第105話 色々飛び回った時の事
適度に続けてます。
相変わらず不定期です。
あの後家に帰り、まだ寝ていなかったラッテに、セレッソさんに言われた事を一字一句間違えずに伝えた。そしたら「この間の事守れば、急にいなくなる事は無いんでしょ? カーム君は優しいし、良く気がつく良い旦那だから平気だよ」と、ミエルを産む前の様な明るい笑顔で返され、少しだけ心が温かくなり、良い気分で眠れた。
翌日に、朝食を作り終わらせ、北川さんからもらった、会田さんからの手紙を読んでいたら、見逃せない文が二個ほど有った。
報酬と言う名目で、試験的に今にも廃村になりそうな、寒村の住民を労働力として百人程度、体裁が整い次第送ります。この前に村へ行った時のジャガイモや小麦の量や、馬鹿から巻き上げたお金でもどうにかなると思いますが、教会や貴族から巻き上げた少し古い小麦も一緒に送りますので開拓の方を頑張ってください。乾燥はしていますので、古米の様な感じと思えば平気でしょう。
出席しなかった軍部に、王や貴族のサインが入った停戦案の書類を突きつけ、魔族側の大陸の戦場から撤退命令を出させる事に成功しました。ですので、しばらくした頃には、お偉いさんが停戦の為に戦場に出てくる可能性が有りますので、どうにかしてその事を、そちらのお偉いさんにお伝えください。
重要な報告はそのくらいで、残りは貴族から金を巻き上げたり、税を軽くしたり、教会関係者の洗脳教育を止めさせることに成功したような事が書かれていたが、俺に関係するのは、この二つくらいか。
そう思ってたら、家族が起き出してきたので、皆で仲良く朝食を取り、早速動く事にする。
窓際の鉢植えのフルールさんに話しかけ、クラヴァッテ邸の個体で連絡を取ってもらい、今日の予定を聞いてもらう事にした。こういうのは早ければ早い方が良い。
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「あーそこの使用人さん使用人さん、この鉢を持って来たカームって奴がクラヴァッテと話しがしたいと言ってるの、空いてる時間を聞いて来てほしいんだけど」
「あら、フルールさんから話しかけて来るなんて珍しいですね、わかりました。聞いてまいりますので少々お待ち下さい」
私はしばらく日光の当たる暖かい場所で日向ぼっこを楽しんでいたら、さっきの使用人が戻って来て私に情報をくれた。
「昼食前は空いてるそうです、そうお伝えください。来訪は多少早くても良いそうです」
「わかったわ、そう伝えておくわ」
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「――だって」
「ありがとう、んじゃ早めに行くかな。今から向かいますって伝えておいて下さい」
「はーい」
「んじゃちょいと軽い貴族様のいる、テフロイトに行ってくるから」
「はーい行ってらっしゃーい、御土産は要らないよー」
「あんまり行った事無いし、町を探索したわけじゃないから、本当にお土産は無理かなー。んじゃいってきます」
ラッテから軽いジャブを貰うが、少し大げさに避けておいた。
今度は、貴族達が住んでいる門番に驚かれない様に、少しだけ離れた所に転移し、見知った顔ではあるが、一応用件を伝え、家の前まで案内してもらい、メイドさんに、応接室に案内してもらった。
「おー久しぶりじゃないか、殺されずに生き残っててくれて嬉しいよ、今度はどうした、この間言ってた人材でも借りに来たか?」
そんな言葉と共に、犬耳メイドと一緒に部屋に入って来て、お茶を淹れてくれた。
「書類の山に押しつぶされそうな所悪いんですが、さらに押しつぶされそうになる懸案を持って来ました」
「聞きたくないが、今聞かないと後で後悔しそうだから聞いて置こう、心構えが有るか無いかじゃ全然違うからね」
「詳しく話します? 色々端折って話します?」
「端折ってくれ」
「島に俺を殺しに来た勇者と和解して、人族の王都を襲撃し、停戦条約もぎ取って来た」
かなり端折ったらお茶を飲んでいたクラヴァッテが思い切り吹き出し。ハンカチで口元を押さえながら、咳き込み、メイドさんがテーブルを拭いている。
俺もハンカチ的な何かを持ち歩けば良かったな。
「すまん、いきなりだったものだから……端折らないで全て話してくれ」
一年くらい前にここに来た後に、勇者が来島した事から始まり、この間の食事会の事までを話し、勇者達のリーダー的存在から手紙が届いた事を伝えた。
クラヴァッテさんはお茶を飲み終わらせ、口を開く。
