第113話 少しだけ内容が魅力的だった時の事
適度に続けてます
相変わらず不定期です
何か聞いた事の有る単語や表現が出てきます。入浴シーンあり
あの酒盛りから数週間、冷暗室とまではいかないが、空調性の高い暗室を作り、樽に入れた酒を寝かせる酒蔵を作り終え、そこに保存する事が出来るようになり、本格的に酒の生産も始めるようになった。
その中から中樽に蒸留酒を入れ、山の頂上に転移魔法で行き、土属性の魔法で火口付近の一部を平らにし、そこに酒樽を置いておく。
「まぁ、約束だし。隣人として仲良くやっていけるなら良い事だな」
そう呟きつつ火口から去り、ベリルへ転移する。
そして家族に軽く挨拶をして、酒場に顔を出す。
「お疲れ様でーす。校長います?」
「おーここじゃー」
「最初から本題に入りますよ? 無人島にクラーテルと言う女性が火口に住み付いていたんですけど、何か知っています?」
そう言った瞬間校長の手が止まり、驚いた様な表情でこちらを見て来た。
「……もう一度言ってくれんか?」
「本人はクラーテルと言っていました」
そうすると校長は眉間を押さえ
「姉さん、そんな所にいたのか……」
姉だったのか。世界は狭いな。
「カーム君、わしを今度島まではこんでくれんかのう?」
「えぇ、それは構いませんけど」
そう言って、多少校長と酒を飲みながら話を進めると、クラーテルさんはふらっと出かけ、ふらっと帰って来ると言う事を繰り返し。校長は百歳くらいまで姉の存在を知らずに過ごし、年齢も不明らしい。
兄弟姉妹の中でもクラーテルさんは上の方で、校長は末弟と言う事もわかった。校長でも詳しい年齢はわからず、帰って来た時は物凄く可愛がってくれたらしい。
あの人は一体何歳なんだよ……。
そう思いながらも、クラーテルさんの逸話を聞いたが。
島に来た魔王が気に食わないから焼き殺しちゃったー。とか、なんか私の噂を聞いた人族が、大群で来たから船ごと沈めちゃったのー。とか言っていたらしい。
それは何年前の話かわからないし、俺は気に入られてて良かったと本気で思う。
前任の岩本君が倒した魔王が、そのまま我が物顔で島を占領していたら、どのみち殺されていた可能性も高いな。島民に優しくしていて良かったよ。
◇
そして二日後に、校長を連れて火口まで行く事にする。
「ここにいると言っておったんじゃな?」
「えぇ」
そんな短い会話だけ済ませ火口を覗くが、特に変化はない。しかも平らにした場所に置いた樽もそのままだ。
そのままかと思ったが、少し揺らしてみると、中身は空だった。二日持たないとか、どんだけ酒好きなんだよ……。
「カーム君、その樽は?」
「えぇ、この島で作った蒸留酒です。あとはこの前に話した通りです。もうないですけどね」
苦笑いをしつつ、本当にいるかもわからないクラーテルさんを探す。
「姉さん俺です、プラクスです!」
校長の名前初めて知ったわ。
校長が火口に呼びかけ続けてたらいきなり後ろから、ドーンと声がしたと思ったら、軽くトンッと押されかなり焦った。火口付近でそう言う事は冗談でも止めて欲しい。
「プラクスちゃん久しぶりー、かなり大きくなったねー。カームちゃんもお酒ありがとう」
そう言いながらニコニコしている。
「姉さん! 俺はかなり心配したんだよ! 季節が百巡しても戻って来ないんだから」
普段とは全く違う口調に多少驚いたが、末弟と言う事なので、姉に対してはこう言う口調なんだと割り切ろう。
「いやー、空飛んでたらなんか真新しい島を見つけちゃったのよね。しばらく過して帰っての繰り返しだったんだけど、最近は島が面白くなっちゃって、目が離せなかったのー」
そういいながらニコニコしている。その頃から魔王が来て、勇者に討伐されなかったら、クラーテルさんに討伐されていたのかもしれない。
「まぁ、積もる話もありますし、村で話ししませんか? お酒くらい少し貰ってきますよ?」
「あらーそうね。確かに座って話がしたいわねー。火口の横穴で話しても良いけど、カームちゃんは暑さで焼け死んじゃうかもしれないし」
