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第94話 なんとか軌道に乗りそうな時の事

なんとなく続けたいです。

相変わらず不定期です。

主人公の出番が少ないです。

「いつもご贔屓にしていただき、誠にありがとうございます、これはほんのお礼の品ですのでお受け取り下さい、保存は日の当たらない暗い所でお願いします」

 そう言って私はカームさんから預かったチョコレートを一箱、手土産として置いて行く事にする。アレから二十日は経っただろうか。そろそろ日差しが強く、暑く成り始める頃だ。もちろん、チョコレートは暑さで溶ける事は聞いている。


 コランダムのとなり町に有る、爵位的には下の方の貴族の家に、細かい装飾の入った金細工の指輪と大きな宝石が入った指輪を届けた後に軽く考える。

 あの後、コーヒー屋で様子を見ていたが、コーヒー目当てでは無く、ココアとチョコを目当てでやって来る客も増え、客層も女性が増えている気がするし、町で噂にはなっているだろう。

 最初に、このチョコレートという物を口にした時は、今までにない口溶けと、甘さが印象的だった。

 新しく出したと言っていたココアも飲んでみたが、コーヒーとはまた違った感じで、少し粉っぽいが、なぜか安心できる味だ。セットの菓子にも、ココアやチョコレートを混ぜて出すようになった。カームさんが色々と試作して、店で出しているのだと思う。

 あの魔族は本当に何を考えているかわからないが、言っていた通り、あの店にある三つの商品は本当に流行りそうだ。

 なんだかんだ言って、私も昼食後に気分を入れ替える為にコーヒーを飲んでいる。店内を偶に観察をするが、冒険者らしい厳つい男が、砂糖と牛の乳を大量に入れ、甘くして飲んでいるのを見ると意外に思う。

 逆に、甘い物が好きそうな女性が何も入れずに飲むのも意外に感じる。女性は皆甘い物が好きと言う考えも改めさせられる。本当に相手の好みを知る事の出来る、面白い飲み物だと思う。

 ココアも噂になっているのか、子連れや、少し裕福な家庭の子供達だけで飲みに来ている事も有れば、使用人らしき人族が粉だけを買って行くのも見た事がある。


 あの店が初めて宣伝をした時の噂は今でも忘れない。

『変な魔族が体に板をぶら下げ、看板を持って宣伝をしている』だった。興味をひかれ、少しだけ様子を見に行った部下達の話しでは「あの宣伝の仕方はすごかった」と、カウンターに立っているマスターや給仕をしている女性は恥ずかしがって動いてはいなかったが、それでも異様な目で見られるので宣伝になっていたとの事だ。

 その後、体に板をぶら下げ、港に寄る船の船員に宣伝をしている奴等をよく見たが、そのおかげで、自分の店の酒類で多少の利益が出たので、一気にこの町の雇用と需要が高まった気がする。

 通りを一本外れた、閑古鳥の鳴いていた店が、安さと美味しさで一気に有名になり、忙しさの余り、店員を雇った話も部下がしていた。改めて宣伝の凄さを思い知らされた。

 そして、なぜかカームさんに言われたと言いながら、マスターが私の店で必要な消耗品を安い値段で買って行く。確かに間に小売り店が一つ入らないだけで安くはなるが……。


 それと、噂でしかないが、どこかの馬鹿が小悪党を雇ってコーヒーの出所を探ろうとしたらしいが、店にいたギルド職員と、その日が休みで鎧を着ていなかった衛兵と、荒くれ者の船乗りに取り押さえられ、連行されたらしい。地域に愛されている店って言うだけで、防犯対策に腕の立つ冒険者が要らないって事は良い事だと思う。カームさんはそういう事も考えていたのだろうか?

