第118話 米を収穫した時の事
適度に続けてます
相変わらず不定期です。
「おうカーム、稲刈りだ稲刈り!」
榎本さんが、フルールさんを通し俺を呼び出すと、いきなりその一言だけ言われ駆り出された。
とりあえず、麦と同じ様に出来るかの実験で、百メートル四方の田んぼを三分割した役三十三メートルの短い所を【芝刈りウインドカッター】で刈ってみた所、特に問題がなかったので、そのまま刈り取り、南村の人族が拾って、縛って干して行く。
米の見た目に特に変化は無いが、記憶に有る稲穂より大きく垂れ下がっている。実る量を増やしたのか、米の粒を少し大きくしたのかはわからないが、米が増えるのは良い事だ。
「もう少し乾燥させたら、脱穀して水車小屋で精米だな。玄米でも良いがまずは白米だ!」
田んぼの方には、あまり顔を出さなかったので気が付かなかったが、いつの間にか水車小屋が増えており、話を良く聞くと、牛車で東村まで来て、織田さんと大工を連れて行っていたらしい。ちゃっかりしているよ。
◇
そして、麦の収穫も終わると収穫祭だが、前の年越祭の様にはならなかった。
多少クラーテルさんが飲み比べをして、人族相手に無双してホッコリしていた事くらいだろうか……
因みに挑んだ男共は漏れ無くグッタリしているか、ダムを決壊させている。
そしてファーシルはラム酒を飲んで「うぉーなんだこの酒ぇー。すげぇ目が回るぅー」とか言って、カップ半分でいつも以上にハイテンションになり、歌を歌っていた。体が小さいから、その分入る量が少ないんだろう。ハーピー族の女性は、全員体が小さめでスレンダーだからな。
因みにハーピー族の男共は、増やしまくった兎をモリモリ食べて歌っての繰り返しだった。
南の村は南の村で、島で開いた一回目の年越祭のような事になっているんだろうか? 後で榎本さんにでも聞くか。
◇
翌日には、手土産にラム酒の樽をもってベリルに帰り収穫の準備に入る。
ミエルも今年は活躍していた。ウインドカッターがかなり上手くなっている。稽古ではあまり使ってこないが、俺がいない時にかなり練習したのかな。前回、俺が帰ってから猛特訓したのかもしれない。それだと物凄い事だな。
そしてリリーは、風魔法が苦手らしく、刈られた麦を拾っている。どっかの漫画の様に、薙いで足の高い草を一瞬で刈り払う様な事をしてないで良かったと思う。だって親としては、中国武将的な感じになって欲しくないし。
そして、ワーキャットとワーウルフのおっさんは、いい加減俺に豚の解体を進めてくるのは止めて欲しい、次の世代の若い人たちがいるだろう!
それからはいつも通りの収穫祭で、毎回遊びに来る竜族の三人にラム酒を飲ませたり、それに嫉妬したスズランが「私にも」とか言って、俺の目の前にカップをドンと置き、目で注げと訴えてくるが、その光景をラッテがニコニコしながら見ていた。
子供達は子供達で弱い麦酒や、かなり薄くした蒸留酒に果物の果汁を入れて飲んでいるが、酒が苦手なミエルが全員を介抱している。
男友達はペルナ君しかいないが、シンケンとミールの血を引いているのか、かなりベロンベロンだ。
残りの女の子達も潰れ気味だが、変な事をしない事を祈ろう。起きあがらせる時に胸とか触ったりとか。そのまま空き家に連れ込んだりとか。
そろそろ部屋を分けるべきだろうか? リリーと一緒だと、色々発散できないだろう。けど、姉妹を持つと、女性に幻想を抱かなくなるとも前世で散々聞いたな。姉持ちや妹持ちから。
俺も姉さんがいたから、姉萌え、妹萌えは理解できなかったし。うん、欲望を発散させる為の空間をお互い持つべきだよな。子供が二年生になる前に、大工に相談しておくか。どうせ冬には仕事しないんだから、簡単な絵図面や見積もりくらいなら出来るだろう。
そして、リリー達と同じクラスで見かけた子供達が数名消えていたので、たぶんそう言う事だろう。暗黙の了解で、空き家が余ってて感謝だ。だって日付が変わる頃に帰って寝れるし! 寝たいし!
