにしてくれた奴が、ここにいるんですから。あ、別に全額じゃなくてもいいですよ? 初期投資分だけでも」

 とりあえず、軽い反撃もしておこう。

「なんで、そんなことまでしなければいけないのですか!」

「領地が豊かになれば、取れる税が増える。その為に、貴族は自分の領にある寒村を根本的に変える為に投資するんじゃないんですか? だからこの島にもですね?」

「誰がそんな無駄な事を!」

「ほー、酒作りは無駄と。なら、酒からは税は取らないんですね、やったー」

 両手を上げて少し大げさに騒ぎ、周りに聞こえるように言ってみる。外にいる連中も本気で喜んでいるようだ。

「吐いた言葉を撤回して、投資するか。本当に酒からは税を取らないか。とりあえず、どっちに転んでも俺は困らないんですけどね」

 そして、さっきまで緊張していた二人は、笑うのを耐えているのか、肩を振るわせている。

「なんでそんな答えになるのです!」

「なら今までのと、今後のも投資をお願いします。しっかり儲かるような計画書も出しますので。って言うか、金は出したくない、けど金が欲しい。そんなの、俺がいる限り通しませんからね? それが嫌なら、今日のことは全部忘れて二度と来ないで、今までの事を全てなかったことにして下さい。あ、もちろんこの二人は、連れて戻らないで下さいね?」

「ぐっ……」

 まぁ、完全勝利ではないけど、こんなもんか。

「こちらの方で、セレナイトの税とか勝手に調べておきますので、税を払う時までに、セレナイトの税が季節が巡る毎に上がってない事を祈りますよ。では、今後もよろしくお願いしますね。あ……後ほど投資の話を詰めに後で伺いますので、よろしくお願いします」

 そういったらカルツァは、おもしろくない顔をして「帰るわよ!」といって立ち上がったので、力任せにドアを開けられる前に、丁寧に開けて送り出してあげた。

 うん、気分がいいね!ああいう奴は個人的に嫌いだからね!


 カルツァと旦那が小舟に乗って、自分の船にもどって、帆が張られるまで見張った。

 巨大な四角い旅行鞄が四つあったけど、話し合いをしている時に、小舟を漕いでいた人達が、二人の荷物を天幕の下に運んでおいてくれたらしい。

 その後に、ルッシュさんとパーラーさんを、それぞれの空き家に案内しようとしたら、職場が同じだから二人で住むと言われ、バートさんに組み立て式ベッド一式をもらってきて、二部屋ある既婚者用の、少しだけ他の家より大きめの家に案内した。

 バートさんの弟子にベッドを組み立ててもらっている間に、風呂の説明や、水浴び場の説明をしようとしたら、二人ともクラヴァッテから聞いてたらしく、島民の誰が、クラヴァッテの送り込んだ草なのかと悩んだが、別にやましい事はしてるつもりもないし、別に気にしない事にした。フルールさんが、世間話をしてるだけかもしれないし。

 パーラーさんは、簡単な魔法なら使えるらしく、火も水も出せるので、個室で水浴びか入浴は問題なさそうだ。

 メイドすげぇ!

 あ、ちなみに鞄は、一個ずつ持ってあげましたよ?紳士ですから。



 翌日、ルッシュさんに引き継ぎ作業をする為に、まだ職員がいない広い受付の机に今までの簡単なメモ書きと、資料や価格表や帳簿を移動させた。

「本当に簡単なメモ書きもありますので、取りあえず、簡単に目を通しておいて下さい。俺はパーラーさんに、ある程度の事を教えてきますので」

「わかりました」

 そう言ってイスに座り、束になったメモに目を通している。

 んー本当にキビキビと動くなー。俺が適当な事をしたら怒られそうだ。

「さてパーラーさん、取りあえずコーヒーの淹れ方はわかります?」

「はい。クラヴァッテ様に、事前に勉強させていただく機会を頂きましたので、問題はないと思います」

「そうですか、では、この器具で入れた事は?」

 俺は、トルコ式コーヒーの柄杓に近い形の物を見せる。

「あの、お湯を上から注ぐのではないのですか?」

「あーそっちでしたか。当時は布を何回も使い回すと不衛生になると思って、そのまま煮出す方法にしてたんですよ。この島でも、それが一般的ですし、そちらも覚えてもらっていいですか?」

「わかりました」

 俺は、広い受付の角に用意してもらった火鉢で炭に火を起こし、トルコ式コーヒーを淹れはじめる。

「こんな感じで、もう飲めますので。でも牛の乳が無いので、豆乳で代用してますが、今は無いのでこのまま飲みましょう」

「ルッシュさん、コーヒーを作ってしまったので、取りあえず速すぎる休憩でも軽く挟みましょう」

 パーラーさんが、トレイにカップを三つ乗せて俺の後を付いて来て、テーブルの上に綺麗な仕草で、音もなくカップを置いていく。

 メイドすげぇ!

「あ、お茶請けはチョコレートで良いですかね?」

 返事を待たずに、応接室に有ったチョコを持って来て、真ん中に置く。

「で、ルッシュさん、どうでした?」

「そうですね、カーム様は本当は商家の家系かなにかですか? と聞きたくなりますね。簡単なメモと言いましたが、大きな取引な物は当たり前として、それでも本当に細かい物を全部まとめただけだったんですね……。こちらの帳簿と同じ時期の数字を照らし合わせましたが、あっていますし、収入と出費が左右に分かれてて物凄く見やすいですね。しかも三十日区切りになっていて、三十日毎の売り上げがとてもわかりやすいです。徴収時期から季節が一巡するまでの売り上げが、本当にわかりやすくなっています。なので最初に聞かせていただきました。あと、見た事のない模様とか三角が気になります」

 簿記なんか、少し齧っただけだし、それっぽく書いてただけなんだけどな。しかも見た事のない記号って多分『@』だと思う、あれって一つ単価の値段って意味だしな。三十日毎の売り上げが前回より上がってれば上向きの三角だし、下がってればした向きの三角を付けてる。さすがにパーセントの増減はないけどね。

「んー。様って言うの止めませんかね? 嫌いなんですよね。様って言うのを止めたら教えますよ? パーラーさんも様だけは止めて下さいね」

「えーっと。魔王になった方なのに、様を付けないのは抵抗があるのですが……」

「私はクラヴァッテ様のお屋敷で働いていましたので、様付けになれているのですが……」

「んー同僚とか知り合いを呼ぶのに、さん付けじゃなかったんですか?」

 そういうと、二人は困った顔をしている、そこに村長が通りかかったのが、開いている窓から見えたので、呼んでみた。

「そんちょーちょっと良いですかー?」

 呼んだら、小走りでこっちにやってきて、

「何ですかカームさん」

「ね?」

 少し笑顔で言ってみた。

「ん? どの様なご用件で?」

「いやー、昨日来て頂いた二人がですね、俺の事を様付けするんですよ。だから周りの俺への対応をですね? 申し訳ないです。本当に呼んだだけなんです」

 一応謝罪はしておく。

「あーそういう事ですか。別に構いませんよ? 自然にさん付けで呼んでたでしょう? 本当に様つけを嫌うんですよこの人、一応偉いのに」

「まぁ、こんな感じで気軽にお願いしますよ」

 二人を見ると、更に困ったような顔をしてる。

「まぁ、直になれると思いますので頑張って下さい」

「努力します」

「わかりました」

 うん、取りあえず馴染む事から始めてくれればいいかな。

免除とか7割とかすげぇ適当です。

わかりやすい悪役が必要でしたので、多少無理をさせています。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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