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第93話 チョコとココアを店に出した時の事

細々と続けたいです。

相変わらず不定期です。

 宇賀神さんが前日、心に物凄い傷を負ったが、翌日には立ち直ったので、会田さんと共に、夕方にコランダムの店まで転移し、そこで別れた。

「じゃあ、下準備だけは進めておくから、適当に過ごしてて」

 そう言って、宇賀神さんと一緒に宿屋の方に向かって行った。


「カームさん、さっきの人がこの前話した勇者の一人です!」

「大丈夫です、もう話は付いてるし、島に危害が加わる事も少ないと思いますので」

「少ないって、どういう事です?」

「色々あって……、勇者の保護を頼まれたんですよ」

「はぁ!?」

「勇者と魔王だし、まぁ普通はそう言う反応ですよね。けどね、色々言えない事と約束が有りまして、しばらくは勇者との仮の平和条約っぽい物を結んだって事にしておいてですね……」

「はぁ……」

「それはそうと、前々から言っていたチョコレートとココアが、ある程度生産できる態勢になりましたので、早速明日から出そうと思うのですが、帰る前に少しだけ時間を貰えませんかね?」

「それは構いませんけど」

 そう言って相方の女性を見るが、頷いているので大丈夫らしい。


 俺はキッチンに立ち、準備を始める。

 カカオを加工してできたカカオマスを取り出し、新しく持って来た石臼で粉砕していく。

「まぁ、簡単です。この塊を石臼で挽くだけで粉になるので。この粉を一杯分を鍋に入れて、少量の水でよく練ってから、少しずつお湯を入れながらかき混ぜ、沸騰直前で火からおろして出来上がり。本来なら粉にした物を持って来たいんですけど、湿気とかが気になるから塊で持って来ました」

 そう言ってカップにココアを注ぎ、二人の前に出してやる。

「例の如く、そのままだと苦いので砂糖を入れる事をお勧めします」

 俺は、一応一声かけるが、二人はそのままの状態で口に含み、目を閉じて、味を確かめるように口の中で少しだけ転がしている。なんだかんだ言っても、初めての味には、何も入れずに確かめるって言うのは、いい傾向だと思う。合わなかったら自分好みの味にすればいいんだから。


「牛の乳を入れても美味しいので、入れてみましょう」

 そう言って、二人の前に、残っていた牛乳を出し、今度は牛乳を入れて飲み始める。

「やっぱりまろやかになりますね」

「そうですね……」

「じゃぁ、今度こそ砂糖を入れてみましょう。俺はお湯の代わりに、温めた牛の乳で作って、たっぷりの砂糖を入れたのが好きなんですよね、夜中に飲むと落ち着くので」

 そう言って二人は、好みの味に成るように、それぞれ好みの量の砂糖を入れ飲み始める。

「「美味しい」」

 暖かいココアを啜るようにして飲みながら、ため息に似たようなホッとした吐息を漏らし、無言でココアを飲み乾した。


 そして俺は、薄い木の箱の蓋を開け、ココアパウダーまみれになった、チョコレートを二人の前に置く。

「次は、このチョコレートですね、カカオの実を磨り潰して出て来た液体にそのココアを作る時に絞った油分と砂糖を足して、固めた物だから甘いですよ」

 二人は、一口の大きさに切ってあるチョコを口に入れると、驚いた表情になり、お互いを見ている。

「甘くて美味しいです」

「飴とはまた違った溶け方をするのが凄いですね」

「まぁ、食べ過ぎると、油分と糖分が凄いから体に悪いんですよ」

「毒なんですか!?」

「なんでも食べ過ぎると毒ですよ、ただこれは油分と糖分が多いから太る可能性が高いって事です、そのココアも油を搾り取っただけなので、砂糖を入れすぎれば似たような物ですがね」

 女性の方がお腹の辺りを見ながら、何か少しだけ考えているようだ。

「あっ、犬や猫のような動物には本当に毒ですので、食べさせないように注意させないと駄目ですね。って事で、明日から出しましょう、張り紙の謳い文句も考えてありますので」


