第131話 カクテルを飲んでた時の事
今回も遅れました、申し訳りません。
適度に続けてます。
今年は村長に年越祭の指示を任せ、多少早めにベリルに戻って来た。
早めに戻ってきて、雪の降る中のんびりと過ごし、暖炉の前で薪を足したり、薪を足す作業に徹した。
あーマシュマロ焼きたい。まぁ、売ってないし作り方しらないから、かなり前にあきらめたけどな。なんかの粉にくぼみを作って、そこに何か液体を流すのを、テレビで見た記憶があるけど、葛だったっけ?
まぁ、そのかわりに、鶏肉に野菜を詰めた物を、弱火の遠火でじっくりと焼いている、夕方には出来るかな。
ついでにジャガイモも鍋で蒸かしている。アルミホイルと濡らした新聞紙が欲しいね。それとサツマイモ。
ってかさっきから、スズランがお茶を飲みながら、じろじろと鶏肉を見過ぎ、夕食に出るんだから大人しくしてろよ。まったくもー。
バターは確認してるし、マヨネーズも瓶にあった。三時のおやつは自然とふかし芋になる。
リリーが、稽古稽古うるさかったけど、
「えー寒いから嫌だよ」
と、子供みたいな事を言ったら諦めた。まぁ、今度雪上戦でもしてやるか。
「はーい、おやつのお芋ができたよー」
焼きじゃがバターも良いけど、蒸かしたジャガイモバターも良いよね! マヨネーズ派は、リリーだけだった。冒険者になって、マヨネーズが切れた瞬間に、町に帰るとか言わないよな? まぁ困るのはミエルとメンバーだからかまわないけど。
ちなみに今年も、ベリルの年越祭は荒れに荒れた。
俺が、あまり使われてなかったシナモンとレモンを島から持ち込み、香りの付いてない蒸留酒を使い、ホットカクテルとして出したら、もう皆が飲みまくってぐでんぐでん。
スズランも、珍しくレモンが入ってるのに飲んでいた。
そして、酒があまり飲めないミエルも、いったん席を外したかと思ったら、家から蜂蜜を持ってきて、砂糖の代わりに入れて飲んでいた。
蒸留酒入りホット蜂蜜レモンか。確かに響き的には美味そうだ。シナモン入ってたけど。
ラッテも、形の良いシナモンを、マドラー代わりにして、くるくる回して、両手でフーフーしながら飲んでいる姿は、もの凄くかわいかった。これが木のカップじゃなくて、耐熱グラスだったら、似合いすぎだと思う。
スズランは、読書でもしながら飲めば、凛としててかっこいいと思うけど、肉を食べながらゴクゴク飲んでいた。レモンだから口の中がサッパリするのかな? 砂糖を入れてる様子もなかったし。
まぁ、三馬鹿はいつも通りで、ミールもいつも通りだった。ペルナ君、親御さんの愚行を止めて! そのままだと絶対に、君ががっかりする結果になるから。
そう言おうと思って、子供達の席の方を見たら、全員酒に飲まれてた。おまえらもか。
本当に明日はグロッキーだな。しかも村単位で!
「おいカーム、よくもこんな飲みやすい酒を考えてくれたな! おかげで酒が止まらねぇぜ」
いきなりヴルストが、俺の持っていたカップに、持っていたカップをぶつけながら、言ってきた。何回目の乾杯だよ。
「知らん。良い大人なんだから考えて飲め。しかも、前に大人達がレモン搾って入れただろ」
「アレは絞り汁で酸っぱすぎたんだよ、切って沈めてるだけでも十分だ、しかもほんのり甘いしな」
「本当だよー、最近はカームが帰ってくる度に、箱で砂糖と塩を儲け無しの、手間賃程度で店に売ってるから、砂糖と塩だけ安いし」
「うんうん、砂糖が安いから、お菓子も作りやすいってトリャープカとレーィカも言ってたよ」
「まぁ、空荷で買い付けに行くより、売れる物を積んでから買い付けに行った方が、商人的には絶対良いからね。だから最近島の物をもってきてるんだよ。それに島内の需要は満たしてるから、問題ない」
「半分商人みたいな事もしてんなー」
「どうしてもそう言う考えをしないと、駄目な状況だからね。本当投げ出したい。まぁ、村長決めて、今任せられる仕事の半分を与えて、日々教育中だから、そのうち俺しか出来ない事以外は、出来るようになるよ」
「その、カームにしかできない仕事以外を任せると、どのくらい仕事が減るんだい?」
「……半分」
「本当に村長しながら、色々やってたんだ、カームってすごいねー」
「実は俺って、凄かったんだよ」
「いや、子供の頃から知ってるし」
「あ、そうだっけ? じゃぁ凄いんです」
おれはグロッグを軽く飲みながら、ため息をつき、周りを見回す。
「本当に大きくなったなぁ……村。人口も増えたし、集会所も子供の時より広い。なんか俺が最初の原因だと思うと、感慨深いな……」
