第137話 魔族側の大陸に行った時の事 後編3
後編の3です。後編の1・2があるので先にそちらを読んでください。
そして三話を試験的に同時刻投稿しました。上手くいってればいいんですが。
二日後、おれは滞在中に色々な所を探索し、昼頃に船に戻った。
「熊っぽい男が、カームさんの事探してましたよ」
そう言われ、オルソさんの所に向かう。
「おう、コレでいいか?」
そこに用意されていたのは、出荷している品目にない、植物の種と苗。指定した香辛料の袋があった。
「はい。種や苗も、品目にない物なので、文句はないです」
「それとこれだ」
そういって、俺に紙を渡してきた。それは釘の見積で、定価より少し安い値段が書いてあり、オルソさんがドヤ顔をしている。
「前金で半分出せば、直ぐ仕事に取りかかるってよ」
「わかりました。ギルドで降ろしてきますね」
「あいよ」
多分俺に渡した紙は、交渉した値段より高く書いてあり、実際はもう少し安いと思うが、口利き料で、オルソさん達の関係がウインウインならいいさ。
まぁ、俺も少し安かったから、得はしてるけどな。
「あー、銀行って、どの辺ですかね? こっちでも作らないといけないので」
「あ? 港から門のメイン通りのでかい十字路の角にあっただろ」
「あー、アレでしたか。お金を持ってきたら作ってきますね」
□
あの後前金を渡し、銀行に行き、色々手続きを済ませ、アクアマリン商会名義で、口座を作り、昼頃まで適当にブラブラしてたら、転移場所を確保するのを忘れ、オルソさんの倉庫や、孤児院や、酒場を借りる訳にもいかず、家を借りるのにも、家賃が面倒だ。
だから。門を出て防壁沿いに歩き、曲がった所で妥協して、毎回通行料を払うことにした。
ゲームとかでも、町の前に出て、入るシリーズが多かったし、妥協しよう。
「すみません。外に出たいんですけど」
「あぁ? 勝手に出ていいぞ」
「いえ、直ぐに戻ってくるんで、書類とか通行所とかですね?」
「あぁ、船で入港したのか」
「えぇ、ですので、魔法処理された書類とかをですね……。あ、散歩で外に出ます」
不審者以外の、何者でもないな。最悪取り調べだぞ。
「散歩程度なら、通行料は取らないぞ? 今ここで書類を作って行け」
「あ、はい」
その後は、エジリンと同じように名前を聞かれ、特徴を書いているみたいだ。
「これがお前の書類だ、無くすなよ」
「わかりました」
そして俺は門の外に出て、取り合えず右手側に回り込み、角を曲がった所を良く記憶し、今度は左手側を見てみる事にする。
「防壁修理はしてないのか。確かに港があるから、エジリンの半分の防壁の量で済むけど、潮風での風化とかすごいんじゃないのか?」
そう思い、爪でカリカリと削ってみるが、白く後が付いて、爪の方が削れている事が判った。
「固焼きレンガ? それとも石?」
そう思って、上の方を見が、少し削れてる様に見えるから、雨による風化はあるみたいだ。作業中の人をびっくりさせないようにしないとな。
最悪、事故が起きて、合体する事になる。まぁ、戻るか。どこまでも草原が続いているだけだし。
◇
翌日になり、スラムのトローさん達と、孤児院のセルピさんを待っていたら、中央通りの方から、ウネウネと、こちらに向かって来る人影が見えたので、船から下り、出迎える事にする。
「おはようございます、カームさん」
「おはようございます」
セルピさんが挨拶をしてきて、後ろに隠れるようにしていた子が出てきて、小さな声で挨拶をしてきた。
「お、おはようございます、イセリアといいます」
イセリアと名乗った、茶色い髪の可愛い女の子はワーキャットで、左足を引きずるように歩いていたし、よく見ると左手の小指と薬指が無く、袖から見えている手の甲は、火傷のような跡が付いていた。
それと、顔も半分以上を髪で隠しており、潮風で髪が揺れたら、火傷の様な跡が見えた。多分ズボンだから、足にも火傷の跡があるんだろう。
荷物も、小さな布袋一つに収まるだけで、本当にカツカツな経営なんだと思われる。
「おはよう、イセリアちゃん」
俺は気にしないそぶりで、笑顔で挨拶をして、少しだけ疑問に思った事をセルピさんに聞いた。
「孤児院の卒業は、何歳でしょうか?」
「八歳です……。学校には通わせてあげられませんが、基礎的な事は教えている積りですので、最低限の読み書きは出来ると思います」
「そうですか。じゃぁ、イセリアさんですね。改めてよろしくお願いします」
ふむ。子供達より年上か。
