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第130話 結局あきらめた時の事

とある理由で遅れました。

適度に続けてます。

 強制的に村長(いけにえ)になってもらった人族は、とりあえずその辺にいるような名前だったが、俺にとっては村長なので、別に気にしないでいた。

 村長は好青年で、見た目が三十に届かない爽やかな人物だったので、個人的に好感が持てた。

 とりあえず、多目的家屋で今後の島の事を話しながら、

「大丈夫ですよ、ほとんど名目上だけですから。何かあった場合、皆が協力してくれますし」

「何かあった場合の、最終決定権は村長ですが、決める前に大体決まってますから、気楽に構えてて下さい」

「信頼なんか、そのうち付いてきますよ!」

 と、軽く説明(せんのう)して、納得させた。

 まずは、島民の比率が圧倒的に人族が多いので、魔族の移民者を受け入れる為の下準備と、島の名産品の事を話し、観光事業は気長にやっていく事を話し、まずは北側のカカオが生っている地域に家を建てる事を、代表で言ってもらう事にした。

「では、俺もサポートしますので、皆の仕事が終わって、戻って来て、夕食の時にでも話しましょう」

「は、はい、やってみます」

「まぁ、気楽にお願いしますよ。俺の故郷の村長なんか、何やってるかわかりませんでしたし」

「それでいいんですか!?」

「たまに、畑広げたり、町まで広告出しに行ってましたよ。むしろそれくらいしか知りません」

「はぁ……そうですか」

「まぁ、相談聞いたりして、解決するのに誰かの手を借りたり、得意な奴に相談すればいいんですよ」

 正直村長って何してるか知らないし、年間の予算組んだりしたのを誰かがチェックして、ある程度内容見て判子押すだけ? まぁどうにかなるだろ。

 そして俺は野草さんの所に行き、理由を話し生姜を分けてもらうことにした。

「へー、生姜でお酒を作るんですか、どんな味なんでしょうか?」

 ジンジャービアの代わりに作られたのが、ジンジャエールだからなー、炭酸、辛い?

「生姜の風味と、辛さが癖になる、少し弱い酒ですかね?」

「美味しそうですねー」

「美味しいと思いますよ」

 すべて断言出来ないのが悔しい、飲んだ事無いし。

 ある事は知ってるが、製造方法が、生姜に砂糖入れて発酵させるだけとしか、記憶にないからな。

 潰すのか、摺り下ろすのか、そのままなのか、本当にわからない。まぁ仕込むだけ仕込もう。糖を消費してアルコールになるから、砂糖は少な目で良い気がするし。まずはカップで作ってから樽かな。

 生姜を少し分けてもらい、自宅のテーブルで醸造するか。

 あとグロッキーの元になったカクテルは、ラムに砂糖とレモンとシナモン入れてお湯割りだから、シナモンだけあれば作れるな。

 食料庫にあったか? まぁ聞くだけ聞いてみるか。


 夕食の準備をしているおばちゃん達に聞いてみよう。

「あ、すみません、食料庫にシナモンってあります?」

「シナモン?」

「木の皮なんですけど、香りが独特の奴です」

 香辛料を売ってる露店で、纏めて買って、食糧庫にぶち込んだからな。まぁ、あると思う。

「あーの木の皮。なんで木屑があるのかと思ったわ、使わないから奥の方に放ってあるわよ」

「あ、あるなら良いんです、ありがとうございました」

 よし、これで一つは出来るな。今夜披露するか。


 まずはジンジャービア作りでも始めるか。取りあえず潰したり、擦り下ろしたりして、水を入れるか入れないか。砂糖多めか少な目で、色々試してみる。

「まぁ、こんなもんだろ」

 布で埃やゴミが入らないようにして、次の作業に取りかかろうか。

 そう思いつつ、今度は蒸留所からラムを拝借し、食糧庫の奥から、木の皮が入った袋を見つけ、口に含み、シナモンである事を確認し、小袋にワシャッっと掴んだシナモンを入れて。ついでにレモンも拝借して、作ってみる、レシピ? 適当だよ。

