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第123話 島に乗り込まれた時の事 前編

適度に続けてます

相変わらず不定期です

これは三部構成の前編です

 秋がそろそろ終わると言う頃の夕方、俺は会田さんに呼ばれ、王都の共同住宅の地下に来ている。もうこの時点で悪い予感しかしない。

 しかも、前回陣中見舞いを持ってきた時にいた方々もそろって、なんか申し訳なさそうな顔をしている。

「率直に言います、第三王女とジャスティスに逃げられました」

 俺は眉間を押さえるように摘み、大きくため息を吐く。

「内陸ですか? 海ですか?」

「――海です。家族の話では、プライドが高いから、魔族側の大陸に逃げる様な事は無いと思うとの事です」

「つまり狙いは俺と……」

 少しだけ目を細め、視線を足下に落とし、口に手を当て少しだけ考える。


「あの時の尋問ですかね?」

「おそらくは……」

「あーやだやだ、羽箒で全身くすぐられて粗相して、恋人を殺されそうになったくらいで」

「いや、王族としては十分すぎるほどの動機ですけど」

「言ってみたかっただけです。しかも、ものすごくプライドが高いらしいじゃないですか。当然でしょうね」

「何で俺達を狙わなかったんでしょうか?」

「数が多いからじゃないっすか? 俺なら離島に一人。海に出れば、或る程度の時間を稼げば、勇者に邪魔されずに島で戦える。俺はそう思いますけど」

「……そ、うですね」

 会田さんも口に手を当て、視線だけを右に向けながら答えてくる。

「と、言うわけで、俺の身が危険なので、勇者を二、三人ほど転移魔法で連れて帰りたいのですが。まだ転移魔法は奴等にばれてませんよね?」

「本当に申し訳ないんですが、戦闘系は全員捕まえるために出払ってます……」

「……一番近い奴等は?」

「包囲網を狭めてた為に、港があるコランダム付近に集結してます」

「コランダムから王都まで十日でしたっけ?」

「えぇ……」

「呼び戻しだと間に合わないか……。コランダムにいる主戦力は? 北川さんとか、櫛野さんとかは?」

「勢いで追いかけていきました……」

「……全てを投げ出して故郷に帰りたい。けど島の皆が……」

「あの、宝物庫から何か持って行きますか?」

「使い慣れない武器をですか?」

「魔力を込めれば、魔法を出せる魔石も有りますよ?」

「使い勝手の悪い、固定された魔法ですか? 叩き割って暴走するなら、投擲は得意なので思い切り投げつけますけど」

 そう言うと、会田さんが振り向き、裏の勇者達に、

「そういう事を聞いた事有る方ー?」

 会田さんの声だけが響く。

「無いみたいですね、じゃあ平気です。そのまま厳重に保管して置いて下さい」

「本当申し訳ないです」

「いやいや、気にしないで下さい。逃げたい気持ちでいっぱいですが、どうにかしたいですね。いや……しなくちゃいけないんですよね、船の特徴とか教えて下さい」

「まだ情報が少ないですが、表向きは我々に協力的だった貴族の船で、赤い旗です、細かい模様はわかりません。近くに停泊してた船乗りの話ではその船は船足が早く、追いかけて行った人達の船で追いつくのは厳しいそうです」

 フルールさんを介して、情報をやりとりをしていた、あの時の勇者が答えてくれた。

「だそうです。船員は雇われてるだけで罪は有りませんので、人的被害をあまり出さなければ制圧して下さって結構です」

「あ、いいんですか?」

「事前に先制攻撃をする手段は有るような事を言ってたじゃないですか。責任はその貴族に取らせますので遠慮無くどうぞ」

 会田さんが、口角をヒクつかせながらうっすらと笑っている。そうとうキてるなこりゃ。

「例の二人への対処は?」

「手が付けられないなら好きにして良いですが、極力生きて捕らえて欲しいですね。まぁ難しいと思うので、足の二、三本。腕の三、四本好きにして下さい」

「あ、はい」

 数字的に、片方の両手か両足が無くなるじゃねぇかよ。

 しかも笑顔で言わないでくれよ。圧倒的な憎悪で向かってくる相手、しかも日本人。殺せねぇよな……。こっちの人族は数人殺してるけど、女の子だろ? 明確な敵意や殺意を持ってても殺せねぇよ。あーどうすりゃ良いんだよ……。



