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第133話 魔族側の大陸に行った時の事 前編2

連続投稿の2になっております。

 言われた場所に着くが、面構えは立派だな、規模的にもの凄く大きく、島にある、多目的家屋くらいか?

 ドアを開けると、煙草の煙が充満していて、奥の方では殴り合いの喧嘩、そして一瞬静かになり、全員が俺の方を見て、数名が床に唾を吐き捨てた。

 おいおい、西部劇とかで見る酒場よりひでぇなぁ。

 とりあえず気にしないで、開いてるカウンター席に座り、調子に乗って「麦酒、それと直ぐに食える物を」と言ってみた。

 そしたら、白毛のワーキャットのウエイトレスさんに、「新入りは、ミルクでも飲んでりゃいいんだよ!」とか言われた。新入りへの通過儀礼だろうか?

「貴女のその小さな胸は、個人的に大変魅力的なのですが、ベッドの上で愛を囁きながら、その小さな胸からミルクを直接いただくことは出来ないのですよ。私には妻子がいますからね。残念ですが、そういう誘いは他の方にして下さい。あ、今ここでカップに出してもらえるなら飲みますよ」

 調子に乗ったついでに、ウイットだかエスプリの利いた挑発で返してみたかったが、まぁただのセクハラになった。あんなの簡単にスラスラ出てくる方がすげぇわ。

 そしたら、木のトレイを無言でフリスビーの様に思い切り投げてきた。怒ったり、騒いでから投げてくれば、多少手で顔を守る事が出来たかもしれないが、無言は予想外だった。

 投げられたトレイは胸板に当たり、もの凄く痛かったが、目の前に乱暴に麦酒が置かれたので、オーダーは通ったみたいだ。

「あーいてぇ……」

 胸の辺りをさすりながら、トレイをその辺に置いて麦酒を飲むが、後ろの喧噪が全く聞こえない。周りが見渡せる、角の方のテーブル席にすれば良かったか?

「おい!雑種」

 俺の事か?確かに両親は、種族が違う者同士が愛し合って俺を作ったけどさ、雑種はないんじゃない?まぁ全然頭に来ないけどね。

「俺の事かい?」

 麦酒を片手に振り向き、相手を見るが、左目が潰れてるワーウルフの男が絡んできた。ここは笑われて、穏便に行く流れだろ。下品なセクハラかましたんだから。

「見ねぇ顔だけどよ、なにいきなり入ってきて調子こいてんだよ。新入りなら新入りらしく、ヘコヘコ俺達に頭下げて、酒でも奢ってりゃいいんだよ」

 後ろにいる連中は、ヘラヘラとこちらの様子を見ながら酒を飲んでいる、食べ物や飲み物を持って、角に逃げてないのを見ると、そこまでひどい暴れ方をするような奴ではないみたいだ。

「おいおい、新入りがビビって何も言えなくなってるぜー」

「可哀相だから、数発殴って財布だけにしといてやれよー」

 酔っぱらいが何か言っている。まぁ、言われた通り酒でも奢ってやりますかね。

 俺は、なみなみとカップに入っていた麦酒を、相手の顔面にぶっかけ、「あ、申し訳ありません。初めてで気が回りませんでしたよ。その麦酒は奢りです」と言った。

 酒場は、水を打った様に静かになり、目の前のワーウルフは、ビチャビチャと、床に麦酒を滴らせている。

「てめぇ!」

 我に返ったのか、右手で殴りかかってくるが、相手の右側に軽く体を反らし、右手で手首をつかんでそのまま引っ張り、左手で髪を掴んでカウンターに顔を叩き付けたあとに、アバラの辺りに膝蹴りをした。

 そのあとに、手首をさらにひねりながら。膝の横に蹴りを入れて床に転がし、手首を持ったまま腹の辺りを踏みつける。

「この辺りを仕切ってる、ボスと話しがしたいいんだけど、どこに行けば会える? それとも、ここでもう少し騒ぎを起こせば、向こうからやってきますかね?」

 俺は、持っていた手首をさらに捻りながら立ち上がり、足下で短い悲鳴が聞こえたので、手首を離して近くのテーブルまで移動する。

 さて、ノープランだけど……これからどうしよう……。あまり危害を加えても、問題ありそうだし、スラム内の事件って自警団とか兵士とか動くのか?