目を細め、カップに残ってた酒を飲み干すと、背中を思い切りヴルストに叩かれた。
「まだ若いのに何を湿っぽいこと言ってるんだよ! 良いから飲めよ」
「そうそう、疲れて早めに戻ってきたんだから、飲んで忘れようよ」
そう言って開いたカップにレモンとシナモンを足して、ラムとお湯を入れてくる。
「そうだよ、甘い物は疲れがとれるよ。多めに砂糖入れてあげるね」
皆の気遣いは嬉しいが、スプーン山盛りの砂糖を、更に投下するのは止めてくれ。こう言うのは、ほんのり甘い方がいいんだよ。
あー、今度壷に砂糖と果物と酒入れて、果実酒作るか。
いや、駄目だ。これ以上考えるのは止めて、皆と酒を飲もう。せっかくの年越祭だ。皆に気を使わせるのは止めよう。
そして、目の前で見た事のない、大きめの胸をした竜族の女性に投げ飛ばされてる男の事を、笑いながら楽しく酒を皆で飲んだ。大丈夫、指さして笑ってないから。
◇
翌日、俺は粥的な物を作ろうと思ったけど、面倒なので、残っていたパンで、ミルクパン粥を作り、皆を起こした。
嫁二人はそれほどでも無かったけど、子供達が頭を抱えていた。
飲んでも平気な量を見極めろ、それが二日酔いにならない近道だ。
「うー、頭痛いー」
「ごめんなさい、もうお酒飲みません、助けて下さい、許して下さい」
あ、その気持ちわかるわ、俺も学生の頃や、新人の頃によく言ってたわ。まぁ、とりあえず朝食だな。
「たぶんこうなると予想してたから、軽めに作ったぞー。食べて寝てろー。年越祭で良かったな。収穫祭なら、今日は学校だぞ」
「うー」
「あー」
「はいはい、少しずつ酒に慣れていこうな」
「うーあー」
「お水ー」
二日酔いの薬って、この世界にあるのか? ポーション飲ませとけば治るか? 一応戸棚の奥に予備で数本あったよな。
迎え酒って、基本意味がないらしいから、駄目だし……
「なーラッテ、ポーションって二日酔いに利くの? 俺もスズランも風邪らしい風邪引いた事ないし、二日酔いもないんだわ。一応前に商人から効果は聞いたけどさ、二日酔いってどうなの?」
「んー。気休め程度? 解毒用が利くって噂もあるけど」
「なら子供達には、勉強って事で、夕方くらいまで苦しんでもらうか」
二日酔いに利くポーションは、ないみたいだ。
「んー、気休め程度だからねー。まぁこれも経験って事で」
「うーお水ー」
自分の魔法で出せない程度には、頭が痛いって事か。仕方ないな。
そう思いつつ、冷水じゃ胃に悪そうなので、ぬるい白湯を二人分出してやり、カップを目の前に置いてやった。
「昼はどうする?」
「いらない」
「朝と同じで良い」
「わかった、寝てろ」
「うー」「あー」
ゾンビか亡者かわからないような声を出し、子供達は部屋に戻っていった。
「二日酔いで、苦しんでる奴って、もう二度と飲まないって言うけど、本当に好きな奴って、二日後にはまた飲んで、また二日酔いになったら、二度と飲まないって言うんだよな。不思議だよな」
「お父さんもよく言ってた。けど飲んでた」
「お店の子もよく言ってたねー。まー、また飲んでたけど」
「まぁ、多分また飲むんだろうな、酒嫌いのミエルがあんなになるまで、飲んでたんだし」
「甘くて飲みやすかったからねー。砂糖を多くして、お湯の量間違えて少なくて、濃くても飲めちゃうし」
「だなー」
「まー、村中で苦しんでる人が多いと思うよー、ガバガバ飲んでたし。多分ミールちゃんも駄目だね。ってかカーム君のせいだね」
「否定できない。まぁ、シンケン一家は全滅だろうな、ペルナ君も飲んでたし」
あー、島に戻るのが怖い。二日か三日遅れて帰るか。
◇
二日後、リリーが稽古稽古うるさいので、雪がちらついている中、湯船にお湯を張ってから付き合ってやることにした。
「本当にやりたくないんだけどなー。ほら、雪が足首まであるんだよ? 今からでも止めない?」
雪の湿り具合を確認するように、足下の雪を踏み、稽古を止める言い訳の様に、言ってみる。
「お父さんは、いつも真面目にやってくれないし、理由を付けて断ってくるから数で押すしかないの。動いてれば寒くなくなるわ」
「はいはい、まぁ一回言っちゃった手前、やるけどね。雪上戦だから足下は気を付けてね、それと、寒さを甘く見てると、絶対に後悔するよ」
「はいはい、動く動く!」
ちなみにミエルは、家の中でラッテと一緒に、暖炉に薪を入れる作業をしながら、鶏肉の多いシチューの世話をしている。
いやー、暖炉の前は落ち着くからね。仕方ないね! だって薪ストーブとか変に魅力的だったし!