 夜に店に忍び込んで盗めばいいと思うが、未だに出回っていない物だし、どうやって在庫を運び入れているのかがわかってないので盗めばすぐにばれるだろう。


 私は、少し考えている内に眠ってしまい、気が付いたらコランダムに着いていた。日は傾き始め、店の執務室で書類を纏めていると、店のマスターが話があると言って訪ねて来たので通してもらう。

「いつもお世話になっております」

「いえいえこちらこそ」

「急な話で悪いんですが、店に商人さんが来まして、コーヒーを売ってくれないか? と話が来ました」

「えぇ、それは良い事だとは思いますが……なぜ私の店に?」

「カームさんから言われてまして。もし誰かコーヒーを買いたいって方が現れたら、ニルスさんにこれを渡せと……」

 そう言ってマスターが一枚の封蝋のしてある手紙を出してきた。

「失礼します」

 そう言って受け取ると、蝋で封はしてあるが印がない。封を開け、読み始める。

『前略 もし、店の商品を買いたいと言う客が来たら、この手紙を渡すように言ってありますが、届きましたか?』

 ぜんりゃくって何だ? そんな事を気にせず続きを読むと、ある程度の事が書いてあった。

 私が窓口となり、島の商品をある程度の時期まで専売をしていい事。コーヒーの一杯の値段から一袋の値段を算出して、大体の小売希望価格と私の店に卸す値段が書いてあり、こちらの判断で売値はある程度変動させて良い事。在庫や、転移魔法で運べる数やその他諸々が書いてあった。労働者に対する大体の賃金や、希少性、話題性を考えても妥当と言えば妥当だが、少し安い気がする。私への配慮だろうか?

 あんな島に寄って、多少の寝具と食べ物を売っただけなのに、これは恩返しとしては多少重すぎる、この間のチョコの時もそうだったな。商人としては駄目な考えだ、カームさんは優しすぎる……。

「大体の事はわかりました、今度その商人か、カームさんが来たら、私を訪ねるように言っておいて下さい」

「わかりました。ありがとうございました」

「いえ、手紙の内容的にお礼を言うのは私です、こちらこそありがとうございます」

 そう言って、握手をしてマスターが帰っていく。


「親方ー、コーヒー店のマスターは何だったんですか?」

「店にコーヒーを売ってくれって商人が来たから、カームさんの手紙を渡しに来てくれただけですよ」

「お、なかなか面白そうな話ですね」

「本当に面白い話だよ、私をあの島の専属の商人にしようとしているんだから」

「はぁ? それってどういう意味っすか?」

「コーヒーはある程度一定の値段で売るから、こっちの好きな価格で売っていいって事ですよ。まぁ、ある程度上乗せした分の、儲けを渡せって書いてありましたから、あとはカームさんとの話し合いでしょうね。本当に大口の儲け話に繋がったな、あの島に寄らなかったら、こんな儲け話は他の奴等に持って行かれてたよ」

「親方、すげぇ悪い顔で笑ってますよ」

「すみません、こんな美味しい話、中々有りませんので。それとカームさんに封蝋用のスタンプも作らせないと、危機感が足りません」



 翌日、件のナマズの様な髭をはやした商人が私の所にやって来た。

「ニルスさんが、コーヒーを取り扱っていると聞いたのですが、いったいどこから仕入れているんですか? 良ければ買い付けに行きたいので、教えて欲しいのですが。もちろんタダとは言いません、今後色々と勉強させていただきますのでぜひ」

「生産者の希望で、それは明かせませんし、販売は私どもが一任されていると言ってもいいくらいです、一応信頼はされているみたいですので。ですが、まだ流行り出したばかりですし、希少性も高いので、値段はまだ(・・)決めていないのですよ。後日生産者の方が私の所に来るので、そのときに詳しい話をするつもりです。ですので今日の所は申し訳ありませんがお引き取りください。話がまとまったら、後日そちらに伺わせていただきますので、それまでお待ちいただけないでしょうか?」

