第126話 ダラダラした時の事
あけましておめでとうございます。
適度に続けてます。
相変わらず不定期です。
ジャスティス君が帰った後、特に戦後処理の必要はあまり無かった。
あの騒動の後、燃えた船の解体を少しづつ始めた。
甲板の燃えた船を運用出きるかと思い、
「船長。コレ、再利用出来ないですかね?」
「一回燃えた船は無理ですね。メインマストも根本の方が少し焦げてますので、強風で折れる可能性が有ります」
「あー、んじゃ無理ですね、蒸留所の薪にしましょう、一応使えなかった場合はどうするか考えてありましたし。何か使えるもの有ります?」
「無いです」
その時にきっぱり言い切られた、まぁ仕方ないよな。
そのやりとりがあり、使いやすいように一定の長さに切っての繰り返しで、蒸留小屋の中に薪として貯め、入りきらない分は簡易的な屋根を作り置いておくことにした。
そんな事をしている内に、会田さんから連絡があり、顔を出してきたのが昨日だ。
◇
「んじゃ予備の船員の補充として、この元船員達を船長に預けますので、好きにして下さい」
「はい、わかりました」
「ゆくゆくは船を増やす予定ですので、腕が鈍らない程度に人員を運用して下さい」
「わかりました」
俺が船を燃やしてしまった事で、ジャスティス君を乗せてきた船長及び船員は失業と言うことで、一時的にこの島で預かり、会田さんの判断でそっちで使ってやってくださいと言われ、島民として吸収することになった。
そろそろ普通に陸で生活する魔族も増やしたいな。だって人族増えすぎだし。まぁ、次の物資の出荷と入荷が終わってからで良いか。
よし、家に帰ろう。色々と疲れた、しばらく戻れなかったしな。
「俺、家に帰る……。俺がいない間は誰かに任せた」
「は? カームさん、何か指針とかは!?」
「無いよ」
「無責任ですよ!」
「俺、村長じゃないし……」
その辺にいた男性達が、何か言っていたが、俺は無責任な言い訳をして、転移陣でベリル村に戻った。たまには何も考えずにのんびりしたいよ。
「ただいまぁー」
そう言って居間に行き、窓際でひなたぼっこしていたラッテを見かけ「ただいま、疲れた」そう一声かけてから中腰になって抱き付き、胸に顔を埋める。
「おかえりー。よしよし疲れちゃったんだね、少しゆっくり出来るんでしょ?」
そう言いながら後頭部を優しく撫でてくれる。
「ん。ゆっくりする。帰ってこれなくてごめん。スズランは?」
俺も出来る限り甘える様に、胸に顔を埋めながらゆっくりと顔をこすりつけ、柔らかさを堪能する。
「池のお姉さんの手伝いをしてから買い物だよー、池の鴨の冬越しの準備だってー」
「そっか、今日は休み?」
「掃除して、牛さんと豚さんにご飯あげて、干し草をかなり中の方に補充して終わりだったよ。そろそろ雪が降るからね、放牧も少なくなるし」
「そうか、もうそんな季節かー。島は暖かいから、そういうのいらないからね」
「そっかー、動物さんも暖かくて良いねー」
「けど、夏は暑すぎてかわいそうだけどね」
「そっかー」
他愛のない会話をしても、優しく相槌を打ってくれる。
そうしている内にスズランも帰ってきたので、買い物籠を台所において、居間に来たらスズランの胸にも顔を埋めると、無言で頭を撫でてくれる。
「疲れた、とにかく心が疲れた」
「ん……。とりあえずお昼作るから。少しゴロゴロしてて」
「じゃー私もお昼作るの手伝うよ、少し軽いのも必要そーだし」