「ミエルがいないから、合図はこの木の棒が地面に付いたらね」
そう言って、思い切り上に棒を投げ、スコップを構える。
相変わらずリリーは、始まった瞬間に突っ込んでくるが、この積雪程度では関係無いのか、いつもとほぼ変わらない速度で突っ込んでくる。多少は学んでいるらしいが、どうしても初撃で突撃を俺に当てたいらしいのか、多少意地になっている気もあるな。
まぁ、ある物を最大限に利用するのが俺だ、右足を思い切り上げ、サラサラした雪を蹴り上げ、目潰しに利用する。
多少リリーが怯んだが、それで十分だ。少し大きめの【水球】を、雪を蹴り上げるとほぼ同時に作り出し、リリーに向かって放つ。
リリーは直撃はしなかったが、体の半分以上はずぶ濡れになった。
まぁ、全身濡らしたかったが、半分以上濡れたなら良い。その後は、槍をスコップで弾きながら、追い風をイメージし、特に攻撃力の無い風を当て続け、目に見えて動きが鈍くなってきたので、追い打ちを掛けるように、ソフトボールくらいの【水球】を浮かせ、バシャバシャと当て続ける。
さらに風を強くし、途中からスコップを捨て、右手にバールを持ち、槍を避けたりはじいたりし、こちらからの攻撃は、足下の雪を蹴り上げるだけにする。
しばらくすると、リリーの顔色が目に見えて悪くなり始め、ガチガチと歯を鳴らしながら、俺に槍を振るっている。
そろそろ無力化できるな。多分手足の指先の感覚は、無くなっているだろう。そう思いつつ、声をかける。
「寒さを甘く見てると後悔するって言ったよな? 寒い中ずぶ濡れになって、風で体温を奪われた気分はどうだ? 思い切り動いても、暖かくなる事も無い状況だってあるんだ。対策は濡れない事と汗をかかない事。濡れたら、乾いた服にすぐに着替えられるように、入念な準備を忘れ無い事だ。よし、んじゃ湯船にお湯を張ってあるから入っておいで」
「……はい」
リリーは鼻水をすすりながら、家の中に入っていった。
これで、寒さの恐ろしさを身を似って知ってくれればいいさ。
「はーい、稽古終わったよー」
「カーム君、なんで今日に限ってあんなにずぶ濡れにしちゃったの? 可哀相だよ」
「んー。寒さを甘く見過ぎてたから?」
「そうだね。確かに洒落にならないし、本当に可哀相だから、もう二度とこんな事はしないでね?」
もの凄い笑顔で威圧される様に言われ、「……はい」としか言えなかった。ラッテは時々もの凄い威圧感あるんだよな。アレは逆らっちゃいけない笑顔なのは確かだね。
□
「お姉ちゃん、稽古早く終わってすぐお風呂入ったけど、汗かいたの?」
ミエルはベッドに腰かけ、足をプラプラさせ聞いている。
「逆よ、ビショビショにさせられたわ」
「うへ……寒そう」
「今回も攻撃当てられないで負けたわ。水球を当てられて濡らされたら、風を出してただけ。あとはいつも通り、バールで槍をいなされたわ」
「なんで水球と風だけだったの?」
「『寒さを甘く見てると、絶対に後悔するよ』って言われて、その通りにさせられたわ。寒い時に濡れて風に当たると、物凄く冷たくて、いつも以上に動きが鈍くなるし、手足の感覚も無くなって、槍を落としそうになっちゃったわ」
「つまり、山奥の雪が凄くて寒い時は気を付けろって、言いたかったんじゃないのかな?」
「そうなのかな? けど、そう言ってたからそうなのかしら?」
「パパって、なんだかんだ言って色々教えてくれるよね」
「そうなのよね……反対してるのになんでかしら?」
「なんでだろうね、僕にもわからないや」
「書籍化に至るまで前編」「まおむじキャラクターラフ1」を活動報告に上げました。
内容は活動報告の方で確認できますので、気になる方は目をお通し下さい。
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