「……わかりました、今日のところは失礼します」

 そう言って大人しく帰って行った。

 確かにあの商人との取引は多少あったが、少しだけ悪い噂もあるので余り信用は出来ないな。カームさんなら平気だと思うが、買いたたかれる可能性も有る。

 そう思いつつ、カームさんが来ても良いように、多少紙に色々と必要な事を書いて置く。



「お疲れ様です、変わった事はないですか?」

「カームさん! コーヒを売ってくれって商人が来ました。ですので言われた通り手紙をニルスさんに届けました」

「ありがとうございます、なら行ってきますね、あ、戸締りはしっかりお願いしますね」

 そう言って俺は普通に店を出た。

「絶対嬉しいと思うのに、全然そんなそぶりも見せないんだなー」

「そうね、けど平然を装っている様にも見えたけど、普段右手でドアを開けて出て行くのに、今日は左手だったし」

「よく見てるな」

「観察するのも楽しいわよ?」



「お疲れ様です、ニルスさんいます?」

「あぁ奥にいるよ」

 俺はいつも通り、その辺にいた職員に声をかけ、通い慣れた奥の部屋まで行き、ノックをして返事を待ち中に入る。

「どうも、マスターに言われて伺わせていただきました」

「早速で悪いのですが、仕事の話に入りましょう」

 ニルスさんは少しピリピリした感じで俺に話しかけて来る。この空気は嫌いだ、なんとか緩い感じで進めたかったんだけどな。

「わかりました、どこからでしょうか?」

「全部ですよ全部! なんですかあの手紙は、色々緩すぎます。確かに計算では妥当な数字でしたけど、そういうのは話し合って決めるべきでしょう!? しかも封蝋に印もないし、偽造されたらどうするんですか?」

「あはは、参ったな。一応サインの所に見た事の無い記号が五つ並んでませんでした? アレにも癖があって、慣れた人が書かないと似たような文字にならないんですよ、ほら、文字にも癖ってありますよね? それと同じです」

 もちろん記号は、島の名前を漢字にした藍玉(アクアマリン)と、俺の苗字二文字と名前一文字を漢字で書いた計五文字を、筆に粘度の低いインクを付け、習字のようにして書いた文字が最後にサインとして、漢字で残してある。本当は習字用の小筆と墨汁が欲しかったけど妥協した物だ。

 真似しようとしても、この世界じゃまず無理だろう、しかも少し崩して書いてあるので『藍』辺りはまず真似できないと思う。

「確かに何が書いてあるかわかりませんけど」

「封蝋に付ける細かい印と、サインが混ざった物と思ってもらえれば良いので」

「んー」

 物凄く納得がいかない顔をしている。少しおまけしてやるか。

「最後の、できそこないの四角の中に棒が四本並んでいるのが(カーム)って書いてあります」

 二十年以上使っていた文字だ、もちろん、止めや払いや跳ねも使ってあるので、癖も出るだろう。

「コレでですか……。んー」

 まだ納得できないみたいで、書き損じた紙を使って五文字全部を真似して書いている。羽ペンじゃ無理ですよ。しかも簡単そうな『玉』を真似するが、どう見ても三本棒と縦線に点を付けただけになる。

「むう、かなり難しいですね、それに癖もあると言いましたよね? 多分偽造は大丈夫でしょう、カームさんにスタンプを作らせるのはしばらくは諦めさせますが、後日に絶対作っていただきます。しばらくは馬鹿が、スタンプがない事をいい事に、勝手に偽造して墓穴を掘ることを祈りましょう」

 そう言って紙をくしゃくしゃに丸め、屑籠に放り込んだ。

 諦めたか。初めて漢字を書く英語圏の方々みたいな字だったからな。仕方ないだろう。

 その後。細かい話を詰めていき、書類を二枚作り上げていく。そして、最後のサインは、羽ペンではなく絵画用の細い筆を買い取ってサインをしていく。

「そう使うんですか、柔らかいのによく書けますね」

「俺からしてみれば、こんな硬いのでよく書けますね、ですよ」

 少しだけ笑いながら、二枚の書類に合計五文字の漢字を書いていく。

 そして、ニルスさんは、その二枚を見比べ。

「本当だ、ほとんど同じですね、この止まってる所とか払ってる所とか。インクの掠れ具合は多少ありますけど」

 そう言いながら、今度は筆で挑戦するが、羽ペンで書いた時よりも酷い状態になり、無言で屑籠に紙を丸めて放り込んでいた。

「で、コーヒーはどのくらいの備蓄が有るんですか?」 

「ちまちま収穫を頼んでたから、麦袋百袋はあると思いますが、前に家に使ってた場所を倉庫にしてるので正直分からないですね、それと乾燥しかさせてませんよ? 自分の好みに成るように焙煎しないと」