・新食感! 飴より早く口の中で蕩けるお菓子! 持ち帰って、溶かしてパンに付けても美味しいよ。

・コーヒーとはまた違った飲み物! 甘くて安心した味です。コーヒーと同じで、好みの味で飲みましょう。


「どうでしょう?」

「……確かにその通りですけど、安直すぎませんかね?」

「そうですね。もう少し、なんか捻りたいです」

 うん、俺にセンスはあまりない事はわかってたけど、事実をわかりやすく書いただけだし。マーケティングとか、どうやって魅力を伝えていいかあんまりわからないんだよな。コピーライターの方とか本当すごいと思うわ。

 ちなみに、チョコの方は少しと言うか、気持ち高くなっている。手間とか色々考えるとそれなりだし、少し高級感出したいじゃん?

 天秤を買って来て、量り売りしても良いくらいだ、むしろ甘い物が好きな俺にとっては、ココアと一緒に食べたいくらいだ。チョコを口の中で溶かしながら甘いミルクココアを飲む、個人的にはそれをやりたいが、この世界ではそれがどう思われるのかが気になる。まぁ、どんな目で見られようと俺はやるけどな!


「まぁ、この店は広告塔みたいな物だからねぇ、噂になって、売れるようになってお金が稼げればいいんですから」

「「こうこくとう?」」

「高い場所や目立つ場所に、宣伝の為に出す看板みたいな物だよ、わかり易く言うと体に板を挟んで町に立つのと似たような物かな、また立ちます?」

「い、いえ、それはちょっと」

「板をぶら下げて宣伝する数は、多くなったとは言っても、俺にはできません。恥ずかしすぎます」

「なんだ、なら仕方がない、俺だけでも行ってきますね。まずはどんな物か知らないと駄目ですからね。なぁに、恥ずかしい事には慣れているので」

 そう言って転移用の倉庫に入り、既に島で作って来た板を二枚取り出し、装備する。心なしかなんか強くなった気がするが、本当に気のせいなので、コレで戦場には立てないな。ヘイト稼ぎにはもってこいだけど。

 俺のポケットに金貨三枚入ってるよ。とか書けば速攻襲い掛かってくるだろうな。傭兵とか引き付けるのには良いかもしれない……。やらないけど。


「んじゃ、戸締りお願いしますね」

 そう言って、俺はサンドイッチマンになり、町に出る。

『コーヒー屋・新しい飲み物とお菓子あります』

 そんな看板をぶら下げ、売り文句を謳う。

「新商品だよー、甘くておいしいよー、これ試食品だからタダだよー、美味しかったら知り合いと一緒にコーヒー屋に来てねー」

 そう言いながら、木箱の中に入っているかなり小さいチョコを配りつつ、胸の板を親指で指差す。

 受け取った魔族や人族は、甘いし飴とも違うし、何だこれ! と、皆が似たような反応をする。

 ついでにその辺にいた、やる気のない、胸が大きくて板が浮いている、色町の女性にも配っておいた。

「大丈夫だよ、アンニュイな雰囲気の女性が好きって男もいるからさ」

 励まそうと、そんな余計な事を言ったらぶっ飛ばされそうになったので、空いている手で、板を持ってガードしたら、脛を蹴られた。この装備は足元がお留守すぎるな、板の下に、車輪とかの脇についてる、シュルチェンみたいなやつか、スカートアーマーみたいな、蛇腹の鉄のスカートみたいなのを付ければ、少しは実戦で……使えるはずないな、何を考えてるんだ俺は。


 なんだかんだで五箱目のチョコを配り終わったし、そろそろニルスさんの所にでも行く事にする。このままの格好で!

