第124話 島に乗り込まれた時の事 中編
この作品は三部構成の中編です
敵の情報と事前準備があるだけで、戦闘が劇的に変わる事が有ります。
「さて質問だ。お前等、なんでこんな事したんだ?」
「モガーッ! モガガガガ!」
「あー、王女様から言いたいの? 先に喋らせてあげるけど。この前みたいに、なんか余計な事言うと少しだけ酷い事をするからね?」
そう言って、口の布と中の布を外してやる。
すると唾を俺に向かって吐いてきた。あんだけ痛い思いをしてるのに、中々すごい気力だな。
俺は無言で、乾いた砂を一握り持って来て、女王の顔に投げつけた。
「はい、何か言いたい事は?」
「殺してやる! 絶対に殺してやるから!」
今度は足元の湿った砂を握り、思い切り口にねじ込み、口を布で塞いだ。
「いやいや悪かったね、話にならなかったよ……ジャスティス君は……話してくれるかな?」
そう言うと、舌打ちして来るだけで、話すそぶりは見せない。
「その防具って物凄く頑丈って聞いたけど、どのくらい頑丈なんだい?」
俺は左腰からミスリルバールを抜いて、思い切りアーメットの横を一発だけ殴る。
「おー硬い硬い。バールを持ってた手が痛い」
「うっせぇからなぐんじゃねぇよ! 糞がぁ!」
「あ、君も砂がお好み? とりあえずアーメットのバイザー上げておくね」
そして俺はまた乾いた砂を持って来て、顔面に振りかける。
「ぶへっ、てめぇ、ふざけんじゃねぇぞ!」
「ふざけて無いよ。取りあえずなんで俺を狙ったのかを知りたいんだけど? ってか命を狙ってくる方がふざけてるとしか思えないけど」
「知らねぇよ、レルスが勝手に俺を助けて、逃げ回ってる時にそうなったんだよ」
「ふーん、じゃぁこっちか……もう一度口の布を外すからね? 次は暴力を振るうよ?」
口の布を外すと速攻で砂を吐きだしたので、別のカップにぬるくなった麦茶で口を漱がせるが、そのお茶を思い切り拭きかけてきた。学習しねぇなぁ。本当に王女様かよ、テラスで優雅にお茶でも飲んでたんじゃないのかよ。
俺は落とし穴に使った麻布に砂を集め王女の前に戻り、軽く持ち上げた砂袋を自然落下を利用して、振り子の様にして王女の顔面に当てる。短い悲鳴が聞こえるが、知ったこっちゃ無い。
「……次は軽く振るからね?」
あくまで優しく話しかけるが、王女は涙目だ。鼻でも痛かったんだろうけど、埋まってるから両手で抑えられなくて残念だな。
「何で俺を狙ったの?」
「あんたが憎かったからよ! あんたがいなければ、勇者が私達を狙う事は無かったし、あんな目に会うことも無かったのよ!」
「いや、俺がいなくても勇者達は多分やってたと思うぞ? かなり鬱憤たまってたし、俺に愚痴ってたし」
「嘘よ、あんたが焚きつけたに決まってるわ!」
頭に来てて、視野が狭くなってて、こうと思ったら、こうとしか決めつけられなくなってるな。
「まぁ、そう思いたいならそう思ってて良いよ。俺は頼まれただけで、計画や実行はしてないし、同行した理由は、最悪の場合に備えていただけ。上手く行ったから王都に魔王は現れなかったし、食事会の時も、一部の人族にしか知られてない。まぁ、噂は広まってると思うけどね」
「じゃぁなんであんたなのよ!」
「とある勇者と和解して、仲良くなって、会田さんと知り合ったから? まぁ、少しだけ立場を利用された感じはするけどね。俺も人族の考えが気に入らなかったら、別に利用された事に関してはあまり気にしては無いし」
その後は、二人がギャーギャー五月蠅かったので、俺は王女の口を布で塞ぎ、ジャスティスは出ている顔面を埋めてからから椅子に座り、淹れ直した麦茶を飲み、少しだけ二人を落ち着かせる。目の前に座ってお茶を飲むって、挑発にしか見えない? 気のせいだよ。
それから少ししたら、おっさん達がサハギン達と船に乗ってた船員達を連れてきたので、船長を聞き出し質問をする。
「コレとはどんな関係? どういう経緯で乗せたの? とりあえず暴言を吐かなければ、埋めないから安心して」
「俺達を雇ってる貴族の使いが来て、指定された日の昼の鐘が鳴ったら、出向しろ、そうすればぎりぎりで乗り込んでくる方が多くて四人いる。と」
「んー聞いてた話とある程度一致するな、他には?」
「我々の主以上に偉い方だから、それ以上の対応をしろと」
「ふむ、で……船内でのコレの様子や態度は?」
「え、っと……」
船長は、二人を見ている。気にしているのだろうか?