「……わかった、そう言う事が今後ある事を頭に入れておこう、情報感謝する」
雰囲気や目付きがいつもと変わり、言葉に棘が有るような感じだ。
「いやいや、こういう情報は早い方が良いと思いましてね」
俺も相手に合わせ、少しだけ真面目な声で微笑みながら言ってみるが、いつもがいつもなので、多少威圧感が足りなかったと思う。
「魔王と言うのは……カーム君はそこまで無茶をする性格だったかな?」
「悪いが、そこは言えません。なぜ安全を重視する俺が、そこまで動いたかは貴方の想像にお任せします」
「そうか、これ以上深くは聞かない様にしておこう」
「助かります、では今日の所は失礼します、今後軍部から何かしらの情報が、暑くなる頃までには有ると思いますので。その様な情報が入り次第フルールさんを介して連絡をくれればまた伺わせて頂きます」
残ったお茶を飲み干し、変な探りも入れられそうになったが、深く聞かれなかったのはクラヴァッテさんの性格だと思おう。正直助かった。
「わかった、もう少し深く聞きたがったが仕方が無い、戦線近くの貴族達の頭目として心して置こう」
「それと勇者達に協力した報酬として、今にも死にそうだった寒村の人族を百名ほど預かる事になりましてね。もう少ししたら本格的に、この前に言った人材を借りるかもしれません。戸籍管理や数字に強い者を」
「そちらで教育すれば良いんじゃないのかい? 君ならそれくらいの頭は有るだろうに」
「一から育成するよりも既に基礎が出来上がっている者を育てた方が楽できそうなので。その様な事が出来るツテは貴方くらいしかいないんですよ、なにせ与えられた領地は無人島でしたので。無人と言うのには多少の間違いが有りますね、ハーピー族がいたり、近隣の海に水生系魔族がいましたし。それに俺の故郷では数字に強い者はほぼいないので」
「言って失礼だが、確かにその二つの種族を教育するとなると、私でも裸足で逃げ出したくなる」
「そう言う事で、この件は貸しておいて下さい、後で何かしらの事で返しますので。多少釣り合わなくてもお返しますよ。必要になるのにはまだまだ先だとは思いますし、俺の手が足りなくなった時ですがね」
「わかった、そちらも覚えておこう。はぁー、あの時君に声をかけた事がこんな結果になるとは思わなかったよ。今後多少忙しくなると思うが、その後は少しだけ書類の山が減ると思うと、気が楽になる」
「魔王になって、王族にカチコミかけて申し訳ありませんでした」
「いやいや、聞いてて面白かったし、今度楽になれると思うとつり合いが取れる。それで徴兵が減れば、様々な農作物の収益も見込めるし、税を少し下げても問題は無くなる。軍部が縮小するかは奴等の判断だから何も言えんが、前線に送る分の物資が極端に減るのは確かだ。戦後処理の書類はあの豚にヒーヒー言いながらやって貰おうか」
先ほどの刺々しい感じは無くなり、いつもの子供の様な何か悪い事を考える様な顔になり、少しニヤついてりる。
けどこの辺の貴族の頭目だったとは、色々失礼な事し過ぎだったな。そもそもそれらしい貫禄が無いのが悪いんだよ。俺は悪くないぞー。
そんな事を思いながら家に帰り、昼食を作り、子供達に稽古に誘われるが今後送られてくる、人族百人の事を考えると、なるべく早い方が良いと思い島に帰る事にする。
「ってな訳で前に榎本さんとかと一緒に来た会田さんから連絡が有り、この島の人口が増えます、いつ送られてくるかはわかりませんが動くのは早い方が良いでしょう。幸い冬の間に入り江から見て左手側の道の整備や開拓はある程度終わっていますので、榎本さんが住みたいと言っている温泉が有る場所まで勢力を伸ばしましょう。多分あの方の事ですから『問題無いようですね、もう少し送りますね』とか言うに決まってます。今後の事を見通して、丁度何かの魔物の可能性が高い繭を発見した辺りを区画整備し、収穫小屋や製糸場や石鹸を作る大掛かりな場所を作りつつ、その様な施設を作りつつ。温泉付近に家を建てましょう、そしてその辺りに家を建ててオリーブの収穫や田畑を任せてみましょうか、幸い榎本さんが米を作る知識を持っているので」
「おー、やっと温泉が湧いてる場所の近くに住めるか。それに田んぼも作ってくれるとなるとこりゃ本格的に教え込まないといけねぇなぁ」
「最悪二十人くらいが入れる衛生環境を考慮したタコ部屋を五軒くらい先に作った方がいいかもしれないですね」