「こんばんはーニルスさんいますかー」

「あれ、カームさんじゃねぇっすか、また板なんかぶら下げてー。お? 新しい飲み物とお菓子っすか」

「今度は、どちらかと言うと子供向けだし、高級志向なお菓子ですよ」

 そう言って木箱の蓋を開け、チョコを食べさせる。

「お、確かにガキが喜びそうな奴っすね、今度行ってみますよ」

「ありがとうございます。こっちの菓子は高いですけどね、まぁこれを十箱ほど手土産と言う名の宣伝に来ました。多分ニルスさんは、少なからずどこかの大きな家や、貴族連中に顔が聞くと思っているので、そっち系にも売り込んでもらおうかなと思ってるんですよ」

「相変わらず考えがあくどいっすねぇ」

「儲けに繋がるかもしれない種があるなら、食いつくのが商人でしょう?」

「少し偏見がありますが、否定できないのが悔しいな。ねぇカームさん」

 後ろから、よく聞いた事の有る声が聞こえ、振り向くと、そこには物凄い笑顔のニルスさんがいた。

「ド、ドウモ」

「いやーここじゃなんですので、奥に行きましょうか?」

「ア、ハイ」

 そう言って奥に案内され、席に座る。

「で、本題は聞きました、取りあえず味の方を確かめさせて下さい」

「どうぞ、これはさっきまで、宣伝用に配ってた試食用です」

 そう言って箱を開けて渡し、ニルスさんは一欠けを口に放り込んだ。

「そうですね、確かに子供が好きそうな味ですね、前回の試作品とは大違いです、大口の顧客の子供への手土産には本当に丁度いいですね……。もし私に卸すとしたらどのくらいで?」

 口にチョコを放り込み、一気に顔付きが変わる。


「……そうですね、一つの売値がこれくらいと考えてますね。百単位なら収穫や作る手間や材料費や希少性もろもろを考え、大体これくらいは欲しいので、これくらいで卸そうと思ってます。大量に買って頂けるなら、更にこれくらいまで下げても輸送代も下げられます。あと、色々ニルスさんにはお世話になっているのでこのくらいでどうでしょうか? 正直に話せば二百くらいならギリギリ転移魔法を使えるかもしれないので、輸送代もカットできるんですよ」

 そう言いながら俺は会話の途中途中でパチパチと算盤を弾く。最初、一つの値段を言ったら、驚かれた。

 昔は、カカオの種一粒が通貨としても使え、まだまだ希少性が高いから、一粒銅貨二枚で、チョコ一箱大銅貨二枚程度にしたいと考えている。我ながら高いと思うが、この路線で行きたいと思っている。

「んー、本当に商人の経験が無いのに、この数字が簡単に出せるのが恐ろしい、しかも駆け引き無しで大体の落としどころまで持っていきますか」

「まぁ、先ほども言いましたが、この値段はあの時のお礼と、日頃からお世話になっているお礼ですので、少し安くしておきましたよ」

「けど駆け引きしないのはもったいないと思いますよ」

「素人の付け焼刃でボロが出るよりは良いです、先に値段を出しておいた方がこじれないで済みます」

「確かにそうですけど……」

「それに島民が少ないので、そこまで大量に作れません。千とか二千とかになったら、時間をそれなりに貰います。人員確保の為に、大口の話が来れば、奴隷と物資と交換でもいいんですけどね」

「まぁ、後々飛ぶように売れる気がします。勘ですが、その場合は奴隷で支払った方がいいんですかね?」

「犯罪奴隷だけは駄目ですよ、一応平和な島にしたいので。そうするとしばらくは今のまま凌いで、島民募集しつつ、物資を買った方がいいか。それとも地元領主と話し合い(・・・・)で、小さい寒村を丸々一つ買い取った方がいいのかな。けど魔族も欲しいけど、既にハーピー族や水生系がいるし……」

「何かすごく嫌な単語が聞こえましたが……」

「あ、あー、んん゛! もし宜しければ、店に明日から新しい飲み物が増えるので、試してみて下さい。味は、このお菓子を融かして、薄めて飲んでいる様な感じと思っていただければ」