「ってな訳で俺を殺しに来ます」

 俺は島に戻り、さっきまでの事を夕食前に広場で説明した。

「かるっ! カームさん軽いですよ!」

「そうですよ、なんでそんなに軽いんですか!」

「いや、最悪酒蔵に逃げて、姐さんに任せるから」

「こっちを見て喋って下さいよ!」

「姐さんって、歴戦の冒険者とか倒してるし、タブンヘイキダヨ」

「冗談ですよね?」

「俺、平和、大好き。戦い、良くない。ってなわけで極力がんばりますので、期待しないで下さい」

「おいカーム、皆を不安がらせるな。せめて嘘でも撃退してみせるくらいって言えよ」

 キースに怒られたし、おっさん達には睨まれてる、少しふざけすぎたか。

「いやー、こういうのはあまり真面目に話たくないんですけど、不安にしちゃったなら申し訳無いですね。争い事や怖い事は本当に嫌いなんで、誰でも楽して勝ちたいですよね?」

 両手を軽く広げ、軽く言ってみる。

「しいて言うなら安全な所から一方的に攻撃を仕掛け、手も足も出ないくらいな一方的な虐殺ならしても良いと思ってる。乗ってる船員も全員敵で、俺を狙ってくるなら船で迎撃するつもりだ。海上でハーピー族に手伝ってもらって、相手の船を炎上させて、海に逃げ込んだ奴から、血の気の多い水性系魔族の方達に手伝ってもらって、滅多刺しでも良い。けど乗り込んで来る船で明確に俺に敵意が有るのは情報では二人だ、敵意のない奴を俺は殺したくは無い」

 今度は声を低くして、少しだけ真面目に説明して、島民を納得させようとしたら引かれた。一応まとめ役だけど、加減がわからんな。あとこういう時は、あまりふざけないようにしないとな。俺、覚えた。

「ってなわけで、湾内でどうにかして、砂浜でどうにかするので安心して下さい。同じ様な説明を榎本さんのいる村でも言ってきますので」

 今度は普段通りの喋り方で話し、夕食をとってから、榎本さんの所に向かった。



「ってなわけですので、湾内に乗り込まれた場合は、こちらへの被害はほぼ無いと思いますが、俺が殺された場合、奴等がどう動くかわかりません。その場合は、一緒に追いかけてきた勇者達が来るまで避難誘導をお願いします」

「……任せとけ。骨は拾ってやる」

「年上の方に、そう言われるのは申し訳ないですね。ですが火山に住んでる、あの竜の姐さんが、酒蔵や蒸留所は死守すると言ってますし、幸い湾から見える位置に有るので、最悪そこで馬鹿二人は死にますね」

「おい。なんでそう言い切れる」

「長年この島に住み着き、有名な冒険者や、過去に勇者と言われていた者達をほふってきましたので。証拠に、ミスリル製の名工の鎧まで所持してました、多分酒が絡んだ瞬間に、この島の守り神になります。しかも見える所から破壊活動に移る可能性が高いです」

「わかった、その旨は皆に言っておく。湾内じゃなく、島のどこかに現れた場合は、お前だけ転移か?」

「えぇ、単騎かキースと獣耳のおっさん達に手伝ってもらいくい止めます。なので榎本さんは皆の避難誘導を、決して戦わないで下さい。会田さんの情報では、奴は民間人も容赦無く殺してます」

「――わかった、最悪ワシが島民の盾になる、老い先短い命だかんな」

「百二十まで生きそうなじーさんが何言ってんですか、俺が死んだら、そのまま島のまとめ役になりゃいいんすよ。んじゃハーピー族や水性系魔族達との打ち合わせの内容を考えるので戻りますね」