「ばいせん?」

「早い話が豆を煎って焦がす事です。焦がし方で、酸味が強かったり、苦味が強かったりします。出荷する分までいちいちやってられません。むしろ、自分好みの味に成るように焙煎して、挽かないと……。挽き方でも少し変わるんですよ?」

「じゃぁ、今、店で出してる物は?」

「前までは俺でしたけど、今はコーヒー好きの方に一任しています。そろそろ在庫が切れて、その方が焙煎した豆に変わる頃なので、なんとなく違いが判ると思います」

「むぅ……この事も先方に伝えないとな」

「そうですね。いつでもあの味が出ると思ったら大間違いですよ、ちなみにですが、あの島以外でコーヒーが見つかったら、味も違うと思いますよ」

「少し待って下さい、メモを取りますから」

 そう言ってメモを取りだし、事細かにコーヒーの事を聞いて来る。多分先方に失礼がないようにだろう、なので聞かれた事は全部答え、聞かれなかった事も知っている限り答えた。

「とりあえず百は確保できているんですよね?」

「えぇ、人手が増えれば収穫量も増えると思ってますが、まぁお金も無いですし、人も雇えないし奴隷も買えないので。少しお金が増えるまでは細々とやってますよ」

 勝手に収穫させればもう少し安くしてもいいけど、滞在中の寝床や食料とかの問題もあるし、取り尽くされたらって考えも出るからな。まだ希少性を利用させてもらうか。



 翌朝、私は商人の所に行き、話を付けてくる。

「と言う訳で、話し合いは先ほど言った通りに成りました。これが書類で相手もこれの写しを持っています」

 私は、懐から紙を出して見せる。

 ナマズヒゲ商人は書類を取り、軽く流し読みを始める。

「本当ですね。では貴方を通せばコーヒーが手に入ると」

「えぇ、申し訳ありませんが、そういう事になっております。勝手に行っても売ってくれませんので、注意して下さい。それとこれは注意事項です」

 そう言って、もう一枚の紙を取りだし、読ませる。

「豆を煎って、自分好みの味にして、挽き方でも味が変わる!? あの味がそのまま手に入るのでは無いのか!」

「残念ながら無理みたいです、乾燥させた豆を自分で煎って、自分好みの味にするのが醍醐味、店の店主で味が違うのも醍醐味。だそうです」

「ぬぅ……」

 物凄く難しい顔をしているな、あの店の味がそのまま手に入ると思っていたんだろうか? いや、私も思っていたけど、事実を聞かされた時は『確かにそうだよな』と考えを改めた物だ。

 ヒゲに頼んだ依頼主は、あの店のコーヒーが手に入ると思っていたのか。それともこのヒゲがそのままの味が手に入ると思っていたのかわからないが、かなり考え込んでいる。

「では、試しに一袋ほど買わせていただきます」

 思っていたより少ないな、取りあえず料理人でも雇って試すのか、依頼人に話をするかのどっちかだろうな。

「ありがとうございます、では一袋ですね」

 そう言って書類を作成し、カームさんに無駄足を踏ませ無い為に、マスターに書類を渡し、後日収めてもらう事にした。一袋くらいなら、あの店から持ち出しても問題はないだろう。

 そして、あのナマズヒゲが上手くやれば、私が買い付けに行くか、話し合いで、運んで貰えばいいだけだからな。

 まだ金は成り始めたばかり……ってところか。

 コーヒーやチョコレートが売れて人手が増やせれば、あの島は豊かになって、需要が伸びて、生活必需品や島で作っていない作物が売れるようになるんだけどな。そう考えると、早く事業を拡大してほしい物だ。向こうもこっちを利用してるんだから、こっちも乗っからせてもらいますか。

 あー、多分俺は今、物凄く悪い顔で笑ってるんだろうな。島では鉄が取れないかもって愚痴ってたから、今度、鉱山のある街にでも足を延ばしてみますかね。

あまり爵位とか貴族とか王族とか詳しくないので、できれば書きたくありません。

取引とかも詳しくないのであまり書きたくありません。

描写してはいませんが、裏の方で家を建てたり、収穫したり道路を整えたりもしています。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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