そうして、今年もいつもと変わらない収穫祭が終わる。
◇
しばらく故郷でゆっくりしてから島に帰ると、米の精米が終わっており、榎本さんがかまどで、白米を炊きながら味噌汁を作り、織田さんが外でカラフルな魚の開きを、七輪みたいな物で焼いていた。
形から入るとは……中々わかってるじゃないっすか。
そうして、特に何も任される事も無く、味噌汁と、炊き立てご飯の香りを楽しもうと思ってたら、
「ほれ、削れ」
と、真っ直ぐな堅い枝を二本渡された。
箸を自作しろと言うのか、【細工】が有るから削るのは得意だぜ? 熊は彫れないけどな!
「んじゃ、精米したて、炊き立ての銀舎利でも食うべ!」
「「「頂きます!」」」
丸いちゃぶ台には、山盛りご飯と魚の開き、味噌汁に生卵。生卵は、ベリルから持ってきた鶏が増えたので、南村にも半分渡して、管理を任せてある。
サルモネラ菌がどうのこうのと、無粋なことは言わない、今は目の前にある究極の贅沢を楽しむときだ。
榎本さんは、ワシャワシャとご飯を口に掻っ込み、織田さんは魚の骨を外し、そこについている身にかぶりつき、俺は小鉢に生卵を割り、かき混ぜてから、ご飯の真ん中をへこませた所に注ぎ、醤を垂らし、掻っ込む。 それぞれスタイルは違うが、思い思いに日本食を楽しんでいる。
「粘りが少し足んなかったな、次は植物の嬢ちゃんに、もう少し詳しく説明すっか」
「けど、コレでも十分美味しいです」
「本当ですよ、コレ以上を求めるなら、本格的な技術者とか知識が必要なんじゃないんですか?」
「どうにかなっぺ」
そう言いながら、キュウリの浅漬けをポリポリしながら、麦茶を飲んでいる。
一つが手に入ったら、もう一つを手に入れたくなる。それは緑茶だ。
今まで飲んでいたのは、その地域地域で飲まれてた、お茶的な物で、本物の緑茶じゃなかったからな。
まぁ、無い物強請りという事で、皆あきらめている。
「カーム、会田にも持って行ってやれ。他にも日本人がいるんだろ? けどこっちにも事情があるから、一俵で我慢しろって言っておけ」
「うっす、このカラフルな魚の開きも持って行きます。味噌醤油は王都には有るでしょう。んじゃ早速……」
俺は、袋詰めしてある米を受け取り、早速王都の下級層の集合住宅の地下に転移した。
米俵じゃないのが、多少残念だが。
「ちわーっす、三河屋でーす。注文の品をお届けに参りましたー。ア○ゾンでも良いっすよー」
そう言うと、書類を書いていた勇者が、
「あ、サブちゃん。ちょうど良かったわー醤油が切れそうなのよー」
と乗ってきた、こいつは良い奴だな。一応交代制で、この共同住宅の地下で、一人で書類整理とか鬱になりそうだから、気晴らしで乗ってきたと思おう。
こんな場所で、淡々と六時間書類をカリカリしてたくないわ。
「で、コレ何ですか? コーヒーの差し入れですか?」
「米と魚の開き。最近がんばってるから、榎本さんが持ってけって言ってたんですよ」
「ほー、嬉しいですね。けど米俵じゃないのが見た目的に残念ですね」
日本人は、皆思う事は一緒なんだろうか?