「おう、生きてたら米炊いてやるよ」

「あざっす」

 まぁ、それ死亡フラグだけどな。



 四日後の昼近く。普段補給しに能く寄ってくれる船とは違った、見かけない船が島の方に回頭してきた。

「アレかな?」

 俺は普段着ない、上下厚手の黒の服に、色々くっつけてあるタクティカルベストを着て、太股に厚手のナイフ、腰にはバール、背中には背骨を守るようにマチェットを背負い、フル装備で砂浜にある天幕の下に有る椅子に座りながら、お茶を飲みつつ、朝から待機していた。事前情報と、勇者達の予測で、船足的に今日じゃないかと言われていたからだ。まぁ、或る意味ドンピシャで驚いてはいるし、対応がしやすいからちょうど良い。相手の位置情報が有るか無いかでかなり違ってくる。

 俺は、テーブルの鉢植えに向かって指示を出す。

「船長には、手はず通りに進めて下さいと言って下さい」

「はーい」

「あーやだやだ、なんでこんな事になってるんだろうねぇ。あの船に乗ってるのが全員敵なら、湾内に入れないで処理するのに……」

「全員敵って事にすれば良かったのに」

「無理、自己嫌悪で心が潰れる」

「相変わらず優しすぎて駄目な奴ね」

「知ってる」

 船が湾内に入り始めるかと言う所で、俺は第一村で待機させてたハーピー族に指示を出し、行く末を見守る。

 湾内の中間あたりにさしかかった所で、船長の船は湾を塞ぐ様に入り口の真ん中に停泊し、村の在る森の方から黒い陰が三十ほど出てきて、船に向かって特攻させ、弓の届かない高度からすれ違いざまに、どんどん酒入りの油袋を投下してもらい、最後尾の一人が高度を上げ振り向き、この距離で、なんとか視認できる程度の小さい【火球】を発動させ、甲板を火の海にし、帆にも火が燃え広がった。

 ハーピー族に話を聞いて、投下は案外誰でも出来ると言う事を知り、作戦を奇襲による爆撃的な物に変え、確実に甲板を火の海にする作戦に変えて良かったと思う。これで確実に甲板は火の海だ。

 船上が大変だと言うことはわかる。帆は無くなっても惰性でこっちに船がどんどん近づいてくるが、浅くなった所で、非武装の男達がどんどん海に飛び込んでいる。

 そこに現れたのはサハギン達で、銛をもっていきなり海面に飛び出し、船員達に銛を突き出し、動きを封じさせている。

 無抵抗なら殺さない事をお願いしてるし、まぁ、ここまでは或る程度予定通りだ。

 船首の先に、やけに目立つ鎧を着た奴と、その隣にいる皮鎧を着た髪の短い女を除けばだけどね。多分鎧がジャスティスで、皮鎧が第三王女だろうな。

 俺は残っていたお茶を飲み干して、近くに立てて在ったスコップを手にとって一歩だけ前に出て、スコップを砂浜に突き刺し、両手で握り柄を持ち、堂々と構える。

 そのままの惰性で、燃えあがった船が砂浜に乗り上げ、鎧を着た奴と女が飛び降り、鎧だけが走ってこっちに向かって来るのを黙って見つめる。

 鎧に魔法処理もされてるって話しも有ったから、熱く無かったんだろうな。って事は姫の方にも魔法処理されてんのか、軽装の皮鎧にも付くのかよ。

 そして砂浜に降りた場所から、姫は動かず【火球】を撃ってくるが、こちらも【水球】を浮遊させ、火球をかき消す。

 正直ミエルの方が早いね、それにこの距離だと、魔法見てからでも対策余裕です。

 その後も。【尖った氷(アイスニードル)】や【尖った岩(ロックニードル)】を使ってくるが、【石壁】を発動させ防ぐ。

『キース、邪魔だから女の露出してる膝と肩を狙え』

 冷静に風魔法でキースに声を届け、最初から島にあった、湾近くの家の屋根から狙撃を任せる。

 その間にも、鎧が剣を抜いて構えながら走ってくるが、残り二十メートルと言う所で地面に消えた。

 多分俺にまっすぐ向かって来る事はわかってたので、事前にすり鉢状の落とし穴を砂浜に無数に仕掛けておいたが、まさか本当に上手く行くとは思わなかった。

 麻布って砂の色と似てるからね、砂浜に落とし穴作るのにはもってこいだね。いやー無駄にならないで良かったよ。

 事前に情報があって、準備出来る時間がある事で、戦闘が優位になる証拠だよなー。楽して勝てるなら、作戦や罠を作る時間を多めに取った方が絶対に戦闘が楽になる。


 俺は早速砂を埋めるイメージで、這い上がろうとしている鎧を埋め、巨大な水球を使い、周りの砂を湿らせる。

 乾いた砂だと脱出可能らしいけど、濡れた砂なら、思った以上に堅くなり、一人では脱出はほぼ不可能らしい、イメージは海賊の処刑法の奴だ。顔と片手だけ出てるが、頭と肘から先を動かしてるだけで抜け出せる気配は無い。