「じゃぁ、ゴロゴロしてる」
そのまま寝室に向かう。実は俺達夫婦の寝室のベッドは俺が魔王になった頃から二つになった。
子供達が小さい頃は一緒に寝るために三つだったけど、大きくなったので、一つは子供部屋に行った。
ちなみに日替わりで、俺がベッドを行き来している。そして前回最後に一緒に寝たのがラッテだから、スズランのベッドに向かい、ベッドに倒れ込む。
そのまま隣りのベッドのラッテの枕に手を伸ばして、引き寄せて抱いて目を瞑り、二人の香りを楽しむ。ラッテほどじゃないが、俺だって嫁達の香りが恋しくなる時だってある。
タンスを漁る様な事もしないし、洗ってない衣類だと行きすぎてる気もする。
まぁ洗濯されてる服や下着でも良いけど、何かほのかに香る物に顔を埋めたい。
そんな事を思う程度には、疲れてるし甘えたい。幸いにも、結婚後でも愛情を注いだり、注がれてるので、冷めてる事は無いのが救いだ。本当にこう言う時は異世界でも助かる。
生前? 結婚してなかったから主にモフモフのいるカフェとかだったけどな。
そんな事を思いながら枕を抱いて顔を埋めてゴロゴロしてたら、呼びに来たラッテと目が合い、ニヤニヤされながら頭を引っ込めていった。
呼んでくれるだけで良かったのに、こう言う時だけ変な所を見られる。
「子供達は?」
「そろそろ」
そう言ってきたので、出されたお茶を先に飲んでたら、三分もしない内に帰ってきた。相変わらず時計も無いのにすごいと思う。
これを、子供の頃の朝にも発揮してくれれば良かったのに。
まぁ、ダボダボ部屋着とか見れたから良いけど、イチイさんの殺気で相殺だったけどな。
「あ、お父さんお帰りなさい」
「お帰りなさーい」
「はい、ただいま」
その後は皆で食事を楽しむが、俺の料理が無いうえに、少しだけ食が細いのを察したのか、午後は訓練とか言わなかった。
その後はベッドに入り、がっつり昼寝をして、夕食の時間に起こされ、半分寝ぼけてる状態で夕食を食べて、最後に風呂に入って湯船の中で軟体生物の様にダレて、スズランに抱きついて寝た。
◇
次の日には気分を入れ替え、ある物で朝食を作る。
卵と鶏肉は常にあるけど、今日はベーコンを見かけたので、ベーコンエッグと簡単なサラダと昨日のスープを温め直し、ホットサンドを作った。
香りに誘われたのか、ラッテと子供達が起きて来て、俺がスズランを起こしに行く。相変わらず寝起きが悪いが、いい加減馴れてる。
一声かけて、多少反応したら上半身を無理矢理起こし強制的に覚醒させる。
「あー……」
「朝食出来てるから急いでね」
「んー」
相変わらず本当に寝起きだけは悪いんだよな。
その後に朝食になる。ホットサンドは多少冷めたが、まだまだおいしく食べられる暖かさだ。
その後は子供達を送り出し、二人と久しぶりの会話を楽しむ。
「前々から言おうと思ってたんだけど、ミエルの髪型の趣味はラッテの?」
俺が魔王になった頃から、切っている様子も無く、最近は無造作に首の後ろ辺りで束ねている。顔付きは多少幼いが凛々しいし、身長もラッテよりあるし男とわかる。だから女に間違われる事はないとは思うが、そろそろスズランと同じ長さになりそうだ。
「そーだねー。細いし癖がないから女として少しうらやましくてねー。それに顔も良いから女の子に絶対もてるぞー」
そう言いながらなんかニヤニヤしている。ミエルにハーレムを作らせたいのか?