そして、城にいる会田さん達にも最低限の量を届けるが、
「米俵じゃないんですね」
「麦を入れる麻袋じゃなんか物足りないですね」
やっぱり、米イコール米俵のイメージが強いらしい。
そして、城にいる勇者達の最寄りのキッチン占領作戦が実行され、指揮を取るのが上手い勇者が指示を出し、料理経験の豊富な勇者が指示通りに動き、ノリノリで米を炊き、味噌汁を作り、魚を焼いていく。
そして、全員がご飯を食べ、顔をほっこりさせながら味噌汁を飲んでいたが、とある兵士が慌ててキッチンに入ってきた。
「地下牢に幽閉してたジャスティスが見張りを殺して、レルス王女を連れて逃げました!」
そして全員が止まった、フォークですくったご飯を口に運ぼうとして止まっている者もいれば、味噌汁の入ったカップを口に付けたまま止まっている者もいれば、焼き魚の骨を齧ろうと、両手で持って止まっている者もいた。
そして誰かが、
「全ての門の警戒を強化! そして、全軍に詳細を伝え、王都内の見回りを最重要で強化させろ! 門や下級層やスラムを重点的に捜索させろ。国民に暴力を振るわない事を徹底させろよ!」
そう叫ぶと、のんびりと白米と味噌汁セットを食べていた勇者達は、ご飯を口に含み、あまり噛まずに味噌汁で流し込み。魚の小骨を気にする事無く、ガジガジと口に含み、駆け足でキッチンを出て行った。
んー、残して走って行くと言う発想が無い程度には、日本食に餓えていたと思える。
□
「畜生! 白いご飯と味噌汁を久しぶりに堪能出来ると思ったのによ!」
「仕方ねぇだろ! 話聞いてただろ、今回は試験的に作った奴を増やす為に、少ししか持ってこられなかったって。来年期待しようぜ。口に出来ただけでもありがたく思うぜ!」
「各自緊急時のマニュアル通りに動け。俺は北門の警備強化だから門に向かう! 一応同じ勇者だから気をつけろ」
皆で似た様な愚痴を言いながら、各自の担当場所に走って行った。
□
「あの、糞忙しくなりそうなんで、俺は失礼しますね」
「そうですね、取りあえずそちらも警戒して下さい。顔も見られてますし、魔王って事で噂や情報を仕入れて、報復して来る可能性も高いです」
「わかりました」
「まぁ、我々も似た様な物ですが。多分逃げられたら、近隣の国か、まだ力の強い貴族の所に逃げ、一時的に姿を消す可能性も有ります。それと申し訳ないのですが、緊急連絡手段として、フルールさんの鉢植え最低十株を地下に届けておいて下さい」
「わかりました、早速俺も動きます」
「お願いします」
そして俺は、緊急と言う事で、城内の隠し通路から地下に行き、転移して、廃材で鉢植えを作ってもらい、少し大きい元気な個体を教えてもらい、大きい鉢に十株、小さな鉢で十株を翌日には届けた。
地下室にいた勇者にフルールさんを渡し、簡単な挨拶だけ済ませ、急いで島に戻り、爺さん達とおっさん達とキースと船長にこの事を伝えた。
「あの女狐のガキ、勇者の坊主と逃げたのか。わかった、一応何か有った場合、全員が逃げられるように、各村の村長だった奴と神父に言っておく」
「そうですね、復讐に来る可能性が有るって言うだけで、島民を危険に晒す場合が有りますからね。俺も久しぶりに剣でも振っておきます」
「俺達はどうすれば良い?」
「おっさんやキースは武器防具の点検と、緊急時には即、動ける様にお願いします。船長はいつも通りで良いので、島の周りの警戒を、そして、船に乗っているハーピー族には、いつも以上に高く飛ぶように言っておいて下さい」
「「「おう」」」「わかった」「わかりました」
そして俺は、島民をどうしたら安全に守れるかを本格的に考えた。