「てめぇ卑怯だぞ! 正々堂々と戦いやがれ!」

 何をいってるんだこいつは……

 俺は無視し、五十センチメートル四方の石を高さ一メートルの所から落とすイメージをして、出ている右手を石ごと砂に埋める。これで自由に

なるのは頭だけだ。まぁ、叫び声が聞こえてないから潰れてはないだろうな。

 そして王女の方を見ると両膝と両肩に矢が刺さってた、相変わらず良い腕だな、多少……かなり見習いたいもんだな。

「おっさん達に、気をつけながら女を運ぶように言って下さい」

 そう言ってから天幕を出て、鎧に近づき、

「すまん、俺には守る島民がいるんだ。手段は選んでられない」

 鎧に冷たく言い捨て、湿った砂を掘るようにイメージして縦穴を掘り、おっさん達が王女を運んでくるのを待つが、距離が近づくに連れて、なんか金切り声が聞こえてくる。

「あ、ここに穴掘ったんで、頭だけ出るように埋めて下さい」

「おい、平気なんかよ」

「多分死なないでしょ」

「おいこら、スク水! レルスに何するつもりだ!」

 あ、本名名乗ってなかったわ。

「優しいから隣に埋めてあげるだけですよ?」

 とても穏やかな声で微笑みながら答え、

「いい加減耳に触るな、この金切り声……」

 そう呟き、用意しておいた布を王女の口にねじ込み、その上から猿轡の様にして布で口をふさぎ、ズボンのポケット辺りをボフボフ叩く。

「なにしてんだ?」

「魔石を持ってるらしいから探してるんだけど、知らない?」

「最初に膝を打ち抜いた時に、なんか叫びながら派手な石を手から落としたぞ?」

「これか? この女の足下に落ちてたから拾っておいたぞ」

キースに犬耳のおっさん、ナイス。

「それですね、ありがとうございます。こいつは魔石で、魔法が使えなくても、魔力を込めると魔法が出るので奪っときたかったんですよ。あ、矢抜くからね? 物凄く痛いと思うけど、気を失わない様にね。キース、この鏃ってしっかり止まってる?」

「無理矢理引っこ抜くと中で抜ける」

 弓使いとしては正しいけど、どや顔は止めて欲しい。

「あちゃー、押し出すしかないか。ごめんね、抜くんじゃなくて、入れるね」

 そう言って、左手で矢を掴んで、右手で【石】を作りだし、思い切りたたき込み、痛みで王女が思い切り暴れ出すが、危ないのでおっさん達に押さえさせ、鏃が出たら外して、引っこ抜いた。

 その後は止血をして、傷口に砂が入らない様に厚めに布を巻いて、ポーションを雑にぶっ掛けて、そして縦穴にグッタリしてる王女をそのままつっこんだ。痛みで少しもがいてるが知ったこっちゃない、止血してやっただけでもありがたく思え。

「あ、海の奴等も縛って連れてきて下さい、抵抗するなら銛で思い切り殴っても良いと伝えて下さい」

「殺せとは言わないんだな」

「まぁ……な」

「あの燃えてる船はどうするんだ?」

「消すよ? 中の物資とか燃やすのはもったいないし」

 そう言って、空中に巨大な【水球】を数個作りだし、船の上に落としていく。

 まぁ、消えてるだろう。

「相変わらず馬鹿みたいな魔法だな」

「まぁね」

 そう言ってから椅子を持ってきて、頭だけ出てる二人の前に座り質問を開始した。

中編に続きます

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

― 新着の感想 ―
[一言] うんうん、そうだね。じゃあ(矢)挿れるね…
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