 カップに砂糖をスプーンで一匙、シナモンを適量、ラムを好みで入れて、お湯を注ぎ、スライスレモンを浮かせ完成。

「飲み口最高! 本当に飲みやすいなコレ!」

 家でそんな事をつぶやきつつ、作ってしまったものは飲み干す。夕方前だって? 気にしない気にしない。どうせ酔わないし。



 夕方に、村長が昼間の事を宣言をしてから夕食になるが、俺が新しい酒の飲み方があると言うと、ワラワラと酒好きが集まり、飲み会になる。

「なんかゴチャゴチャはいってるな、なんだこの木」

「甘いな、しかも暖かい。けどこのレモンがさなんかさっぱりする」

「あらー、これ美味しいわねー、そのままより弱いけど」

「これならいくらでも飲めますよ!」

 十人十色の回答があるが、何故か竜族の姐さんが混ざってやがる。なんでいるんだよ。呼んでねぇだろ。



 あれから二日、いい加減発酵してると思い、布を取り、口を付けるが。水を入れてないのは、ただの生姜の砂糖漬けになっており、発泡も発酵もしていない。

 水を入れた物は、ほぼ辛い炭酸抜き生姜ジュースだ。んー何が足りないんだろうか?

 イースト菌があれば一番良いんだけどな。

 まぁ、摺り下ろした物に砂糖と水は確定だな、果汁百パーセントジュースに、イースト菌で酒になるんだったよな。

 生って訳じゃないし、加熱処理? 野菜ジュースとかも一応加熱してあるしな……。煮詰めてから加水?

 まぁ手詰まりなんだし、やってみるか、最悪炭酸抜き生姜ジュースで代用でいいか。

 俺は、生姜を摺り下ろし、砂糖を入れ、少し色が変わったら水を入れ、少し暖めてから、竈からどかし、粗熱を取ってっからカップに移し、布をかぶせ放置。

 まぁ、成功するまで試行錯誤も良いけど、面倒だから、出来なかったら出来ないでジンと生姜ジュースに、ライムとミント入れて、モヒート生姜ジュースで良いか、ビールをジンジャエールで割って作るカクテルもあったし、最悪麦酒に混ぜよう。

「なーヴォルフー。菌の神様って気まぐれだよなー」

「ワフン?」

「まーわかんないよなー」

「ワフン!」

「お前はかわいいなー、村の中の安全を守ってくれてるし。ってか子狼とか見ないけど。お前子供作らないのか?」

 ワシャワシャしながらそんな会話をしてると、開けっ放しのドアから出て行ってしまった。


 ヴォルフが出て行ってから、しばらく島の収入と出費を簡単にまとめつつ、

「んーまだ島に来てる商人は少ないけど、ある程度固定化してきてるし、細かく来られると、かさばるな。まだ品目とか細かく書かないで、合計金額だけですませてるけど、物品の明細とか在庫管理とかした方が良いよなー。一応島の収益は黒字だけど」

 少しだけ一人で愚痴りながらミントティーを飲んでたら、鳴き声と共にワラワラと、ヴォルフを先頭に狼が入ってきた。良く見ると、色違いの布を首に巻いている個体が、ヴォルフの他に十数匹。

 ターニャとアーニャか、なら後ろは子供?

「この後ろのは、もしかして子供?」

「ウォン!」

「ほへー、しばらく見ない時期がたまにあったけど、子育て中だったのか」

 できれば小さいうちに、見せて欲しかったけどな。しかもほとんどが飼われてるじゃないか。なんか首に布巻いてるのは、全部名前ついてそうだな。

 ってか、年一回の発情期があって、一年経ってるから、そりゃ大きくなるよな。

「そーかそーか、子供はいたんだな、教えてくれれば良かったのに」

「ワフン」

「ははは、かわえぇのー」

 大量の狼に囲まれ、モフモフを十分に楽しみ。個人的に作っておいた、ヴォルフ用の天日干しだけした干し肉を千切って皆に別け与えた。

 芸? そんなもの覚えさせませんよ? なんか物凄く頭良いから、覚えさせる前に技とか使いそうだし『絶・天狼抜刀○』とか……



 二日後、加熱生姜ジュースの入ったカップの布を退かすと、ほのかなアルコール臭と、気泡。

 あぁ、神様ありがとうございます! 早速飲もう! カビたりしたらもったいないからな!、早速飲もう!