「じゃぁ、少しあっち行こうか? 腕も痛いだろ? 縄を切るから動くなよ?」
そう言って、背中のマチェットを抜いて、軽く縄に切れ目を入れ、縄を解く。途中でキースが「おい!」とか言ってたが、気にしない。
そのまま天幕の方まで歩き、椅子に座らせ、話を聞く事にした。
「で、どうだったの?」
「最悪ですね、船内の規律は守らない、大量の真水を消費する、酒を飲んで『俺は勇者だ』とか『私は第三王女レルスよ』とか言って暴れる、与えた船室で盛大に大声を出して盛る、まだ家畜を乗せてた方がましでしたよ」
「あ、うん。もう良いよ。ありがとう。船を燃やしてごめんなさい、そしてアレには言わないし、船員の命は保証するから安心して。そしてあいつ等、本物のラズライトの第三王女と、それに召喚された愛されてる勇者だから」
船長と船員が哀れになってきたな。今度会田さんに言って、この船長と船員も引き取ろう、ついでに船も強請ろう。どうせ、この船の持ち主の貴族から有る程度の迷惑料とか取りそうだし。
そのまま砂浜に戻り、
「船長との話は付いた、暴れないと約束すれば命の保証はする。それが約束出来る奴は立ち上がれ」
そう言うと全員が立ち上がったので、見張ってた人達に縄を切ってもらい、旧拠点前に移動してもらい、キースやおっさん達にも食事を済ませるように言った。
そしてフルールさんに話しかけ「二人を砂浜に埋めて拘束中」と報告して、二人の前に戻る事にした。
俺は椅子に座り、二人の前で片足を膝の上に乗せ、そこに頬杖を付きながら質問をする、
「さて、お前等の処遇は俺に一任されてる訳で、なるべく生かして捉えろって事だ……どうしてほしい? とりあえず殺さなければ腕の三、四本までは許可されてる。謝罪すれば、お迎えの船が到着するまで、砂の中での三食昼寝付きの生活は保障しよう。何か暴言を吐く様なら水も与えん、それが理解できたなら首を縦に振れ」
それでも王女は縦に首を振らない。
「沈黙か、まぁ好きにすれば良いさ。謝罪以外は水も与えないからな」
そう言ってジャスティスの砂を退かし、もう一度簡単に説明する。
「レルスはどうなんだよ?」
「沈黙だ」
「なら俺も同じで良い」
「あっそ……。ならしばらくそうしてろ」
そして、俺は二人の前に座り、少し眺めてたが、ジャスティスの石の下敷きになってる右手の魔石を思い出し、右手でバールを握ってジャスティスの方に向かう。
「お、おい、なんでそんなもん持ってこっち来んだよ、こえぇよ」
「お前の右手の魔石を回収する為に、その右手の上に乗ってる石を消す。変な気は起こすなよ?」
そう言って、肘の可動範囲外からバールで石を何回も叩き、消滅させ、そのまま足で手首を踏みつけ、魔石を回収しようとするが、ガッチリはまってて取れない。
バールで籠手の方を叩いてみるが、取れない。少しだけどうするか悩んでたら、手首を反され、魔法を発動され、鼻先を【火球】がかすめ、前髪が少し焦げた。
「おい、変な気は起こすなって言ったよな?」
俺はバールでアーメットを乱打し、衝撃を与え続ける。後ろの方でモガモガ聞こえるが気にせず殴り続ける。防具が無事でも、中身の人間は無傷でいられないと思ったからだ。数分ぐらい殴り続けたら。反応が無くなったので、気絶と判断して右手部分も砂の中に埋めた。
その頃には、キース達が戻って来たが、犬耳のおっさんにスレッジハンマーを倉庫から持って来てもらう様に頼み、キースに昼食を持って来てもらった。
「おっさん、そいつが気がついたら、そのハンマーで思い切り鎧の方の頭叩いて気絶させて。とりあえず今はそれしか方法が無いし、迎えの船が来るまでは何が有るかわからないから警戒態勢って事で、まだ酒蔵に避難させておいて下さい、俺もここで飯食っちゃいますから」
そう言って、王女が睨んでるが気にせず、飯を食った。
仕方ないよな、本人が拒否したんだからな。
ちなみに揚げたカラフルな魚の切り身を、野菜とマヨネーズと一緒にパンに挟んだ、フィッシュバーガーモドキと、串切りフライドポテトだった。
後編が有ります