「確かに死にますね……。なんなら俺は席を外しますけど? むしろ酒だけ置いて席を外すつもりでしたし」
「お酒はあった方が良いわねー」
「儂もほしいのぅ」
「やだー、なにそのお爺ちゃんみたいな喋り方」
「俺の村ではこんな感じなの! これでも村一番の年長者なんだからね」
「季節が五百回しかめぐってないお子様が何を言ってるのよー」
長寿種にとって五百年はまだお子様らしいです。まぁ、村長の外見を見ればなんとなくわかるけど。早熟で、そのままの容姿を維持してる俺達にとっては、少し不便な気がする。
この世界のエルフを見習ってほしいもんだ。シンケンはハーフだけどな。アルクさんと、フレーシュさんの幼い頃の話を聞いておけばよかった。
「と言う訳でお客様です、俺の故郷で学校の校長をしてくれていた竜族です」
そう紹介し、多目的家屋に案内し、とりあえず島で作っている酒を全種類持って来て、俺は席を外した。
「おい、あのプラクスって言うのは校長だろう? なんで島にいるんだよ?」
「あの竜族と多少関わりがあると思うが」
「別に良いじゃないか、旧知の仲かもしれん」
おっさん達が、ベリルにいた校長の話題を振って来る。
「この間いきなり酒の席に現れたクラーテルさんは姉らしいですよ、村に戻って聞いてみたら、しばらく故郷に戻って来ていない姉って事がわかりまして、急遽連れて来る事になりました。今頃は姉弟で仲良く酒でも飲んでるんじゃないんですか?」
「そうか。けど俺は、校長の名前を初めて知ったぞ」
「「俺もだ」」
「自分もですよ……。今まで校長で通してましたからね。学校に通ってましたし。村の皆からも校長校長って呼ばれましたし」
「俺も、そう呼ばれてるところしか聞いた事がないな」
「そうだな。いつも酒場に行くと酒飲んでるか、蒸留所にいるかのどっちかだからな」
「村長と誰かが、収穫した麦をどれだけ酒にするかで揉めているのを見たな。結局カームがお互いの意見を纏めてたけど」
「あー、あの時ですか。お互いを納得させるのに骨が折れましたよ」
そんな会話をしてから仕事に戻り、夕方にもう一度多目的家屋に顔を出すと、用意した酒は全て空になっていた。
この量の酒、どこに入ってるんだよ? 実は竜の姿をしてる方が本物で、そっちの方に全部行ってるのか? けど質量保存の法則とかどうなんだ? けどファンタジーに化学反応後の物質の総質量が変化しないとか通じるのか? まぁ良いか。
「あーカームちゃん、お酒ご馳走様でした」
「うむ、しばらく姉さんと話してなかったから、かなり盛り上がってしまってのう、酒代は儂が出そう」
「ここはお姉さんに任せなさーい! はいはい、プラクスちゃんはカームちゃんに送ってもらいなさーい」
そう言って校長の背中をぐいぐい押して俺に近づけて来る。仕方がないので後片付けは後にして、校長を故郷に送り届け、アクアマリンに帰ってきたら皿やカップや空樽はすでに片付けられており。誰がやってくれたかはわからないが感謝だ。
なんか妙に疲れたので、家風呂ではなく山の温泉でのんびりしようと思い、温泉に転移して湯船につかっていると、クラーテルさんが俺が簡易的に作ったL字の衝立の向こうから全裸で現れた。
「ご一緒させてもらうわねー」
「え、えぇ」
妙にたゆんたゆんさせた胸や、下半身を隠す事もなく湯船に入って来るが、失礼なので目を反らしたが、チュン! ジュワァーーゴボゴボゴボゴボ、と言う湯船に入るような音ではなかったので、急いで視線を戻すと水蒸気が辺り一面に広がっている。
俺はこの音と、似たような光景を見た事がある。鍛冶場だ。
ピエトロさんの作業場で、真っ赤に焼けた鉄が適度に温められた、お湯や油の中に入る時の音と湯気だ。
「あらあらー。さっきまで溶岩の中にいたから、一度湖の方で冷ましてきた方が良かったかしらー」
そう言いながらも湯気と、ボゴボゴボゴと言う音が止まらない。何なんだこの人は。生前に漫画で似た様な光景を見た事があるが、なんだったかな。
そんな事より、入浴前より湯に浸かってる時の方が、湯煙フィルター強すぎじゃないですかね?