「あ……、はい」
怪我のせいか、少し性格が弱気だな。欠損部位の再生とか試した事無いし、下手に弄るのは止めた方が良いな。アドレアさんに、根気良くカウンセリングしてもらおう。
仕事は、コーヒーの実を、剥いてもらう作業とか、サトウキビの汁を煮詰めるに作業なるかな。
「一つだけ聞きにくい事を、聞いてもいいですか?」
「え? あ、はい」
「その左手で物を摘む事はできますか?」
「はい、摘まむ事だけなら……」
「なら平気です。ようこそ、アクアマリンへ。まだ未完成な島ですが、貴女を歓迎致します」
笑顔で手を取り、船の中まで案内する。
船から下り、セルピさんに話しかける。
「なんであの時に、あんなに必死だったかわかりました」
「小さい頃の火傷なのですが、焼け爛れた状態で、孤児院の前に置かれていました。手紙も、親の持ち物も、名前すら無く、衰弱しきった状態で見つかりました。ドアがノックされたので、多少の良心はあったのかと思われます」
「そうでしたか」
「左手は、もうどうしようもない状態で、指は切り落とすしかないと言われ、お医者様の判断に任せました」
「そうでしたか」
「もし左手で、物が摘まめなかった場合は、どうするつもりだったのですか?」
「もちろん、出来る仕事を与えますよ」
安心させる為に笑顔で言う。
「そうですか……。あんな状態ですからね、どこも門前払いで、彼女はどうやって生きていくか悩んでいました。孤児院も私達姉妹で回すのがやっとで、これ以上職員を増やす訳にも行かず……。なんだかんだ言って我が身が可愛いくて、孤児院から無理矢理追い出した駄目な母親です。母親失格ですよね」
「……心中お察しします」
「あのような子は、娼婦になれるのでしょうか? 男性の目から見てどう思いますか?」
イセリアさんが、島に行かなかった場合の、生きる為のわずかな可能性を、俺に聞いているのだろうか?
「わかりません。ですが、地は可愛いと思いますよ。まぁ、俺の好みの問題ですけどね。それに、少なからずそういうのが好きな男性もいると思いますし、需要はあると思いますの――。申し訳ありません。失言でした」
相変わらずの優しい笑顔だが、髪の毛の蛇が威嚇をしていたので、これ以上は止めておいた。
「おーカーム。置いてかれてなくて助かったぜ」
助け船が来た。この気まずい空気を粉砕してくれ!ってか多いな、酒場で殴って黙らせた奴より増えてるぞ?
「げ、母さん!」
「あら、トロー君。君もアクアマリンへ?」
「え、えぇ、まぁ……」
おいおいおい、トローもコーンフラワー孤児院出身かよ。
「トロー君が、色々動いてくれたおかげで、孤児院は安全だったわ。ありがとう」
トローさんが、あの辺のボスやってたのには、こんな理由があったのか。酒場に金払ってねぇけど。
「いえ、前に散々迷惑かけたので……」
タジタジじゃねぇか。何やって、何されたんだよ。ってかセルピさん歳いくつだよ。
「このカームさんに負けて、色々あって職を与えてくれるって言うんで、向こうで真面目に働こうと。こっちじゃ無理なんで。あ、周りの奴等には、きつく言ってあるんで、家は平気ですよ」
「ふふ、あのヤンチャだったトロー君が真面目にねぇ。母さん嬉しいわ」
「いや、まぁ……」
子供の頃のトラウマなのだろうか?それとも本気で怖いのか?
「あ、カームさんそろそろ船が出るんじゃねぇっすか?」
おいおい、今まで俺の事呼び捨てだっただろ。そんなに怖いの?
「あ、イセリアちゃんも中にいるから、喧嘩しちゃ駄目よ?」
「はい! 行きましょうカームさん」
どんだけ、一緒にいたくないんだよ。
甲板に上がったら、部屋に案内したイセリアさんが、海を見ていたが、トローさんを見つけたのか、笑顔で手を振ってから、ゆっくりとトローに近づきながら、
「お兄ちゃんも島に行くんだ。私すごく嬉しいな。子供の時みたいに、一緒に寝て欲しいな」
無邪気なのか、狙ってるのかわからないな。トローさんの後ろじゃ、気絶させた奴らが、「ヒューヒュー」とか言ってる。トローさんも顔真っ赤にしてるし。
もうお前等、一緒の家に住んじまえよ。そうすれば島の人口も一人増えるし、良い事だらけじゃねぇかよ。
感想で次の138話が抜けてるとご指摘がありました。
25話区切りでいつもなんかやってるので、1話ずつズラすとアレなので、このまま欠番か、何か前後の話に影響がない短いのを掲載します。
その時はブックマークがずれるかもしれませんがお許しください。