 露骨に話を逸らしながらそう言って、まだ胸にかかっている板を、トントンと叩きながら言った。

 ニルスさんは短くため息を吐きながら、椅子の背もたれに体重を掛け、少し疲れた感じで口を開く。

「もしかしなくても、それも試してくださいって奴ですか?」

 聞かなかった事にしてくれるらしい。

「まぁ、色々あって、この飲み物の原料は、不揃いな塊で出来て、それを砕いて石臼で挽いてから飲むので、店頭で売るのには天秤が欲しいんですよ。在庫で余ってません? それか売っているお店を紹介して下さい」

「はぁ、頭が痛いです。えぇありますよ。今、持ってこさせますので少し待ってて下さい」

 そう言って、倉庫にいる誰かに、あの辺の、下の方にあったと思うから持って来てくれと言って戻って来た。

「あ、あるんですか? まさかあるとは思わなかったので、お金は後日で良いですか?」

「いいですよ、どうせ不良在庫で埃をかぶってるような奴なので、手土産のお礼として差し上げますよ」

「ありがとうございます」

 そう言って俺は素直に頭を下げた。


 そして俺は、早速箱を開け、大体の使い方を習い、ニルスさんが、重りを素手で触っている事にびっくりした、小学生の頃の理科で、重りは素手で触るなと言われていた気がするからだ。けどよく考えたら、そんな繊細さも求めてないし、世界基準となる、重りも存在してないだろうと思って、深く考えるのを止めた。

 前世じゃ、王様の腕の長さとか足の大きさが、基準だった事もあったらしいからな。

 そして俺は店に戻り、天秤をカウンターに設置して、一杯分の重さを計り、一杯分の重さの重りを決め『お持ち帰り用ココア、一杯分と同じ値段』と書き、良く寝れるようにと、挽いた方のココアを、砂糖を多めにして飲んでから寝た。



 寝慣れない寝具だと、やっぱり体中痛いな。

 そう思いながら、寝具を倉庫にしまい、看板に『新商品、ココア・チョコレート』とでかでかと、誰かが広めたチョークで書き、看板を出し、二人が来るのを待ってった。

 そして天秤の使い方と値段を言い、しばらくはソレでやってほしい事を伝え、客の反応を見ようと思う。

 そして一番最初に来るのは、服屋のお姉さんだ。

「外の看板を見たわよー、このココアって奴を貰おうかしら」

 そう言っていつもの席に座り、カップに一杯分のココアを入れ、お湯で練ってからさらにお湯を注ぐ、まだ誰も客がいない事を確認し、サービスとしてチョコを一欠けを小皿に置いて出した。

 話によると意外に顔が広く、コーヒーも宣伝してくれたらしいので、これくらいは安い出費と言う事にしておこう。

「あら、私はココアって奴しか頼んでないけど」

「常連さんなので、サービスです。まだ誰もいませんからね」

「ならありがたく頂くわ」

 そう言ってお姉さんは、ココアを一口飲んで、直ぐに砂糖と牛乳を入れてから飲み始め、顔が緩むのが確認できた。

「コーヒーとは違った美味しさがあるわねー、こっちは少しイライラしてる時に飲みたいわね」

 そう言いながら、ココアを半分ほど飲んでからチョコを口に放り込み、しばらく口をもごもごして、ココアを口に含みさらに顔を緩ませた。

「これは人を堕落させる飲み物と食べ物だわー。少し高いけど」

「申し訳ありません、希少品ですのでどうしても高くなってしまうんですよ」

「ならしかたないわねー、ご馳走様でした」

 そう言ってお金をカウンターに置いて店を出て行った。


「一応、出だしは好評ですね」

「そうですね」

 その後も、ニルスさんや、ギルド職員もやって来て、試しに飲んで行ったが、おおむね好評だった。

 このまま噂が広まればいいんだけれどね。

ご都合主義ですので、コーヒーやココアに、無調整豆乳を入れても凝固溶かしません。

他にも突っ込みどころは満載かもしれませんが。余り深く考えずに読んで頂ければ嬉しく思います。

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作者が書いている別作品です。


おっさんがゲーム中に異世界に行く話です。
強化外骨格を体に纏い、ライオットシールドを装備し、銃で色々倒していく話です。


FPSで盾使いのおっさんが異世界に迷い込んだら(案)

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