「まぁ、ミエルが嫌がってないならいいけどな」
「髪には魔力が宿るって言われてるしねー」
「ふーん、初耳だな」
だからか。まぁ俺には関係無いし、使えば使うほど魔力が上がるって言われたから、あまり関係無いと思うけど、そう言われてるならそうさせた方が良いな。
「リリーは、いかにも私は動きますって感じで、女らしさがわかる程度には短いよね。肩くらいで面倒が少なそう」
「長いと目に入るって言ってねー、短いままなんだよ、スズランちゃんみたいに綺麗な黒髪なのにもったいないよね」
「確かに綺麗だけど、本人がそう言うなら仕方無いよ、二人で長くして結っても似合いそうだけどね」
そう言うとスズランはコクコクとお茶を飲みながら頷いている。
「まっ、大きな怪我をしないで元気なら良いさ」
「そーだねー」
「うん」
「二人は本当に冒険者になりたいんだろうか? さすがにそろそろ部屋を分けた方が良いと思い始めてさ、部屋を一つ増やそうと思ってるんだけど、来年で学校は学年が二個目だろ? そうすると季節が二回巡れば旅に出る。それなのに増築するのはもったいないよな」
「そーだねー」
「それに子供達が独り立ちして出て行ったら、二人には島に来て欲しいと思ってる」
「んー。確かにその方が良いと思うけどさー、この家はどうするの?」
「父さん母さん達に管理してもらって、定期的に帰ってきたりする。考えてみてくれ。もし戻ってきた時に、自分の家に他の人が住んでた時の事を」
「んー。ごめん、そこは何も言えないかなー」
「あ、ごめん」
「いいよいいよ、気にしてないし」
「だから売らないで、このままにしておこうと思う」
「私はそれで良いと思う。カームの考えは間違ってない。あの子達がどこかダンジョンの近くにある。町か村に家を借りても。ここはあの子達の故郷にしてあげたい」
「んーそうだねー」
「まぁ、それは決まりだ。問題は部屋だな。二人ともとっくに色気付く頃だろ。姉弟と言っても、部屋が一緒だと色々と問題もあるし、音とかも気にするだろ? 本当どうすれば良いか悩んでるんだ」
「んー」
「俺達が少し早めに島に行って、子供達にこの家を使わせても良いけど、家事は学校に行ってる間はやってあげたほうが良いだろ? 交代で俺達の実家に行ってもらうのも悪いし」
「あの子達って結構部屋でも仲が良いから。真ん中に薄い壁で良いと思う」
「んー二巡だけだし、それで良いか。色々発散するのには気を使うと思うけど」
「そーだねー、リリーちゃんには、ミエル君に変な事されそうになったら、思い切り殴っちゃえって言ってあるから」
「さすがに姉弟では無いだろ」
「まだ無いよー」
スズランはやっぱりお茶を飲みながらコクコク頷いてる。
んー、なら薄い板か分厚い布をカーテンで良いか。
「リリーやミエルの恋仲になってる子とかいるの?」
「いない。冒険者になるからって断ってるみたい」
「ほー」
「それに『私の好みで、私より強かったら考える、お父さんより強かったら応じる』って言ってるから。この村じゃ多分無理」
「俺を物差しに使わないで欲しいなー。ミエルは?」
「そう言う風になる前に、やんわり断ってるねー。ミエル君の好みがわからないよ。冒険者になるから、有る程度強くて料理とか出来る子じゃない? 最近は料理も覚えようと必死だし」
「あーそれは多分俺のせいだな。今有る物だけで、料理作れた方が困らないぞって秋の頭に言ったわ。で、どんなの作ってるの?」
「んー、具は日持ちする物だけで何か、味付けは塩だけ、たまに香草の時もあったね」
「ほー、がんばってるんだな。でリリーは?」
「薪割り」
「あ、うん。何となくわかってた。普段は何か作るの?」
「全然。ミエル君に任せっぱなし」
「んー、前に住んでた共同住宅の、ダークエルフみたいな事になってるな。あの人は『出来る奴にやらせればいい』って感じだったからなー。多少は覚えて欲しいなー、親として。女の子として」
「んー、リリーちゃんは食べるだけで、作るのに興味はないからなー」
「スズランの方がマシだった!」
「って言うか、カーム君が料理上手過ぎるんだよ! なんでお菓子まで作れちゃうかなー」
「何でだろうねー」
んー、ミエルに交代で、食事を作らせるように言うべきかな。
前に、野営の触り程度で作った、塩振ったウサギの丸焼きが薄味だったし、せめて竈と材料がそろってる環境では、作れるようになって欲しいな。
兎の丸焼きの下りは、おまけSSの「父として」に有ります。
興味が有ればどうぞ。
http://ncode.syosetu.com/n4699cq/12/