「てめぇ!雑種の癖しやがって!」

 だから雑種の何が悪いんだよ。純血の方が偉いのか?

 ヤギっぽい男が、叫びながら勢い良く走って来たので、テーブルを挟むように移動し、テーブルの料理を持ち上げてから蹴り倒し、ヤギっぽい男がテーブルに躓き盛大に転んだので、そのまま頭を蹴り飛ばし、気絶させた。

 テーブルにあった唐揚げをフォークで食べながら、「思い切り転んじゃったけど大丈夫?」と、軽く挑発を続ける。

 周りが殺気立ち、「囲め囲め!」とか、「ボス呼んでこい!」とか「武器持ってる奴前にいけ」とか言っている。ボスここにいねぇのかよ。

 ナイフやダガーのような、比較的小さめの武器を隠し持っていたのか、じわじわと壁際に追いやられる。

「いやいや、武器は不味いでしょう武器は」

 フォークに唐揚げを刺したまま、両手を前に出して振り、慌てた感じで言いながら、足の運びや、誰が何を持ってるかを確認する。

「あ、いや。その、ごめんなさい」

「遅いんだよ!」

 誰かが叫ぶと、そのまま一気に襲いかかってきたので、フォークに刺さっていた唐揚げを、細身で動きが素早かったワーキャットの顔面に向かって、手首だけ振ってから揚げを投げつけ、怯ませてからつま先で顎先を蹴り上げ、意識を刈り取る。

 そのまま近くに居た奴に、フォークが刺さらないように顔面に投げつけ、唐揚げの乗っていた皿で、パイ投げのようにして、面を使って殴りつけ、そのまま【砂】を辺りに振り撒き、椅子でどんどん殴りつけていく。

 三脚目の椅子で十四人目を殴り、全員の戦意を刈り取り、一番最初に唐揚げを当てた奴の口に、無理矢理潰れていた唐揚げを放り込む。

 皿で殴りつけて、潰れていた唐揚げも、意識のない奴等の口にどんどん放り込む。

「このあと、料理はスタッフが美味しくいただきました!」

 倒れてる連中にそう言い放ち、俺はカウンターに戻り水を頼むと、俺にトレイを投げつけたウエイトレスが、直ぐに水を持ってきて、チラチラと熱い視線を送ってくる。

 いや……悪いけど、本当にさっきのは冗談なんだよ、本気にしないで。けど、猿っぽい見た目のマスターも動じないのがすげぇな。黙々と料理作ってるよ。

 出てきたのは唐揚げだった。うん、油がまだ暖かったんだね。

 ちなみに攻撃してこなかった奴等は返しました。

「マスター、椅子って一脚いくら?」

「迷惑料込みで一脚銀貨二枚だな。あんたの料理と酒込みで銀貨四枚だ」

「……すみませんでした」

 言われた通りに、カウンターに銀貨を置く。

「そこは、『こいつらにツケておいてくれ』じゃないのか?」

「そこまで迷惑はかけられませんよ」

 フォークで唐揚げをつつきながら、ボスを呼びに行ったであろう奴等が戻ってくるのを待っていたら。

「さ、酒かミルクは頼まないのかい?」

 と、ワーキャットの女性は、かなりしおらしくなっており、顔を赤くしながら聞いてくる。

 あんた、さっき俺にトレイ投げつけたのに、何いってんだ?