正直無理っぽい事を言っている自覚が有るが、やらなければ百名が雨風にさらされるし、食い扶持を稼がせる施設もつくらなければいけない。島内の小麦の自給率は、最初の奴隷だった人族と増えた海賊と予備に作った収穫量しか無い。小麦と一緒に来るらしいが。それ以降はどうなるかわからないからな。
「そして俺はこれからフルールさんを持って会田さんの所に行き、家が出来るまで待ってくれと直談判してきます! 今後忙しくなる事を考えて午後は休んでてください」
そんな事を言いながら俺はフルールさんの鉢植えを抱えながら、すでに勇者の誰かが管理している王都の共同住宅の地下に転移し、地上にいた名前も知らない事務処理っぽい事をしていた勇者に、会田さんの場所を聞きだしたが「各地の視察で今は王都を出ており、いません」と言われたので、手紙と鉢植えを残しつつ、必ずこれを会田さんに渡してくれと力説し、魔力切れで気だるい体に鞭を撃ちながら、島に帰った。
◇
それから十日後、島の南に有る温泉付近に船で木材を運び、平底船で波打ち際まで水生系魔族の方に運んでもらい。仮拠点を建て、海の底を隆起させ、船が横付けできる小さな港みたいのを作ろうか? と思ったが、防衛面で不安が残るので思っただけにしておいた。
さぁ、午後も頑張るかと言う所で近くに自生していたフルールさんが「アイダって奴が戻って来たみたいだよ」と言われたので、皆には申し訳ないが、外させてもらう事にした。
温泉で軽く汗だけを流し、即転移魔法で共同住宅の地上に出たら既に会田さんが待機しており、物凄く疲れた顔をしていた。
「やぁ、手紙は届いたみたいで何よりだ」
「あの、物凄くやつれてるんですが、平気ですか?」
「ん? あぁ、思ったより使えない馬鹿や石より硬い頭共が多くてね。こっちには正式な書類が有るのに『王に直接掛け合うまで信じぬ。時間の無駄だ。今すぐに我が領地から出て行ってもらおうか』とか言う奴ばかりが多くてね、農民から税で取った小麦の量と、上に献上する小麦の数字が違うのに何言ってるんだか……やるならもっと上手くやれよな、だれも帳簿なんか確認しない杜撰な状況下だったんだろうな。全く呆れるよ。で、今日は何のようだい?」
「え、えぇ。あのですね。手紙に有った村民の受け入れですが。まだ仮住居も完成していないので、まだ待ってもらえないかな? と思っているんですよ」
「あーあれか。王や上の方の貴族が移住を認めてるのに、地方貴族が揉めててね。今にも餓死者がでそうだから、無理矢理拉致ろうと思ったんだけど丁度良かった。危うくこちらの都合で送りつける所だったよ。小麦は港の倉庫を押収した物を使ってるから、そのまま船に小麦を乗せるだけさ、いや、本当すまなかったね、ははは」
「あの、お忙しい中来訪してしまい申し訳ありませんでした、今すぐにでも寝てください」
「いやーお気遣いどうもー。あの時ヘラヘラと国盗りでもしてみるかとか言ってみたけど、落とした後に実際手を掛けると大変だね。しばらく落ち着いて、王が歴代の王の中で一番だとか言われるまで頑張っても良いかもしれないね。まあ俺達の傀儡だけど。んじゃお言葉に甘えて、寝かせてもらうよ。仮住居が出来る頃には渋ってる貴族も落ちると思うから。あ、ぬるま湯の水球出して下さい、このまま寝たくない」
珍しく弱気で疲弊しまくってるな、まぁ言われた通り少し温めに水球でも作るか。
そして水球を作ったら、全裸になり、そのまま「ボガー」と水球の中で言い、口からボコボコと気泡を出しながら、うつ伏せで四肢をだらんとさせながら浮遊し、水球の外に頭だけ出し「あ゛~~~」とか言いながら数分後に出て、軽く体を拭いてからそのままベッドに倒れ込んでしまった。
なんだかんだ言って最後までやろうとしてるんだな、俺も頑張らないとな。けどせめて下着くらい穿こうぜ?
「あーなんかすみません、お疲れの所来てしまって、自分は失礼しますね」
「あぁ、一応暗殺者とか正々堂々襲って来る奴等は排除してるから安心してくれ、俺も寝る」
そう言って宇賀神さんもベッドへ向かって行った。
戦後処理じゃないけど、大変そうだ。俺もさっさと受け入れ態勢を整えないとな。それと書置きでも残しておこう。
『多少時間が出来たら、フルールさんに声を掛けてください、温泉まで転移します』っと。
色々島の為にも動いてくれてるんだから、労う事も大切だよな。これくらいはしてあげないと。本当に体を壊すな。
んじゃ俺は戻って、送られてくる百人が入れる施設と、建てられるだけ新しい家を建てる手伝いでもするかな。
雨続きで腰が痛く、筆の乗りが悪くて申し訳ありません。