「あ、うん辛い炭酸の抜けたジンジャエールで、少しポワポワする感じだけど、辛さでアルコールが本当に確認できない、自然に任せるのはやっぱ駄目だな。安定した供給なら、もう生姜ジュースでいいな」

 一人で愚痴りながら、計画を頓挫させ、残った物に【氷】を魔法で出して入れて、レモンを絞って飲んでみる。

「うん美味い」もう、このままでいいじゃん。モヒートに炭酸無くても良いじゃん、ジンとライムとミントと水と氷、お好みで砂糖とかな。やっぱり氷を出せる方を募集しないとな。

 家の前にあるプランターからミントを摘み、ライムは無いけど、スライスレモンを使って、あまり酸っぱくなりすぎないように調整し、カップの中で、レモンを潰し、ミントを入れて軽く潰してから、砂糖をスプーン一匙、その後にラムを入れて、氷を入れて、水は少な目、濃い目でいいや。そして気分を出す為に、ミントを浮かべ完成! なんちゃってモヒート!

「この清涼感たまらない!」

 本当に炭酸欲しいけど、重曹とクエン酸を混ぜて作るって事は知ってるけど、逆を言えば、俺の知識では、それが無いと作れない。まぁ諦めよう。アクセントに生姜ジュースも数滴垂らしても良いかもな。

「はーい、最近カームちゃんの動きが怪しいから来ちゃった」

 語尾にハートが付きそうな甘い声で、ノックも無しに男の部屋にやって来るなよ姐さん。まぁ、ドアは開けっ放しだから、文句は言えないけど、開けてあるドアをノックするとかさ……

「まぁ、確かに観光事業や船乗り用の飲みやすい酒は考えてましたが」

「あらあら、この間の飲み口の良い、弱そうに思えるお酒はカームちゃんが考えたの?」

「いえ、この世界の誰かです」

 まぁ、嘘は言ってない。

「ふーん。まぁまぁ、そんな事はどうでもいいから、なんかその涼しそうなのを飲みましょう!」

「あーはい」

 そう言われたので、ライムを取りに行かせてもらえず、なんちゃってモヒートを量産し続け、他愛のない会話が始まる。

「んーこの草がスースーしてて、冷たいから余計に涼しく感じるよ」

 あんた、溶岩の中から出て来て、温泉蒸発させておいて、何を言うか。

「温かいのもいいけど冷たいのも良いね!」

「そうっすか……」

「元気ないなーカームちゃん」

「いやいや、溶岩に浸かれる方が、冷たいとかスースーとか、よくそんな言葉が出るなーと思いましてね」

「ひどーい、お姉さんだって普通の竜族よ? 冷たい物だって飲むわよー。これお代り」

「あ、はい。ってか次で最後ですよ? 試験用に少しだけしか、ラムを持って来て無いんで」

「酷い、酷いわカームちゃん! お姉さんにこんな美味しいお酒を飲ませたくないからって!」

「いやいや、本当に無いんですよ、ほら」

 そう言って、空になった瓶を見せ、酒が無い事を視覚で確認させる。

「そんなー。普段は飲まないの? プラクスちゃんから強いって聞いてるのに」

「好きと強いは別ですよ、本当に普段からあまり飲まないんですから。飲んでも気分が乗った時だけとか、なんか考え事に集中したい時に、雰囲気作りで」

「雰囲気とかでお酒飲まないでよ! お酒がかわいそうだよ」

「確かにそうですね、けどこの家に無いのは事実ですよ。あ、ついでに生姜で作ったジュースも少し混ぜますね、生姜なので、喉の奥がヒリヒリするけど、癖になる美味しさですよ」

「んーじゃあ、それで許してあげる」

全く、ひでぇ守り神だ。まぁ、嫌じゃないけどね。

書籍化の情報が一部解禁になりました。

活動報告の方で確認できますので、気になる方は目をお通し下さい。

http://mypage.syosetu.com/428528/

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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