「あ、あんたが良ければ、このまま二階の部屋に行っても、い、良いぜ? あたしは強い男が好きなんだ」

「あ、本当に申し訳ありませんが、アレは挑発されたお返しなので、本気にしないで下さい」

「ま、まぁいいさ。あんたが良ければ、私はいつでも待ってるからさ」

「はぁ……。また来ても、絶対にそういう事はしませんので。他の男性でも見つけて下さい」

 表情が一気に落ち込んでしまった。まぁ、期待させるより、最初から確実に拒否したほうが、相手のためでもあるからな。


 しばらくして、「あ、三脚目もガタが来てるな。悪い、銀貨六枚だ」とか言われて、銀貨がないので、大銀貨を払ってお釣りをもらった。俺が全て悪いけど、泣けるぜ……。

「おい、ここか!」

 そんな声と共にドアが勢いよく開き、振り向くと、片方の角が無いミノタウロスをかなり人間に近づけたような、二メートルくらいの身長の男がやってきた。

「はい、雑種が粋がってまして」

「……あいつだな」

 何アレ、上半身ムッキムキじゃないか!あんなの鉄パイプで殴っても、軽く血を流しながら、にらみ返されそう。最前線基地にいた筋肉魔王より筋肉多いんじゃないのか!?戦闘力は別として。

 まぁ、イチイさんの方が三倍くらい怖いけど。

 目があった瞬間に、襲いかかってこないだけマシだな。なんか口より手の方が早いって一件目のマスターが言ってたし。

「こいつ等の事は、何とも思っちゃいねぇけどよ。自分のシマで暴れられるのはいい気分じゃねぇわな」

 俺は、本当の島だけどね。口には出さないけど。

「まぁ、俺もそう思います。あんたと話しがしたくて少しだけ暴れましたが、お許しを」

 俺はフォークを持ったまま立ち上がり、直ぐに動けるようにしておく

「俺を呼ぶのに騒ぎを起こすとか、ずいぶん威勢が良いじゃねぇか」

「数日嗅ぎ回って、宿屋で襲われたくないので」

 ニコニコと、笑顔で対応したのが気に入らなかったのか、俺の言葉を聞いた瞬間に、一本しか無い角を俺に向けながら、テーブルや椅子をなぎ倒しながら勢いよく走ってきた。

 フォークを投げたくらいじゃ無理と判断し、俺は目を瞑りながら【フラッシュバン】を、三メートル先で発動させながら横に飛び、一本角はそのままカウンターにつっこんで、カウンターの中で暴れ回っている。

 目が見えないからって、暴れすぎだろ。ってかマスターとウエイトレスは無事か?あぁ、俺が立ち上がった時に、奥に逃げ込んだのか、なら安心だ。

 飲んでいた水の残りを、唐揚げを揚げていた油の中にぶっかけ、盛大に油を跳ねさせる。

 跳ねた油が辺りに飛び散り、カウンター内で暴れてた一本角に盛大に降りかかり、転げ回っている。可哀相なので【水球】を発動して、ずぶ濡れにさせてから。ハンドボールくらいの【石】を空中に発動させ、自然落下で頭に当てて気絶させた。

 そして、手に持っていたカップを、振り向き様に一本角を呼びに言った奴に投げつけ、良い音が店内に鳴り響き、とりあえず全員無力化に成功した。

 俺はため息をつきながら、「こいつ等、修理代持ってるかな」と呟き、倒れてない椅子に腰掛けて、マスターが来るのを待った。


 静かになったから、様子を見に来たのか、マスターが奥の扉から少しだけ顔を出した。

「あ、すみません。店内をめちゃくちゃにしてしまいました。ほぼこいつが」

「あぁ、トローが来た時点で覚悟はしてたよ」

 一本角の名前か……。

「店の修理代とか、こいつ等にお願いします。カウンターの中で暴れたのそいつなんで。あ、テーブルや椅子をなぎ倒しながら襲ってきたから、入り口からココまでのもこいつですよ?」