「あっつ!」
そんな事を考えていたら、クラーテルさんの方から適温に調節してあるお湯がどんどん熱くなってきて、湯船の外に逃げる事になった。
「あらーごめんね。熱かった?」
「飛び上がる程度には……」
おかしいな、適温のお湯がどんどん流れ込んでくるはずなのに、湯船のお湯がどんどん減っている。
そもそもどうやってここまで来た? 大きな生物が羽ばたいていた様子もないしな……。
一、全裸でここまで来た。
二、服は外皮説、人型になると脱着可能。
三、衣類が耐熱性ファンタジー繊維で出来ていて、溶岩内でも燃え尽きない。
四、考えるのを止める。現実は不思議であふれている。
個人的には四だな、他のはなんか考えるだけ無駄な気がするし。
「あらー、どんどんお湯がなくなっていくわ」
頭が痛い、水をぶっかければ良いのか? そうすれば湯船の中で適温になるだろうか? それともまだ蒸発するかだな。
「ぬるま湯……足します?」
「私の裸が見たいならそのままで良いわよー」
そんな事を言われたので、即【ぬるま湯】を足すが、やっぱりクラーテルさんの周りだけ湯気がやけに多いんだよな。その後数回熱くなったので【水】を足した。
「あーそうそう、酒代なんだけど」
お互い特に会話もなくマッタリ温泉に入っていたら、いきなりそんな言葉を掛けられた。
「火口の横穴に溜めこんだミスリルやオリハルコンがあるんだけど、お金よりそっちの方が良い?」
今、この目の前にいる女性はなんて言った……。ミスリル? オリハルコン?
「あの軽くて硬い金属ですよね? それとオリハルコンはなんか物凄く希少な奴って聞きましたが」
「そうねー。そんな事を聞いたわねー」
「持ってると色々面倒な事になりそうなので、必要になったら言います。その時にお願いします」
「欲がないのねー」
「安全優先です。持ってたら俺が狙われます。この話は聞かなかった事にしますので、そのまま横穴にぶち込んでおいて下さい」
「はーい」
まったく、あの神の仕業か? かなり前にそんな事を言ってた気がするな。
「けど、オリハルコン製の武器を持ってれば箔が付くと思うのよね?」
「加工できる奴いるんですかね? 一応純血のドワーフが島にいますけど、怖くて聞けませんよ。あと、加工できなくて、よそに持ち込んだら足がついて狙われそうなんで……。それにオリハルコン製のスコップやバールを作ったら、魔族や人族から物凄く怒られそうですし」
「小心者ねぇ、魔王なんだからドーンとしてたら?」
「のんびり暮らしたいので必要ないです、ってかどうやって手に入れたんですか?」
「襲い掛かって来た人族から剥いだのよ、あの頃はお姉さんヤンチャだったわー」
「そうっすか、鉱脈があるとかじゃない限り、あまり興味ないんで。武器は丈夫で安価で手軽に手に入る物が望ましいですし」
「オリハルコンは丈夫だし、私から手軽に手に入るし、私がタダであげるのよー? 条件はそろってるわよー」
「頭痛くなってきました、もうそのまま横穴に仕舞っておいて下さい。そして定期的に島で貢いだ酒でも、飲んでてください」
「本当に無欲ねぇー」
「戦わないに越した事はありませんので……」
本当頭痛いわー、もう帰って寝よう。