「まぁ、それは追々話すけど、こいつから取れる気がしないんだよなー」

何かを言いたそうに、マスターがこちらを見ている。

「こいつが、口よりも手が早いのが悪いですよ。表に出ろとか言われたなら、それに応じましたが」

「そうなんだよなー。こいつすぐに暴れやがって」

 仕方ない、恩でも売っておくか。治安は兎も角、場所も良さそうだし。交渉材料として、商人を通さず酒でも卸してやろう。

「マスター、取引をしようじゃないか」

 両手を軽く広げ、笑顔で話しかける。

「その前に、こいつをカウンターから引きずり出してくれ。また暴れられたらたまったもんじゃない」

「あ、はい」

 少しだけ格好つけたけど、無意味に終わった。とりあえず角をつかんで、引きずりながらカウンター脇の、小さな出入り口から出そうと思ったけど、寝転がったままだと体が折れずに引っかかった。

 裏から羽交い締めにするようにして持ち上げ、何とかカウンターから出したけど、どうしよう。縛る紐とかあるかな?


 紐がないかと聞いたら、梱包用の紐があると言われたので頼んだら、ウエイトレスがもの凄くしなやかな動きで、カウンターの奥に走って紐を持ってきた。狭いカウンター内をあんなに素早く動けるのは種族柄だろうか?ワーキャットって敏捷性高そうだもんなー。

 トローを縛り、角と足首をつなげるようにして、エビ反りの状態で転がす。終始ウエイトレスが協力的だったけど、本当に貴女を愛することは出来ませんよ。

 話し合いを再会しようと、カウンター席に座ったら、隣にウエイトレスが座って擦り寄って来た。本当に勘弁してくれ。しかも尻尾を腕に巻きつけないでくれ。

 トローを倒したからかなり株が上がったんだろうか? 転がして、油に水を入れただけなんだけどな。

「で、何が目的なんだ?」

「手短に言いますね、この店の修理代を全部払うから、壁に広告の張り紙をさせて下さい」

「……どういう意味だ? 対価としてはかなり釣り合わないぞ?」

 本当に、訳がわからないと言うような表情で、俺を見てくる。

「セレナイトから五日ほど船で進んだ場所にある、元無人島に人手が欲しいんです、それの勧誘をするのに、広告を打ったり、声をかける必要があるんですよ」

「あの島は、くそ甘い魔王が開拓してる島だろ? お前は部下か何かか? 魔王は何が目的なんだ?」

 俺は人手の事、なんでスラムなのか、島の人口比率の事も話した。

「つまり、人族が多い、魔族増やしたいから腐って酒飲んでるより働け。って事か」

「えぇ。なので、勝手に募集して連れて行って、ボスに睨まれるのも嫌なので、話し合いに来たんですけど……」

 足下でエビ反りになってるトローを見る。

「コレですし」

「……だいたいわかった。けど俺の店の客が減る。それはどうする?」

「スラムの人口が減少、空いた場所に、下級区より安い場所を求めて素行の良いのが住み着くかもしれないし、噂が広がって、見捨ててた自警団とかが戻ってくるかもしれない。そもそもこいつら金払い良い方でした?」

「全然」

「なら、いなくなっても問題ないですよ。それに、商人を通さないで、酒を卸しても良いと思ってます。ベリル酒は知ってます?」

「一回だけ飲んだな、強い酒だろ?」

「アレは俺の故郷の酒ですが、その島でも作ってます」

「ほう……。続けてくれ」

「住人の入れ替え、美味い酒、強い酒、広い酒場。どう思います?」

「俺のじいさんから聞いたが、スラムになる前は良い酒場だったらしいな。そんなのにあこがれてた」

「素行の悪い奴を、更正させるのには問題ない。働きたい意志のある奴だけに声をかけて下さい」

 更生に関しては、プランBだけどな。

「いいだろう」

 そういって右手を出したので、しっかりと握り返した。


これは17時に投稿され、続きの3が、いつもの時間の18時に投稿されます。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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